ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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アポロン・ファミリア

 私が主役だと言わんばかりに現れたアポロン。

 その視線がネットリと質量を持ったかのようにクラネル兄弟に絡み付く。

 

「遅くなったが………ヘスティア。先日は私の眷属が世話になった」

「………ああ、ボクの方こそ」

 

 皮肉たっぷりなその態度に、ヘスティアが苦々しげな顔を浮かべる。

 

「私の子は君の子に重傷を負わされた。代償をもらい受けたい」

「………重傷?」

 

 その言葉に首を傾げるヘスティア。確かにベルは小人(パルゥム)の冒険者を蹴ったが、重傷を負わせるほどだとは聞いてない。

 

「どういうことだい、ベル君だって怪我をして帰ってきたんだ!」

 

 なのに一方的に代償を払えなどと、横暴が過ぎる。

 

「そんな言い訳は通じないよ」

 

 と、アポロンが誰かを指差す。そちらに向けば全身を包帯で巻いた小人(パルゥム)が居た。

 

「いてぇ〜、いてぇ〜よぉ」

「ああ、私の可愛いルアン! 可哀想に!」

 

 わざとらしく泣き真似をするアポロン。ヘスティアはここまでやったの? と、兄が兄だけに若干疑ってしまうがベルはしてません! と叫ぶ。

 

「先に手を出したのはそちらだと聞いている。証人もいる、言い逃れは出来ない」

 

 と、数人の男達が立つ。【アポロン・ファミリア】だけではない、別派閥の冒険者も。彼らの主神であろう神々がニヤニヤと様子を見ている。協力者だろう。

 

「冗談じゃない! こんな茶番に付き合ってられるか、僕は帰らせてもらう! 行くぞ、ベル君!」

 

 ヘスティアはそう叫び帰ろうとする。

 

「ほぉ〜、どうやっても罪を認めないつもりか、ヘスティアぁ」

「くっ!」

「ならば仕方ない! 【アポロン・ファミリア】は、君に『戦争遊戯(ウォーゲーム)』を申し込む!」

 

 その言葉に、周囲が騒ぎ出す。

 

『待ってました〜!』『アポロン容赦ねえなあ!』『逆に見てみた〜い!』

 

 娯楽好きの神らしく、楽しそうに騒ぐ神々は、どうやら流れとしてはアポロンの味方らしい。弱いものいじめを見るのも楽しむものから昨今有名な【リトル・ルーキー】の新たな伝説誕生を見たがっているものまで様々だが。

 

「ああ、もちろん【ヘスティア・ファミリア】だけでは可愛そうだからね、【ミアハ・ファミリア】のヴァハ・クラネル。ベル君の兄を参加させても構わないとも。いや、むしろ参戦させたまえ」

「………些か、横暴がすぎるぞ? アポロン」

 

 ミアハが怒気を滲ませアポロンを睨む。仮にも太陽神、それなりの神格を持つも下界にてすっかり堕落した神たる同胞を睨むミアハにアポロンはヒッ、と後退る。温厚な性格故に忘れられていたが、ミアハはその気になれば下界の命を全て不死に出来る365種類の薬草を生み出せる程に桁外れな神格を持った神なのだ。ちなみに本来父的な存在に当たるディアンケヒトよりも凄い。それがディアンケヒトがミアハに絡む理由の一つだったりする。

 

「ふ、ふん! 聞けばベル君は物心ついた頃から兄と祖父しかいなかったそうじゃないか! であるなら、育てた彼にも責任の一端はあるだろう!?」

 

 と、その言葉にベルがカッ! と顔を赤くする。すぐに叫びたそうとするがヘスティアが止める。ここで下手に騒ぐのは不味い。

 

『………え、【狂剣(フィンディアス)】も参加させんの?』『おいおいおい』『死ぬわ、彼奴』『ほう、【狂剣(フィンディアス)】ですか。大した勇気ですね………死ぬわ彼奴』

 

 歓楽街に良く通う男神は、たまたま歓楽街で【イシュタル・ファミリア】相手に暴れまわるヴァハを目撃した事がある。その中にはLv.3は複数いたが誰一人としてヴァハの足元にも及ばなかったのを覚えている。

