ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
ベルとヴァハが駆ける。止めようとする【アポロン・ファミリア】と【ソーマ・ファミリア】。城壁は壊れ、狙ったかのように食料庫や一部ポーション置き場なども破壊されており、重傷者を死なせぬ為にはすぐに終わらせるしかないのだ。
「躊躇うなよぉ、ベル。殺さねぇなら狙いは……」
「うん、わかってる!」
何方も己の得物を構え、狙うべき場所を見定める。
「手足!」
「顔ぉ!!」
「………えっ!?」
正確に、無駄なく手足の腱を素早く切り裂くベルに対して、ヴァハは不必要なまでに【アポロン・ファミリア】の顔を切り裂き【ソーマ・ファミリア】の鼻や舌を削ぎ落とす。
「え? いや、えっ!?」
「ぎゃははは! もう酒を味わえねぇなぁ? アポロンに愛されないなぁ? ほらどうした、来いよ!」
「え、いや………に、兄さん? ええ!?」
ヴァハの凶行にアワアワと困惑するベル。隙だらけだが、敵は殆ど及び腰になり残った者もヘイトをヴァハに向けている。
「ここは俺が引き受ける! 今のうちに行け、ベル!」
「なんかいい雰囲気出してるけど完全に私情だよね!?」
流石に付き合いの長いベル。ヴァハの事は尊敬しているがその目は曇ってない。ヴァハはケラケラと笑う。
「殺しゃしねぇよ。お前が遅けりゃ、出血死する奴は出るかもだがなぁ」
「っ! ああ、もう!」
この兄はこういう男だった。殺さないで、だなんて契約は甘い。しかし傷つけないでなんて言えるわけがない。
ようは、このゲームを終わらせれば良い。そして、ヴァハはベルが勝利すると一日もかからず信じてくれているのだろう。それを超えたら死者が出る。逆に言えば、死者が出る前に、ベルなら勝てると信頼されてる。
「…………判断早くなったなぁ………てか、あの動き………ああ………ステータス上げまくりゃ互角程度と思ったが……」
さらなる高みに至ったようだ。あれではヒュアキントスは一方的にボコボコにされるだろう。
「死ねぇ!」
「このクソ野郎が!」
叫びながら迫る攻撃を回避しながら相手の顔を切り刻んでいくヴァハ。雷霆の剣をしまい、飛び出した血を手に纏い爪を作り顔の肉を抉っていく。
「ひ、ひぎぃ!?」
「う、うわああ!?」
「ヒハ! ヒヒャハハハハハアアハハハハ!! ビビってんじゃねぇよ! ソーマをまた味わいたいんだろう? アポロンのアポロンをまたケツに受け入れたいんだろう! だったらぁ、舌と顔も失わないように気張れ! ギャハハハ!」
顔だけで無く、冒険者として必要な手足を切り落としていくヴァハ。大量の血が飛び交う。ズルリと、血が蠢きヴァハに集まっていく。
「…………私達、必要だったのでしょうか」
「………一応、俺は魔剣使われたけど」
「くっ! 何が起きたってのよ!?」
カサンドラと物置に隠れていたら、突如雷鳴が響き渡ったと思えば崩落音が響き、あちらこちらで怒号や悲鳴が聞こえる。
「ごめん、カサンドラ………行ってくる」
「ま、待って……待ってダフネちゃん! 駄目、駄目だよ……落雷に近付いたら……」
飛び出そうとしたダフネの腕を掴み首を振るカサンドラ。しかし明らかに指揮系統が混乱している今、指揮官である自分が行かないわけには行かない。
「あんたはここで待ってなさい……」
と、外に飛び出すダフネ。悲鳴が断続的に聞こえてくる。
「…………え?」
『ああ?』
そこに居たのは、巨大な化け物。爪も牙も、全てが赤いその怪物は、明らかに人の言葉を発した。
「うおおっ!!」
「くたばれぇ!」
と、何名かが果敢に突っ込み斬りつける。僅かについた傷も、すぐに癒えた。
『効くかよぉぉ!』
バグりと食らいつく化け物。咥えられた者は肌が青白くなっていき、意識を失うと吐き出される。
「ひ、ひぃ………」
『ああん? ザニスじゃねぇかあ……どうした? Lv.2の団長なんだから率先して戦わなきゃ駄目だろう?』
ゲラゲラと楽しそうに笑う化け物がザニスにその顔を近づける。ザニスは糞尿を漏らし気絶した。
「しっ!」
と、ダフネが化け物の首筋を
「………血、か………」
おそらくは、血を操る魔法で操作した血を全身に纏っているのだろう。
「ひ、ひ………」
「あ……」
その見た目は十分な威嚇行為になる。殆どの奴等が、怯えている。
