ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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メレンの騒動

 ヴァハは街の新鮮な魚を魔法で焼き魚にしながらブラブラ歩いていると、不意に足を止める。人が人を殴る音。路地裏からした。

 血と人の脂と女の匂い。向かってみれば、数人の男女が倒れておりエルフの少女がアマゾネスに担がれていた。随分とぐったりしている。完全に気絶しているようだ。

 

「ん? おお、お主か」

「カーリー……なんだあ? 戦争でもおっぱじめようってか?」

 

 エルフの少女はレフィーヤだった。【ロキ・ファミリア】の団員に手を出すなど迷宮都市(オラリオ)でやるのは【フレイヤ・ファミリア】ぐらいだろう暴挙を行うアマゾネス達にヴァハは何処か楽しそうに笑う。

 

「いやいや、我等が用があるのはヒリュテのみよ。まあ、邪魔されぬように足止めは頼むがな」

「ああ、イシュタルのババアに押し付けんのか」

「なんじゃ知っておったのか」

「香水くせえ、加齢臭隠したいなら別の使えと伝えとけ………」

 

 ヴァハはそう言いながら額から血を流す【ロキ・ファミリア】の団員達に近付くと血を操り鎖を作り巻き付ける。

 

「止めぬのか?」

「どうしてぇ?」

「………ふ。くく、失言であったな………我が子が世話になった。男を一生知れぬかと思っておったからな、孕んでいたら貴様の子は我等が責任を持って育てよう」

「頼むなぁ……」

 

 アマゾネス達にとって、ヴァハも【ロキ・ファミリア】も同じ所属の存在、そうでなくとも共にある仲間のようなものだと思っていた。だがヴァハはそんな仲間が傷つけられ、攫われそうとしてる状況で楽しそうに笑う。

 理解出来ない。弱い仲間を嘲るなら、アマゾネス達とて理解したろう。だが、嘲るでもなく、ただの日常の1ページ、道端に転がっていたきれいな石の話でもするかの様に主神と会話しているヴァハに、思わず後退る。

 ヴァハ・クラネルは強者だ。アルガナとの戦いを見れば誰でも理解する。アマゾネスにとって、魅力的な雄。

 何なら、彼が現れた時点で攫おうなどと考えていた者もいた。だが、最早それを考える事はできない。

 ただただ、恐ろしい。アマゾネス達はヴァハが去ったあとも、カーリーが声をかけるまで誰一人として、Lv.6のバーチェまでもが動く事が出来なかった。

 

 

 

 

 

「アマゾネスに襲われていた、か………クソ、やってくれるやんあのクソチビ」

 

 大事な眷属(こども)を傷つけられ怒り心頭なロキは、それでもなんとか平静を保とうと息を吐きヴァハに見つけてくれて助かった、と礼を言う。

 

「すまんな、今夜は、騒がしくなる………夜は、出歩かんほうがええ」

「やだねえ、俺も参加するぜえ?」

「…………さよか。なら、頼むわ」

 

 ロキは、彼が単なる私情で、こちらの団員を一切気遣わず参戦すると言っているのを察する。誰かの為に戦うとか、そういうキャラではない。

 とはいえ使えるものは全部使う。

 

 

 

 

 ユノに姓はない。そういった概念のない集落で育った。集落全体が、一つの家族なのだ。

 闘国(テルスキュラ)とはまた違ったアマゾネスのみの集落。森の奥深くに存在し、森を出て近くの村を襲い、戦いに挑んできた者を勇気あるものとして捕らえ種馬にする。そんな一団。家族を取り戻そうと森に足を踏み入れれば最後、女は殺され男は男としての機能を果たせさえすれば良いと言わんばかりの状態にさせられる。

 そんな集落のルール。逃げる肉など食うな、弱くなる。戦う肉だけ食え、強くなる。そんなルール。

 要するに強いやつを食えばその分強くなり、生まれる子も強くなると言う、そんな考え。

 ユノは落ちこぼれだった。同世代が熊や狼を狩る中、蛇や牝鹿などが精々。それも大怪我をして。

 弱い奴しか食わぬから、弱いままなのだと蔑まれる毎日。

 そんなある日、ユノは一人の男に恋をした。

 父を取り返しに来た息子。幼く、弱く、ユノでも倒せるほどの弱さ。涙を流し蹲る。自分に重なり、逃してやった。他の誰かに知られたら種にする価値もない。それでも何度も何度も向かってきた。弱いのに、向かってきた。何時しかユノより強くなって、アマゾネスを憎んでいるはずなのにユノを殺さず森の奥へと向かっていった。

