ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
『
「ちぃ!」
「きゃっ!?」
アミッドを抱え走り出すヴァハ。ダンジョンの地面に根を張る剛毛だ。Lv.2の人間達など簡単に貫くだろう事は地面を破壊しながら進む毛の触手を見て想像に難くない。
恐らくは強制的な進化。フィン達が相手した個体に比べ、強さは劣るだろう。それでも、確実に深層の魔物達よりは、余程強いだろうが。
「よしアミッド、ここに隠れてなあ。それと、俺を馴染ませた短剣に石………使うタイミングは任せた」
岩の陰に避難したヴァハは、アミッドを下ろすとさっさと『
「…………どうせ止まらないでしょうから、1つだけ尋ねます。あれと戦えるのなら、死んでも良いと考えていますか?」
「………死んでもいいとは思っちゃいるが、考えてはねえなあ。お前が俺を死なせてくれないらしいからなあ」
「当然です」
アミッドの即答にくくっ、と喉を鳴らしたヴァハは岩の陰から飛び出す。
『アハ、ハハハ! ミノス、ミノス! 遊ビマショウ!?』
無数の白い触手が襲いかかってくる。ヴァハは血の杭を無数に生み出す。
「【血は炎】」
触手に打ち込んだ短剣が着弾と同時に燃え上がる。だが、その炎の勢いは直に衰える。
『キャハッ! ゴチソウサマ!』
「────っ!?」
楽しそうに笑いながら、触手を加速させる。オリヴァスの
とはいえ、オリヴァスの時の様に進化した様子はない。あくまでも吸収し、一時的に身体能力を増加させているだけ。取り込み進化するのではなく、取り込み力に変える。溜めているのならば当然限界はあるはず。
『【火ヨ来タレ】───』
「まあ、そうくるよなあ!」
ため込める魔力に限界があるなら使うに限る。なにせ相手は精霊。この世界において最強の
「シャラァ!」
だが、ヴァハとて最速の精霊である雷精霊の力を持つ者。詠唱を唱えるために魔力を練った一瞬の隙を突き、本体を狙う。
『──ッ! 【燃エ広ガル炎燃エ盛ル世界燃エ尽キル命】』
バジジィ! と弾けた紫電が『
肩を焼かれ、痛みに顔を歪めるも
『【煉獄二焼カレシ魂ヨ叫ベソノ
「───ッ!! アミッド、俺を全力で癒せ!」
触れれば並の冒険者など肉塊に変える腕を振るいヴァハの攻撃に応戦しながら詠唱を唱え続けた『
彼女とヴァハなら当然同じ条件だなどと言えない。詠唱の完成が近付くと同時に無数の触手が勢いを増し、距離を取らざるを得なくなった。
魔法が放たれる前に、アミッドの隠れる岩の前に移動する。回復役であるアミッドなくして、ヴァハの勝利はありえないからだ。
『【フレイムランス】』
ダンジョンの通路を覆い尽くす炎の津波が放たれる。
「っ──あああああああああ!!」
両腕に雷を宿し、放つ。炎の本流と雷の暴乱がぶつかり合い、互いに互いを焼き滅ぼそうとのた打つ。
押し勝ったのは、炎。ヴァハの纏う雷を焼き、紅蓮の光がヴァハに触れる。岩を溶かすほどの炎が皮膚を焼き肉を焼き、骨を剥き出しにする。
「【ディア・フラーテル!】」
アミッドが魔法を発動する。世界最強の魔道士すら敵わぬと称賛する規格外の治癒魔法がヴァハの傷を癒やす。炎はなおもヴァハの肉体を破壊しようとするも、回復の方が僅かに上を行く。
「────っ!!」
問題は、術より先に本人達に限界が来る事だ。ヴァハの身体がとうとう吹き飛ばされる。
火風が収まると、腕が完全に焼滅したヴァハと余波だけで傷だらけになったアミッドが転がっていた。辺りには、まだ火が燻る。
「───っ! くぅ………」
しかし、アミッドは立ち上がった。傷は、まだ浅い。ヴァハから受け取った袋から取り出した小石を、壁に向かって投げつける。
雷の爆発が壁を崩し、『
「ヴァハ、無事………では、ありませんね。私の……血は、飲めそうですか?」
「………………」
フラフラと、ふらつきながらもヴァハの元にたどり着いたアミッドは唇も焼けているヴァハの顔に、僅かに切った腕を近づけるが無反応。口の中に血を垂らすも反応がない。
