ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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エルフの矜持を嘲笑う者

 普通のエルフとは雰囲気の異なる、王族に近い高貴な筈のエルフ達は、蛮族と見下す他種族の、それも特に秀でた特徴の無いヒューマンに頭を下げる。屈辱に唇を噛む者達を眺めながら、そのヒューマンはケラケラ笑う。

 

「と、父様? 母様? 何故、ヒューマンなどに頭を下げるのです!? 奴等は野蛮で浅慮な、下等な存在だと貴方達が教えたのではないですか!」

「ギャハハ。子供にそんな教育してるのかぁ……そりゃあいきなり頭狙う野蛮種族に育つわけだなぁ。そうとも、お前等はなぁんも悪くない。時代が、環境が、種族が悪かっただけさぁ。そうだろ? 頭上げて良いぜぇ」

 

 エルフの教えを、歴史を、在り方を否定するなら顔を上げろと言外に語るヴァハ。

 ヒューマンに頭を下げ続けるなど屈辱で、しかし己が種族が築いた歴史を、教えを否定できる筈もない。

 

「……お前、やはり性格が悪いな」

「おおそうとも。俺が性格悪い前提で接すりゃ、嫌な事されても印象はちげぇだろ?」

 

 呆れたようなリヴェリアの言葉にケラケラ返すヴァハ。リヴェリアとしても、他種族を問答無用で見下すエルフの教えが生んだ先程の光景を見て何も言えない。ヴァハの遊び心があるから大事になったが、発端はエルフの反応なのだ。

 

「貴様! 良くも父様と母様を!」

「俺は全員土下座つったんだがなぁ……まあ良いさ。ガキをいたぶってもなぁ。俺はガキは好きだからなぁ」

 

 つっかかってくる子供を無視して土下座しているエルフ達を見る。そういえば、何気に極東文化を知ってるのか。

 

「もう頭上げて良いぜぇ。精霊達も、てめぇ等が他種族ってだけで問答無用で攻撃する凶暴な猿って解ったがこれまでの経緯で自分達には安全だと解ったってよお」

「なっ! 我等が野蛮だと!?」

 

 その言葉にヴァハはわざとらしく驚いた表情をして、エルフの子供たちに目を向ける。

 

「なあなあ餓鬼共、質問だ。獣人の集落に、獣人とやって来たヒューマンが現れた。なぁんの話も聞かず矢を射って殺す。これってどっちが野蛮だぁ?」

「? 貴様等はどちらも野蛮な種族だ!」

「じゃあどっちの方がより野蛮か聞いてんだよ」

「………それは、獣人だろう」

「同胞と共に来ているのに、話を聞かぬなど……」

「それをてめぇ等の親父共がやったのさぁ」

 

 その言葉に動揺し、しかしすぐに怒りに顔を染めるエルフの子供達。すぐに叫ぼうとし

 

「エルフだけは特別かぁ? 何を以て、そう決める」

「え……」

 

 しかしその言葉は止められる。

 

「いきなり攻撃してくる野蛮な性質は同じだろう? 何が違う、話に聞いてた蛮族と」

「そ、れは………我々は、エルフで………」

「他種族達も同じこと思ってるかもなぁ。我々は我々だから他種族をいきなり攻撃しても許されるって」

「だから野蛮だというのだ貴様等は!」

「あんた等は黙ってろよ。俺はガキどもに聞いてんだ」

 

 ヴァハがそう言って指を向けるとバチリと音がして、顔を上げていたエルフが強制的に土下座を再開する。

 

「エルフがして良くて他の種族がしちゃならねえ理由はなんだ? エルフは何故そんなに偉い? 世界救った英雄がいるからかぁ? んなもん、他種族にだっている。なのに何でエルフだけぇ? ほら言ってみ言ってみ」

 

 ケラケラケタケタ語るヴァハの言葉に何も言い返せないエルフの子供達。大人達を見る目に疑念が宿ったのを見て満足したように笑う。

 

「お前等はあんな大人になっちゃ駄目だぜぇ」

 

 そう言うとエルフの大人達に視線を向ける。

 

「ほれ、さっさと顔を上げろよ。俺は優しいからなぁ。野蛮なお前等を許してやるぜえ」

 

 ヴァハの言葉に屈辱に震えながらも立ち上がる。内一人が、忌々しげに睨みながら呟く。

 

「精霊の威をかる蛮族めが」

「ああん? 自分達は精霊と心通わせてると思い上がった蛮人がなんか言ったかぁ?」

 

