ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
首の傷をポーションで癒やしたエルフィと別れ、ヴァハはとある天幕に来ていた。天幕に見張りはいない。聞かれたら困るのと、必要がそもそもないから。
何せこの天幕の中にいる人物達は【ロキ・ファミリア】のトップ3。
フィン、リヴェリア、ガレスの三人だ。ランクアップしたてのヴァハなど相手になるまいと、そう判断されたのだ。
「それで、59階層で見た『あれ』が何か教えてくれるんだね?」
「しかし前回は断ったと聞いておったが、どういった心境の変化じゃ?」
「リヴェリアからある程度の願いなら叶えて貰えるらしいからなあ」
ヴァハの言葉にリヴェリアを見る2人。リヴェリアは叶えられる範囲ならな、と肩をすくめる。
「とはいえ、具体的には彼女に何を求めるんだい? 仲間として、彼女の聞いておきたいんだけどね?」
「血」
「………血?」
「俺が
魔法を9つ使えたり、
とはいえ血を啜るという行為。普通の感性を持っていればまず忌避する。潔癖なエルフの、それも王族となれば尚更だろう。
「いいだろう。ただし、お前が知っている情報を全て話せ。私の血は高く付くぞ?」
「……………へえ」
ヴァハとしても渋られると思っていたのか、即答したリヴェリアに一瞬ほうけて、笑う。
「契約成立だな。んで、まずはお前等、あれをどの程度まで理解している?」
「………アイズは、あれを精霊と呼んでいた。そしてあれは、君も知っている『宝玉の胎児』に寄生されたモンスターだ。あれに寄生されると、モンスターは変質する。それが魔石を喰らい、進化した姿」
「そして、それを援護した者は更に深い階層にいる。あれ自体は、尖兵に過ぎない」
「だろうな…………お前等が見たそれは、精霊の一部で間違いねーよ。神の分身………絶対的存在の、切り離された一部。故に本来なら増えるなんざ不可能なんだが、ダンジョンの性質と見事に最悪な結び付きをしたわけだ」
ヴァハはそう言って笑う。
「どこの誰とも知らねえが、ダンジョンの奥深くでモンスターに喰われたんだろ。そのモンスターが『古代』の性質を持っていたのか、深い階層ではそういう機能があるのかは知らねえがな」
「……『古代』? そういう機能?」
ヴァハの言葉にリヴェリアが反応する。古代とは何のことだ? 機能と言っていたが、ダンジョンについて何か知っているのか?
「………ダンジョンが生み出した力ある『古代』のモンスター……それは神の権能が通じない。なにせ、神を殺したくて殺したくて仕方ないから作ったわけだからな。前例はねえが、恐らく
何せ神が己の意思で帰るにしろ、ルールを破り送還されるにしろそこには明確な『神の力』が必要となる。力ある『古代』のモンスターの中に取り込まれれば、天界との繋がりが絶たれる。
「それが、どう関係する?」
「神は天界に住まう。で、死んだ人間も天界に還る………神の世界にだ。その流れに『神の力』が関わっていないはずがねえ………」
「っ………つまり、君はこう言いたいんだね?
「言うね。だから死した精霊もその魂を天に返すこと無くダンジョンの転生に組み込まれ、モンスターとして生まれたか己を喰ったモンスターと融合したんだろ」
その言葉に、3人は言葉を失う。何せダンジョンの奥に潜れば、自分もそうなるかも知れないと言われたのだから。いや、或いは自分が殺してきたモンスターの中には、既に混じっているのかもしれない。
「まあモンスターの融合の方になるよう祈っとけよ。何せダンジョンで死んだから、なら何度でも蘇るが、モンスターと融合してるならそのモンスターごと殺せば終わり。その魂がどうなるかはしらねえがな」
「………因みに、極彩色のモンスターや
「ああ、ありゃ精霊の加護を与えられた存在だな」
「精霊の加護?」
「物語に出てくるだろ? 炎操ったり氷操ったり………その手の武器になったりする。そこにダンジョンの性質が加わり魔石という解りやすい加護の形が生まれたわけだ」
通常、人を守るために送られた精霊は英雄に加護を与える。ならば、反転した『汚れた精霊』は? 当然モンスターに与える。あるいは、その加護を受けた人間をモンスターに変質させる。
「恐らくは27階層の悪夢の生き残りに
「何故、27階層の悪夢だと思うんだい?」
「オリヴァス・アクトが加護持ちになってたからなあ。彼奴、悪夢の際死んだことになってたんだろ?」
