ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
「『俺はクロッゾ、ただのクロッゾ。しがない鍛冶師だ』」
「ええ!? クロッゾ!? クロッゾって、あのクロッゾ!? ひょっとして初代!? アルゴノゥトと同期だったんだ!」
「もう魔剣は打てるの?」
きゃーきゃーと盛り上がるティオナと無表情ながら目をキラキラさせるメイナ。と、その時扉がコンコンとノックされる。
「ヴァハ、面会が出来るようになったと聞いてな。大事ないか?」
「ミアハ様、少し前まで面会謝絶だった時点で大事かと……」
入ってきたとはミアハとナァーザだ。突然の神の登場にメイナは固まりティオナは普通にこんにちはー、と返す。
「こんにちは。ヴァハの見舞いに来てくれてありがとう。良ければこれを………」
「え、ポーション? 良いんですか?」
「ああ。二人とも、とても愛らしい顔をしておるからな。その顔に、傷など残らぬようにせよ」
「え〜? えへへ、ヴァハ。アタシ愛らしいって〜」
「………………」
ミアハの言葉に照れたように笑いながらヴァハにも同じことを言って欲しそうなティオナ。またサラリと口説き文句を行ったミアハをナァーザが睨んでいた。
メイナはメイナでミアハに言われたことをヴァハにも言ってほしそうだ。とても期待した目で見てくる。
「そうだな。首輪を付けて、媚びるような笑みを浮かべさせたら面白そうだ」
「こび………?」
「子供の前で、変なこと言わない」
「く、首輪………」
媚びるの意味が分からず首を傾げるティオナと呆れたようにため息を吐くナァーザ。耳年増なのかメイナは顔を赤くしていた。
「これこれヴァハ。彼女は動物ではないのだ。確かに、どこか小動物を想像させる愛らしさはあるが、そのような事を言ってはいけない」
ミアハは、相変わらずだった。
「ええ〜、あたし小動物みたい? えへへ、なんか嬉しいなあ」
猛獣扱いされる事が多いティオナには十分褒め言葉だったようだ。
「ヴァハよ、こうしてお前を慕う者がいる。彼女達は、お前が死ねば傷つく。それでも、そうやって、命を危険に晒し続ける気か?」
「ああ。殺し合いのない人生なんてつまらねえからなあ」
ケラケラ笑いながらベッドに上半身を乗せてきたティオナの頭を撫でるヴァハ。その言葉に嘘が無いことを理解したミアハはため息を吐く。
「止めたいが、止まらぬのだろうな。いっそ、何処かのファミリアに
「ミアハ様、それは────!」
「え!? ヴァハ
ファミリア唯一の迷宮探索者にして筆頭稼ぎ頭をあっさり手放そうとするミアハにナァーザが叫びティオナが反応する。
「だ、駄目。ティオナお姉ちゃんの所は、駄目!」
ヴァハの腰に抱きつきながら腹に額をグリグリ擦り付けるティオナを見てメイナが反論する。
「ま、俺も移る気はねーよ。ぶっちゃけダンジョンに潜れるのが俺だけだからこそ、ここまで自由に出来んだ。【ロキ・ファミリア】に入ろうもんなら、それこそ動きが制限される」
「ああ〜」
ティオナは思い当たりがあるのか誰かを思い出すように虚空を見つめた。と、その時──
「それは残念だな………君のような優秀な団員なら、大歓迎なんだけど」
扉が開きそんな言葉がかけられる。見ればフィン・ディムナ、リヴェリア・リヨス・アールヴ、ロキの2人と一柱が立っていた。
「やあ、今回の件について色々聴きたいことがあってね、少し、いいかい?」
「……………ダンチョ、ティオナ、メイナ。3人とも部屋を出ろ」
「え!? お話の続きは!? オルナとアルゴノゥトは王国から逃げられたの!? フィーネはどうなっちゃったの!?」
「アリアドネ姫は…………?」
ヴァハが退室を命じるとティオナとメイナは話の続きが聞きたいと迫る。また今度話してやると言うと渋々部屋から出ていったが。
「…………どうして、私も?」
「俺や、ダンジョンであった事だけについてじゃなさそうだからなぁ」
ヴァハの秘密は、ミアハ同様知っている。団長という立場から聞かされた。もちろん、ダンジョンでヴァハが見た事も。フィンの話したい内容はその何れかの筈だ。自分を外す理由が分からなかったナァーザだがヴァハの言葉に大人しく出て行く。
「悪いね、人払いをさせてしまって」
「気にするな。で、聞きたいことってえ?」
「さっきの会話から察するに、気付いていると思うけど?」
「ぜぇんぜん解らねえなあ」
「嘘やな………」
ヴァハの言葉にロキが言葉を被せる。ニヤニヤ笑うヴァハを見て、始めからこうなる事が解っていったということが解る。
「聞きたいことはちゃんと自分で聞こうぜえ?」
「うっわ。なんつー態度のでかいガキや」
「………まあ、けど一理あるね。じゃあ、改めて教えてほしい。59階層に、何がある?」
「何故それを俺に聞く?」
「アイズが、27階層であった
クリーチャー……、恐らくレヴィスやオリヴァス達魔石を持った人間………人間とモンスターの混生種達の名前だろう。
「俺は何度もミノスじゃねえと教えてやったのになあ」
「っ…………嘘や、ない」
「…………それでも、何かを知っているのは確かだろう? レフィーヤ達が覚えている限りの会話を話してくれた。それから察するに、お前は奴等の言う『彼女』とやらの正体に確信を持っている」
ヴァハがミノスという存在で、それ故に何かを知っていると思っていたのかロキは僅かに狼狽える。リヴェリアが補足するが、ヴァハは無視してそんな反応したロキにニヤリと笑う。
「何を驚いてんだ、神ロキ………あんな物を側に置いてる癖に、俺が『ミノスの子』で、だから彼奴が『アリア』と勘違いされたような事が起きたとは、考えなかったのかぁ?」
「……………っ」
「ハハァ。まあ、確かにどんだけ少ない可能性って話だからなあ。いや、そもそもありえねえ。これも下界の未知とやらか?
