ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
18階層はモンスターの生まれない
「ふにゃあ………」
丁度見張りをしていたエルフィはあくびを一つ。後衛ではあるがこの階層なら1匹2匹程度のモンスター相手に出来る。
必要な事とはわかっているが、眠いものは眠い。と──茂みがガサガサ揺れる。
「────!」
モンスターかもしれないが迷い込んだ冒険者の可能性もある。警戒しながら伺っていると、見えたのは人影だった。
「………コレットさん」
「え、アミッドさん………? って、え!? その傷……………ヴァハ!?」
現れたのは来客用の天幕で休んでいた筈のアミッドだった。しかも、服もボロボロ、肌や髪は血や泥でベッタリと汚れている。
彼女が背負っているヴァハなど服の殆どがなくなっており、意識がないようだ。
「ど、どど! どうし、何が!?」
「騒ぎたい気持ちは分かりますが、すいません………地上に戻ってから…………」
それだけ言い残すとアミッドもバタリと倒れた。
「ア、アミッドさ〜〜ん!?」
エルフィの悲鳴に、直ぐに他の団員が飛んできた。
ベルも飛んできて兄の心配をしたが、その日は二人とも目を覚まさなかった。せめて何があったか推測しようと幹部達が集まり、話し合う。【ロキ・ファミリア】の上位陣やヘルメス、フィルヴィスも居る。
「おそらくは
と、リヴェリア。
アミッドが物静かな印象に対して激情家なのは知っていた。主神に内緒で治療に来るぐらいだし、事態の収拾にも向かうつもりだったのだろう。てっきり、こちらに来るかと………。
「多分、気を使ってくれたんだろうね」
「それは解る。解るからこそ、少しショックなんだ。多少疲れた程度で、我々が協力しないはずなどないのに」
フィンの言葉にはぁ、とため息を吐くリヴェリア。フィンもそうだね、と苦笑する。
「けど、ヴァハ何にあんなにやられたんだろ?」
「? 下層のモンスターじゃないんですか?」
ティオナがうーん、と唸っているとラウルが首を傾げる。正直Lv.2がたった二人で下層に向かい、生きて帰ってきただけでも十分すごい事なのだが。
「ヴァハは26階層程度なららくしょーだよ!」
「それは………え、マジっすか?」
ラウルは恋は盲目という言葉が脳裏によぎるも、反論する者が周りにいない事に気づく。
「ああ、いや………ティオナを疑うわけではないけど、僕も彼の実力は知らないからね。その上で、
何せアミッドが居たわけだしね、と付け足す。
他者の命を気遣う彼女が、己だけならともかく同行者がいる中無茶をするとは思えない。予期せぬ何かが起きたと考えるのが妥当だろう。と、何やら考え込んでいるアイズにふと気づく。
「どうしたんだい、アイズ………?」
「あ、えっと…………その、ヴァハから、精霊の力を感じる」
「精霊? ああ、そういえば
アイズを『アリア』と呼び狙う以上、それもまた精霊の名なのだろうと予想はできるが、ならば普通のことでは?
「前までは、雷を使う時とかに少し感じてた。けど、気絶している今も、少し離れていても分かるぐらいには、精霊の気配がする。力が、強まってる?」
アイズ自身、ヴァハの体に起きている変化を上手く理解できずにウンウン唸る。と、
「あ、あの………アミッドさんが目を覚ましました………」
「………………」
「フィルヴィスさん、ヴァハさんのお見舞いはいいんですか?」
「っ!?」
アミッドから今回の出来事、仮面の人物、エインに襲われ、ヴァハがオリヴァス・アクトと呼んだモンスターにも襲われ、そのモンスターも人の言葉を持って己がオリヴァスである事を肯定したこと。
そして、『
聞かされたフィルヴィスは、ヴァハの寝かされている天幕を暫く見て、引き返そうとしたフィルヴィスだったが不意にレフィーヤに声をかけられる。
「レ、レフィーヤ!」
「はい………えっと、ヴァハさんは体に問題は、もうないみたいです。アミッドさんがいたわけですからね……」
「…………そうか」
それだけいうと、フィルヴィスは今度こそ立ち去ろうとする。
「あ、あの、せめて様子を見ていかなくて良いんですか?」
「っ………合わせられるわけ無いだろう。奴にも伝えておいてくれ、全て私のせいだ。もう私に、関わるなと」
苦しそうな声だった。だから、レフィーヤは思わずフィルヴィスの手を掴む。
「ヴァハさんに会いに行きましょう……」
