ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
「……………」
「だ、大丈夫ですかリヴェリア様。休まれた方が………」
酒を飲みすぎた影響で、まだ少しフラフラしているリヴェリアを心配するレフィーヤ。
今この場にはレフィーヤやリヴェリアの他にもリューとフィルヴィスも居る。
元々リヴェリアは三十年に一度行われる、神秘の森に集まる精霊との宴に顔を出すつもりだったのだ。しかし、その宴には多くの地位の高いエルフが集まる。そんなところに
リヴェリアは断るつもりだったがレフィーヤ達も行きたいと言い出せば、しかたなく同行を許した。
因みに、今の彼女達の着衣は魔力を帯びた穢れを寄せ付けない加護が施されている。
「お尋ねする機会がなかったのですが、リヴェリア様はどうしてその儀式に?」
「儀式の後の『宴』において、精霊達との友愛の証として幻の
「幻の
「強欲な少女が、独り占めしようとした実でもあるな」
因みに子供の教育の為の寝物語にその伝承がある。何処ぞの皺だらけのでっぷりしたエルフは最近の若いエルフ達の事情など知らなかった様だが。
「……大聖樹……幻の
「え?」
「確か、お伽噺の最後は精霊と同胞達が協力し、燃えてしまった大聖樹を復活させる、だったか?」
「はい。それで改心した少女と幼馴染の少年は、大聖樹に成った『赤い実』を二人で食べて結ばれる……
て!」
ヴァハが聞けば大笑いするだろう。我儘で欲張りな少女がたった一ついいことをして、しかも一人では何も出来ず大勢の手を借りたくせに赦され恋を叶えるなど都合のいい話だと。そして絶対にエルフ達は他種族にされた嫌な事はしつこく覚えて子孫にまで突っかかるくせにエルフってだけで簡単に赦すのか、などと煽るに違いない。フィルヴィスはそんな事を思いながら空を見上げる。
「儀式が無事に済めば、参加者には
「……あの~、皆さん」
少し早足になるリヴェリア。距離が僅かに開き、レフィーヤが恐る恐る二人に話しかける。
「なんだ、あらたまって?」
「ひょっとしたら、なんですけど……リヴェリア様、実は意中の相手がいるんじゃないかと……」
「……!? 何を言っているのですか、突然!」
リューが反応するが、レフィーヤにも一応言い分はある。リヴェリアは王族として扱われるのを嫌う。しかしエルフはほぼ確実にリヴェリアを王族として扱う。フレイヤを敬愛するエルフの二人組さえも、リヴェリアには敬意を持って接するあまり片方は上がる程だ。
だからこそ彼女は同胞が集まる場所にはそれこそ余程の事がないと向かわないはずだ。
「………その余程の事と言うのが」
「恋の成就のため! 幻の
「レフィーヤ、それは考えすぎでは」
「それだけじゃありません! 以前、リヴェリア様がギルドの職員に手紙を渡しているのを!」
「それぐらいは別に……」
「いえ、通常の書簡であればギルドではなくファミリアの人員に渡す筈です。それ。人目を憚るように外部の方に渡すなんてあれは恋文に違いありません!」
レフィーヤの声が少しずつ弾んでいく。年頃の少女として、やはりこういった恋話に興味があるのだろう。
「っ! その相手に心当たりは?」
「いえ、それが全く見当が……」
「馬鹿な、リヴェリア様に相応しい男など! 居るわけがない!」
「……それは暴論でしょう。世界は、広い。捜せば居るに違いない」
と言うか、いなければリヴェリアは一生独身ということになる。まあ、聖女セルディアを穢れを知らないなどと崇めるエルフからしたらセルディアの再来と呼ばれるリヴェリアは一生清らかな身でいて欲しいのかもしれないがそうなると既存のエルフは穢れた行為の果てから生まれた………あれ、そうなるとリヴェリアは? なんてヴァハがヘラヘラしながら語る姿を幻視し、眉根を寄せるフィルヴィス。
「リヴェリア様に相応しい方………頭脳明晰で容姿も申し分なく、優れた品性と度量を持ち男らしく家事も料理もこなし、記念日を決して忘れない殿方くらい」