 そして、ユノ以外のアマゾネスに見つかり殺された。

 彼はユノより強かった。ユノは彼を愛していた。獣に食わせてやるなど、ごめんだった。だから、()()()

 だって、強い彼を食べれば、自分も強くなれるはず。子も強くなるのなら、きっと産まれる子供は彼の力を継いでいる。なら、彼の子と言っても良いはずだ。

 だけど、それじゃあ足りない。私の彼の子は、きっと強くなれない。もっと強い子を産みたい。そう思ったユノはその日から、文字通り命がけで戦うようになった。

 狼や熊、大きな牡鹿、虎も狩り、食い尽くす。

 仲間達はそんなユノを見直した。ユノに話しかけるようになり………ユノは向こうから近づいてきてくれる強い仲間達を殺して食べた。

 そして、集落から人が何時の間にか消えるとユノは旅に出た。より強い存在を食べる為に。食べて強い子を生むために。

 殺して殺して殺して食べて食べて食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて殺して食べて

 

 

 

 

 

「…………あぁれぇ? わたしぃ、なんで強い子を産みたかったんだっけぇ?」

 

 潮風が吹く夜の港町(メレン)。建物の屋上で、ユノは愛する男を探しながら不意に自分が強い子供を産みたがる理由を思い出そうとして、思い出せない事に首を傾げる。

 まあ、どうでもいい事だ。ユノは艶めかしい仕草で己の腹に刻まれた傷跡を撫でる。まるで陰部に触れたかのように全身にゾクゾクとした快楽が走り、頬が紅潮する。

 彼との出会いは、今でも覚えている。見向きもせずに斬られ、しかしすぐにこちらを見てくれた。恐怖の視線を向けてきた彼等と違い、真っ直ぐこちらを見てくれたあの瞳に、心を奪われた。

 彼の子を産みたい。彼の血筋を孕みたい。アマゾネスの本能が、歪んだ悪意とも違う欲望となりユノの体を震わせる。

 ところで彼等とは誰の事だったか? まあ、思い出せないならどうでもいい事だろう。

 食人花達の咆哮が響く。破壊の音が各所で鳴る。合図だ。もう、我慢は不要。

 

「ああ、ああ、ヴァハ! 殺し合いましょう! お互いの血と肉が一つになるまで、まぐわいましょう! そして最後に、貴方を食べさせて?」

 

 そしたらきっと、強い貴方の子を産めるから。

 屋根を踏み砕かんばかりの勢いで蹴り、砲弾の如き速度でヴァハに向かうユノ。

 曲線を描く二本の剣がヴァハの持つ赤い剣とぶつかり合った。

 

「【我を殺すは我を愛せし英雄。嘆くなアキレスこの身は汝の子を孕む】」

「────!」

 

 ユノがヴァハに迫り、攻撃を弾かれた数瞬。二人は互いに互いを傷つけあい両者から血が流れる。

 

「【我は戦士の王】──【イーリオス・アマゾーン】」

 

 両者の血が泡立つ。無数の赤子の姿を取る。ヴァハは、群がる赤子を切り捨てながら、笑った。女の傷から流れる血が、あまりに美味そうな匂いを放っていたから。

 

 

 

 

『ユノ Lv.4

所属【イシュタル・ファミリア】

力:I85

耐久:H124

器用:I96

敏捷:H108

魔力:H145

狩人H

耐異常G

魔法

【イーリオス・アマゾーン】

呪詛(カース)

・『愛する者』と己の血を媒介に子を産み出す

・記憶の消費

スキル

弱肉共食(ジャイアントイート)

・『愛する者』との相対時ステイタス高域補正

・愛の強さにより効果向上

吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)

・吸血による対象の魔力回復、治癒力超向上

・最終吸血時に全てを対象に捧げる  』




空白には文字が隠してあります。ユノは覚えてないけど

感想お待ちしております

ヴァハ君のヒロイン

  • フィルヴィス・シャリア
  • アスフィ・アル・アンドロメダ
  • アミッド・テアサナーレ
  • エルフィ・コレット
  • メイナちゃんやティオナを混ぜて全員

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