ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
リヴェリアとのデートの翌日、ヴァハは【ロキ・ファミリア】の
客室でも談話室でもなく、幹部のみが集まる部屋にて三幹部と主神ロキと対面していた。
「さて、我々が君を呼んだ理由は解るかな?」
「リヴェリアとデートしたことか?」
「なんやとぉ!? リヴェリアと、デート!? ま、まさかこのエルフの皆が騒いどったんは!」
「ロキ、話をすり替えられるな」
「せやけどママ! ホンマにデートしたん!?」
「誰がママだ誰が………まあ、交遊のある男女が二人で出かけることをデートと言うならデートをしたな。とはいえ、街の案内程度だが」
騒ぐロキに呆れた様子のリヴェリア。お前もからかうなと言えようにヴァハを睨むと肩をすくめる。
「まあ、聞きたいことってのは近々起こると断言した
かつてアイズに24階層に向かうよう
そして、つい先日ギルドに外出届を出せば、受理されなかったのだ。それだけなら大手ファミリアである【ロキ・ファミリア】を外に出すのには手続きが必要だとまあ、思える。だがリヴェリアからもたらされたヴァハが予見した
「単純に言うと、ダンジョンが近々ブチギレるんだよなあ」
「…………ブチギレる?」
「神が己の中に入っただけで強化種を吐き出す程神嫌い。懐かしく忌々しい神の権能が地上で再び振るわれりゃ、そりゃもうキレる。第1段階ならモンスターの凶暴化及び地上への進軍。2段階目で大量発生。3段階目は強化種も出るだろうなあ。それでもなお続けば、神喰い、或いは神殺しが出現する。
黒龍クラスは流石にねえと思うが、他の三大クエスト程度にはやべえかもなあ」
「………………は?」
出された茶菓子を食いながらとんでもない事をあっさりと言うヴァハ。勿論一同は固まり、ロキを見る。ロキは首を横に振る。嘘であってほしい事柄が、しかし嘘ではないらしい。
「ちょ、待てや! 神の力の、地上行使やと!? 出来る訳あらへんし、誰がやるっちゅーねん!」
「別に帰還覚悟でやりゃオラリオふっとばす程度は出来るだろ? 他の神々が無かったことにするだけで………まあ、これはそのレベルじゃねーけどな。普通に下界が吹っ飛ぶ。早いとこ深層に避難でもするか」
ケラケラとダンジョン深部なら、下界が滅びる程の攻撃にも耐えられると確信を持って言うヴァハに、ロキが薄い瞳を開き睨む。こいつは一体
「ちなみに行使すんのはアンタレスっつー、アルテミスを喰った『古代』の力あるモンスター」
「『古代』の、モンスターやと? それなら、あるいは………いや、せやけど…………起こりうるんか、そんなん」
「アンタレスは耐久と再生に優れ、周囲の命を喰らう特性を持っている」
その性質が悪い方向に生きた。アルテミスの分身であるアルテミスの精霊を喰うことで封印を解いたアンタレスは、アルテミスの力に対して融和性を高めた。
「結果、『神』を取り込んだ『モンスター』という『奇跡』…………ん、いや、『破滅』か? うん、『破滅』を引き起こした」
地上を滅ぼすほどの、最悪の『
「アルテミスっちゅーことは、『アルテミスの矢』が放たれるんか?」
「だろうなあ。オラリオの神々に防ぐ術はねーな。タケミカヅチが『神の剣』としての力を使えば可能だろうが、そもそも準備中に送還されちまう……」
つまり実質、オラリオに……地上にいる神々に、神格的に防げる者は居ても防ぐ手立ては存在しない。
「天界の全ての神々が課した絶対の
「………詳しいなぁ、あんた」
「他でもない神から教わったからなあ」
何処の神だ、面白がってここまで話す神は。いや、誰でも話しそうだな。
「まて、ではどうする? 神の力を扱えるモンスターなど、どう対処すれば良い……………?」
「それについちゃ問題ねーよ。アルテミスが権能じゃねー方の、神造武器を地上に召喚した………今はベルが持ってて、その槍を以てアルテミスを
「……………殺す?」
「ああ。殺す…………送還じゃねーぞ? 神を殺す。向こう1万年は復活できねー。その間天界の仕事が増えるな」
「…………なぜ、お前の弟なんだ?」
「魂の相性があんだよ。神の力を振るえる槍を使えなきゃアンタレスには勝てねえ。使えんのは俺かベルのどっちかで、俺がいきゃアンタレスは全力で無くとも本気で俺を殺そうとする。残念ながらそうなったら俺に勝ち目はねえんだよなあ………」
ヴァハ・クラネルは精霊を殺し、喰らって己の中に完全に取り込んだ。神の分身たる精霊、それも大神の分霊たる大精霊をだ。かつて精霊に封じられたアンタレスからすれば直ぐにでも消し去りたい存在だろう。
