2020年の艦娘戦記・改 〜艦娘誕生と日本〜 作:シベリアの騎士
木津と響は女性用浴場へ向かい、脱衣所に入った。男性用浴場とは離れた場所にあり、医務室からは近い。短い道のりとはいえ、銀色の髪の子供と患者服の女という組み合わせはさすがに人目を引いた。
響の外見は小学生くらいだ。吹雪は高校生程度で、まだ鎮守府内を歩いていてもまだ誤魔化しが利くが、この艦娘はかなり目立つ。当の本人はぶうぶうと小言を言うだけであまり気にしていない様子ではあったが。
「もう、どちらかと言うと言い出しっぺは響でしょ。駄々をこねない」
木津の口調はもはや子供を諭すようだ。
「だからってこの姿に生まれて数時間で裸に剥かれるとは思ってなかったよ」
「めちゃくちゃ人聞き悪いな」
服を脱ぎながら木津は周りを見回す。響は諦めたのか着ていたセーラー服と灰色の帽子を棚に入れている。休日前は外出する隊員が多く、その上まだ課業時間が終わって間もないので人も居ない。内務班員は共用シャワー室が営内にあるので、歩かなくてはいけない浴場は利用率が低い日もある。響は目立つので都合が良い。
「恥ずかしいからって湯船で艤装だしちゃダメだからね」
「ぎくっ」
「わざとらしいリアクションありがとう。ほら、入るよ」
木津が風呂の引き戸をからからと開けると、大きな浴槽と一人の人影が湯気の奥に見えた。吹雪しかいないようだ、が。そのシルエットはなにか、妙にごつごつとしていて・・・・・・。
「なんで艤装だしてんねん!」
「わあっ、司令官。いや、その。これはですね話すと長くて 」
吹雪が浴槽に立っていた。文字通り水面にである。木津は掛け湯も忘れて浴槽に突っ込んでいく。
「はやく、それしまって! 誰か来たらどうするの」
「すみません!」
騒ぎもよそに響は粛々とシャワーを胴体に浴び、そのまま出ていこうとする。
「髪洗え!」
「えぇ・・・・・・」
木津は頭が痛くなってくるのを感じた。これは医務官のお世話になってしまうかもしれない・・・・・・。
数分後、いやがる響を無理やり丸洗いする事に成功し、木津達は湯船にようやく収まっていた。
「ほんっとに。こどもかお前達は」
木津はお説教モードである。小さくなっている吹雪と、肩を抱いて湯に鼻ぎりぎりまで浸かっている響に向かい合う形で木津が腕を組む。
「面目ないです」
「もうお嫁に行けない」
水面からちょいブローして響が減らず口を叩く。その頭を軽く叩きつつ木津は吹雪に艤装の理由を聞いた。
「実はですね、妖精さんが艤装のメンテナンスをしたかったみたいなんです」
「なぜ風呂で」
至極もっともだというように吹雪が頷き、訥々と語った。
「私も尋ねたのですが・・・・・・。真水があることと、あと妖精さんも入浴の必要があるとか。戦闘行動を終えた後は妖精さんも一定の休息行動が必要だそうです。さすがにやめた方がいいとは思ったのですが、どうしてもという事で。すぐ片付けるつもりで出したら司令官が来られて今に至るという訳です」
木津は頭を抱える。妖精と言われたらもうどうしていいか分からない。しかしひとつ見落としていたことに気付けた。補給だ。そんな事も考えぬまま吹雪を戦わせたとは余りにも情けない。
申し訳ない気分になりつつ、木津は吹雪に尋ねた。
「吹雪、今更で本当に申し訳ないのだけれど、君たち艦娘は戦ったらどう修理や補給をするの。怪我とかした場合の治療は?」
あっ、と吹雪が声を上げた。
「すみません。御説明してませんでした。まず負傷についてですが、戦闘時の艦娘に怪我の概念はありません。その代わり艤装が完全に破壊され航行不能になると、その・・・・・・。機能停止となり沈みます。戦闘で受けた攻撃は全て艤装に反映されるようです」
