ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
伝説の槍と聞き鍛冶師の血が騒いだ椿に連れられヘルメスの声がした方向に赴く。
簡易的に作られたステージの上には長い柄と、先端を覆い隠すような結晶が見えた。あれが伝説の槍とやらなのだろう。
「ふむ………使われておる金属………何だ? 分からぬ。槍としては、ふむ、なかなかの出来。全容が見えぬから定かではないが投擲用だな………伝説というのもなるほど頷ける」
とは椿の言葉。
「あ、レフィーヤだ!」
次の挑戦者はレフィーヤだった。ステージに上がると、早速槍を掴む。
「あぅ、駄目ぇ。ピクリとも動きません」
『おおっと、レフィーヤちゃん。早い! 早すぎるぞ〜』
が、速攻で諦めた。
「よし、では次は手前だ!」
と、椿がステージに駆け上った。
『おっと、次の挑戦者は椿ちゃんかあ』
「抜けたらこの槍は手前がもらっても良いのか?」
『もちろん、その槍は抜けたものの物だとも』
「うむ、では……………ぬん!」
と、椿が力を込める。Lv.5で、ハーフとはいえドワーフの椿の力はオラリオでも上位に位置する。その証拠にミシリとステージが軋む。が…………
「うむ、無理だな!」
軋むのはステージのみで、椿は諦めた。
「よーし、次はあたしぃ!」
元気よく飛び出すティオナ。
「駄目だった〜!」
無理だった。
【
『おおっと、これは【剣姫】ことアイズ・ヴァレンシュタインの登場だ〜!』
アイズだった。ステージから降りてくティオナが頑張れ〜、と応援してから降りる。
『さあ力が入る〜!』
「頑張ってください、アイズさ〜ん!」
と、レフィーヤが声援を送る中アイズは更に力を込め、手を離す。
「…………駄目…………抜けない」
「そんな〜……」
「よし、次はお前だヴァハ! 行ってこい!」
「面倒くせえなあ………」
椿に背中を押され仕方なくステージに上がるヴァハ。伝説の槍とやらを眺める。
「抜けたら是非手前に見せてくれ! 礼に好きなだけ吸わせてやるぞ〜!」
「すっ!?」
「すわ──!?」
椿が彼女なりの声援を送る。その言葉に周りの男達の視線が椿の肩より僅かにしたの、立派な部位に向けられる。
ティオナは己の胸をペタペタ触り、アミッドとエルフィは無意識に首筋に手を当てた。
「……………あん?」
と、ヴァハは伸ばしていた手を止める。周りが困惑する中、じっと槍を見つめ、かと思えば空を見上げる。
「……………やめだ。ベル、後は任せるぜえ」
そう言ってステージから降りるヴァハ。ベルはえ? と困惑する。
『ふむ、では指名のあったベル君。上がってきてくれ!』
「え、あ………は、はい」
と、慌ててステージに駆け上がっていくベル。槍に触れ力を込めた瞬間、何かに気づいた様に目を見開き、次の瞬間結晶が砕けた。
「…………面倒なことになってきてんなあ。まあ頑張れや始原の英雄様」
驚き尻もちをついたベルを見てヴァハはどうでも良さそうに欠伸をし、その場から立ち去ろうと歩き出す。
何処からか現れたのか、間違いなく先程まで存在すらしなかった青髪の女神がヴァハの横を通り過ぎ駆け寄ってきたヘスティアを無視してベルに抱きつくのを確認すると空を見上げる。神月祭の名に相応しく、嫌になるほど月が綺麗だ。
「なぁ〜、どうして抜かなかったのだ? 手前の血はそんなに不服か?」
少し夜風が冷えてきた中、人肌の温もりが欲しいとヴァハに抱きついてきた椿が不満そうに質問してくる。
ハーフドワーフのくせに背が高く、顎をヴァハの肩にのせながら少しグリグリしてくる。ウザい。
「あれがこっちにあるってだけで面倒ごとの予感しかしねえんだよ。それに、あの女神………おそらくは………むしろ俺が抜くとやべえだろうな。仮にも領地の近い爺の気配を持ってる。羽虫を追い払うのと蜂を追い払うのじゃ、労力は似たようなもんでもやる気がちげえ…………」
「「「………?」」」
一同は良くわからないと言うように首を傾げた。ヴァハはこっちはこっちで忙しくなりそうだなぁ、と頭を掻き、ふと花屋を見つける。
「おい、少し良いか?」
「はい。何でしょう?」
と、店員の少女が振り返る。何気なく声をかけた少女は、女神とも張り合えそうなほど美しい少女だった。ティオナやエルフィが思わずわぁ、と感嘆の吐息を漏らす。
「マーガレットの花を貰いたい。束で………」
「マーガレットですね。かしこまりました。少々お待ちを───」
と、店員の少女がマーガレットの花のある場所に向かおうとしたまさにその時だった。
「お、アンナちゃんはっけーん! 出張店に居たのか〜」