 しかし堪えた様子もなくヴァハは楽しそうに笑う。

 

「んじゃロリ、今の郷案内しろ」

「誰がロリじゃ誰が! わらわにはリロと言うながあるんじゃ小僧!」

「そいつぁ悪かったなぁ。どうでもいいから案内しろ案内。精霊共もお前なら信用できるってよぉ」

 

 ヴァハはそう言うとリロを米俵のように抱えて歩き出した。

 

「全く彼奴は………すまんな、同胞達。彼奴に悪気は…………悪気しかないが、悪い奴では、いや……………不用意に手を出さない限り、危険な奴ではない」

「何を勝手な事、を………待て。あ、いやお待ちを! 貴方は、もしやリヴェリア様では!?」

 

 と、リヴェリア達にも敵意を向けていたエルフ達だったか一人がリヴェリアに気付き敵意が霧散する。

 

「嗚呼、リヴェリア様! お会いできるなんて光栄です! 今日という日に感謝を! それもこれも、精霊達の御加護のおかげ!」

「………その精霊達に見限られていたがな」

「フィルヴィス殿、それは言わないほうが」

「すまん。私は、あまり精霊に対して信心深いわけではないのでな……」

 

 と、フィルヴィスとリューがコソコソ話す。

 

「冒険者などという蛮族共の都にあって、リヴェリア様の華々しいご活躍は我々も耳にするところ!」

「貴方様こそ一族の誇り! セルディア様のご再来の言葉は正しかった!」

「………………」

 

 その王族扱いに辟易した表情になるリヴェリア。さらにエルフ達は余計な一言を発する。

 

「もしや先程のヒューマンも貴方様の連れ? ソレは、申し訳ないことを。精霊達が怒るのも当然です」

「……………奴個人ではなく、私の連れであるから、奴を認める……か」

「リヴェリア様?」

 

 明らかに不機嫌な様子のリヴェリアに動揺するエルフ達は、王族の連れというだけで態度をあっさり変えた大人達に向けてくる子供達の視線に気づかない。このままでは子供達と大人達に大きな溝が生まれる事だろう。

 

「世辞はいい。祭事を取り仕切る長老………は、ヴァハが連れて行ったか」

 

 仕方ないと、後を追おうとするリヴェリア。お供しますというエルフ達の言葉を拒否し森の奥へと向かう。

 

 

 

 

「お主何者じゃ」

「ヒューマン様だよ」

 

 何時の間にか肩車になったリロとヴァハ。

 リロはヴァハに問いかけるがヴァハはケラケラと適当に返す。

 

「案内しろなどと言いながら、大まかにこの郷を知っておるな?」

「知ってるだけだ。来たことはねえ」

「この郷のことが外部のヒューマンに漏れるとは思えんが」

「まあ大体全部ヘルメスが悪い」

「誰じゃそれは………まあこの際良いわい。お主が共に来たあの女、アルヴのお転婆姫じゃな? 里を飛び出した放浪娘が何しにこの郷に来た」

「儀式への参加だ。この時期に来るのは、それぐらいしか理由はない」

 

 と、その言葉に振り返るとリヴェリアが居た。

 

「ふん、儀式への参加じゃとお? 王族の責務も果たさぬ愚か者がエルフの祭事にだけは参加したいなどと図々しい」

「貴様! リヴェリア様になんて事を!」

「ひぅ!?」

 

 付いてきたフィルヴィスの叫びにリロは肩車を止めヴァハの背に隠れる。

 

「ふ、ふん! わらわに何かできるならしてみると良い! よく知らんがこの男には気に入られておる! そしてこの郷の精霊達はこの男を気に入っておる。何かしようもんなら精霊達がほうっておかんぞ!」

「………………」

 

 兄の背に隠れる妹みたいだ、とリューは思った。

 

「そいつぁ困るな。参加できないと困るつーからエルフ共を許してやったんだぜぇ? リヴェリアが参加できねぇなら。彼奴等許す意味もねぇなあ」

「んぐ! 解ったのじゃ。なら、少し雑用はしてもらうぞ。王族の責務を果たさぬのなら郷の為に少しは働け」

「俺って王族の責務は税金もらったり王族の権限利用するから果すべきだと思うんだよ。税金受け取ってねえ、王族扱いは嫌い、そんなリヴェリアにゃ別に義務は発生しねえんじゃねえ? 世界にエルフの凄さを振りまいているわけだし」

