ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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殺戮の女神と美神

 【ロキ・ファミリア】の目的は、ダンジョンの出入り口の有無の確認。少なくとも海底洞窟は閉ざされていたが食人花が出たと言うことは何らかの形で怪人(クリーチャー)の計画が関わっていると見ていいだろう。

 その調査をする為に、聞き込みをすることにした。

 

 

「うにゃ〜、面倒くさい事やってくれるにゃ」

 

 クロエは爪を噛み苦々しげに呟く。彼女はニョルズが行っている取引を知っている。その相手がろくでもない事を経験から感じ取っている。

 そんな連中とつるんだニョルズ。最悪、邪神認定されるかもしれない。ニョルズにはクロエの方から動くなと言っておいたし、彼の行いの証拠となるものはクロエが処理した。

 問題はじつは繋がっているらしいギルドとボルグの方は別だ。下手な接触は勘付かれるし、ギルドのルバートとか言う男はプライドが高く己の行為に無駄はないとか思ってそうなので下手に干渉したら騒がれる。

 

「ん〜、悪巧みは一人でするもんじゃないにゃ〜。世界一あくどい男にも、手伝ってもらうにゃ」

 

 

 

 

「ヴァハ・クラネルを訪ねるのですか?」

「ああ。彼奴は、何かと勘が良く働く。何かに気づいている可能性があるからな」

 

 リヴェリアの言葉にアリシアは確かに、と頷く。ダンジョンの異常事態(イレギュラー)を察知したりこちらの心境を見抜いて挑発してきたりと、性格はともかく鋭い観察眼を持っているのはのは確かだ。

 

「確か、ここだな」

「んにゃ?」

「む?」

「……あ」

 

 ヴァハが泊まる部屋を目指し、廊下の向こうから歩いてきた人影をてっきり宿に泊まった別の客かと思えば同じ扉の前で止まった。

 黒髪の猫人(キャットピープル)。確か、ヴァハと共にメレンに来たクロエという女性。ともに来たということは、仲がいいのだろうか?

 そのまま3人固まっていると、気配に気付いたのか扉が開く。

 

「おはようございます。いえ、もうこんにちはです?」

 

 少したどたどしい共通語(コイネー)で挨拶してきたのは黒髪褐色肌の美女。ニコリと微笑むその顔は何処か安心感を覚えてしまう、柔らかな笑み。目は伏せられているが弧を描くその形は親しさを感じさせる。

 

「ヴァハに用事ですか? 少々お待ちを」

 

 そう言って部屋の中に戻った女は、ベッドで眠るヴァハを起こす。ヴァハはふぁ、と欠伸しながら起き上がった。

 

「ああ、お前らか。どーしたこんな時間に………いや、俺が寝すぎただけかぁ?」

「フフ。では、私はこれで。素敵な夜でした………あなたのお母様の話、また今度聞かせてください。あなたの事を知りたいの」

「恋してるような顔をするなよ、んな感情(もん)ねえだろお?」

 

 アマゾネスの女、タギーは頬を染め、何処か気品すら感じさせる柔らかな笑みを浮かべヴァハの頬にキスをすると去っていった。

 

「……………何してたにゃ?」

「抱いた」

「き、昨日あったばかりの女性を誘ったのですか!?」

「誘われた。俺はモテるからなぁ」

「断らなかったのか?」

「別段断る理由もなかったしなあ。んで、何かようか?」

 

 

 

 

 

 

 何とか自分を落ち着けた3人とヴァハは、朝飯を取りながら会話をする。彼女たちにとっては昼飯だが。

 クロエはヴァハが余計な事を言わないかじっと観察していた。

 

「この街で怪しいところ、ねえ。んなもん俺が知るかよ。地下水路は?」

「そこはもう調べたが、少なくとも鉄柵は無事だった。食人花は陸路で湖に放たれたと見ていいだろう」

「あのサイズだ、ギルドか街の支配者であるボルグのおっさん、或いはニョルズんとこが関わってんだろ。つっても、眷属達(ガキ共)を危険に晒すようなことに加担するとは思えねえが」

 

 逆に言えば、眷属達の安全の為なら間違いなく何かをする。そう付け足すヴァハの足をクロエが蹴る。余計なことは言うなという意味だ。

 

「食人花を放つなど、危険を増やすだけでは?」

「なら違うんじゃねーの」

 

 ヴァハは今回の件に特に興味はなさそうだ。が、やはり何かに気づいているのか不意に笑う。

 

「もう少し、街の匂いを嗅いでみろ。潮風の匂いだけじゃなくて、醜さ隠そうと必死に化粧する女特有の化粧臭い加齢臭と麝香の匂いがするぜ?」

「麝香?」

 

 香料の匂い? こんな街で?

 いや、まて。アマゾネスに、麝香? まさかあのファミリアが? しかし、何故?

