ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
鉄を叩く音が響く。熱せられた鉄が叩かれ形を変え、火花を散らす。
冷めてくれば固くなる。再び火に焚べ、取り出し叩く。この作業をひたすら繰り返す。
平べったく広がれば叩きながら折り曲げ、伸ばし、畳む、伸ばし、畳む。
焼入れをして、冷やす。この時冷やす水が冷たすぎれば固く脆く、温すぎれば柔い鈍らへと成り下がる。
「…………ふむ、こんな物か?」
炉の火に曝され汗で褐色の肌を濡らした椿は出来上がった剣を見て、そう呟いた。
「全然駄目だな………」
数度雷を纏わせ、見ただけでは分からぬ程度に芯が歪んだ剣を見てヴァハはオラリオ最高の鍛冶師の打った剣をぞんざいに放り捨てる。
「むう、駄目か?」
「駄目だな。普通の武器としては使えるが、数回の
「ううむ、魔法を通しやすい
「前提がちげえ、そもそも
よくよく見ると
「俺達とな?」
「アイズだ………力の純度としちゃ俺のが上だが、神の恩恵による底上げと、復讐者が良く目覚めるつースキルを合わせりゃ全力の風にあの程度の武器じゃ耐えれねえ」
「ヴェル吉といい、つくづく型破りなのだな精霊の力と言うのは…………」
「伊達に神に近い種族じゃねえってことさ……ん、精霊の力か………」
ベートの扱う《フロスヴィルト》のように魔法を吸収する武装は存在するが、それは
ベートのように防具ならある程度問題ないが剣ともなれば話は別だ。が………
「うん、いい感じだなあ」
鉄も木も石も全て斬り捨てたヴァハ。ヴァハの剣を扱う腕も確かにあるが、剣がいい。最後に『これ切れたら何でもただ』と【ヘファイストス・ファミリア】の団員が悪ふざけで置いておいた
バチチチィッ! と剣を紫電が包み、すぐに雷光を帯び…………鎧を
赤く発光した断面を晒した鎧の上部がゴトリと地面に落ちた。
「問題なし………」
「それは何よりだ……………で?」
「あん?」
剣の出来に満足するヴァハ。相手の満足行く結果を残せうむうむと頷く椿は、そのままガシリとヴァハの肩を掴む。
「手前が渡されたあの布、お主の言うとおり炉に焚べたらこの剣が作れた。あの布についてた血はなんだ!?」
「お〜う」
子どものようにキラキラ輝く瞳を向けてくる椿に、ヴァハが肩をすくめる。
ヴァハの剣を作るにあたって、精霊の力に耐えられる剣がどうしても必要だった。しかしアイズより純度の高い精霊の力──再調整されたため26階層程では無いとはいえ──人間の作る武器では耐えられない。
椿としても顧客の願いを叶えられぬのは鍛冶師として戴けない。そんな悩める椿にヴァハが血の染み込んだ布を渡したのだ。何の血か説明せずに炉に焚べろと渡されたそれを炉に放り込んでみると炉の中でバチバチと紫電が弾け、その火で鉄を熱すれば今回の剣が完成した。
あの炎、上手く使えば魔剣では勝ち目なしと諦めていたヴェルフに迫れるかもしれない。
「自分の力だけで迫ろうとは、思わねえよなあ……」
「む? 当然であろう。才能、血筋、環境はもちろんコネだろうのなんだろうと、使えるものは全て使うまでよ。そもそも剣を作る時点で鉄という素材選びから入るのだ。単純に腕だけでどうこう言う奴は二流さな………で、あれは何の血だ? モンスターか?」
「俺の血だよん」
「そうか、では早速お主の血をくれ。なぁに、ただでとは言わん。あれ程の燃料が手に入るのならば手前直々に専属
躊躇いもなく血を寄越せと要求する椿に、ヴァハはふむ、と顎に手を当てる。ぶっちゃけ血で武器を作れるヴァハは本来鍛冶師要らず。己の力を通すための剣は壊れぬ一本があれば十分。
「………いや、お前も血を寄越せ。そしたら俺も血をやる」
「む? 手前の血か? 構わぬが、良いのか? 手前など単なるハーフドワーフ、特別な血統でも何でもないが………」
「俺ぁ血を飲むスキルがあるからなあ」
「ああ、
そう言って、あっさりと褐色の腕を差し出してくる椿。牙を伸ばし、突き立てる。
ハーフとはいえドワーフとは思えぬスラリと伸びた腕は、槌を振るっている割に女性らしくきめ細かい肌に覆われ、触れると女性特有の柔らかさがあった。
まあヴァハからすれば硬くなくて良かった程度の感想だが。
「───っ! な、んだ……この、むぅ………」
ヴァハの吸血から与えられる快楽に、酒に酔った時のような感覚を覚える椿。ヴァハ自身この快楽付与は痛みを緩和させる為のものではなく獲物を逃げぬようにする為の物と判断している。
