ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
──ヘリオトロープって、向日葵だっけ?
と、宴での事をベルに話すと、ベルはヴァハが出会ったと言う少女の二つ名を聞いて、そんなことを呟いた。
まあそれは勘違いなのだが。ヘリオトロープは紫の花だし、そもそも向日葵は………
なんてことを説明したのを思い出しながら目の前の少女を見下ろす。現在敵対しているはずのヴァハが現れ、優しくされ、混乱しているクリュティエを。
「え、あ………ヴァハ……クラネル、さん? な、何で………」
敵対派閥だ。本来ならその手を振り払うべきだろう、しかし最早触れられるどころか目も合わせてくれなくなったアポロン以来の、優しく撫でられる感触にそんな考えも溶けていく。
「あ、あの………どうして、ここに?」
「冒険者がダンジョンに潜るのが不思議か? 別に、【アポロン・ファミリア】が闇討ちしてきてもモンスターの餌にする自信あるしな」
クリュティエの顔についた泥や血を拭き終え、取り出したのはポーション。『調合』を持たぬヴァハが作ったものだから効力は多少下がるも十分傷を癒せる。
「あ、ありがとう、ご、こご……ございます」
優しくされるなど、本当に久しぶりでガチガチに緊張するクリュティエ。
お礼言ったけど、これで良かったのだろうか? 服を脱いで手を煩わせたことを謝罪するのが先では? などと卑屈極まりない事を考えるクリュティエの腕を掴み、ヴァハが立たせる。
「まあ、何だ。せっかく会えたんだし少し話でもしようぜ。リヴィラで酒でも飲むか?」
「あ、は、はい………」
押しに弱い。ましてやここ数年来の自分に悪意を向けてこない相手。差し出された手を掴み、立たされる。何故か上機嫌なヴァハに連れられ混乱したままリヴィラに向かう。
集合時間は、明日だし。大丈夫といえば大丈夫だけど。
「あ、あの………何で、私をさ、誘ったんですか?」
「暇だったから」
もうすぐ『
「良いんだよ。あいつ等つまらねえからなぁ………」
どうせ結果は変わらないしな、と言い切るヴァハ。敢えて【ソーマ・ファミリア】を追加したりと、【アポロン・ファミリア】が優位になるようにしているように見えて、実際は少しも優位になってるなどと思っていないのだろう。
【アポロン・ファミリア】の顔を剥がれた10人や彼等と仲が良かった団員、あるいは顔を剥がれた彼等から興味を失ったアポロンを見て自分達はああはなるまいとする団員などは、あわよくば事故に見せかけて彼を殺そうなどと考えている。
裏切り、策謀、殺し合い、因縁、私怨、それら全てを愉しみたい神々により『
「その点お前は面白そうだなぁ」
「わ、私、がですか?」
「ああ、いい目をしてるしなぁ」
さらりと前髪をすくうヴァハ。単色ではない、特徴的な瞳が顕になる。
──君には失望した。二度とその目を私に向けるな
「─────!!」
だが、最愛の太陽に言われた言葉を思い出し思わず目を逸らす。また拒絶されるのではないか、この好意も一時的なものではないのか、そんな風に考え、目の前の彼を見られない。
「そ、そんな、そんな目で、見ないでく………ください………私、な、なんて。そんな、どうせ……失望されて、き、嫌われ………」
「俺は誰かを嫌いになった事はあまりねぇよ」
あまりではないが少しはあるのだろうか?