「なに!? アンナちゃんだと! 俺だ、結婚してくれ!」
「おおアンナ。今宵の君も美しいね………どうだろう、そこの美少年と共に私の寝所に来ないかい」
「アンナちゃ〜ん! 俺と一緒に祭り回ろう!」
と、男神達が店員の少女、アンナと言う名らしい少女に向かって殺到した。
「あ、あの、困ります神様方! 私、今仕事中で………」
「え〜、いいじゃん仕事ぐらい」
「そーそー、アンナちゃんかわいいし少しサボっても文句言われないよ」
「仕事というのはそこの少年だろ? 何、二人で私と一夜過ごせば問題はないさ」
「ていうか花屋やめて俺のところに永久就職しようぜ? 三食首輪付きだ!」
「で、ですからあ………………」
どうしよう、と困惑してると、神々に雷が落ちる。物理的に…………
「「「あばばばばばばばばばばっ!!?」」」
プシューと煙を出す焦げた神々をごみ捨て場に運んだヴァハは改めてアンナに向き直る。
「マーガレットの花束、さっさと寄越せ………」
「あ、はい………あ、ありがとうございます………その、大丈夫なんですか? あんな事しちゃって………」
と、気絶している神々を見つめるアンナ。神に手を上げるなんて重罪では、と心配の色が瞳に宿っている。
「神だろうが何だろうが迷惑かけんならぶちのめす」
他人に迷惑かける分なら良いが自分にかけられるのはいただけないヴァハであったが、アンナは何か勘違いしたのか再びありがとうございますとお礼を言いながら花束を渡してくる。
「ん? お前何勘違…………いや、そうだな………」
そういえば冒険者の血はLv.が高かったりレアスキルを持ってたりにより味が変わるが、一般人の味は何で決まるのだろうか?
「…………?」
本当の意味で男も知らなさそうな、それでいて健康的な女。ふむ、と眺めるヴァハ。
「礼をしたいなら暇な時で良い。二人きりで会えねえ?」
「ふ、2人きりですか?」
「え………」
「…………」
2人きりという言葉にティオナが反応し、アミッドやエルフィも何となく首を抑える。
アンナとしても助けてくれたヴァハに礼をしたい。ヴァハの目は、求愛してくる神々とは異なり、安心感もある。しかし2人きりというのは恥ずかしい………だけどお礼はした方が良いし、と迷っていると不意にひっ! と短い悲鳴を上げ屋台の奥に引っ込む。
その視線はヴァハ達の背後。ヴァハが振り返ると無表情の黒髪のエルフが立っていた。
「よおフィルヴィス、お前も祭りに来てたのか」
「…………ああ。ディオニュソス様も祭を楽しまれるようだから、私など邪魔だろうと一人で回っていたところだ。そうしたら、女を侍らせ女を口説くお前を見つけた……」
「ついでに言うなら女に渡す花も買ってるなあ」
ケラケラ笑うヴァハにフィルヴィスがジトッとした瞳を向けるも、やはりと言うかヴァハは堪えない。
「いや、そうだな………お前が女に求めることなど、
「りょーかい。まあアミッドとかのが、多分美味えだろうしなあ」
「────っ!」
アミッドは己のスキルを思い出し、恥ずかしそうに俯いた。
祭りも終わり、深夜。その日の内に片付ける者や、後日に回し他の屋台と残った食材を交換する者、帰路に就くものなど様々だ。
「よお……」
そんな彼女に話しかける人影。振り返った彼女はあら、と顔を綻ばせる。
「久し振りねヴァハちゃん。聞いてるわよ、Lv.3になったのよね?」
ホワホワとした空気を纏う女神に、おー、と返すのはヴァハだ。
「何かお祝いしてあげたいけど、ごめんなさいね、今は何もなくて。あ、明日うちのホームに来てくれたら、特製のパイを作ってあげるわ」
「んー、そうしたら今日来た意味がなくなっちまうなあ」
「…………?」
首を傾げる彼女に、ヴァハが近づいていく。
「うちの主神様といい、お前も結構働き者だからなあ。町中じゃ買い出しで人の居るところしか通らねえ、畑じゃ常に仕事仲間の眷属が近くにいる。けど、今夜なら先に眷属を帰して、1人きりになるだろうってなあ」
「あら、なんか照れちゃうわね………そんな言い方したら、私と二人っきりになりたかったって言ってると思われちゃうわよ?」
「そう言ってるしなあ、あんたにゃ聞きたいことがあるんだよ」
あと一歩近づけば触れ合う距離で止まったヴァハは、耳元に口を近づける。
「なあ、何で10階層で俺達に漆黒のモンスターを差し向けたんだ?」
「─────っ!?」
ビクリと身を震わせる女神の姿に、ヴァハは笑う。
「なあ、教えてくれよデメテル」
感想お待ちしております
ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員