ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
ベルを待つ間、片足が折れているので座る事にする。ここまで歩いてきたので骨の位置はズレ、足は赤く腫れている。それでも少しずつ治る。肉の中で骨が動く感覚は常人なら泣き叫んでもおかしくないのにヴァハは特に騒がず欠伸すらする。
ベルを待つ事にしたが、どれぐらい待つか。今は月が真上。沈むまでには時間がある。
「こんばんは。綺麗な月夜ね………」
「あん?」
ボーと銀色の月を眺め、金色の月じゃねぇのかと適当なことを考えていると万人が振り返るであろう美しい声色が響く。振り返ればそこには美を体現したかのような女がいた。
なかなか露出が多い服装なのに下品に見えないのは、本人の気品故か。
「おー月ね。月………俺は死人のように青い月か血に染まったような赤い月のが好きだねぇ」
「へぇ、見たことがあるの?」
「もち☆」
結構レアらしい。一時期祖父の知り合いの男といろんな場所を旅していた時に見た。
中々楽しい経験だった。初めての人殺しも旅のおかげで経験できたし。
「んで? 女がこんな場所に、こんな時間に何してんの? 襲われても知らねえぞ」
「ふふ。心配してくれるの?」
「んー…………」
コキリと指を鳴らす。爪の生え際から、血が流れ、それを目の前の女が認識する前に鎌のように変化し───
「───っ………ハハ」
その女の首を裂く前に右肩に
数
「ゲスが。女神の御身を、貴様如きが傷つけようなど」
「ぐぇー……」
何時の間にか猫種の獣人が現れ、胸を踏み付けてくる。今の動きからして、恐らく最低でもレベルは5。或いは最強候補の6だろうか? 少なくとも、人の肋など予備動作もなく踏み砕けるに違いない。
「アレン、やめなさい」
「しかし……」
「ね、アレン? 良い子だから」
「……………」
女の制止に不満を顕にする男だったが、子供に言い聞かせるような言葉に黙り込み足を退ける。せめてもの嫌がらせか、乱暴に槍を引き抜きヴァハの肩をえぐる。ゴギュイと骨が削れる音が内から響く。
「いててぇ……いてぇー。いてぇなおい。謝れよ」
「アレン………」
「………………」
「もう、仕方ない子ね」
ケラケラと謝罪を要求するヴァハを睨みつけ立ち去るアレンと呼ばれた男。そんな様子を見て女は愛おしそうに笑う。
「愛の女神が何か?」
「そうね。私は、愛が多いってよく言われるの………貴方、怒らないのね?」
「女神様が血を飲ませてくれるなら怒らな────と」
首スレスレを短剣が通過した。軽口を叩くなと言うことか。
「ハハァ。人生楽しそうな奴だな………譲れないものがある。アンタだ。あんたの身体はもちろん、あらゆる要素を傷つけることも否定することも許さねぇって感じだ」
「ええ、可愛い子でしょう? 自慢の子の一人よ」
「うちの弟のが可愛いなあ」
「そうね。でも……貴方も、貴方の弟に負けないぐらい可愛いわよ?」
上体を起こしたヴァハの頬に触れ微笑みかける女に、ヴァハはあー、と呟く。
「フレイヤってアンタか………都市最強のファミリアの一つの。あってる?」
「ええ。正解………それにしても、貴方は『魅了』されないのね」
今度は頭を撫で、少し残念そうな顔をする女神フレイヤ。情欲に塗れ求めてくる女は何度か相手したが、これは違うな。もっと別の、それでいて近い何か。神の愛とやらなのだろう。
「万人が万人、あんたを確かに美しいと言うだろうさ。俺もあんたは美人だと思うぜ? あんたは、
フレイヤ、美の神。
そして、美しさとは大衆が定めるもの。或いは神ならば大衆を支配する者でもあるかもしれない。
「だが結局は大衆が肯定したものだ。オレが好きなのとは、ちょっと違う。まあつまり、あんたの見た目は好みじゃない」
「あら、残念。でも安心して。私はきちんと中身も見るわ………貴方達兄弟は、二人揃って本当に綺麗な透明………不思議ね、ここまで似てるのに、貴方達の在り方は真逆なのだもの」
「ハハァ。価値観の相違だろ………古代の世界じゃ、ハーフを蔑むのは当然の行為とされていたんだろお? その時代、それを行う者にとっちゃ当たり前すぎて悪意を抱かなかったやつだって少なくねぇんじゃねぇの?」