「ムッ………それは、ほら………それじゃから」

 

 ヴァハは上手く言葉に出来ぬリロにケラケラ笑うとリロはヴァハの耳を引っ張る。初対面の筈なのに随分と仲がいい、とリヴェリアが目を細める。

 

「それで、働けとはどういう?」

「ふん。ここは神聖な場所じゃが周囲には不浄なモンスター共が彷徨いておる。儀式の邪魔にならぬよう追っ払ってまいれ!」

「リヴェリア様に従僕のようなことをさせるなど!」

「黙れ! ここではわらわが法なのじゃ! ヌハハハハ!」

「ふっ。王族扱いより、この方が遥かに気楽だ。喜んで協力させてもらおう」

 

 元よりモンスター退治は冒険者の得意とするところ。モンスター退治に向かう途中、目覚めたレフィーヤと共に周囲のモンスターを一掃した。

 

 

 

「でも、話に聞いても信じられません。リヴェリア様に反発するエルフが居るなんて」

「なに、エルフでは珍しいことだが神々や他種族ではよくある」

 

 レフィーヤの言葉にリヴェリアは気にした様子もなく笑う。その言葉にそんな光景見たことがないと首を傾げるレフィーヤ。

 

(はっ! まさか、リヴェリア様の恋は……絶望的な片思い!? ほ、ほ、ほ、本当にあのヒューマンが相手!?)

 

 思い返せば彼はリヴェリアになかなか無礼な態度で接するし、フィルヴィス曰く絶賛別の相手に恋してるらしい。

 

(リヴェリア様にこのような穏やかな表情をさせるとは!)

(いがみ合ってからの他種族婚はエルフの定番だとシルが読んでた恋愛小説で!)

 

 などとエルフの少女達が戦慄する。

 

「フィンもガレスも、最初は私のことを鼻持ちならない奴だと思っていただろうしな」

「あ、そういう事でしたか〜」

「? 何の話だと思っていた」

「い、いえっ、別に下衆な勘ぐりなどしていたわけでは……」

「コホン! 仮にですが、このまま儀式に参加させてもらえなかったら、どうするのですか?」

 

 と、リューが話題を変えるべく話をふる。

 

霊薬実(タプアハ)を譲ってもらえるなら有り難いが………気が引けるな。ヴァハの奴なら、どうだろうか。彼奴は目的があったわけでもなく、精霊達に誘われたそうだが」

「俺? やだよ」

「何じゃ終わったのか。ならさっさと報告にこんか」

 

 と、噂をすれば影。ヴァハとそのリロがやって来た。

 

「ヴァハ……やだとは。その、お前も誰かに渡すのか?」

「ん? ああ、アミッドに半分やる」

「アミッド………【戦場の聖女(デア・セイント)】に!? エ、エインは………?」

「何いってんだ。秘薬の原料だぞ。アミッドの土産にゃ丁度いいだろ」

「あ、ああ………そうだな。そうだった………霊薬実(タプアハ)は薬になるんだったな」

「あ〜ん? 何じゃぁ? お主この男に惚れておるのか? かー! やぁらしいのぉ〜!」

「んな!? そ、そんなわけあるか! それよりも、これでリヴェリア様の参加を認めてくれるんだろうな!」

「そんな事言ってないも〜ん」

 

 と、リロはプイと顔を逸らす。見た目通りの子供のような仕草だ。

 

「貴様………最初から認める気はなかったのか!? リヴェリア様を馬車馬のように働かせたかっただけか!」

「うわー! 出たー! エルフに有りがちな偏屈かつ攻撃的な自己妄想!」

 

 サッとヴァハの後ろに隠れべー、と舌を出すリロ。

 

「綺麗な顔してお主、全くモテんじゃろ? そうじゃろうそうじゃろう!?」

「こ、こいつ……!」

「はぁヤダヤダ、これだから若いもんは〜。一族の行く末が、わらわちょうしんぱーい」

「わ、私のことはどうでもいい! 質問に答えろ!」

「ふーんなのじゃ! モンスターを追っ払えたら許可するとは言っとらん! まあこの男の顔に免じて、きちんと仕事すれば参加させてやる」

 

 ヴァハの背中に隠れながら偉そうなリロ。漸く気絶しなくなったレフィーヤは文句を言えず、リューはヴァハの背に隠れるリロに複雑な表情を浮かべ、フィルヴィスが不機嫌になるのは多分リヴェリア関係だけではないだろう。

