ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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道化英雄

「つー訳でベルが寝ぼけてアイズをアイズお姉ちゃんって呼んで、アイズがもう一度呼んでもらおうと迫ってた」

「そうか………あの子も、誰かを可愛がりたい年か」

 

 少し前まで可愛がられる側だったのにな、と微笑むリヴェリア。ここでババ臭いと言ったら確実に怒るのだろうな、まあヴァハは気にせず言って微妙な顔をさせるが。

 

「お前は、もう少し女性の扱い方を覚えたらどうだ?」

「あん? 女の扱い方ぐらい知ってるぞ? お前にはしないだけだ」

「……………それは私に女としての魅力がないと言いたいのか?」

「んっんー………むしろ、どうでもいい女こそ女として扱うなあ俺は」

「?」

「だってよぉ、ようするに気に入られようと己を偽って相手に見せるんだろお? じゃあ何かい? 好きな相手に本当の自分を見せないまま、墓に入るのか? そりゃ道理が合わねえ」

 

 ヴァハからすれば女を口説くなど朝飯前だ。ヘルメスとの旅路で、娼婦でない女と関係も持ったことはある。ヘルメスが女の扱いを教えてやるぜ、などと張り切っていたので情報収集には役立つかと学び、自身の容姿、性格、印象を理解した上で最適化した。

 だが基本的には使わない。本音を見せる必要もない、どうでもいい女相手にやるものだと認識している。若しくはからかう時。

 

「とは言え潔癖なエルフは面倒くさい。一度肌を重ねればそれだけで婚約だなんだと言うからなぁ」

「…………おいまて、お前エルフと寝たのか」

「おお」

「………………そ、そう………か。いや、その者達から求めたなら、私がとやかく言う資格はないが」

 

 ここ数日の付き合いでヴァハが花や団子より血肉(殺戮)を求める奴だと言うのは解った。多分本当に、彼本人は邪な気など一切ないのだろう。求めてきたから抱いた、たったそれだけしか認識していない。

 

「まあ俺の女関係なんてどーでも良いだろ。ベルとアイズの方だ。このままどんな仲に発展してくかねえ」

「ベートやレフィーヤ辺りが筆頭に騒ぎそうだな………」

「あぁ…………まぁたお姉さまぁ、ってか?」

「? 過去に、レフィーヤのような知り合いがいたのか?」

「覚えてるだけだ。知り合いでも、何でもねえよ」

 

 と、心底どうでも良さそうなヴァハ。覚えていると言うならそれなりに思い入れがあったのでは、とは思うがその態度からして、それも無さそうだ。

 

「あ………そういやティオナは今暇か?」

「ん? まあ、アイズがLv.6になったから、みな修行に精を出してはいるがあの子ならお前が呼べば来ると思うぞ」

「そいつぁ何より。んじゃ、俺が呼んでるって言っといてくんねえ?」

 

 

 

 

「『私は今より『英雄達の船』となろう。! だから、どうか! どうか私の後に続いてくれ、勇者達よ!』」

「おお、おお〜!?」

「かっこ、いい……」

 

 『アルゴノゥト』の演説を語るヴァハの言葉にティオナとメイナは目をキラキラさせる。ヴァハは、演じるのが上手い。まるでその場に居るかのように、その景色が、その言葉を発する人物が目に浮かぶような気がする。

 物語は進む。民衆を味方につけたアルゴノゥトは王の力が届かぬように王都を出て、王は王でアルゴノゥトを始末するために他の英雄候補達を使う。

 狼人の独白は格好良かった。

 ミノタウロスとの戦いで、吹き飛ばされた。

 王国最強の暗殺者は、何故だがティオナの心に響いた。

 そして、それでも、オルナの想いを聞き届け、道化は姫のもとに辿り着く。

 その英雄譚の終わりを綴るべく、姫を救い大団円を迎えるために獰猛なるミノタウロスと精霊の加護と友の魔剣を携えた英雄が最後の戦いを行う。

 

「『先程までは悲壮ぶっていたのがいけなかった! 姫を心配するあまり、私らしさを忘れていた! 愉快に、滑稽に笑おう! そして腹を抱えて笑われよう! さぁ、ミノタウロス、君も笑え! これが私達の最後の『喜劇』(たたかい)だ!』」

 

 その言葉に、心が無いはずの魔物は笑ったそうだ。

 道化(英雄)はさらには天の神々にまで叫ぶ。この戦いを見ろと。地下で行われる戦いを、大地に邪魔されていようと無理やり見ろと。

 精霊達の力を借り、極上の物語を綴るために。

 それこそがアルゴノゥトの英雄神話。今や恐怖の対象でもなんでもない、雄牛を一匹倒すだけの、それだけの物語。

 しかし悲しいかな。男はやはり、英雄になり得る器ではない。支配に逆らい、たった一人の道化を倒すために吠える雄牛に対し、視力を失い、負けてしまいそうな道化を、姫が助けようとする。姫が、だ。英雄に救われるべき存在さえ、彼を救おうとする。だけど、ああ、それはなんとも彼らしい。

 

「『すまないミノタウロス。やはり私は私らしい。こんな『喜劇』にしかならなかった。ここでお前を討つ! 私一人ではなく、姫と二人で! 本当に申し訳なく思う! だから───また会おう、我が敵よ』」

 

 道化は、言う。怪物相手に約束をする。

 

「『生まれ変わり、次にまた巡り会った時、今度は一対一で! 私達の決闘を! 約束だ、『好敵手』よ!』」

 

 そうして、アルゴノゥトの英雄譚は終わる。雄牛を倒しただけの、後の世に広まる英雄譚からすればあまり大した偉業ではないが、それでもそこから始まった。英雄達が歩みだす、英雄神話が。

 

「……………ティオナお姉ちゃん? 泣いてるの?」

「え? あれ………あれ?」

 

 と、メイナが指摘するとティオナは己の目から涙が流れているのに気付く。

 

「あれ、おかしいな…………なんだろ、なんで………」

「…………………」

 

 何故か止まらぬ涙を何度も拭うティオナにメイナは無表情ながらオロオロと心配そうに見つめる。そんな光景を見てヴァハは普通に帰ろうとして、メイナがどうにかしてと言うように腰に抱きついてきて見上げてくる。

 

「…………ティオナ」

「え? あ、ご、ごめん。すごく、いい話だったよ。ワクワクしたし、ドキドキしたけど………その、えっと………」

「………………」

 

 ヴァハはティオナの頬に触れ涙を拭ってやる。

 

「笑っていてくれ、()は…………()()に笑っていてほしい」

 

 普段のヴァハからは想像もできない優しい声色。その声に、ティオナの涙が止まる。そして、今度は顔が赤く染まっていく。

 

「…………泣き止んだかぁ?」

「な、なな………泣き止んら! だいじょうび!」

 

 Lv.5のステータスを存分に活かしギュバッ! と距離を取るティオナ。自分の顔が何故赤くなっているのか解らず困惑した顔で去っていった。

 

 

 

 

「やあヴァハ君。急にどうしたんだい?」

「今日はちょっと気分がわりいから、てめぇをサンドバッグにしにきた」

「理不尽だな!?」

「あ? そもそもてめぇが原因だろうが」




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ヴァハ君のヒロイン

  • フィルヴィス・シャリア
  • アスフィ・アル・アンドロメダ
  • アミッド・テアサナーレ
  • エルフィ・コレット
  • メイナちゃんやティオナを混ぜて全員
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