ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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ランクアップのお祝い

『Lv.2

力:A804

耐久:S981

器用:S902

敏捷:S955

魔力:A890

加護∶G 

 

《魔法》

【レッドカーペット】

・形成固定化魔法

・血液操作

・血液硬化

・魔法名詠唱不要

・詠唱式【血に狂え】

【  】

・名称無し

・血液発火

・詠唱式【血は炎】

 

《スキル》

 

血染め(ブラッド)

血潮吸収(ブラッドドレイン)

・血を啜り魔力、体力の回復。治癒。

・浴びた血により経験値補正。

・血を浴びステータスの一時アップ

・血の持ち主の強さ、血の量に応じて効果向上。

・吸血行為の際最適化の為快楽付与

【魔力放出・雷】

・魔力を雷に変えて打ち出す』

 

 

「…………ふむ」

 

 オリヴァス・アクトとの一戦もあり、やはりステータスの成長幅が大きい。アマゾネスの集団と争った時も大量にLv.3級の血をたっぷり浴びたし。

 

「ランクアップ………そろそろか」

「うん。おかしいから………」

 

 ヴァハの呟きにナァーザが呆れたように言う。2ヶ月も経たない内にLv.2とはどういう事だ。しかもアビリティの最低値がA。経験値に補正があるとしても尋常ではない。

 というか何時の間にか魔法名唱える必要なくなってるしもう片方は名称すらないしどうなってんのこいつ?

 普段から眠そうに半眼の瞳をさらに細めて己の同僚を見るナァーザ。

 

「ま、良いか。それよりベルのとこに行ってあげなよ。二つ名も決まって、改めてお祝いするんでしょ?」

 

 派閥内におけるお祝いはとっくにやった。ベルには、少し後ろめたい事があるナァーザは守銭奴にしては珍しくお祝い用の食費を多く持たせる。お兄ちゃんなんだから奢ってあげなよ、と見送り、ヴァハが置いていった羊皮紙を見てため息を吐くのだった。

 

 

 

 

「【狂剣(フィンディアス)】かあ………いいなあ、兄さんは格好良くて。僕なんて【未完の少年(リトル・ルーキー)】だよ………」

「無難で良かったじゃねえか………俺なんて狂人扱いされてるぜ?」

 

 豊穣の女主人の席の一つ。座るのはクラネル兄弟にベル、ベルと交流の深いシルにヴァハと早朝訓練を行うクロエ。冒険者としてアドバイスするなら彼女と判断されたのかリュー。

 マタタビ酒を狙っていたのかアーニャも交ざろうとしたがルノアに引きずられていった。

 

『おい、あの赤毛…………』

『【ミアハ・ファミリア】の【竜殺し】(ドラゴンスレイヤー)…』

『つってもLv.3の【ロキ・ファミリア】もいたんだろ? しかも女』

『もう一人の女もLv.3らしいぜ? 女の後ろに隠れながらいいとこ取りしたんだろ』

『はは。なんだそりゃ、恥ずかしくねえのかよ』

 

 などと陰でコソコソ言われるがヴァハは気にせず酒を煽る。嫉妬や羨望を抱くだけで、何もしてこない相手に何かを思う事など無い。

 

「………………」

 

 尤も、目の前の弟は聞こえてきた声に不満げだが。

 

「気にすることないにゃ少年。ヴァハは文句言うだけで何もしてこない奴等なんか、いちいち相手にするまでもなく強いにゃ」

 

 と、クロエがマタタビ酒を飲みながらケラケラ笑う。その言葉に何人かが反応するもクロエが翡翠色の瞳を細めて薄く笑うとビクリと震え腰を落とす。実力差を理解する程度には、身の程を弁えているらしい。

 忌々しそうに舌打ちして、また女に守られてやがるぜと精一杯罵倒を吐き捨てる。

 

「クロエの言うとおりだ。彼奴等が闇討ちしてくんなら、それはそれで有り難いしなあ。ほれ、ご褒美に焼き魚をやろう」

 