「ウチが、アイズたんを物珍しさで眷属にしたって言いたいんか!」
「基本的に美男美女は稀だ。だから重宝される訳だしなあ。容姿で眷属勧誘したりする奴が物珍しさで集めてないとは笑わせるぜえ。やーい、面食い」
「なんやとお!」
「ロキ、相手に乗せられるな」
リヴェリアが窘めると大人しくなるロキ。ヴァハはケラケラ楽しそうに笑う。
「神をからかうとか嫌な
「良くいわれる。長所だと思っている」
「む? そうだったのか。だから中々直らなかったのだな………ヴァハよ、それは長所ではないぞ。嫌な奴のままでは、人は離れていく一方だ」
「お前は黙っとけぃ! ミアハ!」
天然炸裂するミアハに叫ぶロキ。神をからかう子に、神も呆れる天然。この部屋、凄く疲れる。
「まあ、59階層に何があるかは、本当に知らん。ある程度予想は出来るがなあ」
「そうか、なら…………」
「当然、ただじゃ教えねえがなあ」
「……………彼等の目的が、オラリオの崩壊でも?」
「お前も危険なんだからただで手を貸せって? お断りだなあ。それに………」
「…………?」
仮に予想が当たっていたとしても、
色々不明な点が多すぎる。故にヴァハも確信に至っていない。妙な感覚だ。それこそ、シミュレートするための盤上が気付けば別のゲームの盤上にされているような、そんな相手と先の読み合いをしているかのような違和感。
「それに、ただで教えるなんて勿体無い」
「…………何を払えばいいんだい?」
「アイズ・ヴァレンシュタインのじょーほー」
「…………何?」
ヴァハの言葉に、リヴェリアがピクリと肩を震わせる。ヴァハはそんな様子を気にせず煙草を取り出し火を付ける。
「ベートにウィリディスは、あの様子からして知らねえんだろうな。でもお前等は知ってるだろ? それはアイズ・ヴァレンシュタインからの、信頼の証。はは、そりゃあんな存在受け入れてくれるか不安だ。だぁれにも知られたくないだろうからなあ。それを、お前等の口から話せ」
「………貴様は、アイズがどういった血を引いているか、知っているのではないのか?」
「そうとも。俺が知ってる情報を、お前らが改めて詳しく説明するだけ。損がほとんどない、良心的な取引だ」
「では何故、私達の口からそれを言わせようとする!」
激高したように叫ぶリヴェリアに、ヴァハはやはり笑う。
「俺は嫌な人間なんだ。アイズ・ヴァレンシュタインが大好きなお前等が、彼女の人に知られるのを嫌がる秘密をその口で言う。その事実が欲しいんだよ………」
「…………お前は、本当に嫌な性格をしている」
「言ったろ? 長所だと思っている。どうだ? 嫌な奴と分かったから、次からは耐えられるだろ?」
「………君に、得があるとは思えないけどね」
「アイズ・ヴァレンシュタインが己の秘密を知られたくないように、俺にも知られたくない過去はあんだよ。今回の件は、それに触れる。だから教えなーい」
この件は終わりだ、そういうようにベッドに寝転ぶヴァハ。リヴェリアは何か言いたそうだが、フィンはジッとヴァハを見つめる。
「強制しないんだね」
「あん?」
「君は、随分と口が達者だ。何なら、59階層にある何かを、それこそアイズの秘密を話してでもその情報を得なくてはならないと思わせる事も出来たろうに」
「んはは。出来るなぁ………だが、その場合俺も過去を話す必要があるだろ?」
「そうだね………それでも、君は子供がいる間は煙草を再び吸おうとはしなかった」
「……………」
「嫌な奴、という評価は否定する気はないよ。でも、不器用だとは思う」
「………………ふーん」
フィンの評価にヴァハは興味無さそうに欠伸した。
「一つ教えてやるよ」
「?」
「俺の予想がただしけりゃ、今のお前等は59階層にいるのと戦って、全滅、良くて幹部が数匹階層から脱出して上の階層で待機してた中堅組と合流、動揺して結局地上に戻れず全滅の2通りだ」
「なんやとお!? うちの子なめとんのか!!」
「嫌ならせいぜい59階層に潜るまで頑張るんだなあ。もしくは折れないために必要な何かを見つけるこった」
「…………ありがとう。その忠告、受け取らせてもらう」
「おー………」
