ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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戦争遊戯②

 開始早々、鏡に映されたのは『只今映像が乱れております』という文だった。

 

「…………ロキ、これはなんだ?」

 

 【ロキ・ファミリア】、黄昏の館のとある一室。幹部や二軍が集まり、そんな彼等の代表であるフィンが神の鏡について知る神であるロキに尋ねる。

 

「あ〜、こりゃ規制やな」

「規制?」

「昔なぁ、戦争遊戯(ウォーゲーム)で相手ミンチにした奴がおったんやけど、当然グロいやろ? なれとらん一般人にゃきつ過ぎる〜、ってギルドに苦情が寄せられたんよ」

 

 その結果、神々だけが見るバベルはともかく、それ以外の場所ではあまりにグロいと判断された場合、こうして規制が入るのだ。

 

「お、映った」

「? ベルだけ?」

「別れたようだな。こちらは問題ないらしい………まあ、オラリオ中に映せないようなことを嬉々としてやるのは、ヴァハだけだろう」

 

 リヴェリアが呆れたように言う。まあ、ルール的にはベルかヒュアキントスがやられたら終わりなのだ。最悪、そこだけ切り抜けばまあ問題ないと言える。

 

「とはいえ、気になる………映せないのか?」

「まあ神ならチャンネル操作出来るけど………ちょい待ってな、今規制緩める」

 

 と、鏡に手を向けるロキ。ザザ、と鏡に映る映像が歪み………

 

『きゃはは』『あ、あは』『ひひ』『あ、とれた』『ふふははは』『くきき』『ちょーだい』『だめぇ』『はんぶこする』『きれた!』『あみゅぅ〜』『ははは』『まるい! しろい! あおい』『きれ〜』『こっちは、ちゃいろ!』『おお!』

 

 眼球のない、窪んだ眼窩の真っ赤な赤子達が【アポロン・ファミリア】の団員達()遊んでいた。ケラケラと楽しそうに、無邪気な笑い声が響く。本当に、遊んでいるように笑う。例えば誰かの目を己の眼孔に収めた赤子を見て、別の赤子が手を叩いて笑っている。

 

「……………きゅう〜」

「レ、レフィーヤ!?」

 

 レフィーヤは気絶した。ラウルも顔を真っ青にして失神した。殆どの団員が顔を青くする中、その赤子に見覚えがあるリヴェリアは目を見開く。ありえない、だって、あの魔法の使い手はもう死んだ筈なのだ。

 

 

 

 

「な、何なんだよ、こいつ等!」「来るな! 来るなぁ!」「やべろおお! 目を、返せぇ!」「指、俺の指がぁ」

「あはははは! 殺すなよぉ、お前等。殺さなきゃ好きにしていいがなぁ」

 

 手頃な瓦礫に腰掛けケラケラと楽しそうに笑うヴァハ。その地獄絵図に、ダフネや一部団員達は息を呑む。これはヴァハの魔法。ならば、ヴァハを討てば消える筈。なのに、近付けない。恐怖で足が動かないのだ。所詮はLv.2。

 だが、正義に熱いLv.4のエルフは別だ。

 

「今すぐあの赤子を消しなさい」

「あん?」

 

 首に添えられた木剣を振り返るヴァハ。見れば覆面のエルフ、リューがヴァハを睨んでいた。

 

「いくらなんでもやりすぎです。あれは最早、己の居場所を守るための戦いですらない」

「俺が悪だとでも? 正義の女神の眷属は、なんとも高潔なこって」

「っ! 貴様!」

「だがあれは悪だ。悪がやられてるだけだから、ほっとけ」

「確かに、彼等は町中でも暴れた………しかし───」

「ああ、違う違う」

 

 と、ヴァハはリューの言葉を遮りニヤニヤと笑う。

 

「ギルドの目のないオラリオの外で気に入った子供を手に入れるために、そいつの職場や家族を、恩恵持たぬ唯の人類を恩恵持ちが痛めつけてるんだぜ? 娘を連れてかないでぇ、って縋った爺を蹴り飛ばして、腰の骨折って一生歩けなくした事もあるそうだ。そんな奴等を、きひひ………助けるのも正義かぁ?」

