ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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精霊伝承

 エルフの問にヴェルフは応えたくないとでも言うように顔をしかめた。

 代わりに、ハーフドワーフの女が応えた。

 

「こやつの名は、ヴェルフ・クロッゾ」

「………クロッゾ?」

「ああ、ヴァハの話にも出てきた、精霊助けて魔剣作れるようになった鍛冶師だ!」

 

 レフィーヤが首を傾げティオナが元気に叫ぶ。ヴァハが覚えてたか、と言うと覚えてたよ〜、と近寄ってきたので頭を撫でてやる。

 

「それは、本当なのですか!?」

 

 直後であった。

 レフィーヤ達が肩をはねさせるほどの怒声が響き渡る。

 

「クロッゾの一族……同胞の里を焼いた元凶! どれだけのエルフの氏族が帰る森を失ったことか!!」

「ア、アリシアさん……」

 

 叫んだのはエルフだ。どうやらアリシアと言うらしい。同族意識が高いエルフの事だ。数々の同胞をその里ごと飲み込んだ魔剣を生み出した一族を前に怒りが抑えられるのだろう。一方のヴェルフは、眉をひそめるだけ。一触即発の空気に………ヴァハが肩を震わせていた。

 

「ぷ、くく…………くふっ!」

「っ! 何がおかしいと言うのですか!?」

「何がおかしい? そうだなあ、まずはその髪型と年齢のくせに妙に大人ぶろうとしている態度だろ? あと才能はそこのレフィーヤより無いくせにレフィーヤの姉っぽくあろうとしてるところとか、弱っちいくせに年下ってだけでティオナ達もしっかり導かなきゃとか思ってるところだなあ」

「…………………は?」

 

 全く関係ない事ばかりを言われ、しかもその全てが悪口というヴァハの言葉に当然呆けるアリシア。が……

 

「まあ今回に関しちゃその態度が面白くておかしくて仕方ねえ。お菓子食べるかぁ?」

「いりません!」

「わーい、食べる〜!」

 

 ティオナが釣れた。単純な実妹を見てティオネが呆れる。

 

「おかしいとはどういう事ですか、彼は、我々の同胞の故郷を幾つも滅ぼしたクロッゾの………」

「実は俺の御先祖様、まだ人類が一致団結できてない時にエルフの森に迷い込んで夫殺されたらしいんだよなあ。だからお前等ぶち殺していーい?」

「は…? ────っ!?」

 

 ゾワリと肌を紙ヤスリで撫でられたようにざらついた空気が場を支配する。ヴァハの殺気だ。反射的に、前衛のティオネ、ティオナが拳を振るいアキが後衛を守るように移動しハーフドワーフの女が手刀を繰り出す。

 

「そうそう、理不尽だよなあ?」

 

 が、雷光が輝き視界を奪われた一瞬でヴァハは整理された荷物の上に腰掛けていた。

 

「………なんのつもりよ」

「そこのエルフの真似してるつもりだよ」

「っ! それとこれとは、彼はクロッゾの血筋なのですよ!!」

「だからなんだよ。てめー等エルフは同族を大事にすんだろ? 俺はしねーけどな」

 

 ケラケラ笑うヴァハをアリシアが睨みつけるが、彼女程度がヴァハを震え上がらせるなど出来る筈もない。

 

「魔剣なんざ所詮ただの武器だろうが。お前は包丁でエルフが刺されりゃ包丁職人をぶち殺すのか?」

「っ! それは………ですが、彼の祖先が魔剣を造らなければ………!」

「鍛冶師が剣を打って何が悪い」

「うむ。その言葉には手前(てまえ)も同意する。そもそも鉄を打ち武器を造るのが我等が本懐。それがどう使われるかなど、知らん………もちろん、大物を狩ったとも聞けば誇らしくはあるがな」

「第一、お前等エルフは口だけだしなあ」

「なんですって!?」

「ラキアが健在なのがその証拠だろ? 憎けりゃ滅ぼせ。お前等の故郷がそうされたように、奴等の住まう場所を魔法で焼払え………それもしねぇで、いざ対面すりゃ貴方が憎いんですう、なんざ笑い話にしかなりゃしねえ」

「─────っ!」

 

 ラキアは神の恩恵を得た国家系ファミリア。だが、オラリオのエルフ達が総出で攻め落とせば簡単に陥落出来る。それをしないくせにいざ目の前にクロッゾが現れたら許せない存在であるなど都合が良いにもほどがある。

 その言葉に言い返せないアリシア。場の空気が重い物になる。

 

「え、えっと………それで、この人が精霊に連なる者っていうのは?」

「さっきティオナが言ってたろ? 精霊助けて瀕死になって、その血を与えられたんだよ。精霊の名は『ウルス』………炎を司る精霊。以来クロッゾの扱う炎には魔力が宿り、その剣を規格外の魔剣へと変えた」

