ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
セオロの森にはモンスターも生息している。邪魔されないようにそれらを退治し、漸く狩の準備に入るヴァハ。
「【血に狂え】」
魔法で弓矢を生み出し、構える。まず最初に発見した獲物は、兎。森の土に紛れるような、茶色い毛色。
引絞り、狙いを定め、力を溜め、矢を放つ。たったそれだけ。空を切り裂く矢は兎の首を掠め、喉元をえぐる。
「───? ───!?」
噴水の様に血を吹き出した兎はピクピク痙攣して息絶えた。ヴァハは駆け寄り足を掴むと木に吊るす。血抜きはまだ血液がサラサラの間にしておかなくては後で肉が臭くなってしまう。
しかし、流石にこれでは足りない。鹿か猪でも探すか。と、ヴァハが移動しようとして、気配を感じる。
「すごーい! 一発で仕留めちゃった」
「お見事やなーっ! ゴクッ………ぷは〜、風流や〜! こりゃ酒が進むわ!」
「久し振りだが、弓の腕もそこまで鈍っていないようだ」
リヴェリアが空いた時間に、久方ぶりの狩をするために弓の手入れをしているのをロキとティオナが見つけ、3人でセオロの森に来ていた。ロキとティオナは静かにしていると約束したがロキは何故か酒を飲んでいた。
「ねえねえ、リヴェリア! あたしもやってみていい?」
「ティオナが?」
「うん、1回やってみたいの!」
と、不意にティオナが身を乗りだす。好奇心旺盛な幼子をそのまま成長させたようなティオナだ。リヴェリアがやっているのを見て興味が湧いたのだろう。
「解った。良いだろう」
「やったー! ありがと!」
そんな彼女の素直さを好ましく思っているリヴェリアは、微笑み彼女に弓矢を渡す。が…………
「えいっ!」
ヒュン!
矢は獲物から離れた茂みを揺らし、獲物はその音に驚き逃げていく。
「ああ………逃げられたぁ。矢も変なとこ、飛んでちゃったし〜」
「力みすぎだ。全て力で解決出来るわけではない」
「うーん………弓って難しいね」
「な〜、ティオナ下手やなあ。全然酒が美味ないわ!」
「しょーがないじゃん。慣れてないんだから!」
「そうかあ? 俺は初めて弓矢を持った日から暴れ猪を狩ったけどなあ?」
「そーなの? ヴァハ凄いねえ……………ん? あれ?」
上手く当てられなかったティオナが弓矢の難しさにため息を吐いているとヴァハが自分は初めから出来たとカミングアウトする。感心したティオナは、あれ? と首を傾げた。
「ヴァハ!?」
「っ!」
「げえ、生意気坊主!」
ティオナが漸くこの場にヴァハが現れたことに気付き、パァと花が開くような満面の笑みを浮かべ、リヴェリアが先日のやり取りからヴァハを警戒しロキは神をからかい笑う子供の登場に顔をしかめる。
「ええ〜、どうしてここに!?」
「狩りだ」
抱きつこうとしてくるティオナを避け、ヴァハは血で創った弓を見せる。基礎の部分はきちんとしている弓を見て、ほぅ、と目を見張るリヴェリア。
あれは恐らく、血液操作魔法で創ったのだろう。弓を再現できると言う事は、きちんと弓を理解し、扱えるということ。
「因みにこれが今回の獲物だ」
「わ、兎だ!」
ヴァハは首元が赤黒く染まった兎を取り出す。傷口から察するに、刃物ではなく刺突。他に目立った外傷がないことから、一撃で喉元を射貫いたのだろう。
「ねえねえ、ヴァハが弓使う所もみせて!」
「私も興味あるな」
「ええ〜、どうせなら可愛子ちゃんがやってるとこを見たいんやけどなあ」
ティオナがヴァハに弓を射るところを見せてほしいとせがみ、リヴェリアが興味を示し、ロキはどうせ見るなら可愛い子が良いと文句を言い出す。
ヴァハからすれば、弓の腕を見られた程度でこの先不便になるとも思えないし、別にいいかと了承する。
「ババアエルフ、その弓借りるぞ」
「……………リヴェリア・リヨス・アールヴだ」
「んじゃリヴェリア、借りるぞ」
「…………ああ」
ヴァハはティオナが持っていたリヴェリアの弓を受け取ると矢を構えずに弦を弾く。弓のしなりや強度、重さを確認し今度は矢を見てから構える。
「………ブフ、バフ」
「あ、ヴァハ! あれなんかいいんじゃない!」
「…………………」
「ティオナ、声を荒らげるな」
ちょうど猪が見え、ティオナが指差す。ヴァハはタイミングを伺いリヴェリアがヴァハの邪魔をせぬようにティオナを諌める。
「………っ」
地面に鼻をこすりつけ、何かを見つけたのか意識が完全に地面の下に向く猪。瞬間、ヴァハが矢を放つ。
それなりの距離、僅かに下がって行くが、それもきちんと計算に入れている。
「ピギぃぃ!?」
矢は見事猪後ろ足に突き刺さる。己が攻撃を受けたことに気付いた猪は逃げ出そうとするも足に力が入らず後ろ足がザリザリ地面を擦る。
「なんやぁ、一発で仕留められんのお?」