 

 ケラケラと楽しそうに笑うヴァハ。因みにコレって比較的に優しい事例だぜ? と笑う。

 【アポロン・ファミリア】は悪だ。無理矢理、そうせざるを得ないほど追い詰め眷属にした者も居る。何なら婚約者と引き離され、自殺した奴だっているかもしれない、それほどまでに真っ黒な連中だ。なにせ主神の命令なら神を()()()()()()()()()()事も躊躇わない奴等だ。

 

「くそ! ベル・クラネルだ! 彼奴を倒せば、そもそもゲームが終わる! てかクリティエはまだなの!?」

 

 と、ダフネが叫び我に返った団員達がベルの後を追おうとする。その集団の先頭に立っていた男をヴァハが踏みつける。仙骨あたりがバキリと砕ける。

 

「ハハァ。ざぁんねぇん、行かせねぇよ? てめぇ等は俺のガキ共と遊んでもらう」

「う、うわああ!!」

 

 恐怖に駆られた一人の男が突っ込むが鼻の骨が圧し折れるほどの力で殴り飛ばされ赤子達の海に落ちる。新しい玩具に集まる赤子。肉食系獣人特有の鋭い歯を見てから己の口を見て、早速皆で分ける事にした。くぐもった悲鳴が聞こえてくる。

 

「くっ!」

『あうう!』『うええ!?』『びいい!』

 

 と、リューが赤子達に攻撃するが本物の赤子のような泣き声に思わず体が硬直し、その間に赤子達は数を増やす。

 リューは遊んでいいと言われた玩具ではないので放置する。というかいじめられるから近付かない。

 

「おっと」

 

 その様子を見てニヤニヤ笑っているヴァハに殴りかかろうとするもヴァハが背中にひっついていた赤子を槍に変え投げつける。

 

「この……!」

「ハハァ………お前、ダフネだっけ? 無理やり仲間にされたんだってなあ?」

「それが、何よ……」

 

 嫌な事を思い出させるなどでも言うように睨んでくるダフネに、ヴァハは嘲る様な笑みを浮かべる。

 

「うちの弟に色々言ったらしいなぁ。ご愁傷様とか、ウチ等も無理やり入れられた被害者なんですぅ〜とか」

「何よ、何が言いたいわけ!?」

「でもよぉ……お前の指揮、見事だよなぁ? 他の連中も、お前の号令にきっちり従うし、我に返る!」

「グチグチと、言いたい事があるならハッキリ言え!」

「私ぃ、被害者なんですぅ〜なんて嘘を吐くなよ。俺の弟は純粋だから信じちまうだろぉ?」

「……は?」

 

 弟を気づかうふりをしながら、それはダフネに対する嘲りだった。

 

「お前初めてじゃねぇだろ、追いかけっこ。これまで何人、アポロン様ぁに無理矢理さらってきた可愛そうな本物の被害者捧げてきたぁ?」

「………私達は、被害者じゃないって言いたいの?」

「さっきからそう言ってんだがなぁ………もうちょいはっきり言ってやんねぇとわかんねぇ?」

 

 ヴァハがヘラヘラ笑うと子供達もパパが笑っているからなんだか知らないがキャッキャッと笑う。

 

「てめぇもてめぇを追い回して街から、国から追い出した奴等となぁんも変わんねえよぉ! ベルに言ったんだってなぁ、仲間になる子を傷つけたくないから素直に捕まれってぇ! 笑わせんなよ! 本当は、それでベルが、追いかけ回されてる誰かが逃げ切っちまったら惨めな思いをするからだろう!? 私は親友のカサンドラの事も思って捕まりました、だって逃げるなんて無理だもん、なんて言い訳が使えなくなっちまうもんなぁ? 自分は捕まりたくなかった、でも他人には捕まって、地にはいつくばって自分より惨めになってほしい。情けない女だ! ぎゃははははははは!!」

「────!!」

 

 腹を抱えて笑うヴァハの顔面に向かって短刃(ダガー)を振るうがその手首を掴み、腹に膝を叩き込む。

 