「狼狽えるな! 結局は見た目だけだ! 血の鎧から引きずりだすのよ!」
「ダ、ダフネ………!」
「く、くそ! やってやらぁ!」
ダフネの号令に【アポロン・ファミリア】の冒険者達が各々の得物を構える。
「誰か、クリティエを呼んできなさい! 彼奴の兵をぶつけて魔力を使い切らせるの!」
『その前にぶち殺しちまえば良いだけだろぉ!』
赤い爪を振るうヴァハ。派手に吹き飛ばされる冒険者達だが、全員手足や顔を斬られているのに内臓や喉には不自然な程傷がない。遊ばれている。
何人かが食われ、すぐに吐き出される。少しだが大きさが増していく。
「見つけたぞ!!」
「死ねええ!」
『んん〜?』
と、包帯の集団が襲いかかってくる。剣を叩きつけようとするも、体表が波紋を上げ、血の底から顔が現れる。
「っ!?」
『ひははは! どうしたぁ? 折角のチャンスなのによぉ?』
「…………貴様!」
それは人の顔の皮だった。よくよく見れば、吐き出された者達の顔の皮が剥がれている。
『いやだ』『殺さないで』『傷つけないで』『アポロン様に捨てられるぅぅぅううひひひひははははは!!』
眼窩の奥の瞳も、口の中の歯も舌も真っ赤。骨格を硬質化した血で再現しているのだろう。声は、口の中の血を振動させているのだろう。
「知ったことか!」
と、エルフなのか魔法力の強い包帯の男が魔法を放つ。
『ぎゃあああ!』『痛い痛い!』『やめてくれぇぇ!』
「───っ!!」
ダフネは思わず息を呑む。吐き気がする。なんて悍ましい手を平然と使ってくる。
「てめぇ! 良くも俺の顔をぉ!」
と、顔を失ったばかりの男が血を吹き出しながら迫ってくる。仲間割れする【アポロン・ファミリア】に怪物はゲラゲラ笑う。
『笑わせてくれた礼だ、止血してやるよ………【血は炎】』
ゴボ、と喉が膨らみ、口内が輝く。
「っ! 退避!」
カサンドラが叫ぶが、包帯エルフや怪我人は間に合わない。炎が地面に向かって吐き出され津波のように炎が広がる。
あちらこちらから悲鳴が上がる。火力を調整したのか、確かに恩恵を持つ者なら死なない程度の火力で、皮膚が焼かれ止血する。あれでは余程高級なポーションを使わねば傷跡が残るだろう。
「この、化け物がぁぁ!」
「死ね、死ねよぉぉお!!」
「無闇に近づくな! 血を吸われて餌にされるだけよ! 距離を取って、魔法や魔剣を撃ち続けな!」
『───!!』
炎や稲光が上がる。雨のように降り注ぐ魔法に、ヴァハの動きが抑えられる。指揮官であるダフネを潰そうと、ダフネを睨み魔法の雨に突っ込んでくるヴァハ。
単調な動き、隣の団員から魔剣を取り上げると爪を回避し、その背に魔剣を突き立てる。
「爆ぜろ!」
『─────!!』
内側から風の刃に切り刻まれ爆ぜるヴァハ。辺りに大量の血が撒き散らされる。
「やったか!?」
「やったろ! ザマァを見やがれ!」
「本当にやったのか!?」
「だからやったって! 見ろよ、跡形もねぇ!」
「本当の本当に?」
「何だお前、しつけえ…………え?」
「ん〜? どうしたぁ?」
ヘラヘラと首を傾げるその男に、誰もが言葉を失う。そこに居たのは、【アポロン・ファミリア】の制服を着こなしたヴァハ。
「な、なんで………だって、声………」
『馬鹿だなぁ、こんなもんちっとばかし血を震わせれば何処からでも出せるぜぇ?』
と、飛び散った血の一部を振動させ口を動かさず、別の方向から声を出すヴァハ。
「ぼーっとすんな! また血を纏われる前に、今が最後のチャンスと思え!」
「ハハァ………判断がはえぇなあ」
直ぐに斧を振り下ろしてきた男を蹴り飛ばし、迫りくる冒険者達を前に笑うヴァハ。
「起きろガキ共、遊びの時間だ」
一人の冒険者が、何かに足を取られそうになる。剣を振り上げた腕を何かが掴む。
『……あそぼ』『あそんで』『パパいじめちゃだめ』『あ、あ……』『うにゅ〜』『あそび』『おもちゃ』『こわ、さない』『あそべ』
ボコボコと飛び散った血痕が泡立つ。それは、無数の赤子の姿をとった。
【吸血鬼の花嫁】
・吸血による対象の魔力回復、治癒力超向上
・【最終吸血時に全てを対象に捧げる】
感想お待ちしております
ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員