「いや、その弓は私が昔使っていたものだ。Lv.1でも使える程度の強さ。当然速度もそのぶん遅くなる、あの距離で猪相手ならむしろ脚などを射ち逃げられぬ様にしてから止めを刺す」
「そゆこと」
続いて2射目を放つ。ヒュン! と風切り音を鳴らした矢は猪の額に突き刺さる。猪は一鳴きして、ドゥ! と地面に倒れた。
「さて、血抜き血抜き」
ヴァハは猪の下に駆け寄ると縄で吊るし喉をナイフで切り裂く。ダクダクと流れる血を見て、飲んでみる。そこらのチンピラより美味い。
「すごいすご〜い! ヴァハ、何でもできるんだね!」
「まあ基本的に使えなかった武器はねえなあ」
要らないものは森で捨てるつもりなのかスパスパと素早く解体していくヴァハ。ダンジョンのある街で普通の毛皮はそこまで需要がない、埋めておく。骨……出汁を取るか、持って帰る。
「ガアァァ………」
と、血の匂いに誘われたのか獣の気配がする。ヴァハが再び弓を構える。が………
「よーし、あたしだって……!」
「まて、
ティオナが愛武器
「決まってるじゃん。狙いを定めて、豪快にぶった斬る! 行っくよー!」
ドカーン!
「グアァァァァァッ!!」
ドサァ
「へへ〜、どんなもんだー!」
「ガアァァ」
「あ、もう一匹居た………待て〜!」
仲間がやられたのを見て尻尾がたれている獣を見てティオナがかけていく。あっと言う間に、倒した。モンスター用の武器で切られるなど、運がない獣だ。
「ええで〜ティオナ! これはこれでおもろい! 酒が進むわ! やれやれ〜!」
「おりゃ〜、どんどん狩ってやる〜!」
「……………これは、狩りとは言わん」
「エルフの狩は優雅に過ぎる。肉が取れりゃそれも狩だろ………まあ、確かにどっちかつーと虐殺だな」
ロキに煽られ森の中で暴れまわるティオナを見て、疲れたようなリヴェリアの言葉にヴァハがケラケラ笑いながら腹を抱える。
リヴェリアは仕方ない、とヴァハを見る。
「お前とティオナは、仲が良かったな。ティオナを見張っておいてやってはくれないか?」
「……………ただでえ?」
「…………獲物を幾つか譲ろう」
「契約成立だな。解体は俺がしてやるよ、王族様が血に塗れたなんて事になりゃぁ……………それはそれで面白そうだなあ」
「……………ふっ。そうか」
王族扱いを嫌うもエルフ達には敬われ、その他の種族からも最強の魔道士という立場から一歩引かれるリヴェリアはヴァハの態度が何処か新鮮で思わず微笑む。
「では、行ってくる。ああ、そうだ………」
「あん?」
「お前の弟、あの店の子なのだが…………元気か?」
「おう。この前膝枕されて思わず逃げちまったんだとよ」
「……………ぷっ………ふ、くふ……ふはっ……ははは。そうか、あの子だけでなく、その子も落ち込んでいたのか。ああ、だがなるほど。後悔してくれるということは悪く思われてはないらしい。今夜、あの子にも教えてやらぬとな」
「リヴェリア?」
リヴェリアが声を出して笑うなど珍しい。いや、確か数日前、アイズが落ち込んで帰ってきた時も笑っていたような? 確か、あの後アイズに落ち込んだ理由を聞いたら可愛いウサギに逃げられたのだとか。
「いや、しかし何だ………子供達のそういった出来事には、お互い苦労させられるな」
「俺は16って事になってっからベルとは親子ほど離れてねーよ。エルフのアンタなら子供どころか孫の年齢まで離れてる奴がいるかもだが」
「私はエルフの中でもだいぶ若い方だ」
「え、マジで?」
「おいロキ、何故貴様が驚く」
そういや爺の古くからの知り合いのエルフ達はもう少しこう、匂いが腐葉土…………熟成………うん。匂いが違ったなぁ、とヴァハはドカンドカンと狩り(?)をするティオナを見ながら思い出す。
アマゾネスらしく元気な事だ。そういえば初めての相手はアマゾネスだった。爺の知り合いで、鍛錬中に相手してやるとか言うからボコったのだったか。流石にその日はヴァハも骨折してたので後日日を改めたが。
「その辺考えると、あまりアマゾネスらしくない、のか?」
「てやあぁぁ! ええい! えへへ、ヴァハ、見てる〜?」
いや、ガキっぽすぎるだけだな。下手したらキャベツの説を信じてるかもしれない。因みにヴァハは爺のせいで物心付く頃から知ってる。ベル? 2年前まで桃を割ると子供が出てくると信じてたよ。
「ふう、この辺も獲物いなくなっちゃったなあ」
「そりゃなあ」
あんな爆音立ててりゃ動物は逃げる。ティオナはよーし、あっちに行こっ! とリヴェリアが向かった方向に駆け出した。
「リヴェリアー、あたしもこっちで狩っていい? 向こうは獲物がいなくなっちゃった」
「なに? ティオナ、何故こっちに………いや、待て。悪いが場所を移してくれ」
「え〜? 良いじゃん別に」
ヴァハが見ているはずのティオナがやってきた事に驚くリヴェリア。取り敢えずさっきみたいにドカンドカン音を立てられては困るリヴェリアは当然拒否するが、その時兎が現れた。
「あ、いたいたー♪」
ドカーン!
