ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
「森一面に……! 大聖樹が!」
夜闇が消える。強い炎の禍々しい明かりが周囲を照らす。精霊達が慌てふためきエルフ達の叫び声が森に響いた。
「グオオオオオ!!」
「ハハハハ! こんな妖精共の郷、全部燃えちまえ! 燃えちまえぇぇ!」
「嬉しそうだなぁ。何かいい事でもあったのかぁ?」
高笑いする盗賊の背を蹴りつけると燃えている木に顔を押し付け、そのまま後頭部を踏みつける。
「あがあああ!? あづいあついあぢゅあづああああ!」
暫くすると動かなくなったのを見て、暴れ回るドラゴンに視線を戻す。眠らされ、起きれば知らない場所。混乱と苛立ち………そして、はぐれ竜という特性から竜の谷を追われた個体であるだろうからか、ここを棲家にしようとする欲も見えた。
「あぁ、あぁぁぁぁ………!? 森が、燃えてしまう! 神聖なる森が、大聖樹がああぁっ!!」
リロの叫びが聞こえる。精霊達の叫びは聞こえないが、魔力の激流となり更に周囲を破壊していた。
「くうううう!? いけない! 私達だけじゃあ、竜と火の手、精霊の全てを抑えられません!」
「ヴァハ! 精霊達だけでも落ち着かせられないか!?」
精霊から誘われるほど精霊にちかしいヴァハなら、精霊達だけでも落ち着けられないか聞くフィルヴィスにヴァハは動かなくなった男を炎の中に蹴り入れながら応える。
「無理だなぁ。逆に聞くが、一人で火事に騒ぐガキ共全員を止められるかぁ?」
つまりそういうことだ。精霊にも意思がある以上、一人で抑える事など不可能に近い。
「あぁ………もう駄目よ。森を焼いた挙げ句、精霊達からも怒りを買ってしまった……」
「潰えてしまう。受け継がれてきた郷が、伝説の精霊郷が! 我々の誇りが!」
「なんて無力なのだ、我々は………」
「大聖樹が……」
「それにほら。世界を救った偉大なるセルディア様とやらの同族達はぁ、無力を言い訳に項垂れるだけだしなぁ。ここが彼奴等の郷である以上、でしゃばったマネすんのもなぁ……」
脅威に立ち向かうこともせず、現状に絶望し足を止める者達。心の何処かで、自分達を立たせてくれるのを待つだけの、英雄譚の端役程度の存在を目にヴァハはケラケラ笑う。ここで立ち上がれないくせに他種族の英雄を見下すのだからお笑い草だ。
「もう、お終いじゃ………わらわは………守れなかった………」
「…………………」
そんな彼等を、リヴェリアは無言で見つめ、ヴァハがリヴェリアに気づき面白そうに目を細める。
「───嘆くだけか?」
「えっ……?」
「嘆き、膝を突き、無様を晒すだけかと聞いている」
「なっ!?」
何処か突き放すような、蔑むような言葉にリロが目を見開く。
「先に白状しておこう。私はお前達、エルフが嫌いだ。種族としての品位を疑わず、血筋を尊び、自分達の高慢さにも気付かない。その挙げ句、この醜態………反吐が出る」
「おー。いいぞいいぞ〜」
と、リヴェリアの言葉にヴァハが野次を飛ばす。
「リ、リヴェリア様と言えどそのような侮辱は……!」
「ギャッハハ! 事実言われてキレんじゃねぇよ。実際高慢だろう? 俺が同じ事言っても聞きやしねえくせによぉ!」
「だろうな。私が言って、漸く耳を傾ける。そいつを見ろ。他種族の、それも警告もなく矢を射ってきたエルフの里を襲ったワイヴァーンを、盗賊を討った。対しお前達は腐るのみ。一体どの口で、奴を蔑んでいた」
どうやらリヴェリアは郷の大人達がヴァハに陰口を言っていたのを知っていたらしい。彼等のことだ、案外善意でリヴェリアに忠告でもしてたのかもしれない。
「「「……っ!?」」」
「お前達の言う『誇り』ほど脆いものはない。
お前達の語る『誇り』ほど、儚いものはない」
「………………」
「だが…………お前達の『誇り』が、何よりも気高いことを私は知っている!」
