ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
無事治療院から退院したヴァハはギルドにやってくる。前回は担当アドバイザーが休みだったため、そのまま帰り後は何かと理由をつけて換金以外に使用してこなかったが主神命令では仕方ない。
「よおエイナ。ローズ居るかあ?」
「あ、ヴァハ・クラネル氏………ローズですか? えっと、はい。そろそろ休憩時間から戻ってくると思います………あ」
と、タイミング良く赤毛の
「………お久しぶりですクラネル氏。本日はどのようなご用件でしょうか?」
どちらも同じ髪の色。しかし血を連想させるヴァハと異なり、ローズの髪は何処か業火を連想させる。それは、跳ねた癖っ毛という以上に、その表情が明らかに怒りに染まっているからだろう。
「何怒ってんだあ?」
「何度も忠告を無視して、死にかけているようですから」
「ハハァ。おかげで今は生きてるって感じがするなあ」
「何度でも言いますが、ダンジョンは自殺スポットでありません。登録された冒険者がダンジョン内でお亡くなりになれば、それを他の冒険者達が恐れ、魔石の収集に支障が出るかもしれません」
「他人の死に怯えるかよ。ましてや俺は無名だぜ?」
フィンやオッタル、名があまり知られずとも【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】の団員が一気に死んだのなら、なるほど冒険者達は恐れてダンジョンに潜らなくなるだろうがLv.1のヴァハが死んだ所で情けねえ冒険者だ、そんな奴等がいるから俺達の名が下がる、ぎゃははー、となるに決まっている。
「あ、でもLv.2になったから無名じゃなくなるのか」
「そうですね。そんなやり方でランクアップされた日には、箝口令が敷か────あんた今なんつった?」
聞き逃してはならない言葉を聞き逃しかけたが、耳聡く反応し目を見開く。思わず敬語を忘れてしまうほどに。
「ランクアップしたぜ。申請しに来た」
「…………何時?」
「一週間ぐらい前」
「あんた、冒険者になってどれぐらいの年月が経った?」
「4週間だな………」
「…………………」
ローズは浮かしていた腰を落とし、ふぅ、と息を吐いた。この後何が起きるか察したヴァハは耳を塞ぐ。
「3週間で、ランクアップ〜〜〜〜!?」
個室の外にも響くであろう大声。ヴァハはくふぁ、と欠伸をしたのだった。
「ごめんなさい………」
ローズの大声で何事かと入ってきた職員を追い返した後、己の声が外にまで響いてしまった事を謝罪するローズ。冒険者のステータスを吐露してしまうなどギルド職員にあるまじき失態だ。だが彼女は知らない、数週間後同僚が似たような失態を犯すことを。
「…………それで、本当なんですか?」
「嘘をつく意味あんのか? どーせ直ぐに真偽がバレる」
「それは…………そうですが。一週間ほど前と言う事は、もしやワイヴァーンとの戦いで?」
「まーな。んで、俺の
「できるわけ無いじゃない」
ライガーファングとの戦いで死にかけながら単独で勝利したあと続けざまにLv.3〜4相当のモンスターをLv.3、Lv.2、Lv.1のパーティで撃破。【
『死ね』と言うようなものだ。お蔵入り決定。こんな事、きっと二度と起こるまいとローズは呆れる。まあ、目の前の男の弟もランクアップまでの軌跡を公開されることはないのだが。
「ま、今回はランクアップしなかったがなあ。それでも、Lv.6相当の相手との殺し合いはいい経験になったなあ。次は、ランクアップできるかもしんねえが」
「はあ、やだやだ。冒険者は、何時もそれだ。強くなって、潜って、有名になって………そればっかり」
ふん、と不機嫌そうに鼻を鳴らすローズ。
「恋人を作って、愛を囁いても、有名になるためにダンジョンに潜って、帰ってこない。どうせ女よりモンスターの方が恋しんでしょ?」
「当たり前じゃねえか。俺でなくてもそうだろ」
基本的に冒険者相手にこんな愚痴を言ったりしないローズは、しかし思いの外動いてしまった口に内心悪態をついているとヴァハが思いがけず肯定した。