「「「そうだったのか」」」

「…………なんでてめえが知らねえんだよ」

 

 ハーフドワーフの女、ヴェルフ、ティオナがへーと感心する中ヴァハはヴェルフに呆れたような視線を送った。

 

「う、うるせえな………俺はこの力が嫌いなんだ。仕方ねえだろ」

「その結果がこれだがなあ。せめて魔剣の一本でもありゃベルだけを戦わせるなんてことにならなかったのに」

「……………っ!」

「持って生まれた折角の才能を使わずに、全力も出さず本気でやって、それで成果が伴うかよ」

「うむうむ。言ってやれ言ってやれ…………」

「……………ところでこの胸も背も態度も声もデケェハーフドワーフは誰だ? 鍛冶師みてえだが、お前の先輩?」

 

 と、漸くヴァハがハーフドワーフに付いて尋ねた。ハーフドワーフはむ? と首を傾げた。

 

「ほう、手前(てまえ)の事は知らぬのにハーフドワーフや鍛冶師である事は見抜けるのか」

「土と鉄と火の匂いがするしなあ………種族に関しちゃ、俺はちと特別でな」

手前(てまえ)は椿・コルブランド……【ヘファイストス・ファミリア】の団長だ」

「あっそ…………ん?」

 

 正体がわかった以上、どうでも良いかと興味をなくすヴァハ。と、ティオナがヴァハの服の裾を引っ張ってきた。

 

「ヴァハも、おっきいおっぱいあったほうが良いの?」

「…………でけえ胸は、まあ『魔女の蜘蛛』が使いやすそうだな、ぐらいしか」

「魔女の蜘蛛?」

 

 拷問道具である。あいにくその知識を持つ者はこの場に居なかったので全員首を傾げるのみだ。

 

「それより、俺が呼ばれた理由はなんだよ? 精霊に関しちゃ俺は何も言えねえぞ」

「初代は精霊の炎を使い、精霊の居場所すら探知できたのになあ」

「うるせえ。俺は俺だ……てか、言い伝えも何も残ってねえ初代の事をなんであんたが知ってんだ」

「知ってるからだ」

 

 ケラケラ笑うヴァハにヴェルフは弟と全然性格が似てないのか、と頭をかいた。寧ろ似なくて良かった。

 

「だったら精霊についてあんたが話してやれよ」

「面倒くせえなあ………」

「そう言わず頼む。手前(てまえ)が剣でも打ってやろうか?」

「……………ハーフのLv.5か…………剣よりむしろ…………いや、良いか。話してやるよ、対価は不壊属性(デュランダル)…………で、何が聞きたい?」

 

 ヴァハの言葉に一同顔を見合わせる。そして、代表として口を開いたのはティオナだった。

 

「精霊『アリア』って、誰かに血を分け与えたりした?」

「したぞ」

「本当!?」

「てか、『アリア』が負けたのはそれが理由だと俺は思ってるがな。神に最も近い種族が、神のルールに背いたんだ。下界は神の予想を超えるというが、それがいい結果だけもたらすとは限らねえしなあ」

 

 ケラケラ笑うヴァハ。この場にアイズは居ない。居たとしても、きっと同じことを平気で言うのがヴァハ・クラネルという人間だが。

 

「普通の生き物は肉体を持って、新しい肉体を生み出してそこに魂を入れる。だが精霊の肉体は普通じゃねえ。不変の神から切り離された不変の一部。これを100だとすると『ウルス』がクロッゾに10か20ぐらい分け与えた…………他にも己自身を武器にして0から100を好きに使わせるのが精霊の武器だな。この場合精霊の強さによっては使用者はリバウンドを喰らうが………普通、大精霊がやって良い事じゃねーんだよなあ」

 

 と、何かを思い出すように虚空を見つめるヴァハ。ティオナはヴァハが語る『アルゴノゥト』を知っていたので一人納得した。

 

「えっと、それがルール違反なんですか?」

「いや、『アリア』はガキ作った。『アルバート』とな………自分の体を切り離して、『アルバート』の子種と融合させた。狙ったかどうか知らんが奇跡といえば奇跡なんだろうな………力をどれほど失う事になったか知らんが」

 

 少なくとも『ウルス』の比であるまい。

 

「アルバートに子供いたんだあ………」

「これはベルも知らねえ、俺と爺とほんの数人しか知らねえ事実だ。教えてやる俺ってば優しいなあ、剣は気合入れて作れよなあ」

「弟くんも知らないの?」

「ガキがいることは知ってるが相手は知らねえだろうよ。あんな性格だし、相手が誰とかとも考えてねだろうな」

「うーん、でも詳しいね。もしかして、迷宮神聖譚(ダンジョン・オラトリア)の原典!?」

「原典というか……」

 