『汚れた精霊』が目覚めたのはここ数年の間だろうから、己の手足となるものを探すのは当然その数年の間の筈だ。目覚めた理由は、だいたい予想がつく。
「というわけでこれいるか?」
と、ヴァハは赤い液体が入った小瓶を取り出す。
「とある精霊の血を混ぜた特別薬だ。『汚れた精霊』の支配下にあるモンスターに取り込ませれば支配系統を混線させる事ができるぜ。お値段一瓶70万ヴァリス」
「……………お金に余裕が出来たらね」
「本当に良いのか? 私の血を、飲みたかったのだろう?」
「またの機会にするさ。お前、なかなか面白い女だからなあ………」
ヴァハを来客用の天幕まで送るリヴェリアは、先程ヴァハが血は今度で良いと言った真意を量りかねていた。そもそもリヴェリアの血を飲みたいからこその情報提示だったはず。
「気が引けるってんならそうだな…………」
と、ヴァハは周囲を不意に見回す。何を思ったのか、ニィと笑う。
「地上に戻ったらデートしてくれや。この街に来て2ヶ月も経ってねえからなあ、ダンジョン潜ってばっかだし、少しは地形を把握しておきてえんだ」
「ああ、それぐらいなら良いだろう」
「「「ちょっと待ったああああ!!!」」」
と、【ロキ・ファミリア】のエルフ達が叫ぶ。ヴァハはケラケラ笑いながら、対処は任せたとリヴェリアに丸投げした。
リヴェリアは面倒な、とこめかみを抑えるのだった。
リヴェリアとエルフで遊んだヴァハは見知った顔を見つけた。何やら褐色の女に引っ張られている。一瞬アマゾネスかと思ったがどうやらハーフドワーフのようだ。
「よおクロッゾ。そのハーフドワーフは彼女か?」
「げ、あんたは…………家名で呼ばないでくれ」
「そう言われてもなあ。俺にとっちゃこっちのが馴染み深い呼び方だからなあ」
家名で呼ばれて嫌そうな顔をするヴェルフ・クロッゾの反応にケラケラ笑うヴァハ。ヴェルフを連れていた褐色の女はふむ、とヴァハを見る。
「…………お主が二つ名に剣の名を与えられた男か。して、その5本の鞘は何だ? 何故剣がない」
「砕けて消えた」
「………魔剣使いかよ………いでで!?」
ふん、と鼻を鳴らすヴェルフを女が締め上げる。
「ではお主等が来る前に聞こえた音は魔剣か? 一度しか聞こえなかったが、
「あー。魔石ごと消し飛んだ………」
「ほう! それは、その魔剣は全て同じ威力を持つのか? であるなら、背中のそれか腰のそれが残った魔剣という事になるのであろうか?」
「デカブツふっ飛ばしたのはこっちだなあ」
そう言ってヴァハは腰に挿していた剣を鞘ごとを投げ渡す。鍛冶師として
「……………む?」
「どうした?」
「………いや、この剣…………魔剣、ではあるのだろうが………剣としての出来がいまいちでな」
ヴェルフが訝しんできたのでほれ、と見せてやる。ヴェルフも確かに、と呟いた。
魔剣を作るには『鍛冶』のアビリティが必須で、威力が高い魔剣を作りたいなら『鍛冶』のランクも高いはずだ。ならばそれだけ鉄を打ったという事なのにこの魔剣は剣としての出来がそれこそ駆け出しの中でもそれなり、レベルだ。
「そのほうが安いからなあ……俺はそれを魔剣にするスキルがあんだよ………まあ、結果として数回で砕けちまうがなあ」
「ほう? では
「うちは零細ファミリアだから知らん。てか、その天幕になにか用があったんじゃねえの?」
ヴァハの言葉にそうであったな、とヴェルフを引っ張る女。面白そうだからついていく。
「………何で連れてこられたんだ俺は」
「俺が予想するに59階層で見た奴がアイズの事を『アリア』と呼んだからだと思うぞ? 成り立ちは違えけどお前も精霊に連なる者だからな」
「っ!? な、なぜ貴方が59階層の事を知っているのですか!?」
ヴァハの言葉に一人のエルフが叫ぶ。そのエルフだけでなく、天幕の中にいる者達、ヴェルフとティオナを除いた全員がヴァハを見ていた。
「お前等の団長に気をつけるように忠告してやったのは俺だぜえ? 何で知ってるかってのは、気配を感じていたからなあ。それがどういう状態かはお前等の団長に聞いた」
「団長が? 口外しないように、命令を出したのに?」
「気になんなら聞いてこいよ……」
ヴァハの言葉に、すぐに確かめられる事なら嘘はないだろうと判断して一同は落ち着く。
「それで、その方が精霊に連なる者とはどういう事ですか?」
感想お待ちしております
ヴァハ君のヒロイン
-
フィルヴィス・シャリア
-
アスフィ・アル・アンドロメダ
-
アミッド・テアサナーレ
-
エルフィ・コレット
-
メイナちゃんやティオナを混ぜて全員