金糸のような髪を撫でながらケラケラ笑うヴァハに、本当に嫌われないのだろうかと少し期待を込めた目で見るクリュティエ。
「………………」
「あん?」
ふと周りを見るとこれみよがしにイチャイチャしやがってと言いたげな視線が集まっていた。あまり目立ってクリュティエが敵と繋がっているなんて言われて『
幸い人が全くいないヴィリーの宿を見つけた。二人だけだが貸し切り状態だ。
「昔ばなしでもしようぜ、お互いの」
ヴァハは話す。祖父と弟だけで育ってきた事。途中旅に出たこと、この手で殺したかった女に先に死なれた事、弟と再会ししばらくしてから祖父が死んだと聞かされオラリオに来たと言う事。
「お前は?」
「わ、わ、私は、アポロン様に、さ、誘われて……」
クリュティエ・オケアノスは王族。
王位継承権を持つ上の兄姉達や、継承権を持たない中程の兄姉、弟妹達が居た。その中で、何時も虐められていた。
気持ち悪い目だと蔑まれ、家庭教師達から虐めにあい、まともに勉学も受けられぬ故に年下にまで無能と嘲られていた。自分に価値を見いだせず、引きこもろうとも引きずり出され、消えてしまいたいと何度も思った。そんな中、美男美女を探しに来たと現れたアポロンが手を差し伸べたくれたのだ。
もちろんどれだけ見下されようと王族の血がある彼女は政略結婚の道具になる。拒否された。だから、城から抜け出す為に、兄弟達の真似をした。言ってもないことを言ったと言い、やってもない事をやったと教え、それを各派閥の貴族や騎士にもやって、アポロンが滞在する2週間最後の日に、乱心だなんだとあちら此方から悲鳴が響く城から脱出して彼の下に辿り着いた。
「だ、だから……アポロン様は、私をすす、救ってくれて………でも、アポロン様を見つめても、アポロン様は他の男ば、ばかり………」
寂しくて、苦しくて、だから、ほんの些細な嘘を教えた。皆、皆、アポロンの愛を欲しがっていたから、アポロンの愛を受け取る者に嫉妬していたから。ほんの些細な嘘で、殺し合った。数が減った。
自分より新しいのがいなくなって、自分が一番新しくなって、だからまた見てもらえる、そう思ったのに。
「な、何がいけなかったんでしょう………そ、それに、迷惑かけてないみ、皆さんまで私を嫌って………」
彼女にとって嘘は身を守る鎧で、嘘の情報で疑い殺し合うなんて王族なら偶にあること、その程度の認識なのだろう。ヴァハが過去立ち寄った王国でも赤子が生まれたという理由だけで反逆罪の罪を着せられ処刑された側室居たし。
「さてねぇ、なんでだろうなぁ」
ケラケラ笑い、ヴァハはクリュティエの頬を撫でる。
「でもまあ、
「? え、えへへ………」
良く解らないが気に入られているらしいので、へニャリと笑うクリュティエ。ヴァハも胡散臭いほどニコリと笑うとベッドに横になる。
「お前はもうちょい素直に生きろよ」
「…………す、素直に?」
そう言われても、よくわからない。本心を曝け出した結果が今なのだ。
「アポロンを見ろよ、好き勝手に生きてるだろぉ? なのにお前だけしちゃいけないなんてあんまりじゃねえか」
「で、でも、ダフネちゃんとかも、我慢して……」
「ああ、
ベルから聞いた特徴と、アポロンのホームを襲撃した際に見かけた女を思い出しケラケラと笑うヴァハ。
「や、やっぱり、ほほ、他の女の話を………」
「するに決まってんだろぉ? 俺は別に、お前に愛を囁いているわけじゃねえんだぜぇ」
「そ、それ、それは………そう、ですけど……」
「文句があるなら言えよ。私の前で他の女の話をしないでぇってなあ。それでキレたりしねぇよ。俺は素直に生きてる奴がだぁい好きだからなぁ。ガキとかティオナとかベルとか爺とか。ただしヘルメスは駄目だけどなぁ」
文句があるなら言う。それも、素直になれということなのだろう。素直、己の本心に従うこと。自分は、何をどうしたい。何がどうなって欲しい。そうなった結果、自分は、どうなってしまう?
「どうなろうと俺はお前を肯定してやるよ。言ったろお? 俺は素直に生きてる奴が好きなんだ」
因みに後にヴィリーの宿にはアミッドやアスフィが泊まりに来て(アプリイベント)ヴィリーがうっかり『最近名を上げてるヴァハ・クラネルも女と泊まった』と言ったとか言わなかったとか
素直な気持ちを伝えるって大切だよね。うん。
感想お待ちしております
ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員