ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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兄弟

「ふむ、そうか。ではこの薬を飲ませてやりなさい」

「い、良いんですか!? でも、うちにそんなお金は……」

「構わないとも。聞けばその子供は冒険者を目指しているのであろう? では、将来是非うちの店を贔屓にしてくれ」

「は、はい! 必ず、伝えます!」

 

 ふと街中を見ると灰色のローブの青年が女性に薬を渡していた。人とは思えぬほど整った容姿の青年で、事実人ではない。超常存在(デウスデア)という『概念』の形骸化した存在。各々司る何かを持ち、その型に填まり存在するため生まれたその瞬間から姿が変わらぬ不死不滅の生物とは1つか2つは確実に次元そのものが上の存在。つまりは神だ。

 

「うい〜っす、ミアハ様。相変わらず優しいすっねぇ」

「おお、ヴァハ………ヴァハ!? お前、その姿!!」

「ハハァ。心配しなくても傷は全部塞がってますって。俺のスキルは知ってるでしょ?」

「知っているとも。しかしそれが心配しない理由にはならぬ」

「んー。相変わらず良い神ですねぇ。さっきも、母親から言葉を聞いた息子が来るとも限らんのに」

「お前も、やめろと私にいうか?」

「ノンノン。それがアンタという神の在り方なら文句はねぇっすよ。ダンチョに小言は言われるかもっすけど、そのダンチョだって結局最後までは咎めないし」

 

 似た者同士というやつなのだろう。気が合うようで何よりだ。

 

「ダンチョもアンタのそういう所を好ましく思ってんでしょうね」

「お前自身、好ましいとは言わぬのだな?」

「神に嘘はつけませんからねぇ。けど、嫌ってるわけでもない。どーでも良い。さっきの母親が子の亡骸に縋ろうと俺にゃ関係ねぇっすもん」

「人は、誰かと繋がらずには生きては行けぬよ。そのような…………いや、すまぬ。偉そうなことを言った」

 

 別にぃ、と気にしてなさそうなヴァハ。一人と一柱はそのまま揃って本拠(ホーム)である「青の薬舗」に辿り着く。

 

「ナァーザ、戻ったぞ」

「戻りましたよダンチョ。これ、今日の薬草………魔石の換金は、何時来るか解らねぇんで待機で」

 

 普段なら(と言ってもまだ一週間程度だが)薬草などを渡した後ギルドに向かうのだが、今回はそのままドカリと椅子に腰を下ろした。

 言い方からして、誰かを待つようだ。誰だろうか、そう尋ねようとしたタイミングで丁度よく扉が開き備え付けの鈴がカランカランと音を立てる。

 

「うぃーっす、ミアハ………久し振りやな? お前んとこの赤毛の冒険者………お、おったおった」

「ロキ?」

 

 入ってきたのは目を細めた赤い髪の女性。露出度の多い服装だがその凹凸の少ない身体からは色気というものを感じさせないが、やはり顔立ちは非常に整っていた。彼女もまた神だ。

 団員の数、質、ともに上位に食い込む最大派閥の一人【ロキ・ファミリア】の主神ロキ。その後ろに控えているのは小人族(パルゥム)でありながら 第一級冒険者(レベル6)に到達し、団長という立ち位置まで手にした『勇者(ブレイバー)』フィン・ディムナ。後エルフィも居た。

 

「え? ロ、ロキ・ファミリア? ヴァハ、アンタ何したの」

 

 大手ファミリアの主神と団長が零細ファミリアの本拠に訪れるというあり得ない光景に思わずヴァハに振り返るナァーザ。ヴァハはそんな慌てるナァーザを見てニヤニヤと笑う。

 

「あー、ちゃうちゃう。やらかしたんはウチ等の方や」

「………え?」

 

 

 

 まずはフィンが謝罪した。ミノタウロスの群れを上層に逃してしまったこと。その後確認もせずに声が消えたからとホームに戻ってから居残り組に調査を任せたこと。その結果、ヴァハはミノタウロスに襲われ重症を負った。遠征帰りで疲れていたなど、言い訳にもならないとの事だ。

 

「気にすんなよ。俺ぁ楽しめたぜ」

「楽しめたって、死にかけてたのに」

「いいやぁ。あのまま行けゃ俺が勝ってた」

「そんな強がりを………」

 

 エルフィからすればミノタウロスに殺されかかった駆け出し冒険者の言葉。常識的に考えて、有り得ないことを言っているヴァハに呆れるがロキはジッとヴァハを見る。

 

「………嘘は、ついとらんな」

「ハァ……」

 

 ニタァ、と笑うヴァハ。神に嘘は通じない。つまりは事実だということ。己の主神の肯定に、フィン達は目を見開いた。

 

「………それは、彼の中でそうなっていたからではなく?」

「んー…………ないやろ。対面して解る。こいつは自惚れん。冷静に己の力量を把握した上で、己より強い奴に挑めるタイプや」

 

 数多の人間を観察してきたロキは、目の前の少年をそう称する。そんな神の目にさらされてもやはりヴァハは楽しそうに笑っていた。

 

 

 【ロキ・ファミリア】は大手派閥。敵も多い。故に早々頭を下げる訳にも行かない。これは眷属を守る立場としてミアハも同意した。

 とはいえ出来る限りはする。まずは【ディアンケヒト・ファミリア】の治療費。これはそもそも血液数パックでさしたる金にはならなかった。

 なので定期的にここに薬を買いに来るそうだ。大手ファミリアが時おり訪れる店。良い宣伝になる。

 その上で、少しの金。【ロキ・ファミリア】からしたら僅かでも【ミアハ・ファミリア】としては大助かり。

 

「それと、そうだね………良ければウチの団員達とチームを組まないかい? 駆け出しで辛勝とは言えミノタウロスを倒せた相手なら、彼等にも良い刺激になる」

「信じるのか?」

「君については何も知らない。だけど、ロキの目は信じてるからね」

「そぉかい………良いぜ。どのみちチーム組まなきゃ中層には行けねぇだろうしなぁ」

 

 契約は成立。お互いこれで確執は無しで仲良くやっていこう。

 

 

 

 

 

「お、ベルじゃねぇか」

「あ、兄さん!」

 

 その後暫くダンジョンに潜り金を稼ぐ毎日。ダンジョンから戻って街を歩いていると数日ぶりに弟と再会する。

 弟曰く兄さんがいると出会いがなさそうだし、と言われたのでちょうど良いと離れていたのだ。まあ弟が店に来た時などにナァーザやミアハを通してお互いのことは確認し合っていたが。

 

「あ、そうだ! 一緒にご飯食べに行かない!」

「んー? ああ、良いぜ。けど、良いのか? お互いの力でなるべく助け合わない方針で、飯をおごったり奢られたりはなしじゃねぇの?」

「あはは。今のところ、僕の方は生活は安定してるし………割り勘ってことで、良いでしょ?」

「だから良いって言ったろ? んで、その店は?」

「あ、うん。今朝知ってね、案内するよ!」




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ヴァハ君のヒロイン

  • フィルヴィス・シャリア
  • アスフィ・アル・アンドロメダ
  • アミッド・テアサナーレ
  • エルフィ・コレット
  • メイナちゃんやティオナを混ぜて全員
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