 闘国(テルスキュラ)は戦士の国で、強さというのはしかし国内で自己完結しているはず。そんな彼女達が国を出た理由は……明らかにこちらを下に見ていた彼女達でも認める強者。この世界において、風聞よりもなお解りやすい強さの目安はLv………Lv.6を率いる彼女達が認める強者は……………。

 

「【フレイヤ・ファミリア】………まさか、神イシュタル?」

「フレイヤが内面真っ黒なクソガキだとするとイシュタルは内面外面腐って必死に化粧で誤魔化すクソババアだ。ババアは年下に嫉妬するからなあ」

 

 イシュタル神はフレイヤ神より古い神だ。権能も多く、神格だって高い筈だ。なのに周りが崇めるのはフレイヤばかり。所詮この世は若さが全て。

 

「俺はそういうの大好きだがなあ。争いの火種を生んでくれる女は、ああ、好きだとも」

「誰彼構わず抱くくせに女に好みとかあんのにゃ?」

「少なくともこういう女なら良いと考えたことはあるなあ。向こうは俺の事死ぬほど嫌ってたから、毎日殺し合いが出来る最高の女が」

 

 

 

 

 

 【カーリー・ファミリア】が拠点としている薄暗い地下にて、カーリーは果実を食いながら待ち人を待つ。少し退屈なのか、タギーに目を向けた。

 

「何やら男を知った顔をしておるの」

「はい。素敵な夜を、味わわせていただきました………」

「昨日の戦士か?」

「ええ。だからアルガナ、彼に手を出さないで? あなたって、とっても可愛いからあの人も好きになってしまうかも」

「お前が狙う者に手を出す者などいるものか」

 

 アルガナはチッと舌打ちをした。こいつに狙われたという事は、あの男ももう終わりだろう。全く何時から目をつけていたのやら。

 と、一つしかない扉が開かれた。

 

「──集まっているようだな」

 

 現れたのは美しい女神。戦うことしか知らない闘国(テルスキュラ)のアマゾネス達も見惚れるほどの、『傾国の美女』すら霞む美神。

 殆どの者が魂を抜かれたように呆け、バーチェが眉間にしわを刻み耐えアルガナは興味深そうに見つめタギーはそもそも目を開けてすらいない。

 目に映らぬとも、その存在だけで下界の住民を魅了するはずの美神の登場に全くと言っていいほど心が動かされていない。

 美神、イシュタルはそんなタギーを忌々しげに一睨みした。イシュタル………そう、ヴァハの予想はあたっていた。

 イシュタルはフレイヤを地に落とし、泥を塗り、屈辱を与え天界に送り返すために戦力を求めた。

 カーリーは世界に名を轟かせる【フレイヤ・ファミリア】との闘争を求めた。

 打ち合わせもある程度終わり、ふとカーリーが金とは違う報酬を、先に頂きたいと言い出した。

 

「………言ってみろ」

「【ロキ・ファミリア】と戦いたい」

「ふざけるなっ。フレイヤの眷属共も馬鹿げているが、あそこの連中も大概だ。フレイヤと一戦構える前に大事になるに決まっている」

 

 カーリーの言葉に馬鹿な事を、と柳眉を吊り上げるイシュタルに対し、カーリーはカラカラと笑う。厳密にはアマゾネスの姉妹、ヒリュテ姉妹とアルガナ達を戦わせたいので露払をしたいとのことだ。だとしても同じだと断ろうとしたイシュタルだったが………

 

「ゲゲゲゲゲッ。やらせなよぉ、イシュタル様ぁ」

 

 そう言ったのはこの場にいる美女達と同じアマゾネスとは思えぬ巨女。縦にも横にも伸びた体型で、おかっぱに切り揃えられた髪。

 まるでヒキガエルのようなその風体によく合う嗄れた声で笑ったのはフリュネというLv.5のアマゾネス。

 本来フレイヤが狙いではあるが、【ロキ・ファミリア】と因縁があるのなら、いっそそれが訪れた理由だと誤認させれば襲撃もしやすくなると。

 イシュタルは暫く考え、了承した。と………

 

「それなら、あと一つ」

「…………なんだ」

 

 神と神の契約に割って入ったのはタギー。

 

「ヴァハ・クラネルは私にください。彼は、私が殺すので」

「……………ヴァハを?」

 

 その言葉に反応したのは、【イシュタル・ファミリア】のアマゾネス。ユノだ。

 

「駄目よ、そんなの駄目だわ。あの人を殺すなんて許されない。守らなきゃ、私が。ああ、でもどうすれば? 貴方を殺せば守れるかしら? それとも、ヴァハが戦えないようにする? ええ、そうね。それが良いわ。だってあの人は戦うのが好きだもの。戦えなくすればそれで…………」

 

 ゴッ! とユノが殴られ吹き飛ばされる。壁に激突し瓦礫に埋まるユノにタギーは一瞥することなくイシュタルに向き直る。

 

「許可はいただけるでしょうか…………っ?」

 

 再び問い、ユノを殴った腕に違和感を覚える。

 

「だ、め………」

 

 腕に絡みついた真っ赤な赤子。腕を振るい壁に向かって投げるとビチャッ! と水風船でも破裂したかのように弾ける。

 ツー、としたたり落ち床に広がる血は、明らかに質量を無視して広がり泡立つ。

 

「ぱぱ、いじめる………だめ」「ゆるさない」「だめ」

「ころすの」「ゆるさ」「だめ」「ぱぱ」「いじめる?」「ころさなきゃ」「ぱぱ」「だめ」「だめ」「いじめないで」

 

 ゴボゴボと泡立ち無数の赤子が現れ窪んだ眼窩がタギーを見つめる。タギーはふむ、とその光景を見つめる。

 

「良いでしょう。今回は譲ります………どうせ()があるでしょうから、私はその時に」




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ヴァハ君のヒロイン

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