ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
ヘスティア・ナイフと雷霆の剣がぶつかり合い火花が散る。
Lv.2とLv.3、何方も常人離れした身体能力で建物の壁を駆け上がりながら得物を振るう。ヴァハは楽しげに、ベルは必死に喰らいつく。
Lv.差など無くとも、ヴァハの戦闘センスはかなり高い。ベルも覚えた事を学び、戦いの中で成長できるが、戦闘経験の差はどうしたって今更埋める事は出来ない。それに──
「そんなに下が気になるのかぁ?」
「がっ!?」
あまり派手に壊すと下で動けない【ソーマ・ファミリア】の団員が、と僅かに意識が削がれたベルに、ヴァハの蹴りが放たれる。
吹き飛ばされ路面を転がるベル。ここでもまだ他人を気にするだろう。顔を掴むと、駆け出す。屋根の上に駆け上がり屋根から屋根へとつたい、大きな建物を見つけると壁を登り中に入る。中央には天井はなかった。
場所は闘技場。【ガネーシャ・ファミリア】の私有地だが、まあ街で暴れない為とでも言えば初犯だし『
「カマァン」
クイクイと指を動かすヴァハに、立ち上がったベルは駆け出しナイフを振るうが回避され腹に肘を打ち込まれる。倒れそうになるも耐え体を起こしながらの振り上げは身をそらし回避され、そのまま後転してベルの顎を蹴り上げる。
体が浮き上がるほどの威力。意識が飛びかけるも、着地するために態勢を整えようとしたベルの腹にヴァハの手が添えられ、爆ぜる。
「────!?」
そう錯覚する程の衝撃。地面を何度も転がるほど吹き飛び、ゲホゲホと咳き込みながら胃の中のものを吐き出す。その頭をヴァハが蹴りつける。
「っ!!」
「ど〜したベル。もう終わりかぁ?」
今度は立ち上がるまで待ってくれた。
立ち上がりナイフを構えるベルに、ヴァハは笑う。遊ばれている。ヴァハの癖だ。殺しに来ない敵に、本気は出さない。殺意無き相手は殺さないと言うわけではないが、少なくとも明確な敵対行動にならない限り、己が罪に問われる可能性がある場合、ギリギリのラインで遊ぶ。
どれだけ故意だろうと両主神が事故死に責任を問わぬと契約してしまうゆえに罪に問えない『
「まだ、終わりじゃない!」
立ち上がるベル。闘気は衰えず。ならば良しと迫るヴァハ。狙いは、足!
「へぇ……」
よく見ろ! とベルはヴァハの動きを注視する。誰よりも長く側にいて、誰よりも真っ先に憧れていた存在。
英雄になった自分を妄想する時、自分は誰の動きを真似してきた!!
「そういやアイズに鍛えられてたんだったか? それにしても、良く避ける」
「ずっと、見てきたから………!」
「そうかい、嬉しいねえ」
だが、多少動きを先読みする程度で埋まるほど、彼我の差は浅くない。ヴァハがベルの反応できない速度で足を踏みつけすぐ離す。反射的に踏まれた足を持ち上げバランスを崩したベルに叩き込まれる無数の拳。さらに雷霆の剣が左腕の腱を切り裂く。
「───っ!!」
「ハハハ! これから戦争するってのに、片腕切られた程度で止まってんじゃねぇよぉ! 切り落とされた訳でもねえんだ!」
硬直したベルの首を掴み、観客席のすぐ下まで投げ飛ばすヴァハ。ドゴォン! と土煙が上がり闘技場の一角がひび割れる。
「お〜い、生きてるかぁ?」
「……………何とかね」
瓦礫を押しのけ立ち上がるベル。やはり、折れていない。ヴァハは笑みを深める。やはりベルは面白い。だが、一つ理解できないこともある。
「わっからねぇなあ、何でアポロンとこの奴等を庇うんだ、お前?」
祖父を失ったベルが、悲しんでいたのは知ってるし、同調しやすい彼が他の人間に同じような思いをして欲しくないと考えているのも理解している。
だがそれはそれ、これはこれだ。ましてや【アポロン・ファミリア】は今回の大胆な行動を考えれば、眷属を手に入れる為にベルが嫌うその感情を誰かに与えていた可能性すらある。
「あれは英雄が殺さなきゃならねえ悪だぜぇ?」