因みに品性さえ除けば該当する人間が結構身近にいる事を彼女たちは知らない。
「幻想だ、そんな男は!」
「なにより重要なのが、リヴェリア様よりお強い方………この要素を満たさなければ世界中のエルフが許しはしない」
「…………リヴェリア様の意思を無視してな」
と、口では言いつつもフィルヴィスも同じような事を思ってしまう。
「そうですね……リヴェリア様がお心を寄せているのであれば、我々は祝福すべきです」
「禁忌の恋路であろうと、リヴェリア様を真に思うなら支持すべき」
「しかし、誰だと言うのだリヴェリア様が気にかけている男というのは……?」
その言葉に、リューはふと先日の光景を思い出す。
「………ヴァハ・クラネル」
「…………は?」
「ほえ?」
その言葉に反応する二人。リューはしまったとばかりに口を抑える。
「え? いや、えっ………あ、ありえませんよ。だって、あのヴァハ・クラネルですよね? アイズさんを誑かすベル・クラネルの兄で人の命をなんとも思ってなくて色んな女の人に手を出して歓楽街では血を貪ると噂のあの」
「あ、いえ……ですがその………実はあの酒場で、私が来た時にはリヴェリア様が酔い潰れていて、あの男の膝に頭を………随分と、気を許していたような」
「それはありえないあっていいはずがないありえてはならない!」
と、過剰に反応を示すのはフィルヴィス。思わずギョッとなるリューとレフィーヤ。
「だって、そうだろう。リヴェリア様のような高貴な方が彼奴に! 彼奴に相応しいのは、それこそもっと卑賤で、穢らわしい、私のような……いやそうではなく! そ、そもそもリヴェリア様は彼奴の好みでもないわけだし!」
「そうなのですか? それはそれで、無礼な気も」
「あ、彼奴は自分を殺そうとした女………顔も知らぬ仮面の女に、エインに………惚れ込んでいるらしい」
歯切れ悪く言うフィルヴィス。何だか複雑そうな顔をしている。
「お前達、先程から何を騒いでいる」
と、流石に放っておけなかったのかリヴェリアが戻ってきた。そろそろ精霊の住まう郷も近い。精霊は騒がしいのを嫌うから、気を落ち着かせろとの事だ。
やがて森が見えてきた。その奥に、精霊郷がある。
「おお、天然物の精霊酒じゃねえか。猿あたりが木の実を隠して忘れたかぁ?」
「…………ん?」
聞き覚えのある声に振り返ると、木の窪みに溜まった濃厚な匂いのする液体を水筒に注ぐ見知った人物。ヴァハ・クラネルがいた。
「………ヴァ、ヴァハ?」
「あん? リヴェリアにフィルヴィスと………リュー・リオンか。後ウィリディス。何やってんだ、こんな所で?」
「…………それは此方の台詞なのだが」
「ああ、精霊郷に誘われてな。どうせ暇だし、足を運んだ……」
「誘われた? ヒューマンのお前が?」
「あん? お前、何か勘違いを…………あ、いや。いいか、このままの方が面白い」
何やら楽しそうにヘラヘラ笑うヴァハ。せっかくだし一緒に行こうぜと歩き出す。
「そういやフィルヴィス、その服装も新鮮だな。似合ってるぜえ」
「そ、そうか? ありがとう……」
「んで、そっちのガキはなんで気絶してんだ?」
「うきゅ〜」
「レ、レフィーヤ!?」
レフィーヤはフィルヴィスが抱えて郷に向かう事にした。暫く歩くと、開けた場所に出る。木々に溶け込むように家が見える。自然と一体、その言葉がしっくり来る、エルフの里だ。空気が済んでおり、精霊の魔力に満ちた大気が日の光を美しくばら撒く。
「………私も初めて足を運んだが、なるほど、『精霊郷』とはよく言ったものだ」
はぁ、と見惚れるリューとフィルヴィス。リヴェリアも感心した様に言う。と、そんな一同に郷のエルフ達が近づいて来る。
「貴方達、どうやってここに……っ!? ヒューマン!!」
「「「───!?」」」
と、その言葉に周囲が騒がしくなり、敵意や殺意が溢れる。一人のエルフが警告もなしに矢を放つ。頭を狙った、しかし冒険者ならば簡単に避けれるそれをヴァハは敢えて喰らう。