「……………」
アミッドはヴァハを背負うと再び歩き出す。
「死なせません…………絶対に」
ヴァハだけなら、逃げられる可能性はあった。全方位では無く、前方のみの魔法。ヴァハならあの距離でなら、『
戦い続けるつもりだったのだろう。だからアミッドをかばった。それだけ………それだけだが、だからこそアミッドはヴァハを救う。
ヴァハの行動は即ちアミッドさえ無事なら自分は戦い続けられると、死なないと、アミッドを信じてくれたというとなのだから。
『アハ……』
「───!」
瓦礫の壁が、吹き飛ぶ。砂煙の向こうで笑う少女の声。次の瞬間、アミッドの足を白い毛が貫いた。
「〜〜っ!?」
皮膚を裂き肉を千切り骨を砕き、貫通した白毛は地面に刺さりアミッドの体を地面に固定する。
『キャハハハハ!』
楽しそうに笑う耳障りな笑い声。
『ウフフ。モウ、オ終イ…………アア、『ミノス』……直ニ『アリア』モ連レテ来ルワ。ソシテ、3人デ他ノ皆モ探シマショウ?』
「あぐっ!?」
ズルリと白毛の束が抜かれ、代わりにヴァハへと伸びていく。振り返れば蕩けるような笑みを浮かべる少女の姿。伸ばされた白毛が向かうはヴァハ。
アミッドは、それを雷を纏う短剣で切り裂く。
「………彼は、『ミノス』ではありません…………」
『……………』
己の邪魔をしたアミッドに、『
「────かぁ!!」
白毛の束が鞭のようにうねりアミッドを吹き飛ばす。地面を何度も転がったアミッドに一瞥もくれず、再びヴァハへと白毛を伸ばすが、今度は雷が本体に向かって降り注ぐ。
口から血を流すアミッドが短剣を向けていた。
『遊ンデホシイノ?』
その決死の覚悟を、児戯と断じ笑う。次の瞬間無数の白毛の束が、触手を持つモンスターが複数現れたと錯覚する程の量出現し、振り下ろされる。
痛い。
痛い。
いたい。
痛みを知っている。苦しみを知っている。それが恐ろしいものであることも。だから、大切な誰かがそれに晒される事が、辛くてたまらない。
だからアミッドは、全てを癒やす力を欲した。その心が本物である証拠は、彼女に発現した魔法により証明される。
アミッド・テアサナーレは、救えぬ事を認めない。その手に届く範囲だけでも、必ず救うと心に誓う。
だから、骨が折れ、内臓が傷ついてもなおたどり着いて見せた。
「………………っ! ぐ、ごほ…………」
詠唱を唱える力は残っていない。だが、幸いな事に口から血が溢れる。アミッドは己の唇をヴァハの唇に押し付け、血を流し込む。溢れぬようにしっかり口を塞がれ、血液が喉の奥に消えていく。
『? 何ヲ、シテルノ?』
その光景を不思議そうに見つめる『
階層が揺れ、土煙が舞った。
『ア、『ミノス』! 潰レチャッタ?』
その玩具が『ミノス』に覆い被さっていたのを思い出し慌てて砂煙を払う。だが、そこには陥没する地面があるだけ。後は、僅かな血痕。
『………?』
「懐かしい夢を見た」
首を傾げる『
「俺のもんじゃねえ、俺の記憶。山吹色の半端者の妹に、常に必死な狼人、フケ顔のドワーフ、調子のいいエルフ…………走馬灯って奴だろうなあ。俺の記憶じゃねーけど………まあ、けど、確かに俺の記憶も思い出した。ミノスの野郎が出てきたなあ、記憶の中でまでうるせえ奴だ」
『『ミノス』………ソコニイタノ』
「ミノスじゃねえっての………」
呆れたように頭をかくのは、ヴァハ。腕に抱えていたアミッドを下ろし、アミッドの荷物から薬を探す。殆ど【ロキ・ファミリア】に渡したためこの傷では、応急処置にしかならない程度の効果の低い薬だが気休めにはなるだろとアミッドの体にかける。
「俺はヴァハ・クラネル。大精霊ミノスは、俺が殺した。英雄に与えられる力も、恩人に与えられるべき血も、強大な魔力を生み出す心臓も、殺して奪った。俺が食った………」
テメェも喰い殺してやろうか? ヴァハは、そう言って目を細め三日月の笑みを浮かべた。
感想お待ちしております
ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員