物語の英雄は、何時だって悪人を殺してきた。孤独に狂った娼婦を殺した。悲しみに泣き叫ぶ騎士を殺した。モンスターにしか愛を与えられなかった少女を殺した。
英雄とはそういうものだ。万人が定めし悪を討つための装置だ。
「お前の憧れのアイズも、そのファミリアも、暗黒期には多くの人間を殺してる」
「…………そう、かも。でも……僕は、アイズさんに憧れて、背中を追いかけて、隣に立ちたいって思って、あの人みたいになりたいって思ってるし、物語の英雄に憧れている………けど、兄さんが言うような、悪を倒すなんて………僕は
「……………」
「僕は、英雄が悪を滅ぼすから憧れたんじゃない、英雄が、誰かを笑顔にするから、憧れたんだ!」
ヒキ、とヴァハが弧を描く口から、息を零す。楽しそうに笑っている。ベルの夢を笑った訳でもない、ただ、自分の言葉に揺らがず、かと言ってムキになって決意を固めた訳でもなく、それでも尚強く見つめ返すベルが面白いからだ。
「殺さなきゃいけない人は、居るのかもしれない。でも、そうやって命に価値を決めたら、僕はこの先も、仕方ないって割り切る。悪人、善人関係なく、笑顔に出来なかった言い訳をつくる………」
「だろうなぁ。お前は意地は通すが意志を通しきれるかは微妙だもんなぁ」
言い訳が無ければ貫けるだろうが、言い訳が出来てしまえば、それてしまう。それを己でも解っているベルは、意地でも言い訳には縋らない。言い訳を見つけていないふりをする。
だけど、ベルはそれだけで【アポロン・ファミリア】を庇う訳ではない。
「……………」
思い出すのは、オラリオに来る前に同行させてもらった商隊。モンスターに襲われた所を、ヴァハが助けた。文字通り、モンスターをグチャグチャにして。
その時の商人や護衛達の目を、覚えている。
「兄さんはさ、僕がオラリオの人達に嫌われたら、どう思う?」
「まあそういう事もあるだろ」
「だよねぇ………」
彼にこんな質問しても意味なかった。というか、そもそも解り合う必要は、ないんだ。自分は説得しに来た正義の味方なんかではないのだから。
ゴォン、ゴォンと鐘の音が響く。ベルの右腕に光が溜まっていく。
「ハハァ………良い目だ、ベル」
ナイフをしまい、左腕が動かない故に多少歪な構えで拳を握りしめるベル。
「そうだなぁ! 英雄になりたいってほざくなら、力を示せ! 力なき言葉はなんの意味もねぇ、己の理想を押し付ける力を、示してみせろ!」
「示すよ。だけど、これは理想のためじゃない………」
未だ、兄はベルを敵と見ていない。弟だからではなく、弱いから。
「だとしてもぉ!」
駆け出すベルに、敢えてのってやったのか、ヴァハも拳を振るう。ぶつかり合う拳。弾かれたのは、ベル。
「……あ?」
鐘の音は、止まらない。何時の間にか拳の光は、左足に。
「う、おおおおおお!!」
明らかに砕けた手の骨と折れた腕の骨。とんでもなく痛い、転げ回りたいほどに。その痛みに耐え、弾かれた勢いを利用し体を回転させ蹴りを放つベル。
「っ!!」
今度はヴァハが吹き飛ばされた。観客席まで吹き飛び、席を複数破壊する。それでも警戒を解かずに土煙の奥を睨めばヴァハが土煙の中から楽しそうに笑っているのが見えた。が───
「そこまでだ! 両者とも、動くな!」
そんな声が聞こえた。どうやら【ガネーシャ・ファミリア】がやってきたらしい。ベルはその場で気絶した。
「………………」
気絶したベルを見下ろしながら、ヴァハは己の腕を見る。とっさに血液を硬化させたが、怪我自体は負っている。戦闘続行は可能。このまま戦えば自分が勝つ。だが、一撃入れられたのは事実で、そういうルールにしたのも自分。
弱く見積もったつもりはない。ベルの実力はきちんと測って、その上で傷1つつけられるつもりはなかった。その予想を超えてきた。
やはり、面白いな我が弟ながら。
感想お待ちしております
ヴァハ君のヒロイン
-
フィルヴィス・シャリア
-
アスフィ・アル・アンドロメダ
-
アミッド・テアサナーレ
-
エルフィ・コレット
-
メイナちゃんやティオナを混ぜて全員