「なる、ほど。ねえもしかして陸上なら不死身?」
響がまた水面から顔を出し、「不死鳥の名は伊達じゃない」とドヤ顔を決めた。吹雪が間髪入れず「違います」と被せる。
「艤装を起動して着けてない場合は生身の人間と同じです。なので艤装を外して轟沈を回避だとかは出来ないようです。あと、艤装は水上でしか機能しません」
「じゃあ、初めてあったあの日は艤装を着けてたけど、ただの重りだったってこと?」
「はい。なので先程の艤装は起動テストが目的でした」
「そのあと湯船で洗うつもりだったのか」
吹雪は慌てて首を振った。起動後は外してシャワーを使うつもりだったらしいが、どちらにせよ問題である。しかし艦娘は謎が多い。今の説明を聞くに、艦娘を陸上で運用するとかは出来ないようだ。出来たとしても河川や湖沼。局地戦になる。
(まあ手札としては、多い方がいいな)
艦娘には喫水下の部位がない。水深が浅くても使えるはずだ。
「で、補給は? 弾とか燃料とか。艦娘の規格がよく分からない」
「ええと、補給には資源と呼ばれる物質を使います。燃料と弾薬です。また、修理には鋼材が必要です。しかしこれらの物質は人間界のそれとは全く異なる物です」
「異なる・・・・・・?」
木津が首を傾げる。響が再び浮上した。
「資源は妖精が生成する変な物質なんだ。艤装を使うのに必要なの。名前は便宜上燃料とか弾薬とか呼んでるだけ。あと、妖精ひとりひとりが生成できる量には限りがある。だから、艦娘を増やせば妖精も増えて沢山の資源を確保出来る。妖精が多く居れば資源を貯蔵する専用の保管庫が大きく出来るらしい」
木津は「保管庫?」と首を傾げる。
「そんな物あったっけ。二人は見たことある?」
艦娘二人が同時に首を振った。
「どこにあるかは知らない。異世界かな」
「ほんとにめちゃくちゃだな。もう訳が分からない」
とりあえず、資源とやらには人類と艦娘の間に互換性はないらしい。これを価値が無いと考えるか、重荷が増えずに済んだと考えるかはその者の抱える仕事次第だろう。顔をしかめる木津に響がふっと笑う。
「さっさとルールを覚える事だな・・・・・・。さもなければ、このゲームには勝てんぞ」
「誰だおまえ」
最近、この世のものとは思えぬ世界に触れすぎて頭がおかしくなりそうだ。しかしこの感覚はなにかに似ている。そう、ゲームだ。初めて何かを始める時、そこでしか認識される事の無い、だが絶対のルールに翻弄される。勉学、芸術、仕事、スポーツ。そして、戦争。
(戦いは本当はルールだらけだ。勝つ為のルール。戦いを続けるためのルール。戦いにルールが無いなんてのは冗談も甚だしい)
闘争という要素そのものが、神の与えた生存ゲームに落とし込まれたルールの一部だ。全く、これが本当の『神ゲー』だ。暇を持て余したなら遊ばず寝ていてくれればいい。
黙っている木津に、響があっけらかんと聞いてくる。
「司令官、ゲームは好き?」
「ああ、まあね」
ゲームと言っても、ボードゲームやトランプと言った類の物だ。木津は結構、ゲームという物に一目置いている。だが楽しんでいられた事がない。現実があるからだ。もし遊ぶ事でこの世の理から逃れられるなら、頂点にだってなってやる。
木津の肯定を聞き、響が微笑んだ。
「じゃあ、皆でなにかやりたいね」
吹雪も無邪気に頷いている。木津は少々晴れない気分を抱えつつも、「そうだね」と心の底から答えた。
風呂から上がったあと、木津たち三人は医務室に戻った。時計はまだ午後7時だ。就寝までかなり時間がある。