そもそもが異なるのだ。目が3つが当たり前の世界があったとして、目が2つの神は異形神となる。精神構造が違う。モンスターにさえ通じる美を、あろうことか理解できぬと言い切った。
いや、違うか。
彼は理解している。己が他者と何かズレている事を。その上で、理解していない。
知識としては解っているのだろう。だけど感覚として、何故それを行っていけないのかを解していない。
「ここは、条件さえ揃えば人を殺せるわ」
「………」
「人殺しが
「へぇ……」
「今日は楽しかったわ。また会いましょう」
「ばーい♡」
去っていくフレイヤを見送り手を降るヴァハ。足の骨折に加え肩の貫通。再生にだいぶ時間を要しそうだ。ちょうど良い。朝まで待ってみよう。
「ごめん、兄さん………」
「ハハ。俺じゃなくて主神に謝ってやるんだなぁ。心配してるぜ、多分。それとお前の分の金は払ってないから」
空も白くなってきた。時刻は朝の5時近く。傷もすっかり治ったヴァハはダンジョンから出て来たベルを背負い歩く。背中から視線を感じる。あの女神に見られている。
「怒られるかな」
「だろうなぁ。はは、あの女神もお前が好きみたいだからなあ」
「うん。大切な、家族だよ。兄さんにとっての、エウロペさんみたいな」
「懐かしい名前だなあ。墓参りに行ったのは何時だったか………」
「おじいちゃんが、死んだ事の報告の時かな」
「ああー。そういやジジイの囲いの一人だったな」
思えば知り合いで初めて見た死体はあの女だった。逆にジジイは死体すら見れてない。まあ、多分生きてるんだろうなぁとは思ってる。ベルには内緒だ。
「ベルもこっちじゃ順調に囲い作れそうだなあ。その前に、入って欲しい奴がいるみてえだが」
「ハーレムかぁ………出来るかな?」
「ハハァ。俺は顔が良い、お前は性格がいい。できるさ、意外と簡単にな」
そんな会話をする内にベルの現在の拠点、朽ちかけの教会に辿りつく。扉を開けようとするとベルの主神であるロリ巨乳の女神ヘスティアに扉がぶち当たった。
その後ベルはヘスティアに説教され、まずは休息だとベッドに寝かされる。ヘスティアが一緒に寝ようじゃないかというとあっさり了承したベル。まあ、女として意識してないか疲れて思考力が低下してるかの何方かだろう。
「兄さんも、久し振りに寝よ?」
「あん? 何だ、相変わらず甘えん坊な………仕方ねぇなぁ。3時間だけだぞ? 9時からは予定がある」
そうして3人で寝る事になった。ベルが中心。右にヴァハ、左にヘスティアの並び順だ。
「そうそう、美の女神にあったぜ。ベルも何時か出会うかもなあ」
「ええー、そんな、恐れ多い……」
「ダメだぞベル君! 美の女神に合うなんて、魅了されてしまう!」
「ハハァ。大丈夫だろ………」
「何を根拠に! ていうか、ヴァハ君は平気なのかい?」
「タイプじゃない………」
それこそ死ぬその瞬間には美しいと間違いなく思えるだろう。だが、相手は不死不滅の神だ。絶望もしないだろう。死なないから、なにかに必死になることもなさそう。痛めつける悦びもない。まあ女として楽しむぐらいなら確かにできるだろうが。
「美の神をタイプじゃないって………逆に何を美しいと思うんだい君。彼女達は、美しさそのものの筈だぜ?」
「何を、ねぇ………………そうだなぁ」
例えば命を失ったその瞬間のまま、表情を変えることが出来なくなった女の死体。後は………
「旅の途中見つけた、あの光景、それを生み出した奴かなぁ。心が震えた」
旅の仲間はありえないとか言ってたな。まだ早すぎるとかも。
誰もが怯える中で、ヴァハは片目しかないそいつと目を合わせ、確かに思ったのだ。美しいと。心が震えた。
誰もが地獄と言うであろう光景の中で永遠にも感じる数秒を見つめ合った。向こうからすれば道端の石ころに目が行った程度で見ていたのも実は周りの誰かだったかもしれないが。
「ふーん。光景? パレードの中心人物か何か?」
「んー。まあ、綺麗だったなあ。そん時はベルは隣にいなかったが、むしろ良かった。出来ることなら、あの光景は独り占めしたかったからなぁ」
旅の仲間いわく、再び眠りについたらしい。それでも、いずれ起きる。再会が楽しみだ。
ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員