ましてやヴァハの中の精霊のもととなった神はアルテミスに滅茶苦茶嫌われてるし。天界にいた頃から浮気性だし下界に降りたあとマジックアイテムでアルテミスに化けて彼女の眷属とふしだらな行為をして、目撃されアルテミスとその眷属の関係を微妙な空気が流れるものにしたと自慢げに語っていたし。
ちなみにヴァハはその話を聞いて爆笑した。
「………アンタレスには、僕たちでも勝てないかい?」
「勝てねえよ。これは絶対………俺達は果報を寝て待つしかすることはねーのさあ。ま、オラリオは寝る暇もねえがなあ」
「……………こん時ほど、嘘を見抜ける力がいらんと思った事はないなあ」
ロキはそう言って背もたれに体を預ける。
嘘が良かった。嘘だと思えれば良かった。しかし
「団員全員に気ぃ引き締めるように伝達………
その日、昼間に三日月が現れた。方角も、向きも、時間も何もかもが可笑しい、月。誰もが空を見上げ困惑する中、空無き地下でも異変が起こる。
「う、わ…………ああああ!?」
「な、なんでモンスターがこんなに! ひいいい!?」
「逃げろ、逃げろおおお!!」
人間を見れば襲いかかってくるモンスターは、しかし人間が居なければ無意味に暴れる事は少ない。だが、今は違う。
獲物がいようといまいと関係なく暴れ回る。迷宮の中を走り回り、結果として見つけた獲物を追いかける為冒険者達は何時も以上の数のモンスターを相手する事になる。
身の丈にあった階層に潜る、『冒険をしない冒険者』からすれば最悪の事態。自分達が危うげなく探索できるはずの階層の危険度は2、3階層差では利かぬ危険度になっているのだから。
「い、いやあ! まって、助けて!」
ミノタウロスに捕まったエルフの女冒険者。後衛の彼女を見捨て撤退する冒険者達。
メキメキと己の腰からなる音に吐き気と絶望を感じながら涙を流す。嗚呼、何でこんな事に。
横目で見れば同じく後衛の友人が頭から血を流して倒れている。自分を庇って、ミノタウロスの持っていた棍棒が頭を掠めたのだ。
助けてくれたのに、こんな事になった。ごめんなさいと、謝りたくとも圧迫された状態では呼吸もままならぬ。と、ミノタウロスの腕が突如斬られる。
「ヴゥアアアアア!?」
「ははははは。思ったより大惨事だなあ…………まあギルドとしても、事の発端を明かしてダンジョンの出入りを禁止する事はできねえもんなあ」
ケラケラと笑い声が聞こえる。地面に落ちる筈だった彼女を支えるのは、赤髪のヒューマン。ミノタウロスが残った腕で棍棒を振るえば、ヒューマンは腕の中の彼女から片手を離し剣を振るう。
棍棒もろとも切り裂かれたミノタウロスの鮮血が舞う。
「ほれ、さっさとその気絶した女連れて地上に戻れ」
「え、あ…………で、でも……モンスターが………」
「ここに来るまでにだいぶ殺したし、問題ねえ…………」
「え………」
「そこの同胞! モンスターはあらかた始末しました! 我々の仲間が居ますので、今の内に避難を!」
聞こえた声に振り向けば妙齢のエルフが叫んでいた。エルフの女冒険者は気絶した仲間を抱えると少年と妙齢のエルフに頭を下げ地上に向かった。
「彼女達が、この階層最後の冒険者です」
「あー、最後の
ケタケタと笑う少年の言葉に、ここまで来る際に見かけた対処が遅れ死んでしまった冒険者の死体を思い出し顔を顰める妙齢のエルフ。
「自分達なら救えたのになんてのぼせ上がんな真面目エルフ。何時から万能になったつもりだ? たかだかLv.4が………」
「………本当に、嫌味な方ですわね。何故貴方と……」
「チームわけの文句はフィンに言え………まあ、俺が奥に向かいすぎるのをきちんと止めようとする真面目ちゃんだからだろうよ」
「…………人命を気にしなくなった今、中層に向かうおつもりで?」
「そっちはフィン達の仕事だからなあ………」
五体満足の人間のエンブレムと、道化師のエンブレムを持つ男女。所属が別らしい彼等はダンジョン内にて落ち着いて話す。
「中層は第一級冒険者………俺等は上層の冒険者保護と、散開してモンスター退治………俺も中層行きてえなあ」
「その割に、大人しく従ってくれたのですね」
「リヴェリアに頼まれたからなあ………またデートしてくれるってよお」
「なっ!? リ、リヴェリア様と、また!? ふ、不敬です! 高貴な方々を何だと!」
「お転婆娘」
叫ぶエルフにやはり笑う少年、ヴァハ・クラネル。
妙齢のエルフ………アリシア・フォレストライトはそんなヴァハに叫ぶが、突如ダンジョンの天井や壁、床にまで亀裂が広がっていく。
「フェイズ2だ………遅れを取るなよ」
「誰に物を言ってますの?」
「お前だけどお?」
「……………その返しは予想していませんでしたわ」
なろうの方もよろしくお願いします
感想お待ちしております
ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員