ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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異変

 ダンジョンから次々生まれるモンスターの大群。キラーアント、ウォーシャドウ、コボルト。

 上位種も合わさった群れが無尽蔵に湧き出ていく。

 地上に出現した神の権能、下界を消し飛ばす矢の気配にダンジョンが苛立っているのだ。

 

「ハハァ。良いねえ、狩り放題だ」

 

 殆どの冒険者が泣き出すその光景を、笑うヴァハ。

 椿の打った新たな剣を振るいモンスター達を肉片へと変える。

 魔石を砕かれなかったモンスターは屍を晒し、魔石を砕かれたモンスターは灰をばら撒く。

 

「ふせてください!」

 

 と、アリシアが叫ぶと同時にヴァハがその場で身を低くする。隙だと思ったのか、モンスター達が殺到するも、その前にアリシアの詠唱が完成した。

 

「【カーヴィング・アズール】!!」

 

 大量の水が押し寄せモンスター達を押し流す。中には水流でバラバラにされたものも居る。それでも、減った分は補充と言わんばかりに次々モンスターが生まれ、濡れた地面に接触する。

 

「死ね」

 

 次の瞬間、雷が濡れた地面や壁を駆け巡る。魔法によって生み出された水は魔力により生み出された雷を良く通す。生まれてすぐに、モンスター達の命が尽きた。

 

「いいなあ、お前。中々役に立つ………」

「レベルは、わたくしの方が上ですのに、その言葉を否定できないのが悔しいですね………」

 

 明らかに上から発言するヴァハ。レベルを考えればアリシアの方が上だが、この場において流れを生み出しているのはあきらかにヴァハだ。悔しいが、彼の実力は本物と認めるしかない。

 それよりも、とダンジョンに再び目を向けるアリシア。

 モンスターが生まれるために砕けた箇所が、修復もせずに新たにモンスターを生み出している。『怪物の宴(モンスターパーティー)』が大人しく思える光景だ。

 

「ハハァ。こりゃ暫く豪遊が出来そうだなあ」

「もう先を見ているのですか………頼もしい限りですわ」

 

 大言を吐くだけの実力を、嫌というほど見せられた。それでもやはり血を浴び、啜り、笑う彼にはエルフとして思うところがある。と、その時だった…………

 

「───ッ!? な、なんですか、これは!?」

「あ〜、アンタレスに捕捉されたな…………チッ」

 

 ヴァハは面倒臭そうに舌打ちすると、アリシアをその場から突き飛ばす。

 

「な、何を!? ……な!」

 

 尻もちを付いたアリシアが叫び、その光景を目にして固まる。

 ヴァハの足元が砕けた。モンスターが生まれる前兆ではない、穴が空いたのだ。次の階層に向かうための縦穴が。

 咄嗟に腕を伸ばし、しかしヴァハに触れる前に止まってしまう。それを見たヴァハは馬鹿にするような笑みを浮かべ、瓦礫と共に穴の中に吸い込まれて行く。

 下を覗けば、また穴が見えた。

 この階層だけでは無い。他の階層も、竪穴が開いたのだ。まるでヴァハ・クラネルという人間のみを狙ったかのように。

 

「────っ!」

 

 この深い闇の底に、何が待つのか解らない。それでも、先程の顔を思い出す。

 助けようとして、手が止まってしまった自分に向けられた顔。エルフが他種族に手を差し伸べられるわけ無いだろ? とでも言うような、馬鹿にした顔。

 屈辱だ。己のせいで同胞をコケにされた。何より、それを否定できない行動をとってしまった自分が恥ずかしい。

 というか、何階層まで続くかわからぬ縦穴から落ちて、彼は無事なのか?

 

 

 

 アンタレスは恐れる。己を滅ぼす力を持つ矢を。

 だが、矢の使い手は恐れぬ。脆弱に過ぎる、その存在を恐れる必要がまるでない。

 故にそちらに力を割く必要はない。撫でる程度で勝手に吹き飛ぶ。今はそれより、手にした力を存分に振るおう。

 遥か上空に、力を溜めて、何処に撃とうか、全知の力を以て下界を見渡し、気づく。

 かつてこの身を封じた忌々しき大精霊の同胞の気配。それも、取り込んだこの神の記憶を辿れば大神の分霊。

 嗚呼、恐ろしい。神となったこの身を、再び封じるかもしれぬ。それは嫌だ。それだけは嫌だ。

 標的は決めた。あれを滅ぼす。全力の弓を以て消し去る。力はまだ溜まらぬ。だが、照準は合わせる。何時でも消せるように。その地ごと、滅ぼせるように。

 ダンジョンもまた、その力を感じ取る。己に向けられたその力。否、己の中にある何かに向けられたその力。標的を探す。見つけた。殺す。

 

 

 

「いててて………」

 

 瓦礫に巻き込まれながらもピンピンしていたヴァハは、周囲を見回す。どうやらここは17階層。『嘆きの大壁』のようだ。

 随分と落とされた。と、ビシリと壁に亀裂が走る。

 バキバキ音を立て広がる亀裂。その音はまるで喘ぎ、苦しみ、嘆くような音。

 ガラガラと崩れる壁の奥から、嘆きの声と共にそれは産声を上げる。

 

「オオオオォォォォォッ!!」

 

 ズンッ! と階層を震わせる足音が響く。石の床を、()が砕く。

 そのモンスターはこの階層で唯一生まれる『ゴライアス』に似ていた。だが、その肌は黒く、下半身はまるで馬のよう。

 『ケンタウロス』というモンスターに似ている。

 

「あ?」

 

 そのモンスターは壁に手を突っ込む。引き抜くと、瓦礫と共に巨大な弓が現れる。弓、だ。

 人間の武器。モンスターが振るう鈍器や刃物と異なる、確かな知恵により生み出されたはずの道具。外で振るわれている神の力に対する皮肉だろうか?

 

「さしずめカウス・アウストラリスと言ったところかあ? モンスターだけじゃねえのな、変化してるのは」

 

 ダンジョンもまた変わりつつある。古代、力を大量に使ったダンジョンが、知恵をつけ始めた。存外精霊を食ったのもそれが関係しているのかもしれない。

 

「………まあ、良い。どうでも良い………殺し合おうぜ、俺とお前はモンスターと人類なんだからなあ」

「きゃあ!?」

「…………あ?」

 

 突如後ろから響いた可愛らしい悲鳴。振り返ると、妙齢のエルフがそこに居た。

 

「いたた………ここは、17階層!? それに、あれは!」

「…………なんで居んのお前?」

 

 アリシアの登場に、ヴァハは珍獣でも見るかのような視線を向けるのだった。




アンタレス 精霊がトラウマ。精霊おるやん。そうだ、手に入れた力でこーろそ!

ダンジョン なんか狙われてる? いや、これは中にいるやつのせいだ! 殺そ!

ヴァハ 強いモンスター生まれたなあ。楽しい殺し合いになりそうだ

カウス・アウトラリス君 ゴライアス君の完全亜種。高い機動力を有する遠距離攻撃も可能なモンスター。寿命は漆黒のゴライアスと同じ。
その獲物、漆黒のゴライアスの寿命を一日だけにした奴と兄弟だから仕方ないよ

感想お待ちしております

ヴァハ君のヒロイン

  • フィルヴィス・シャリア
  • アスフィ・アル・アンドロメダ
  • アミッド・テアサナーレ
  • エルフィ・コレット
  • メイナちゃんやティオナを混ぜて全員
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