流星の軌跡   作:Fiery

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やっとGGOだオラァッ


そのなな:荒廃世界にて

 

 

緑のほとんどない荒廃した砂塵舞う世界。

崩れ落ち、かろうじてビルだったと分かる廃墟に、朽ちた車両。

少し歩けば住宅地だったであろう名残が見える廃墟群もある。

そんな世界を歩く、一組の男女が居る。

 

男は薄い青のワイシャツに黒のベストとスラックスという荒廃した世界には似つかわしくない服の上に、裾がボロボロになった灰色のコートと言う姿。

髪は蒼色で、整った顔立ちの青年と言った雰囲気を出している。

腰には左右にホルスターの付いたベルトが下げられ、そこにはデザートイーグルが収められており、肩からベルトを使いM4カービンが下げられている。

 

女は白を基調としたインナーの上に深い緑に白のラインが入ったジャケットとパンツ。

首と口元をすっぽりと覆うサンドカラーのマフラーが特徴的な出で立ちをしている。

髪は薄めの青緑色で、どことなく冷徹な雰囲気が漂う美少女。

腰から下げたホルスターには男と同じくデザートイーグルが収められており、何よりも特徴的なのは両手に持つヘカートⅡという、大型の狙撃銃。

 

「今日はどうするかなーっと」

「とりあえず、クレジットは稼ぐのは決定事項ね。ダンジョンでも探りましょう?」

 

男の呟きに、女は冷徹な雰囲気を崩して答えた。

確かに、装備を新調した加減で懐は心許ないと男も同意する。

他愛もない話をしながら荒野を歩いていく二人。

 

「右」

「左」

 

それだけの呟きでの会話の後、二人は同時に銃を抜き、発砲。

数秒後、それぞれの銃口が向かう先で『DEAD』の表示が見えた。

 

「私の方が遠かった」

「流石に、拳銃抜き打ちで有効射程越えスナイプはできねぇよ俺」

 

女が誇らしげにブイサインをして、男がツッコミを入れる。

ちなみに男が撃った相手は80mほどの位置に居たプレイヤー、女は150mほど先に居たプレイヤーだ。 どっちも見事にヘッドショットのクリティカルで一撃死と言う目にあっていたが、彼らも隙あらばとこちらを狙っていたので二人は同情する気は一切なかった。

 

「まぁいいや。さっさと稼ぎに行こうぜ、ウタ」

「そうねリョウゲツ。マイホーム資金も貯めたいし」

 

どちらからともなく手を差し出して、繋ぐ。

それはとても仲睦まじい光景であり、『ガンゲイル・オンライン』で『蒼雷(サンダラー)』と呼ばれる男と『冥界の女神(ヘカテ)』と呼ばれる女が見せる日常の姿だった。

 

 

 

 

 

 

六月に入り、梅雨に入った事を告げるような雨模様。

涼は詩乃や藍子、木綿季とゲームをしている。 いつぞやのパーティゲームの最新作をダウンロードしてのプレイは、思ったより白熱していた。

というのも、木綿季が『最下位の人に今日一日なんでも言う事を聞いてもらう』と言い出したからである。 何で言いだしたかと聞けば『こうでもしないとおにーちゃん本気でしないから』らしい。

 

「それでも実質三対一なのはひどくないか!?」

「何のために妨害ありのステージばかり選んでると思ってるの?」

「おにーちゃんをこうするためだよ!」

「兄さんが悪いんです。 わたし達は謝りません」

「俺何かしたの!? してたらこうして仕返しする前に言ってくれない!?」

 

選択されるステージは絶妙に身体能力と関係なく、更に妨害ありの物ばかり。 その上で涼の事を大体知り尽している詩乃がメインで妨害し、藍子と木綿季が補助という布陣に対して為す術がない。

 

「ぬ、ぬわー!」

 

結果発表

1位藍子 2位木綿季 3位詩乃 4位涼

 

「「「いぇーい」」」

 

狙い通りの結果に女性陣はハイタッチで喜び、ただ一人の男は膝を付いた。

 

「色々言われる前に一つ聞きたい……何で?」

 

フローリングの上で正座の体勢にさせられた涼が問う。

 

「おにーちゃんは最近ボクらに構ってくれません! ALOに来る頻度も減りました!