 原作者というか、その時代をまさにその目で見ていた観測者というか………。

 

「ところでアルバートの仲間の女の人って誰がいたっけ? 弟君も、そのうちの誰かの子供とは思ってるかもよ?」

「ほんの少し前までガキはキャベツ畑から生まれると信じてた彼奴がぁ? ないない。でもそうだな、その可能性ならアマゾネスの女帝イヴェルダか、ハイエルフの王女セルディア───」

「──何を言っているのですか、貴方はぁ!? セルディア様はエルフの間で語り継がれる穢を知らない永遠の聖女! 使命に駆られ里を出て、世界の危機を救った我々の誇りです!! 異種族との間に子をもうけただなんて考えるだけでも不敬です!」

「高貴な方々はセルディア様の妹リシャーナ様の血筋なんです! あのリヴェリア様だってそうなんですよ!?」

 

 歴史に名を残す王族(ハイエルフ)の名が上がった途端、エルフ達が叫ぶ。ヴァハは、彼女達を指差しながら腹を抱えて笑い出す。

 

「な、何がおかしいんですか!?」

「エルフはあいも変わらず傲慢不遜だなあ。異種族だらけの派閥に属し、よくエルフをこそ至高の種族だなどと曰える」

「そ、そんなこと言っておりません!」

「ならなんで、異種族と子をもうけるのが叫ばれなきゃならねえ程の不敬になるう? 異種族も対等なら誰と子を残そうが関係ねえのに。答え、エルフがいっちゃん優れてると思ってるからあ」

 

 ケラケラと笑うヴァハに、エルフ達は反論できなかった。言われてみれば其の通りで、エルフの王族はエルフと結ばれるべきだと言う考えが彼女達の中にある。

 

「ましてや処女である事を穢を知らないときた。交尾して穢れんなら一人自分を慰め続けて緩やかに絶滅すりゃ良いのによ」

「な、な、ななななななな!? し、失礼です、失礼すぎますわ貴方!」

「ああ? リシャーナを穢れてるとかほざくエルフが何を吠えてやがる」

「な!? ち、違───っ! わたくしは、そのようなつもりで言ったわけでは…………!」

「ん〜? 雄を知るのが穢なんだろお? ならガキこさらえたリシャーナは当然穢れたわけになるよなあ?」

「─────っ!!」

「その辺にしておけ………」

 

 と、その時凛とした声が響き渡る。

 

「リヴェリア様! なんなんですか、この下品で失礼な男は!」

「…………あまり、うちの子をいじめないでくれ」

「………あー。ほら、あれだ………よく言うじゃん? 好きな子ほど虐めたくなるって。愛情表現だよ愛情表現…………こう言うと学校でいじめが黙認されちまう忌まわしき魔法の言葉だって爺が言ってた」

「ここは学校ではないので黙認しない」

「そうか」

 

 じゃ、帰る。と立ち上がるヴァハ。去り際にアリシアへと振り返り、アリシアがむっと、警戒する。

 

「また遊ぼうなあ」

「………私と、ではなく………私()?」

「それ以外にどういう意味が?」

「お断りですわ!」

 

 

 

「に、兄さんどうしよう!? 明日、アイズさんとリヴィラの街に行くことになっちゃった!?」

「そうか。リヴィラの宿は壁が薄い。貸し切れるように金を出してやろう」

 

 

 

 

「おーいリヴェリア〜、地上での予行練習だ。リヴィラの街でデートしようぜぇ。2人っきりで」

「リヴィラの? まあ、良いだろう。わか………」

「2人っきりなど許すはずがないでしょう!」

「そうですそうです! 私達もついていきますからね! …………あれ? 何か忘れているような?」

「リヴェリア様とデートだとお!? 許せん、身の程を知れヒューマン! リヴェリア様、私達も是非!」

「……………お前達……」

「良いって良いって。狙い通りだし………とはいえ数が多いなあ。フィルヴィスはリヴェリアがいっから来ねえだろうし、昨日の二人、来いよ」

 

 その後アイズがベルとリヴィラの街に行ったことを思い出したレフィーヤは落ち込むのだった。




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この作品における精霊の力の譲渡設定

クロッゾ『ウルス』10〜20%

ヴェルフ『ウルス』8~15%

アイズ『アリア』???%

ヴァハ『ミノス』100%

ヴァハ君のヒロイン

  • フィルヴィス・シャリア
  • アスフィ・アル・アンドロメダ
  • アミッド・テアサナーレ
  • エルフィ・コレット
  • メイナちゃんやティオナを混ぜて全員
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