「「「!!」」」
その言葉に、俯いていたエルフ達が顔を上げる。
「お前たちは立ち上がらなくてはならない! 慣習を手放せないというのなら! 誇りを守ると言うのなら! 精霊達との友情が偽りでないと言うのなら、気高き意志を示さなくてはならない!」
そこで言葉を区切り、目を閉じるリヴェリア。
「……フィン、借りるぞ」
ヴァハはそのへんの岩に座り成り行きを見守る事にした。変化に気づいた比較的に勇敢な精霊達がヴァハの周りに集まりヴァハ同様成り行きを見守る。
「お前達に『誇り』を問おう。その目には何が見えている? 恐怖か? 絶望か? 破滅か? そんなものなど端からありはしない。己の弱さに屈するな。導きはない。だが光なら幾らでも照らしてやろう。
──聖女セルディアの名に誓って、お前達に勝利を約束する。立ち上がれ、同胞達。エルフの真の強さとは─誇りを胸に何度だろうと立ち上がる事だ!」
「…………空気が変わったな。爺の言う、英雄の威光って奴か」
かつてとある道化が民衆に行った虚像の希望と同じ。ましてや今回はれっきとした力持つ者の言葉。効きが違う。
「………おおぉ……おおおおぉ! ここで立ち上がらずして、何がエルフか!!」
「偉大なる方にここまで言わせて、立ち上がれない我等など!! 誓いを果たすのだ! この魂の故郷を、精霊達を救うのだ!」
「誇りを! 気高き意志を!」
エルフ達が立ち上がる。消火を始めるが、火の回りのほうが速い。
「お?」
どうなることやら、と見守っているとリヴェリアの足元から
「風よ!」
「水よ!」
「………精霊共、少し落ち着け」
と、ヴァハの言葉に精霊達がピタリと止まる。落ち着かせた訳ではない、脅しただけだ。少しばかり火の手も弱まってきたから行えた。
「棲家を変えるだけなら簡単だ。だがほれ、お前達の隣人とやらが頑張ってるぜぇ。少しは一緒に住んでやってたんだ。手を貸してやれ」
その言葉に精霊達も消火にあたっていく。残るのはドラゴン。リヴェリアの膨大な魔力に反応し、低く唸る。
「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に
「ゴアアアアアア!!」
大気を揺する方向。口内にチロチロ火の粉が上がる。
「【閉ざされる光、凍てつく大地。吹雪け、三度の厳冬──我が名はアールヴ】!」
炎が吐き出される。濁流のような炎の暴乱。リヴェリアは慌てることなく、魔法の名を告げる。
「【ウィン・フィンブルヴェトル】」
音が消える。色が消える。
時すら凍てつかせる吹雪を前に、真っ白な氷像と成り果てるドラゴン。ヴァハは氷像の上に移動すると、そのまま蹴り砕く。
「───!!」
風の精霊、水の精霊の力も借りたのだろう。冷気が森全体へと駆け抜け残りの火の手も消し尽くす。
「終われば存外呆気なかったな。んじゃ俺は、生き残りからどうやってこの郷の場所知ったか聞いてくる」
血で様々な拷問器具を作りながら、ヴァハは逃げ出した盗賊団の生き残りを追うために森の奥に消えた。
「………本当に、面倒な奴だ。わざわざ見ていて楽しかった訳でもないだろうに」
むしろこれからが楽しみだと言わんばかりの笑みだった。まあ、だが。確かに終わった。
「あの調子なら大聖樹はすぐに復活するだろうな。まあんなこたぁ俺にゃ関係ねえ。んでぇ? お前等に精霊郷の場所教えたの誰だぁ?」
4本のフック、魔女の蜘蛛に吊るされた男がガチガチ歯を鳴らし痛みを耐える。
「し、知らない! 俺は、何も……!」
「ん〜。そうかぁ、お前は?」
と、赤い輪っかを各所に付けた男に尋ねる。
「し、らな………ぎゃああ!」
メキメキ音を立て、輪が閉まる。血流を堰き止め肉を潰し骨を圧する。
「お前は?」
別の男に聞く。悲鳴が聞こえる。
「お前なら?」
別の男に聞く。悲鳴が聞こえる。
「お前はどうだ?」