片手をヒラヒラと振るヴァハ。そんな失礼な態度に苦笑するフィン。リヴェリアとロキと共に三人が立ち去ると、息を吸い込み煙草を短くする。
「実際のところ、心配などしていないのであろう?」
「マーナ、あいつ等強ぇし」
「それは嘘だな。死ぬか生きるか、それに興味ないから心配していないだけだ…………そんな生き方は、寒くないのか?」
「……………
「…………のようだな」
ヴァハの言葉に嘘がないのを見抜きミアハは悲しそうな顔をして、ヴァハの頭を撫でる。
「ステイタスの更新をしようか」
「おう、頼んますねえ」
そう言ってヴァハは服を脱ぎだす。
「ヴァハ、体調はどうですか? ………と、すいませ…………っ?」
と、恐らくフィン達が帰ったのを見て誰もいなくなったと思ったのだろう。ちょうどタイミング良く入ってきたアミッドだったが、固まる。
「なんですか、その痣………」
「痣?」
「………これは」
背中を見て目を見開くアミッド達。ヴァハは鏡を使い己の背中を見ると、木の蔦のような枝分かれしながら背中に絡みつく痣が浮かび上がっていた。
「雷系統の魔法を浴びた人に出る傷跡に似ていますが…………痛みは、感じますか?」
「いんや?」
アミッドが白魚のような白い指で触れる。特に痛みは感じない。肌の感触も、盛り上がっているわけでもない。本当に、単なる痣だ。
「……………雷に、打たれたねえ」
と、ヴァハは片手に雷を纏う。その腕に背中の痣のような焼け跡が刻まれる。
「な、何を!」
「完治しきってなかったみてぇだな。もうすこし血を貰っときゃ良かった」
「完治?」
突然の自傷行為に目を見開くアミッドが腕を掴みやめさせる。ヴァハは己を冷静に分析していた。
恐らくランクアップの影響で、ヘルメスの想定していたより力を発揮することになったため、ヘルメスが持ってきたぶんでは代償を消し去るに至らなかったのだろう。
「………治るのですか?」
「感覚的に、2、3日ってとこっすねえ」
「そうか。では3日間、ダンジョン探索を禁じる」
「………………りょ」
ミアハの言葉にヴァハははぁ、とため息を吐き渋々納得した。
「ではその間ランクアップの申請もしてくると良い」
「………………」
ミアハの言葉にヴァハはギルドの担当職員である赤髪の
面倒くせぇなあ、とヴァハが思っていると扉がノックされる。
「はい、どちら様でしょうか?」
と、アミッドがトトトと扉に向かって走り、開けると大男が居た。150
「お、【
やってきた人物は、オッタルであった。ほんの少し前彼がヴァハを殺しかけた事を知っているアミッドは警戒するように片腕を横に伸ばし部屋に入れない意思表示をする。
「邪魔だ。どけ、聖女」
「どきません。貴方は、以前彼を殺しかけている………どうかお引取りを」
「………………」
「────っ!!」
都市最強の男の視線に、アミッドの全身が強張る。機嫌を損ねれば自分など簡単に殺せる相手なのだ。何の目的があって自分が殺しかけた相手の下に来たのか分からないが、平和な事であるなどと楽観的な想像などできない。
足が震え、息が詰まる。足から力が抜け、倒れそうになると────
「よおオッタル、何か用か?」
ヴァハが倒れかけたアミッドの肩を抱き支える。
「…………ランクアップしたようだな」
「ああ」
「約束の酒だ」
「…………は?」
オッタルはヴァハに酒瓶を渡すと去っていった。
「あ、あの………ヴァハ、その………手を」
と、腕の中から声が聞こえる。見れば赤くなったアミッドが覗き込んでいた。
治療の際に男の肌に触れたことなど数え切れないほどあるアミッドだが、腕の中に抱きしめられた事などない。ましてやヴァハはステータス更新のために上の服を脱いでいた。
「ああ、悪いな」
「い、いえ………庇ってくれてありがとうございます」
そう言って離れるアミッドを見て、ミアハはふむ、と、顎に手を当てああ、と納得したような顔をする。そして改めて二人を見てうんうん、と頷くのだった。
今回のイベントでローズさんのキャラデザ初めて知った。可愛くない?
感想お待ちしております
ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員