普通、冒険者だったら、それも男だったらそんなこと無いなどと言ってくるのに。
「冒険者ってのは、何か譲れねえ目的がある奴とかるーく考えてる奴だけだからなあ」
そう言うと【ヘルメス・ファミリア】のマークが入った煙草を取り出し紫電を纏い火を付けるヴァハ。僅かに火傷を負った手を見てそうだった、というようにため息を吐いた。
「譲れない?」
「ああ。何かを成し得るために必要な………力だったり、名声だったりを得る手段としてダンジョンに潜る。所詮手段だから、目的が達成するまでは潜り続ける。たとえ死ぬことになってもなあ」
「じゃあ、なんでそんな、死に急ぎの馬鹿達が、好きだの愛してるだの都合の良い言葉をわざわざ言うのよ」
「それは大半がかるーく考えてる奴等だなあ。ダンジョンに潜りゃ金や女、名誉が手に入ると身勝手に思って大成できない己の無能をサポーターなんかに当たる雑魚共…………どうせ自分は死なねえと思ってるから女を作るくせにその女のそばに居続けねえ」
その言葉に何処か納得するローズ。確かに、自分に付き合ってくれと言ってきた冒険者達はやたら自慢話が多かった。彼等より偉業を成し遂げて、今もなお生きている冒険者達は、淡々と報告するだけなのに。
今や人気の殆どはエイナに移ったとはいえ時折告白されることが未だあるローズからすれば納得の答えだ。
「…………大半?」
「ま、中にゃ本気で愛した奴も居んだろ。それが、死地に向かわねえ理由になる程強くなかったってだけでな」
「何よ、それ………そんなの、愛してないと同じじゃない」
「逆に聞くが、お前は愛してたのかよ?」
基本的に鼻のいい獣人はあまり煙草を好まないがヴァハの煙草は中々良い匂いをしているため興味を持ったのか耳がピクピク動いているローズにヴァハがん、と煙草の箱を向けてくる。受け取ったローズはどういう意味よ、と睨む。
「愛してんならそれこそ何が何でも止めりゃ良かった。1回2回じゃねえんだろ? 泣きついてでも、毒を飲ませて半身不随にさせてでも、相手の夢を壊してでも、自分の側に居て欲しいって言やぁ良かった。それをしてないくせに愛していた、好きだったなんて、それこそ都合が良い」
「………………」
「惚れた女の懇願より己を優先すんなら、所詮それだけの愛ってことだなあ」
ケラケラ笑うヴァハにローズは何も言い返せなくなった。渡された煙草を加え、火種が無いことに気づき二重の意味で顔を歪める。と、ヴァハがローズの顎に手を添える。
「────!?」
そのまま自身の咥えている煙草の先端をローズが咥える煙草の先端に押し付け火を移す。
「だから俺は愛するのも愛されんのもゴメンだなあ。愛せばそれこそ世界そのものがピンチにならねえ限り力を手にしようともせず生きる為に殺し合いもできねえし、愛されれば生かすために付きまとわれる…………まあ、愛にも色んな形があるからなあ。殺し合いをする俺の姿が好きって奇特な女なら愛してもいいかもなあ」
そういう意味では今の所とある美の女神が該当するわけだが。そう考えながらヴァハは顔を離す。
「それと、髪の色が似てようと俺はお前の弟か兄じゃねえんだ、過保護すぎると嫌っちまうぜえ」
生まれてこの方誰かを嫌ったことなどない男は、相も変わらず人を小馬鹿にしたようにケラケラ笑いながら
「…………ほんと、やな奴」
残された女性は舌打ちして煙草を吸う。匂いもいいし、やはり美味かった。が、その煙を吸うと何故か顔が熱くなった。
「さて、暇だなあ。森で今晩の肉でも狩るかぁ」
「なんやリヴェリア、弓矢なんか手入れして、珍しいなあ」
「久し振りに、セオロの森まで狩りに出ようと思ってな」
「へーっ! リヴェリア、狩りなんてするんだ」
「数少ない趣味の一つだ。森にいた頃、良く嗜んでいた」
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ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員