「こ、この!」

「放しやがれ!」

 

 指揮官が居なくなるのを恐れ向かってくる団員。ヴァハがキシ、と笑う。

 

「ハハァ!!」

「っ!? がっ!」

「かは!」

 

 しかし振り上げた剣を止めざるを得なくなる。

 

「こ、この……」

「どうしたぁ? 受け止めろよぉ」

 

 今の衝撃で関節が外れたのか、腕がおかしな方向に曲がっているダフネ。彼らが剣を引いたのは、止めなければこちらに向かって振るわれたダフネを斬ってしまうためだ。

 

「お、お前! 女を武器に、恥ずかしいと思わねぇのか!?」

「そういうお前はアポロンの気に入ったガキを攫うために女を人質取ったことある奴だろぉ? 色々調べたんだよね俺。いまさら、常識人ぶるなよ!」

 

 ダフネを腕から足に持ち替え振るう。Lv.3の膂力で振り回される、文字通りの人間大の武器。

 しかも下手に防ごう物なら殺してしまう。一方的に吹き飛ばされていく【アポロン・ファミリア】にヴァハはゲラゲラ笑う。

 

「この、やめなさい!」

「邪魔すんなよ正義の味方ぁ!」

「ぐっ!?」

 

 ヴァハを止めようとしたリューだったが振り下ろされる木剣に対しダフネを振られれば傷つけられず、攻撃から回避に切り替えられず吹き飛ばされる。

 

「あ、う………」

「………あ? やべ、死ぬかも」

 

 と、ボロボロになったダフネを見てそんな事をつぶやくヴァハ。ポーションを取り出そうとする中、青い光がダフネを包み傷を癒やす。

 

「…………………」

「…………あ」

 

 魔力の発生源、息を切らしたカサンドラを見るヴァハ。それを隙と思い襲いかかってくる【アポロン・ファミリア】団員をダフネで殴る。

 

「う、ぎぃあ!?」

 

 ミシリと背骨が軋む。普通の人間なら死ぬ威力も、恩恵がある故に耐えられる。耐えられてしまう。

 

「や、やめ………やめて……お願い………」

 

 カサンドラの呟きは、不思議とよく通る。しかし当然ヴァハは聞き入れない。

 

「あ、うう………お願い、お願いします………許して!」

 

 ダフネを振るう。傷つくダフネを、死なせるわけにはいかないカサンドラが癒やして、それでも傷つける。

 やめてやめてと泣いても、何度癒やしても、雷の力を持つ暴君は、ダフネを傷つける手を緩めない。

 

「う、うう………おね、お願い、お願いします、から………」

 

 頭が地面につくほど下げるカサンドラを見て、ヴァハの中の雀の涙ぐらいはあるかもしれない良心が少し迷う。迷った結果まあ許してやっても良いかと判断し、一発ぐらいは大丈夫そうなのでカサンドラを見る。と………

 

「オオオオオオ!!」

「…………あ?」

 

 棍棒を振り下ろしてくる()()に、ヴァハは一瞬だけ固まり、殴り飛ばされる。赤子の海に落ち、血で出来た赤子の一体を食い回復すると襲撃者を睨む。

 

「ミノタウロス………」

 

 それはモンスターだった。しかし、ヴァハはそれ自体は別にどうでもいい。それだけなら反応できた。

 

「…………なんで花生やしてんだお前()

 

 そのミノタウロスには、肩の皮膚を突き破り向日葵の花が咲き誇っていた。と、不意に城が崩れた。どうやらベルの方も決着が近いらしい。

 ミノタウロス以外にも花を生やした複数のモンスターの群。そろそろ終わりそうだが、まあ時間いっぱい楽しもう。




感想お待ちしております

聖棍棒? いいえ指揮棒です

ヴァハ君のヒロイン

  • フィルヴィス・シャリア
  • アスフィ・アル・アンドロメダ
  • アミッド・テアサナーレ
  • エルフィ・コレット
  • メイナちゃんやティオナを混ぜて全員
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