「野蛮な蛮族めが! どうやってこの地に訪れた! その罪、その貧小な命を以て償え!」
「ヴァハ! っ、お前、まさかと思うがやり返す気か!?」
とはいえ強く言えない。強いから殺されないだろう、だから殺されそうになっても受け入れろなんて道理に反することをリヴェリアが言うはずも無い。
「安心しろよ。俺はなぁんもしねぇぜ。俺はな……」
ケラケラ笑いながら頭に刺さった矢を抜くヴァハ。その姿に驚くも直ぐに弓を構え直すエルフ。中には魔法を唱えようとする者まで。
「貴様等! 下劣なヒューマンを連れてくるなどなんのつも───がは!?」
リヴェリア達にも敵意を向け叫ぶエルフが、突如風の塊に吹き飛ばされる。それを切欠に突如服が燃える者、地面に沈み始めるもの、肌が凍りついていく者達が現れる。
「がぁ!? き、貴様何をした!」
「俺は何もしてねえよ。お前等、やめろ」
ヴァハがパンパン手を叩くと謎の現象はピタリと止まる。やはり貴様かと睨むも先の発言だと仲間がいる事になる。後ろの同胞達ではないだろう、困惑している。ならば誰がと周囲を警戒する中、叫び声が聞こえてきた。
「お前達! 何をした、精霊達が怒り狂っておるぞ!」
幼い容姿のエルフが叫びながら走ってくる。
「ちょ、長老! 申し訳ありません、この蛮族めを侵入させてしまったばっかりに………!」
と、エルフの言葉に少女はヴァハを見て、目を見開く。
「直ぐに始末を──!」
「止めぬか、馬鹿者共!!」
「は、え?」
「その男に手を出すな! その男への敵意が、精霊達の怒りの理由じゃ!」
「え、ど……どういう…………」
「その男に手を出せば、この郷の精霊達が我等を赦さぬと言っておるのじゃ!」
その言葉にヴァハを見るエルフ達。ヴァハの周りに、何時の間に集まったのか無数の精霊達が漂いエルフ達へと威圧感のある魔力を放っている。威嚇しているのだ。
「おお何だぁお前等。俺の為に、そこな森猿共を追っ払ってくれるってぇ? 優しいねえ」
「な、は? ば、馬鹿を言うな! 我等はエルフ、精霊が我等を見限るはずがない!」
「…………」
ヴァハがパチンと指を鳴らすと精霊がエルフの女を襲う。
「しかたねぇなあ。嫌われてるからなぁ……仕方ねぇ、行こうぜぇ」
ヴァハが背を向け歩き出すと精霊達が付いていく。それはつまり精霊がエルフを見限っているという事。
「ま、待って! 精霊達がいなくなったら、我々は」
「あ〜ん? なんか言ってるかぁ? 悪いなぁ、蛮族なもんで高貴なエルフ様の言葉は解らねぇなあ。上から物を言われている気がするがんなわけねぇよなあ? 身の程を知らねえ馬鹿じゃ高貴な種族を名乗れるわけねぇもんなあ」
「ま、待ってくれヴァハ! 私としても、ここで
「………………」
と、リヴェリアの言葉に足を止め振り返るヴァハ。エルフ達を見回し、胡散臭い爽やかな笑みを浮かべた。
「全員土下座。そのキレイな服のまま、顔に土擦り付ける程下げたら今回の件は不問にしてやるよ」
その笑みに一瞬だけ安堵したエルフ達を絶望に突き落とすヴァハ。この程度で絶望するのだから、楽しい種族だ。
「…………ん?」
「むっ……」
と、不意にヴァハはエルフの少女に目を向ける。
「その杖……あ〜お前が今代の精霊との架け橋かぁ? ぎゃはは! 相変わらずお前の一族はちっちぇえなあ。飯食ってるか? 飯ぃ!」
ヒョイと持ち上げケラケラ笑うヴァハ。まるで彼女の一族について知ってるかのような口振り。
「な、なんじゃあ!? お、降ろさぬか! こら、小僧!」
「ほら見てみろよフィルヴィス、こいつこの形でお前らより歳上なんだぜ?」
もしや機嫌が治ったのだろうか、と恐る恐るヴァハを見るエルフ達。
「? 何してんだ? さっさと土下座しろよ……」
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