ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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アマゾン、女の子に憧れる

 空が微かに白みを帯びてきた早朝の時間。ベル達はヘルメスの揃えた服に着替え、オラリオの街壁の上に来ていた。

 移動手段は空路。【ガネーシャ・ファミリア】が卵の頃から調教した飛竜を使うそうだ。数は3匹。ベル達は3人と3柱。

 いざ出発しようとした時、不意にアルテミスとベルが振り返る。

 

「よっと………」

 

 そして、階段も梯子もないはずのその場所から飛び出してきたのは赤髪金眼の少年。

 

「兄さん!」

 

 何者かと警戒するアルテミスだったがベルが嬉しそうに駆け寄るのを見て警戒を解く。次はこの者は誰か、と不思議そうに見つめた。

 

「あ、アルテミス様。紹介しますね、この人はヴァハ・クラネル。僕の兄です」

「オリオンの………そうか。貴方も、今回の旅に同行を?」

「ハハァ。悪いが俺は不参加ですねえ………俺の存在は、色々と不都合があるんで………落ち込むなベル」

 

 同行という言葉に嬉しそうな顔をしたベルはしかしヴァハがすぐに否定したため落ち込む。解りやすいやつである。

 

「俺はただ見送りに来ただけだ。麗しき月の女神様をなあ」

「私か?」

 

 と、アルテミスはキョトンと首を傾げる。弟のベルならともかく知り合いですらない自分の見送りは、どういった意図があるのか量りかねているのだ。

 

「ああ、哀れな女神様の最後の旅路が、せめてその魂に刻まれるように切に願おうとな」

 

 そう言って、マーガレットの花束を渡す。アルテミスは、ヴァハの言葉にヴァハの瞳を見つめる。

 憐れみなど微塵もなく、かと言って蔑みもない。発言からしてこちらの事情を知っているようだが、ヘルメスを見ると慌てて首を振っていた。

 

「……そうか。すまないな、貴方の弟をこんな事に巻き込んで」

「ま、ステイタス稼ぎにゃなるんで別に…………溜まってりゃランクアップも出来たかもだが」

「え? そんな、僕この前Lv.2になったばかりだよ」

「俺は今Lv.3だけどな………」

「…………………あ、あはは」

「ま、種が違うし、母さんは普通の人だったがそれでも兄弟なんだ、お前も才能とかそのへんのがあんだろ」

 

 ケラケラ笑いながらベルの頭を撫でるヴァハ。なんか今とんでもない事実をサラッと言っていたような、と周りのヘスティア達が二人を見る。

 

「んじゃ、初めての旅、楽しめよ」

 

 それだけ言い残すとヴァハは街壁から飛び降りた。結構な高さだが、誰も心配しなかったという。

 

 

 

 

 

 さて、ヘルメスがあんな移動手段を用意しつつも、祭りに合わせて選定していた以上、恐らくは10日ほどの猶予があるだろう。

 準備期間としては短いが、まずはダンジョンの様子を見てくるかとヴァハはダンジョンに潜る。

 今のところ、目立った反応は見せていない。あちらもあちらで手にした力を使いこなせていないのだろう。

 

「アルテミス関係の『古代』のモンスター、何だったか? ああ、アンタレスだ」

 

 6体の精霊に滅ぼされた『ニーズホッグ』に比べ特に『耐久』が優れたモンスター。厳密には周囲の命を吸い取り直ぐに傷を癒やしてしまうのだ。故に封印するしかなかった存在。

 それが今や、不滅の力を手にした訳だ。面倒なことになった。と、その時だった───

 

「うおおお! 逃げろぉ! 【大切断(アマゾン)】が苦戦するモンスターだあ!」

「…………あん?」

 

 一人の冒険者が物凄い勢いで走ってきた。その後ろには、見覚えのあるアマゾネス。と、大して強くなさそうなモンスター。

 

「ちょっとぉ! なんで逃げるの!? あたしのこと助けてよ〜!」

「ふざけんな! お前が勝てないモンスターに俺等が勝てるわけねえだろ! こっちくんな!?」

「ちょっ………それひどくない!?」

 

 何やってんだろう彼奴は。取り敢えずそこそこの量がいるモンスターの群に飛び込むヴァハ。ティオナがあ、と呟く中、剣を一閃。モンスター達が上下真っ二つに切り裂かれる。

 

「【血に狂え】」

「ヴォ!?」

「ガァ!」

 

 今のヴァハには、血を操るのに己の血を混ぜる必要は皆無。飛び散ったモンスター達の血を操り無数の剣を生み出し、放つ。

 モンスターを貫いた杭は枝分かれし、モンスターの体を派手に破壊する。そうなれば当然血が吹き出し、後は繰り返し。

 あっという間に血に染まる通路。モンスター達は血肉を撒き散らし屍を晒す。

 魔石を回収すると直に全て灰へと還るが。

 