こんな時は鎮守府の隊員クラブで食事をしたり飲酒をしたりするのが、軍の敷地内で生活する営内者と呼ばれる者達のお決まりだったが、一応傷病者である木津は大人しく戻ってきた。
木津は時々酒を嗜む。だが、目の前にいるふたりの艦娘はどう見ても・・・・・・、ただの子供である。ただ何か食べるだけだとしても、隊員クラブなぞで人目に晒せば一層物議を醸すのは間違いない。
(よくもまあ、こんな子を戦わせたな。私は)
木津は自分のベッドに座りながら、隣のベッドに響と並んで座る吹雪を眺めた。今夜は嫌な夢を見そうだ。木津は窓の外を見る振りをした。冬の窓は曇って何も見えない。
吹雪に行けと命じたあの時、自分は迷わなかった。自分を誇示したかったのかもしれない。そして吹雪を戦わせている時、自分は楽しんでいた。そんな気がする。曇った窓は自分の顔すらもはっきりと映さない。
(もしも深海棲艦が全く艦娘と同じ姿をしていたら、私は戦えていただろうか)
もし、友人の乗ったあの客船を沈めた深海棲艦達が吹雪たちのようなあどけない姿をしていたら。多分木津は、艦娘すらも殺そうとしていたに違いない。深海棲艦を殺し、その姿を艦娘にも重ね、艦娘を殺す。全てこの世から消し去ってやろうと。きっとそうなっていた。深海棲艦と艦娘が全く異なる容姿のおかげで救われた。
(もしかして私は、艦娘がどうなろうと知った事じゃないと感じているのか)
だが木津はそうではないと思った。土川と話していた時、確かに自分は艦娘を処分したくはないと感じた。吹雪の純粋な雰囲気はどことなく、あの時死んだ友人に似ている。穂野輝波。きらめく様な明るい女の子。木津に呪いを遺して逝った少女。
ベッドに身体を倒し、天井を仰ぐ。蛍光灯の光から逃れるように腕を顔に乗せ、吹雪と響の会話を聞きながらただ目蓋を押さえる。
⚓
蝉の声がする。海を見ている。潮風に服が揺れ、自分の身体を見る。自分はいま響よりも幼い体型になっていて、ああこれは夢なのだなと気付く。何度も見たことのある過去の夢だ。だから、隣には輝波がいる。並んで立って海を見ていた。
「ひさしぶり、キナミ」
「えっ? どゆこと、キョウちゃん」
隣の少女は驚いている。そりゃそうだ。夢の中では一緒に遊んでいる最中だから。いつもこうして浜辺に来て、遠くに大きな客船が通ると遊ぶ手を止めてじっと眺める。それが二人の慣わしで、今まさにその瞬間だ。青い海と空の間を、真っ白で距離感が狂うほど大きな客船が優雅に進んでいる。この時代にはあった平和な海の景色だ。
「あー、あれに乗りたいなあ! きっと広いんだろうねっ。綺麗なデッキ、ホール、客室に食堂。あの中にもう一つの世界があるんだよ。それで世界を巡るんだよ。素敵だなあ」
「あれは国内だけだよ」
「それでも!」
ああ、変わらない。輝波はもう変わりようがない。私だけがこの夢の中に不自然に回帰しているのだ。
「キナミは、あれに乗るよ。将来ね」
「もちろん!」
彼女は屈託なく笑う。そして夢は叶う。景色が変わる。木津の身体は二十歳の大人になっていた。携帯が鳴る。出たくないのに木津の手は決定づけられたかのように動いている。
「もしもし、輝波? 旅行中でしょ?」
「うん、でも今日でおしまいみたい」
知っている。でも、あの時のように電話を耳に当て続ける。
「船が撃たれたの。どかーんて。信じられる?」
あの時自分は、何を言っているんだと聞き返した。
「・・・・・・」
「死にたくないよ、もう一度会いたいのに」
あの時自分は、諦めないでと言った。
「・・・・・・」