 焼き魚の尻尾を持ってクロエに差し出すとクロエもあーと口を開けかぶりつく。

 

「にゃふふ。おみゃーがランクアップ出来たのはみゃーのおかげでもあるニャ? 今日はたあっぷりご褒美をよこすにゃ〜」

 

 酔いで頬を赤く染めたクロエはゴロリと体をヴァハの膝に預ける。ヴァハが喉を撫でてやるとゴロゴロ気持ち良さそうに身をよじらせる。

 

「ほれよ、銀花夏梅(シルバイン)………お前が好きに使え」

 

 と、ダンジョンで取れる植物を渡すとクロエはにゃああ、と嬉しそうに鳴いた。

 そんな彼女は生粋のショタコンである。ヴァハも若いと言えば若いが長身で、鍛えられ引き締まった肉体をしておりクロエの好みとは掛け離れているとは言わずとも違っているのは確かなのに懐きっぷりが凄い。

 クロエとしては、己の正体を知りながらも普通に接してくれる相手など店の同僚だけだったから甘えが出てしまっているのだ。大好きだった人が死んだから、暗殺者ファミリアを抜けようとする程度には、クロエは甘えたがりだから。

 

「にゃ〜、まさかマタタビ酒だけじゃなくてこれまでくれるにゃんて〜。さてはおみゃー、みゃーに気があるにゃ? これを毎日くれるなら考えてやってもいいにゃ〜」

「ハハァ。絶対いやだねぇ」

 

 ケラケラ笑うヴァハにクロエはちえ、と舌打ちする。とはいえやはり銀花夏梅(シルバイン)を貰ったのは嬉しかったのかヴァハの膝にゴシゴシと後頭部を擦り付け匂いを付ける。

 

「それで、ランクアップしたという事はクラネルさ……………ベルさんは、中層に向かうのですか?」

 

 と、元冒険者であるリューが尋ねる。

 中層と上層は、もはや別物だ。ひとりでは処理しきれなくなる。故にリューはパーティーを推奨する。

 

「まあ、その点で言えば人数は問題なさそうですが」

「あ、俺は断るぜ」

「え?」

 

 ヴァハを見て三人一組(スリーマンセル)………冒険者が潜る基本的な人数に達せていると判断したリューだったが、ヴァハは断る。

 

「え、な、なんで!?」

「俺ソロで18まで潜れるからなあ……」

 

 それに、ベルは自分が居ないほうが成長できるだろうし。と、兄心も1割ぐらいある。

 

「つー訳でパーティーは他の奴を選びな」

「う、うん……頑張るよ」

 

 まあベルは一躍有名人だ。彼と組みたいと考える者はそこそこ居るだろう。ありえない速度のランクアップの秘密を求めて………。後は、ベルの周りには女が集まるしそれ目当ても来るかもしれない。

 

「はっはっ、パーティーの事でお困りかあっ、【リトル・ルーキー】!?」

 

 と、そこへ声がかけられる。どうやら一人の冒険者が仲間らしき二人を連れて此方に声をかけてきたようだ。

 額や頬に傷がある男を見て、才能もなくポーションも買えねえ金無しか無駄遣いする典型的な停滞冒険者かと興味を失う。ガタイだけはでかいが、それだけだ。卑怯な手でも使わなければランクアップしたてのベルにも勝てないだろう。

 

「話は聞かせてもらったぜ。仲間が欲しいんだってなぁ? なんなら、俺達のパーティーにてめえを入れてやろうか?」

「えっ!? ど、どういうことですか?」

「どうもこうも、善意だよ、善意。同業者が困っているんだ、広ぇ〜心を持って手を差し伸べてやってるんだよ。ひひっ、こんなナリじゃ似合わねえかぁ?」

 

 酒臭い息を吐きながら、話題のベルならパーティーに入れてやってもいいと上から目線で笑う。が、何か条件があるようだ。ベルはなんとなく嫌な予感がした。

 