 で、詩乃おねーちゃんに聞いたら違うゲームに入ってるって聞きました!」

「えぇぇー……」

「ごめんなさい、涼。 もうあっちでも二人きりは難しいみたい」

 

理由を聞けば、最愛の人から妹達にさっくり売り飛ばされていたらしい。

詩乃が怪しいと判断した二人は彼女を問い詰めて自白させ、今日は一日中二人を甘えさせた上でGGOにも連れていく事を約束させられたという。

こちらも、コンバートではなく新規アカウントになる。

 

「うん、それは申し訳なかったというか、まぁ、そのですね?」

「言い訳無用! おねーちゃんだって寂しそうにしてました!」

「ちょ、木綿季!? 何を言ってるの!?」

「? 前に『兄さん、最近構ってくれないなぁ』って言ってたよね?」

「ちょ、まっ、えっ、なっ」

 

木綿季の暴露に藍子は耳の先まで真っ赤になり、言葉が出ない。

その反応が、木綿季の言った事が本当であるとの何よりの証明だった。

 

「いや……確かに、悪かった。すまん」

「~~~~~~!?」

 

涼が申し訳なさそうに頭を下げれば、ゆでだこ状態の藍子が何を思ったか最近上がってきた身体能力のままに頭から突撃してくる。正座のままだった彼はその勢いを殺せずに一緒に床に転がった。

 

「藍子ー大丈夫かー」

「だだだだ大丈夫です兄さんわたしはもうそりゃばっちり!!」

「ダメね」

「うん、ダメだね」

 

流石の木綿季も、姉の藍子がこうしてバグる所は初めて見た様子。

目がぐるぐるしている藍子を落ち着かせる事に四苦八苦しながら、四人の日常は今日も平和であった。

 

 

 

 

 

 

暗闇に二つの光の軌跡が走る。

それは洞窟に潜んでいた大型モンスターの急所を寸分違わず貫き、切り裂く。

痛みにのたうち回る巨体は、ただそれだけで脅威ではあるが下手人は手慣れた様子で距離を取る。 直後に響くのは二つの銃声であり、それを持ってモンスターは光の粒子となって散っていく。

それを確認した直後、人工的なライトの明かりがつ四つ灯った。

照らし出されたのはライトと同じ数のプレイヤー。

一人はリョウゲツ。 一人はウタ。

後の二人は女性アバターで紺色の髪色と身長が共通しており、一人はショートヘアで、もう一人が癖の強いロングヘアにバンダナを巻いている。

ショートヘアの少女は灰色の迷彩服を着ており、その両手にはバレットM82という狙撃銃が握られている。 対してロングヘアの少女は服こそ同一だが、その手には円筒状の機械が握られており、両肩からはベルトを伝ってウージーが二丁下げられていた。

 

「おつかれさーん」

「おっつかれー」

「お疲れ様」

「お疲れ様です」

 

四人は軽くハイタッチを交わし、ドロップを確認した後で洞窟内をまた歩き出す。

もう既に分かるだろうが、この四人は涼、詩乃、藍子、木綿季である。

それぞれが新規だからと名前を捩るか文字を付け足したプレイヤーネームを付けている。

涼ならば涼月と派生してからのリョウゲツで、詩乃は(うた)からウタ。

藍子は(インディゴ)からのインディ、木綿季は木綿(もめん)からのコットンだ。

 

ちなみにショートヘアがインディであり、ロングヘアがコットンになっている。

 

「どうだ二人とも、こっちは慣れたか?」

「銃が新鮮でいいよね。 マシンガンは撃ってて面白いなぁって思うし」

「わたしとしては、ALOより殺伐としてる感じが……その」

「まぁ、私達もPvPを好んでする訳じゃないから」

 

歩きながらの会話は、他愛もない内容。

姉妹がGGOに来てから大体二週間ほど経過したが、その慣れの確認だ。

現実では今、梅雨の真っ最中である為、通学と買い物以外ではほぼ室内で過ごす。

その間の過ごし方として、四人でゲームと言うのは彼らの間では定番だった。

 