「し、知らねえつってんだろ!? 主神が面白い情報があるって聞いたんだ! つーか、お前本当は、俺等が知ってようが知らなかろうがどっちでも良いだろ!?」
「あ、バレた?」
「よお、ただいま。お、
ヴァハが戻ると、焼けた大聖樹は復活し、精霊達がヴァハの周りによって来た。完全に落ち着きを取り戻したらしい。
「お前の分だ」
「お、サンキュ。今夜はこのまま泊まるのか? 俺ヒューマンだけど泊めてくれる宿あるか」
「先の騒動の功労者を種族で差別する程恩知らずではない………とは思いたいが。何なら、私の部屋に泊まるか?」
と、リヴェリアがからかう様に言えば周りのエルフ達がバッと振り返る。
「リ、リヴェリア様! そのような事は冗談でもおっしゃられては! 男を、ましてやヒューマンを同室に泊めるなど!」
「そうです! 御身が汚れてしまいます!」
「…………そのような言い方はないのではありませんか?」
不意に、エルフの子供が不機嫌そうに言う。
「男だから、なら解ります。冗談で言ってるようでしたが、男を誘うのを咎めるのならまだわかります。ですが、種族を理由にするのは何故です?」
「逃げ惑う貴方達と違い、まっさきにこの郷の為に戦ってくれた方々の一人である彼を、発破をかけられるまで何もしなかった我等が貶めていい理由になどなりはしません!」
「戦えたのは野蛮だからと言うのであればそれは世界の為に戦った偉大なる先人の英傑達に対する侮辱です!」
何やら子供たちが騒ぎ始めた。ヴァハは楽しそうにケラケラと笑っていた。
その夜、ヴァハは精霊達と酒を飲んでいた。どうせならこのまま夜ふかしでもしてしまおうと考えたのだ。
「ヴァハ、少し良いか?」
月を眺めているとフィルヴィスがやって来た。夜闇に溶け込む黒い髪。月明かりに僅かに輝く白い肌は、同胞でも認めれるだろう。まあ相手はヴァハだが。
「眠れねえのかぁ? 子守唄でも歌ってやろうか」
「目が冴えてしまってな。お前は今晩起きていると言っていたし、少し話でもと思ったんだ………しかし、お前、歌が歌えるのか?」
「おう。何ならお前に合わせてエルフ語や古代エルフ語で歌ってやろうか?」
「なんでお前が知ってるんだそんな歌………」
「まあ別に隠してるわけじゃねえが。そうだな、俺の出生について教えてやるよ」
夜目が覚めた。
なれない環境だからだろうか? すっかり冴えてしまったリヴェリアは夜風にでも当たろうと外に出る。そう言えばヴァハは今日はずっと起きていると言っていた。酒にでも怒りを。
「と、すまない」
そんなふうに考えていると誰かにぶつかる。リロだった。顔がとても青い。
「? どうし………」
「う、ぷ………うえええ!!」
「っ!? だ、大丈夫か!?」
心配し声をかけたが、その前にリロはその場で吐き出す。慌てて背中を撫でてやる。
「一体何が……気分が優れないのなら」
「し、心配ない。そういう類いではない………少しばかり、悍ましい話を聞いてしまっただけだ」
「? 悍ましい?」
「……………すまぬ。わらわの口からは、語りたくない」
「………………」
青い顔で震えるリロを放っておけず、結局その日は彼女を連れて戻った。
「よおアミッド、いるかあ?」
オラリオに戻り、ヴァハは早速アミッドの元にやってくる。
「ほら、これやるよ」
「………? これは?」
見たことが無い果実、しかも何故か半分のそれに首を傾げるアミッド。尋ねるもヴァハはソーマの所に行ってくると去っていった。
「…………それ、まさか
「知っているのですか?」
と、エルフの店員に尋ねる。
「はい。エルフのお伽噺に出てくる、恋の成就の実。二人で分け合って食べると結ばれるという実です!」
「……………え?」
「お、何じゃアミッド。それは
「…………そっちですか」
残りの半分はソーマが酒にしました
ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員