「この嬢ちゃん達を貸してくれよ!? こんのえれぇー別嬪のエルフ様達をよ!」

 

 ベルはうわぁ、と言いたげな顔をした。

 

「俺もエルフに酌を受けてみてぇんだよ、なぁわかるだろ? お前さんがいくら払ったかは知らねえけどよぉ、仲間なら助け合いが基本だ! そうだろう!?」

「ぎゃははは! 金を払う? ベルが女を買えるかよ!? 金じゃなくて、精神的に無理だ! そもそもてめぇ等じゃねえんだ、女誘うのに金が必要な顔に見えるかぁ? 鏡持ってきててめぇの顔と見比べろよ!」

 

 ヴァハはゲラゲラと笑う。膝が揺れ落ちそうになったクロエがにゃにゃ!? と慌てて起き上がる。

 

「コイツ等がブ男なのは解るけど、みゃーが寝てるのに暴れるんじゃないニャ!」

 

 と、抗議するクロエ。ブ男と言われた男達はピクピクと頬を引つらせる。

 

「こ、このガキ! 俺はLv.2だぞ! それも、てめぇ等みてぇな駆け出しとはちげえんだ!」

「つまりい、駆け出しの俺等にあっという間に追い付かれたんだろお?」

 

 ニヤニヤと馬鹿にするように笑うヴァハ。ベルはオロオロしだす。何気に都市のLv.2全てに喧嘩売ってるようなものだ。

 

「はん、女の後ろに隠れながら、いいとこ取りだけしてる奴の台詞はちげえなあ? 俺なら恥ずかしくて自慢できねえぜ、なあ!?」

 

 同意を求めるように酒場中に広がる大声で叫ぶ男。ヴァハはふむ、とニヤニヤ笑みを浮かべる周りの客達を見る。そして、唐突にクロエを引き寄せ膝の上に乗せ後ろから腰に手を回した。

 

「あー、怖え怖え〜……………女の後ろに隠れるってのはこんな感じかあ? 確かにテメエ等じゃ、金払わねえと出来ねえもんなあ」

「にゃ、にゃあぁん……」

 

 耳の付け根あたりを撫でてやるとクロエが甘い声を出す。男の額に、ビキビキと青筋が浮かぶ。そして、拳を振り上げ殴りかかってきた。

 

「…………カカ」

 

 しかしその拳はヴァハに触れることなく手首を掴まれ止められる。

 

「先に手ぇ出したのは、てめぇだあ………【血に狂え】」

 

 血の爪を生み出し笑うヴァハ。仲間の男達が殴りかかってくるが、その動きは余りに遅い。彼等視点で、まるで消えたかのような速度で動くヴァハ。

 

「もう少し、顔を小さくしたらモテるかもなあ?」

 

 男達の後ろに移動したヴァハがべぇ、と舌を突き出すと男達の両頬の肉がずるりと捲れた。

 

「が、ごあ!?」

「うごあああ!?」

「───!?」

「ギャッハッハッ! まだ繋がってんなあ、失敗失敗。今度こそきちんと落としてやるよ」

 

 男たちの頬は全員歯茎がぎりぎり見えない程度に斬られ、体から剥がれず捲れているだけ。明らかにそう狙わなければ出来ないそれを失敗と嘯き血の爪を見せ付けるヴァハに、男達の顔から血の気が引く。それでも真っ赤だが。

 

「ひ、ひいいい!」

「ま、待て! おいてくなぁ!?」

「あ、あああ!!」

 

 恐怖に顔を引つらせながら逃げていく男達にポーション使えば治るぞぉ、と助言してやるヴァハは何時の間にか手に握られていた財布をミアに向かって投げる。

 