「この世界観でダンジョン潜ってると、俺らトレジャーハンターぽいよな」

「対人よりダンジョンの方が、ここでは気楽ですからね」

「あはは、言えてる。ウタおねーちゃんの射撃より怖くないし」

「……そんなに私の射撃、怖いかしら?」

「前にヘカートⅡでヘッドショットした相手、頭爆散してただろーが。

 しかも2km級の狙撃でさせてたらそりゃ怖いわ」

「その私相手に弾斬りする旦那もいるんだけど」

「兄さんと義姉さんは似た者夫婦だと思います」

「戦闘力の高い似た者夫婦とは……」

「ALOでも言われてたし、今更じゃないかなぁ?」

 

会話を続けながら歩くが、モンスターにも、プレイヤーにも遭遇しない。

途中で幾度となく分かれ道を巡り、おそらくは最深部である所にたどり着く。

 

「んー、とりあえずここまで潜ったが……」

「外れ……かしら?」

 

最深部と思われる空洞部分は、ワンルームマンションの一室程度の広さ。

完全な四角四面ではないが、明らかに人為的な手が加わったと思われる程度には整っている。

 

「んー、あながち外れじゃないと思うんだけど」

 

コットンとインディが壁に触れながら歩く。

ここまで誰にも会わなかった上に、他の行き止まりでは手付かずのドロップがあった。

それを思えば、外れであると考えるのも早計である事は事実だった。

 

「俺が入口警戒。調査は任せるぞ」

「はい、任されましたっ」

 

この中では索敵能力と即応能力の高いリョウゲツが入口で警戒に辺り、残りの三人は調査に入る。 この手の事に強いのは意外にもインディであり、こういう時の彼女は楽しそうだ。

元々読書家で、読むジャンルも様々。誕生日に容量の多いタブレットを渡したら電子書籍のデータでほぼ一杯になったのは記憶に新しい。

ただ、それによって蓄えられた知識は大人でも舌を巻くほどの物で、それに裏付けられた洞察力や想像力と言うのは四人の中でも突出していると言える。

 

「あれ、これは……?」

 

そんな彼女が、岩壁の前で立ち止まった。

触れて、突いて、叩き、最後にグロック18Cを抜いて発砲。

突然壁に向かって発砲した事に対して三人は驚きを示しつつも、推移を見守る。

 

「コットン、ちょっとここをこう……四角く斬って」

「わ、わかった」

 

コットンが円筒形の機械のスイッチを入れる。

ヴォン、という音と共に現れたのは青紫色に輝く円筒型のエネルギーの刃。

カゲミツG4という名前の、GGOでは数少ない近接武器だ。

その発生した刃を、姉の指示通りに切り裂いてみれば、岩が崩れて白い何かが剥き出しになった。

 

「「「「……ナニコレ」」」」

 

四人の声と感情が一致する。

目の前の白い何か、それは明らかに人工物である。

少なくとも、触れた質感は石や鉱物ではないとインディは判断した。

 

「……こういう時は世界観で考えてみよう。GGOの設定は?」

「人類の宇宙進出後に宇宙戦争が勃発。

 それが原因で文明が衰退したため、かつて滅んだ地球に帰ってきた、と言う設定です」

「なら、地球が滅んだ時の文明は、宇宙進出ができる程度に栄華を誇っていたわけだ」

「……流石に宇宙船はないでしょ?」

「宇宙船じゃなくても、地下施設の壁とか? とすると、ダンジョンエリア?」

「可能性はあるな。GGOにこれしたら世界が終わる系のクエストは無かったはずだし、物騒な物があるという事は無い……はず?」

「これが映画なら、おにーちゃんの考えで行くと中がモンスターの巣窟になってそうだね!」

「あえて言わなかったのに……とりあえずこの壁沿いに掘るか。

 入口みたいなのがあれば儲けもんだな」

「見つけてどうするの?」

「「入る」」

「誰も入った事の無いダンジョンなら、楽しそうです」

 