「………………」
「へへ〜、これで20匹目〜!」
「………………」
「ここや! 胸もんだる〜!」
呆然と突っ立っているリヴェリアに、ロキが襲いかかる。実は先程も弓を構え獲物を見据えるリヴェリアの胸を揉もうとしたのだが、失敗した。それでも諦めていなかったようだ。
当然リヴェリアの平手に吹っ飛ばされたが。
「ぐわ…っ! いたた〜、またあかんかったか〜」
「………………」
「あっ、そこどいて〜!」
ドオォォォォン!!
「………もう我慢できるか! いい加減にしろ、お前達!」
セクハラ主神と暴れアマゾネスに、エルフママが切れた。ゲンコツをそれぞれの頭に落とす。
「あたっ!」
「あたたた………リヴェリア、ちょい、今のゲンコツはきついわぁ……」
「邪魔をしないと約束しただろう………?」
静かな狩を好むリヴェリアが何故騒がしい二人を連れてきたのかと思いきや、そんな約束をしていたらしい。ヴァハ視点から見ても邪魔ばかりだったが。
「んなこと言われても、なぁ……?」
「うん………静かにって、なんか性に合わないしね〜」
「…………ほう?」
「あ、あれ………ひょっとして……リヴェリア、怒っちゃって………る?」
と、リヴェリアから魔力が溢れ出す。
「ちょちょっ! これ…………」
「リ、リヴェリア落ち着いて!」
「【閉ざされる光、凍てつく大地……】」
「ええ──っ!?」
「そ、それ、洒落にならんてー!」
「まて、リヴェリア、肉を持ってくっから………」
詠唱を唱えだしたリヴェリアに大慌てのティオナ達。ヴァハは保存を利かせるために血を抜いて居た肉を一箇所に置いていく。
「【吹雪け……三度の厳冬……】」
「それ、あかんやつやーっ!」
「【我が名はアールヴ】!」
「ごめーんってばー!」
「かんにんやーっ!」
「おお、流石Lv.6………詠唱がはええ」
「いやぁ、これで数日は持つなぁ」
「…………複雑な気分だ」
仮にも己の攻撃魔法を肉の保存に使われ何とも言えない顔をするリヴェリア。しかし、遠征の時はどうしても保存の利く食料に限定される、これ、ありなのでは? と考える自分も居る。
「さささささ、さっぶぅ!」
「ふえっくし!」
身体に霜が張ったティオナ達が少し遅れてついてくる。リヴェリアとて仕置ではなった魔法だ。直撃したわけではないので元気そうだ。
「解体、助かった。少しは軽くなった……」
「…まあティオナが狩り過ぎたみてぇだがなあ」
「うむ、今夜は肉料理が多くなりそうだ………」
「はは。皆のママは大変だねえ」
「お前までそれを言うか…………あまり、嬉しくないのだが」
「あん? なんで俺がお前が嬉しいと思うこと言わなきゃならねえの…?」
「………なるほど、お前もまた、癖のある子供だ」
リヴェリアはそう言って微笑む。
「時に、あの子は逃げられた事を今でも気にしていてな。兄として、その子が逃げ出さぬように何か手を打ってはくれないか?」
「いいぜ。ベルが慌てふためく姿は、俺も笑えるからなあ」
「趣味が悪い。が、あの子が他人に避けられた事を一々落ち込む姿は、確かに面白い………」
翌日。
「なんかベルがアイズと早朝訓練してたぜえ」
「…………仲良くなるの早いな」
「どーっすかねえ」
「見守れ。そして、報告しろ」
「イエス、マム。今回はアイズがベルの事を臆病呼ばわりしてたな。ま、ベルも自覚してたみたいだが………くく、しかし彼奴も面白い。好いた女に「立てる?」と問われただけで意地でも立つ」
「男の子だな…………うちの若い連中も、それぐらい根性があればいいんだが…………明日も頼む」
その日からリヴェリアが若い男を連れ店に行く姿が頻繁に確認されたと【ロキ・ファミリア】で話題になった。
肉は【ミアハ・ファミリア】と【ヘスティア・ファミリア】、【タケミカヅチ・ファミリア】で美味しく頂かれました
ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員