 そんな彼等の言葉に気付かぬアポロン。

 

「我々が勝ったら、クラネル兄弟を渡してもらおう」

 

 

 

 

 その日は受けないと言い切り帰った。

 とはいえ、アポロンが引くとも思えない。リヴェリアは念の為フィンに報告しておいた。何気に、【ロキ・ファミリア】ともそれなりの交流があるし。ついこの間なんかモンスター狂乱事件の際の礼にとアリシアと食事に行ってたし。

 そして翌日の早朝。爆音が響く。場所は2箇所。 しかし、住人達は慌ただしく避難したりはするものの混乱というほど動揺することはなかった。

 なにせここはオラリオ、世界で最も熱い街と称される程の場所で、冒険者が山ほど居る地だ。血気盛んな冒険者達が大人数いる関係上、戦闘など最早日常とさえ言えた。またか、それくらいの感覚で彼等は再び屋内へと戻っていく。

 

「まさかアポロンのところが! クソ!」

「待てリヴェリア、何処に行く気だい?」

「フィン……」

 

 飛び出そうとしたリヴェリアを、フィンが止める。

 

「君が他派閥の誰かに入れ込むなんて、少し意外だね。嬉しくも思うよ、けどその行動は目に余る……」

「…………」

「どうしても彼を助けたいというのなら、せめて彼をうちに誘うぐらいは」

「違う! そうじゃない、危険なのはヴァハではなくヴァハだ! ああ、いや、違う………そう、危険なのはオラリオの住人だ!」

「? 確かに【アポロン・ファミリア】も派手に暴れているけど、彼等も馬鹿じゃない。住人に危害は及ばないようにすると思うけど?」

「お前はヴァハを解ってない。彼奴は、暴れないんじゃない、暴れる理由がないだけだ………それを、【アポロン・ファミリア】が作った………作ってしまった」

 

 眠った獅子を起こす、なんて諺があるらしい。だが、今回の相手は獅子などではない。檻の中で楽しいことがないか待っている怪物の檻に全身にソース塗ったくって檻の中に飛び込むようなものだ。人を怪物扱いするのは正直気が引けるがそうとしか表現できない。

 

 

 

 

 ヴァハは殺し合いが大好きだ。

 怖がられたいわけではない。だから、相手が自分に憎悪を抱くと良い。ユノみたいに憎悪などなく殺しに来るのは、尚良い。

 だけど【アポロン・ファミリア】の連中は雑魚ばかりで、臆病者ばかり。弱いものいじめは出来ても相手が強いと解れば及び腰になるのが殆だろう。ではどうするか? 決まっている。許せないだけの憎悪を作ればいい。どうやって? アポロンの眷属達でアポロンに忠義を誓うのはケツの緩い男か股の緩い女だ。そんな彼等彼女等をアポロンが気に居る理由は、顔。それに限る。

 ()()()()()()()

 

「いぎあああああ!?」

「暴れるなよぉ、うっかり目を潰しちまうだろお?」

 

 ベリベリと何かを引き剥がす音が聞こえる。

 剥がそうとする『それ』と『そこ』を繋ぐ脂肪の層を刃物で斬りながら剥がしていく。

 興味本位で覗きに来たオラリオの住人がその場で気絶したり、吐いたりしている。

 

「んっん〜。取り敢えず10枚ってところか………あ」

 

 と、そのうち1名のエルフに気付く。確かリヴェリアがどうこう言ってた奴だ。エルフと言うのは自分達種族を至高と思う連中が多い。中には神より優れているなんて宣う集落もあったりする。旅の際たまたま近くを通っただけで魔法を放ってきた集落の連中にやってやったことを思い出す。醜い種族が、なんて言ってきたから自慢のお綺麗な顔を引っぺがし、エルフの象徴とも言える耳を外してやったっけ。皮を剥がせば、案外かんたんに軟骨から取れる。

 オラリオに、また新しい悲鳴が響き渡った。




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ヴァハ君のヒロイン

  • フィルヴィス・シャリア
  • アスフィ・アル・アンドロメダ
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  • エルフィ・コレット
  • メイナちゃんやティオナを混ぜて全員
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