「ヴァ〜ハ!」

「………………」

 

 後から抱きつこうとしてきたティオナをひょいとかわす。

 

「何やってんだ、あの程度のモンスターに………」

「えへへ〜、助けてくれてありがと〜」

 

 聞いちゃいない。抱きついてきて胸に頬をスリスリ擦りつけてくる。ランクアップ前のステイタスがオールSのため数値には表れないぶんもそれなりのヴァハだが流石にティオナの力からは逃げられない。

 

「どうどう、今のあたししおらしかった?」

「…………は?」

「女の子らしかった?」

 

 なるほどだいたい理解した。そういうことか。

 多分だが、女の子らしくないと誰かに言われ、こいつの周りで女の子らしい存在に女の子らしさを聞いてしおらしいとか、大人しくていじらしいとかが女の子みたいとか言われたのだろう。

 

「アホらしいなあ」

「ええ!? ひっど〜い!」

「ハハァ。力緩めろ、背骨が折れる」

 

 むぅ〜、と頬を膨らませ腕に力を込める姿は傍から見れば可愛らしいが当事者としては普通に死ねるレベルである。

 

「あ、ご、ごめん!」

「たくよお、なぁにが女の子らしかったぁだあ………ダンジョンに潜る女に女らしさなんて求めるやつぁアホだアホ。戦えねえ、震える女が居たって非常食にしかなりゃしねえ」

「非常食?」

「少なくとも治癒師(ヒーラー)か魔道士になりゃギリギリだなあ。前衛の女が女らしさなんて欲しがんな」

「うぅ〜………」

 

 すっかり不貞腐れたティオナにヴァハはケラケラ笑う。その頭をワシャワシャと撫でると歩き出す。

 

「ここであったのも何かの縁だ。黄昏の館までエスコートしてやんよ。女の子を一人で返すのも気が引けるからなあ」

「っ! うん!」

 

 その言葉にティオナはヴァハの腕に抱きついた。

 

 

 

 

 

 

 

「………そうか、迷惑をかけたな」

 

 ティオナが中層で怪物進展(パス・パレード)をおこしかけたと聞き、リヴェリアは頭痛がするとでも言うように頭を抑えながら謝罪する。

 

「俺としては楽しめたがなあ………」

「とはいえ、【ロキ・ファミリア】の上級冒険者が苦戦する異常事態(イレギュラー)が起きたという事になったのは、それなりに面倒だ………」

 

 【ロキ・ファミリア】は強い。団員の質も高く、名が知れ渡り、影響力もある。故に敵もいるのだ。

 特に厄介なのが強い奴に敢えて逆らい自分の眷属がボコボコにされるさまを見て喜ぶ神や、名のしれた奴が落ちぶれるのが見たいという理由だけで行動する神など人類には理解不能な動機を持つ神々。動機が理解出来ぬ分動きも予想しづらい。先手を打たせぬようにするしかないのだ。

 

「ならいい情報くれてやるよ。近々ダンジョンで異常事態(イレギュラー)が起きる。それを収めりゃ、名声も揺らがねえだろ。そもそも今回の一件だって、噂にしかならねーだろうしな」

異常事態(イレギュラー)が起きるだと?」

 

 本来異常事態(イレギュラー)は察知できるものではない。故に異常事態なのだから。だからこそ第一級冒険者でも命を落とす事があるのだから。

 【ロキ・ファミリア】もつい最近被害を被ったばかりだ。死者こそ出ていないものの、痛手には違いない。そんな大手派閥でさえ予期できぬ事を起こると何故断言できるのか。

 

「理由は言えねえが本当だぜ? 何ならロキ呼ぶか?」

「………いや、信じよう。神の前で嘘をつくことは出来ぬのだからな………」

 

 その上で神を呼んでもいいと言うなら、おそらく本当なのだろう。

 

「とはいえ、今丁度フィンが出掛けていてな。戻ってくるのは、夜になるか………」

「そうか、じゃあ丁度いいか…」

「?」

「あん時の約束だ。デートしようぜ」

 

 ヴァハの言葉に、部屋の外で聞き耳を立てていたシフォン、アリシア、カロスなど【ロキ・ファミリア】のエルフ達がガタタ! と音を立てる。

 リヴェリアは彼奴等は、と呆れたようにため息を吐いた。

 

「………ああ、そうだな。約束を果たそう。着替えるから、少し待っていてくれ。後、お前達は後で説教だ」




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ヴァハ君のヒロイン

  • フィルヴィス・シャリア
  • アスフィ・アル・アンドロメダ
  • アミッド・テアサナーレ
  • エルフィ・コレット
  • メイナちゃんやティオナを混ぜて全員
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