「助けて、響子・・・・・・。怖いよ」
轟音。悲鳴。まさかあんなバケモノの仕業だったとはあの時は知らなかった。 ただ電話の向こうの人々の悲鳴に震えていた。
「やだよ。嫌だよ。楽しかったはずなのに、こんなの」
「・・・・・・」
敵の規模は。位置は。今の私なら戦える。艦隊指揮も出来る、コンソールも扱える。完膚なきまでに深海棲艦を叩きのめせる。だけれど、もう遅い。
「ああ、もう駄目みたい。船が燃えてるの。海が燃えてる。おかしいよね、燃えるわけないのに」
「・・・・・・」
「ごめんね、泣き言を言いたいわけじゃなかったの。お礼を言いたかったの。いままでありがとう。楽しかったって」
知っている。でも、何度聞いても、胸に生まれる感情だけは変わらない。
「ばいばい、響子。こんな時なんて言えばいいのかな・・・・・・」
そこで電話は途切れるのだ。海に落ちたのだろうか、木っ端微塵に砕け散ったのだろうか。わからない、とにかく、そこで彼女の声は消える。
あの時のように呆然と通話の途切れた音を聞き続ける。冷たい電子音がいつまでも響く。いつまでも、木津が諦めるその時まで。
⚓
「司令官?」
目を開けると、銀髪が視界を覆っていた。響の白い顔。視界の左から心配そうに銀の目がのぞき込んでくる。木津は身体を起こした。木津の右には同じく心配顔の吹雪が居た。どうやらいつの間にか寝ていたらしい。時計は十分ほどしか動いていない。目が濡れているのに気づき、慌てて拭おうとして、手が動かない。
「司令官、うなされてたの。どうしていいか分からなかったから、手を握ってた」
「え?」
確かに、両手がそれぞれ響達に握られている。なんだ、この状況は。
「ねえ、吹雪と響は、仲間が沈んだ夢を見る?」
木津はそんな事を尋ねていた。吹雪が目を伏せ、響が物憂げに頷いた。
「目が覚めるまで、ずっと見てたよ」
「・・・・・・」
その艦娘達の顔を見て、木津は顔を伏せた。この偉大な先達の顔。木津なんかよりも遥かに死線を重ねてきた者達。木津も思わず言葉を繋いでいた。
「友達が死んだ時の夢を見た。はじめて深海棲艦が現れた時に襲われた客船に乗っていたの」
二人の艦娘は黙って聞いている。
「船が好きな子でさ。海が大好きで」
輝波との思い出が頭に幾つも現れた。京都の北の端、平和な村。舞鶴から車で一時間ほど離れた所にある小さな漁村だ。そこで木津と輝波は育った。二人で眺め続けた田舎の海は、今はもうあの静けさを失っている。深海棲艦によって。
「私が軍に入って、指揮運用科を目指したのは、復讐のためだった。吹雪と響は復讐を願ったことってある?」
ぎゅっ、と木津の左手が強く握られた。響だ。
「あったかもしれない。仲間を沈められるのは何よりも辛い」
吹雪がポツリと尋ねてくる。
「司令官は、深海棲艦を恨んでいますか?」
木津は少し間があってからしっかり頷いた。
「恨んでいるよ。だから深海棲艦を倒せる君たちの力が欲しい。でも、殺す事を楽しみ始めている自分がいる。深海棲艦を自分の指揮で追い詰めるのが楽しい。こんな気持ちで、人の乗る護衛艦や艦娘を指揮して良いわけがない。でも殺したいの。私はどうやって深海棲艦を倒せばいい」
こないだのきりさめ乗艦で実感した。自分にとってただのユニット、コンソール上のシンボルでしかなかった護衛艦の中に生きる人々。一つ一つの船の中で行われている彼らの戦い。それを自分は知りもしなかった。
響の手が木津の手から離れた。温かくて柔らかい感触が消え、ただ冷たい空気の感触だけが残る。それでいい。突き放してくれればいい。