血は繋がってないのに、確かに兄妹だとウタは三人のリアクションを見てため息を吐いた。

そして、ちょっとワクワクしている自分も同類という事なのだろう。

 

 

 

 

 

 

洞窟を掘っても扉は出てこず、カゲミツG4で斬りかかれば傷一つつかない。

『破壊不可オブジェクト』と表示が出た時点で、一行は探索を諦めた。

地上に出て、別に入口が無いか探す方向にシフトしたためだ。

とは言え、壁にたどり着くまでにも結構な時間が経っている為、また後日という事にした。

 

「ゲーム内の拠点ってのは、何かいいなぁ」

 

今回の稼ぎで目標のクレジットが貯まったため、ゲーム内での拠点を購入。

ついでに四人でスコードロンまで作った。

名前は『ライトニング分隊』が良いというのはコットン。

理由を聞けば『ALOでのおにーちゃん雷みたいにジグザグ動いてたし、四人だし』というあまり深く考えていない感じだったが、他に案もないのでそうなった。

リーダーはリョウゲツであるが、この四人で完結する予定なので彼の立場は一番低い。

 

「一階が事務所と倉庫で、二階が住居。

 家具の追加購入と売却はコンソールで終わり。

 これが出来るのはリーダーか権限渡されたメンバーだけ、と」

「完全にこれ、依頼を受けて動く傭兵とか探偵の奴ですよね」

「世界観的に言えばボクら、傭兵一家って奴だね」

 

事務所部分の奥、既にリビングルームと言っても差し支えない程度に整えられたそこで四人はGGO内ではほぼ初めて、だらけて過ごしていた。

ALOでも央都に拠点を持っており、そこで過ごす事も多かったのでGGOでも自分達の拠点を作るというのは割と急務だった。

 

「部屋割りはどうするー? 二階部分は四部屋だが」

「部屋の数は変えられないの? どうせなら四人一部屋がいいわ」

「あ、それいいですね。 リアルだと二人と二人で部屋別ですし」

「ならボク、ベッド大きい奴がいいなー」

「この会話、他のプレイヤーにバレたら俺殺されそうだよなぁ……」

 

このゲームの男女比率を考えて、リョウゲツは遠い目をした。

VRMMO界隈は基本的に男性プレイヤーが多い。

SAOでも男女比が確か、男性8の女性2程度だったはずだ。

ALOは世界観が受けたのか7対3ぐらいに持ち直しているようだが、GGOは女性受けしにくい世界観の為、SAOよりも男女比は偏るだろう。

その貴重な女性プレイヤーと一緒の部屋に寝る寝ないという話が聞かれれば、ただでさえPvPが激しい世界がより一層激しくなるのは当然と言える。

 

「私と一緒に居た時点で、もう無理じゃない?」

「ウタと最初にダイブした時は、確かに周りの視線がクッソヤバかったな……」

「どんな視線だったんですか?」

「二人は覚えておきなさい。男も女も、嫉妬は醜いものよ」

「「アッハイ」」

 

ウタの目が据わったのを見て、二人は色々と察した様子だ。

大方、そういう相手を悉く沈めたのだろうという事は想像がついた。

この義姉は基本的に人に関わらないタイプで、認めた相手としか交流しない。

そして、その認めた相手を侮辱されると攻撃的になるのだ。

特にそれが最愛の人だったりした場合はもう、その最愛の人でも止められない。

最愛の人が気づかないほど深く潜り、気づかない内に苛烈に終わらせてしまう。

それだけの事が出来てしまう程度に、彼女は義理の両親に鍛えられたのだ。

 

「だから、そんな嫉妬も愛してくれる相手を探す事ね」

「はいはい、良い話の振りしていちゃつこうとするの止めよ? ウタおねーちゃん」

「というより、そろそろ寝る準備しないといけない時間ですよ」

「ほんじゃ、今日はこれで解散だな。風呂はいつもの順番だぞー」

「「「はーい」」」

 

 

 




作者は藍子を書く際にこのすばのゆんゆんをイメージしてしまう病にかかったのでそんな感じにします(何
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