実際ここに反応の違いがある。椿など本当に酒でも飲んだかのようだ。
ある程度飲んだ後口を離す。少し名残惜しそうな椿を無視して瓶を持ってこさせると手首を切り裂き血を垂らす。
「手前の血は美味かったか?」
「おお〜。流石Lv.5で、ハーフだなあ。まあアミッドやエインにゃ負けるが美味かったぜえ」
アミッドは何気にあのスキルに目覚めてから血の味が更に美味く感じるようになった。まさしく、ヴァハにとって最高の贄と言うわけだ。
「ふふふ。この血があれば良い魔剣が打てそうだ………まあ、祭り故主神様から休みを言い渡されておるがな」
主神なりの気遣いだろう。上が休まねば下も休まない者が出るかもしれないし。
「お主は弟と?」
「いんや? 女とだ………お前も来るかあ?」
「………逢引ではないのか?」
「ねえなあ」
神月祭。『古代』、モンスターの脅威に曝されていた人類は、特に夜を恐れた。暗闇の向こうから聞こえる何かの息遣い。
葉擦れの音さえ、何かが迫ってくるような恐怖を感じる。だからこそ夜の闇を祓う月を神に見立てた。その習慣は、今でも続いている。
「モンスターの魔の手から無事を祈る訳だし、冒険者らしいつえばらしいが神が腐るほど居るオラリオじゃ変な感じだなあ」
「まあ神様って自分達が楽しければそれで良い、って感じだしね〜」
「確かに、ロキとかも普通にお祭り楽しんでたもんね〜」
月を神と見立て祀る祭りに、神々も普通に参加して何ならデカい月の模型にお辞儀したりする光景を見てヴァハが呟くとエルフィとティオナがオラリオでの神の在り方を口にする。
「まあ神の在り方など気にしていても仕方がないわ。それよりも折角の祭りだ、楽しもうではないか!」
と、綿菓子やイカ焼き、フランクフルトなどを両手いっぱいに抱えた椿が笑う。ちなみに全部酒の肴にするつもりで、酒瓶も持っている。
「そういえばさ、ロキは普通に祭り楽しんでるけどヴァハのところのミアハ様はどうしてるの?」
「ジャガ丸くん売ってる」
サイクロンクッキングとやらで高速じゃが丸くんづくりが可能らしい。『折角の祭りだ。お前たちは楽しんで来なさい。ただしヴァハ、殺し合いをしてはいけないよ』とは送り出す時のミアハの言葉だ。
「神様が、バイト………」
「まあウチは零細だからなあ。祭りの日にゃ医療系ファミリアに大して客もこねえし、別の仕事したほうが金になるわなあ」
「医療系ファミリアって言えば、アミッドの所とかもかな?」
と、ティオナが何気なくアミッドの名を出すと、噂をすれば影というやつか、ヴァハがピクリと己の与えた加護の気配を感じる。
「……………こんばんわ」
「あ、アミッドだ! こんばんは〜」
「アミッドさん、こんばんは」
「おお、こんばんは」
現れたのはやはりアミッド。白の長衣を来たアミッドはヴァハ達の方に寄ってくる。
「仕事は休み?」
「はい………このような祭りでは、食べすぎにより胃薬などが売れるので店番をしようと思ったのですが皆に送り出されてしまいま………」
「その服、似合ってるね」
「あ、ありがとうございます………あの、ヴァハ…………」
と、不意にアミッドがヴァハに声をかける。
「髪を、結ってくれませんか? 私では、あの時の髪型に出来なくて」
「OK」
二つ返事で了承したヴァハはアミッドの髪を編んでいく。その光景を見つめるティオナとエルフィは己の短く切り揃えられた髪を見る。
「髪型よりヴァハよ、まずは聖女の服を褒めてやってはどうだ? 手前の知る限り女性がいつもと違う服着てたら褒めるものらしいが……」
「あん? この服選んだの俺だぞ。んな自慢みてえなことするかよ」
「「…………え」」
と、ティオナとエルフィが反応する。まさにその時だった………
『さぁさぁお立ち会い! 遠き者は音に聞け! 近き者は目にも見よ! そして、腕に覚えがある冒険者ならば名乗りを上げろ! さあ、この槍を引き抜く英雄は誰だ〜!?』
と、男の声が聞こえてきた。
「……………この声、ヘルメスか?」
また今度は何を始めやがった、と目を細めるヴァハ。
『これは選ばれた者にしか抜けない伝説の槍。手にした者には貞潔たる女神の祝福が約束されるだろう。さらに! さらに! 抜いた者は豪華世界観光旅行にご招待! すでにギルドの許可済みだぁ!』
「ほう、伝説の槍とな! 何をしておるヴァハ、行くぞ!」
と、椿がヴァハの腕を掴んで声のした方向に走り出した。
感想お待ちしております
ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員