俯いていた木津を、温かい感触が包んだ。響に抱きしめられたと気付くのに少しかかった。と言うか、頭を引き寄せられた感じだ。
「な、なにしてるの」
とくん、とくん。と優しい音がする。艦娘にも心臓はあるのか。いや、艦娘も人間も生きている。
「ちょっと、響ちゃん!?」
吹雪が止めるかと思いきや。
「ずるい!」
「なんでやねん」
両側から抱きしめられ、木津は苦笑しながら突っ込んでしまった。だけど二人に抱きしめられるのは悪い心地ではない。
「司令官、理由はどうあれ、戦う者は戦えることが大事だよ。そして戦う理由を考えるのはもっと大事。無駄な戦いをしなくて済むから。本当にしなくちゃいけない戦いで勝たなくちゃならない」
響の、ともすれば厳しい言葉が優しい口調で流れ込んでくる。
「わたし達を使って欲しい。必要としてくれて、使う意味を探ってくれる。それだけで信頼できる。だって、わたし達に生まれてきた意味をくれるから」
木津の髪を響の小さな手が撫でた。だが木津はそれに全く抵抗を抱かなかった。何か大きな存在に触れられている。そんな気がした。
吹雪が流石に照れくさくなったのか、身体を離してはにかんだ。
「わたし達が戦います。司令官が復讐を忘れられるまで、わたし達が深海棲艦を艦娘に変えます。この戦いを終わらせて見せます」
木津は空いた両手を吹雪と響の背中に回し、抱きしめ返す。木津は何も言わなかった。ただ、こんな自分を信じてくれる彼女達を、絶対に裏切らないと心に誓った。
翌日、土曜日の静かな鎮守府の医務室で木津は目覚めた。響と吹雪が隣のベッドで一緒に寝ている。結局吹雪はここに残ったのだ。とりあえず今日は医務室から自動的に引き払うことになっている。自宅に戻って何をしようかと考えるが、特に何も頭に浮かばない。
ベッドで身体を起こしてぼーっとしていると、吹雪が目を覚ました。こちらに気付き、ベッドから降りて敬礼してくる。
「おはようございます、司令官」
「おはよう。ずいぶん仲いいね、ふたり」
響はまだ寝ている。すやすやと気持ちよさそうなことだ。吹雪は少し照れくさそうに笑った。
「本当は外来に戻ろうとしたのですが・・・・・・。響ちゃんに今夜は寒いから一緒に寝てくれと言われて。楽しそうかなと思ったので寝ちゃいました。ここに居ていいと許可も頂いたので」
そうか、と木津は微笑んだ。響は寂しかったのだろうか。吹雪ももしかしたら、同じ気持ちだったかもしれない。
「たぶん響も外来になるから、また寝れるよ」
恥ずかしそうな吹雪を見て意地悪く楽しんでいると、響が目を覚ました。
「さむい」
そしてもそもそとベッドから這い出して、なんと木津のベッドに潜り込んできた。しかも木津の背中や脚に手足をくっつけてきた。響は体温が低いのか、木津の身体から急激に熱量が吸い取られる。
「ちょっ、響あんた手が冷たい。脚も冷たい! やめろーっ」
「あたたかい」
木津に抱きついてうっとりと眠りに就こうとする響を引き剥がし、ベッドから逃げる。
「とんでもない奴だ」
「全くですね」
ベッドから出て寒さを感じた木津は、とりあえず患者服から着替えようと思う。冬用とはいえ寒いし、このまま帰るわけにも行かない。
昨日は緊急事態だったから患者服などを着せられたが、本当は少し歩けばジャージなどが手に入った。指揮運用科の職場であるオペレーションルームに、営外者に割り当てられたロッカーがあるのだ。木津は自分のロッカーに一応、運動用としてジャージを入れてある。そこでふと、木津は吹雪に尋ねた。
「ねえ、私服とか持ってる?」
首を傾げる吹雪を見て、今日の休日は買い物に行く事を木津は決めた。