「きちんと迷惑料を置いてってくれる律儀な奴らだ、後を追わないでやってくれ。とはいえ多い金は一番迷惑をかけられた俺の酒代に換えてくれ」

「………あんま、うちの店でこういう事を起こしてほしくないんだけどね」

「絡んでくるのは向こうだ。女にモテねえからってモテるやつに当たったところで、結局もてねえのになあ」

「………次は殴る蹴る程度にしときな」

「そうだなあ………向こうが弱けりゃなあ」

 

 ほら、俺駆け出しだから、と強い奴には手加減できないと嘯くヴァハを睨みつけるミア。

 数秒睨み、はぁ、とため息を吐いた。

 

「仮にもうちの娘と仲良くしてんだ………やりすぎるようなら、埋めるかんね」

「おお〜、そりゃ怖い」

 

 ヴァハはやはりケラケラ笑った。

 

「まあああいう輩も多い。仲間にすんなら、一度俺の所に連れてきなぁ。お前も何気に人の悪意にゃ敏感なくせして、自分の身に向けられてると気づかねえからなあ」

「う、うん。ありがとう、兄さん」

 

 

 

 

 ベル達と別れ、帰路につくヴァハは不意に地面の下。地の奥のダンジョンを見据える。数日程前感じ取った気配。

 59階層とやらに配置されているらしい『あれ』が目覚めたのだろう。その後すぐに消えたことから、【ロキ・ファミリア】は勝ったか。

 

「予想外だが………多分黒幕からすりゃどっちでも良かったんだろうなあ」

 

 とはいえ、『あれ』と戦ったのなら【ゼウス・ファミリア】に追い付いたと言うこと。それだけで遠征自体は成功で、『あれ』との戦闘のあと余力も少ないだろうし上に上がって来てるだろう。

 

「クラネル……」

「あん?」

 

 不意に声をかけられ振り返るとフィルヴィスが居た。

 

「………二つ名が決まったようだな、おめでとう」

「あー。さんきゅ。んで、用件は?」

「時期的に、レフィーヤもそろそろ上がる頃だと思う。叶うことなら、無事を確認したいのだが………ディオニュソス様にその際はパーティーを組めと言われてな………いや、私は一人でもいいのだが…………」

 

 Lv.3のフィルヴィスだ。確かに少し潜る程度なら問題はないだろう。ディオニュソスなりの心配か? ほとんどボッチだもんなぁ、と憐れむような視線を向ける。

 

「とはいえ、私とパーティーを組むものなど居ないからな…………良ければ、その時は組んでくれないか?」

「…………ま、いいぜ。【ロキ・ファミリア】は恐らく18階層で一旦休憩するだろうからなあ、すぐに噂になるだろ。そん時に改めて声かけろ………」

「あ、ああ………ありがとう」

 

 と、顔を綻ばせるフィルヴィスに、ヴァハはそういや、と思い出したように呟く。

 

「俺の弟もパーティーメンバー探してんだ。何なら、組むかぁ?」

「…………あの時の少年か。やめておく………彼は、お前の弟とは思えぬ程に、眩しい。あれは、私などが触れてはいけない」

「そうかもなあ」

「…………ふふ。やはり、おまえと話すのは楽でいい。レフィーヤだったら、そんな事ありませんなどと反論してきたろうな」

「てか、何時の間にか名前で呼ぶようになったんだな」

「え、あ、ああ………」

 

 と、少し恥ずかしそうな頬を染め俯くフィルヴィス。恋する乙女かこいつは。

 

「俺も弟がいて紛らわしいしなあ、名前で呼んでくれや」

「……………む、無理だ!」

「じゃ、いいや」

「……へ?」

「無理なんだろお? なら、二つ名のほうで呼べばいいさ」

 

 そう言ってあっさり引き下がるヴァハは話は終わりだとばかりに歩き出す。フィルヴィスはその背中に手を伸ばし、しかし引っ込める。

 

「………潜る時は、よろしく頼む…………ヴ、ヴァハ

「おう、またなあ……」




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ヴァハ君のヒロイン

  • フィルヴィス・シャリア
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