 

「まったく……話が進まん………ん?」

 

 と、言い合いを続けるエルフ達を尻目にリヴェリアは気配を感じてそちらに歩いて行く。

 

「では、どうすれば認めて頂けるか教えてもらえないでしょうか?」

「そうだ! これ以上、お前の我儘にリヴェリア様を付き合わせるわけにはいかん!」

「ふーむ……そうじゃのぉ。この辺りには、精霊の訪れとともに多くのユニコーン達が足を運んでくる。かの者たちは、滅多に人目に触れず、穢れなき処女としか接触を許さぬ貴重な存在じゃ。儀式に参加したいなら、ユニコーンを探し出すぐらいしてもらわねば! まあ、無理だとは………なんじゃ?」

 

 得意げなリロの肩を揺さぶり、ヴァハはある方向を指差す。

 

「ふふっ、なんだ? 腹が空いているのか?」

「ブルル」

「そんなに纏わりつくな。ヨシヨシ」

「んなああ!?」

「リヴェリア様の周りに、ユニコーンの群れが!?」

 

 ヴァハの指差した方向には、ユニコーンの群れと戯れるリヴェリアの姿があった。因みにユニコーンはダンジョンから地上に進出したれっきとしたモンスターなのだが、比較的におとなしく調教(テイム)が容易い。なのに【ガネーシャ・ファミリア】に否定的なエルフが多く、ヴァハの笑いどころになっている。

 

「美しい……最早神々しい域………」

「それより、ユニコーンの扱いに慣れているような……まさか、ダンジョンで調教(テイム)の経験がおありで?」

「馬鹿を言え。王族(ハイエルフ)の森でも飼っていただけだ。コツさえ掴めば誰でも出来るぞ」

「因みに爺の愛人の飼ってたユニコーンは毎回毎回来るたんびに爺を蹴り飛ばしてたぞ」

 

 と、何時の間に移動したのかヴァハがユニコーンの横腹を撫でながら応えた。何気に彼もユニコーンの扱いに慣れている。

 

「わ、わらわでさえもちかづくことしか出来んのにぃぃ〜!」

「さ、流石はリヴェリア様! これで先程の言質も!あっ……!」

 

 と、フィルヴィスが近付いた瞬間ユニコーン達が一斉に森の奥に走り出した。

 

「ユニコーン達が物凄い勢いで逃げた!?」

「………やはり、私は汚れて…………」

「そ、そんなことありません! ユニコーン達は、ちょっと用事を思い出しただけです!」

(それは苦しい……)

「良いんだ。気など遣わなくても………」

「気なんて! だって、フィルヴィスさんも、汚れなき純潔の乙女じゃないですか!」

「ほぁ!? なっ、なっ、何を言ってるんだ、お前は!?」

「えっ!? 違うんですか!?」

「ち、ちが………ちがく………あぁぁぁぁぁっ!? なんて事を口にするんだァァァ!?」

 

 そんなやり取りを見てヴァハはニヤニヤ笑いリヴェリアは呆れたように肩をすくめた。

 

「まあ、その辺にしとけリロ。ガキみてぇにムキになってもなぁ。ここの馬鹿どもがリヴェリアの血筋を勝手に遡ってセルディアの侮辱に当たる〜とか言い出すぞ」

「む、むぅ……わかったのじゃ。むうぅぅ……」

 

 膨れっ面で拗ねるリロ。幼い見た目も相まって、なんだか虐めてるような気分になる。

 

「何だか悪いことしちゃったみたいです。私達が来たばっかりに………」

「流石はリヴェリア様の従者殿。お優しい心をお持ちなのですね」

「えっ………」

「やはり素晴らしき方々だ。リヴェリア様のお伴だけのことはあります、ははは!」

「あ、あはは……なんか……う〜……」

 

 レフィーヤは少しだけリヴェリアの気持ちが解った。

 

「ほら見ろよ。ああやって、相手なんて見ずに立場だけを見てどんなのか判断する。そんな大人達の教えが、お前等ほんとに正しいと思ってんのかぁ?」

 

 大人達がレフィーヤ達を褒める中、ヴァハは子供たちの相手をしていた。




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ヴァハ君のヒロイン

  • フィルヴィス・シャリア
  • アスフィ・アル・アンドロメダ
  • アミッド・テアサナーレ
  • エルフィ・コレット
  • メイナちゃんやティオナを混ぜて全員
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