「な、何を………」
「フィルヴィスさんのせいじゃありませんから!」
「────っ!!」
「フィルヴィスさんに関わったからとか、そんな理由じゃありません! 知ってるでしょ? あの人は、危険な所には自分から飛び込むような人なんです。フィルヴィスさんが呪われてるとか、穢れているとか、そんな理由じゃありません!」
今回フィルヴィスはヴァハとアミッドに同行していなかった。それなのに責任を感じるのは、また自分が呪われているからと考えたからだろう。
そんな事はない。ヴァハも聞けばんな訳あるかと笑うだろうとレフィーヤはますますヴァハに会わせようとする。
「違う………違うんだ、レフィーヤ………そうじゃない、そうじゃないんだ…………私は、もう、ヴァハに、クラネルに会うわけには………」
「………そんな事…………あ、ヴァハさん!?」
「………レフィーヤ、流石に古典的すぎ────っ!?」
レフィーヤがフィルヴィスの背後を指差し叫び、そんな古典的な手に引っかかるかと呆れるフィルヴィス。が、首に痛みが走る。
痛みはすぐに抗い難い快楽に変わり、ジュルジュルと血を啜る音が聞こえる。
「ごちそうさん………やっぱ、味が似てんなあ」
フィルヴィスの首から口を離し礼を言うのはヴァハだ。思ったよりピンピンしてる。
「い、いきなり何をする!?」
「俺を襲った奴の血の味が誰かに似てたからなあ…………まあ向こうのが絶望とか怒りとか嫉妬とか、そう言った味がドロッドロに濃かったがなあ」
「あ、味で感情とか解るんですか?」
「わかるぜえ。これは偽りようがねえ、と思う。手にしたばかりのスキルだから確証はねえがなあ」
まあでも、いきなり味がここまで変化する事は無いだろう。
「っ………す、すまないヴァハ……私は、お前に………私なんかが、関わったから………」
「あん? ああ、お前に関わると死ぬとかいうやつ? 気にすんな。んな馬鹿なこと起きるはずねえし、仮にお前のせいだってんなら感謝しかねーから」
あっけからんと言い放ちケラケラ笑うヴァハ・クラネル。一応予想していたレフィーヤも思わず固まる。
「お前と関わって彼奴とまた出会うってんなら、ああなるほど。喜ばしいねえ………俺はまた愛しのエインに出会えるってわけだ」
「っ…………愛お、しいだと?」
「エイン?」
「仮面の女だよ………」
「…………そいつは、
「それがどうした? むしろ、だからこそ気に入ってんだよ。俺は基本男に穴狙われねー限りは命だろうと狙われんのは嬉しいぜ……」
だからまた俺にエインを会わせてくれよ、とフィルヴィスの頭を撫でるヴァハ。しばし呆然としていたフィルヴィスは、不器用に笑う。
「…………お前は、おかしな奴だ。その女は、お前に好かれても、ゴメンだと思うが………」
「恋仲になりてえ訳じゃねーんだ。殺し合いをしたいだけ。嫌われるぶんにゃ、問題ねーよ」
早朝。ヴァハはベルをボコボコにしていた。
別段いじめをしているわけではない。修行だ。と言うよりは、ヴァハ個人の調整。
「んっん〜、こんなもんかあ………ほれほれどうしたベル? このままじゃ俺は今の身体能力に慣れちまうぜえ? せっかく喋って居場所教えてんだ、もっと頑張れ」
ヴァハとベルは互いに目隠しして組手をしている。どうせヘルメス辺りがやらかしそうだから、対応策を教えてやっているのだ。
「せあ!」
「………と」
ベルがヴァハの蹴りに反応し、かわして反撃した。ニヤリと笑ったヴァハは無数の蹴りを放つ。感覚を掴み加減もできるようになったとはいえLv.2の中堅に匹敵するであろう速度で放たれる無数の蹴りを、数回くらいつつも回避するベル。
「感覚掴んだみてーだな。じゃ、速度上げるぞお」
「……へ?」
ベルの身体が宙を舞った。
「んじゃ、俺等は先方隊と先に帰るわ……」
「地上に戻り、一刻も早く解毒薬を作らねばなりませんからね。在庫がなくなってますし」
ヴァハは【ロキ・ファミリア】の先方隊と共に地上を目指すようだ。元々ベル救助は必要ないと乗り気でなく、無事が確認出来た以上はもう一つの依頼であるアミッドの護衛を優先する事にしたようだ。
「じゃあなベル、ボコボコにしてやれよお」
「? えっと、うん。よく分からないけど、ボコボコにすれば良いんだね!」
感想お待ちしております
ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員