流星の軌跡   作:Fiery

108 / 112
キリ子ちゃん登場


そこに男の娘がおるじゃろう?

 

 

 

●懺悔(をさせる為の)部屋

 

 

※おーり さんが あすな さんを招待しました

 

※おーり さんが しの さんを招待しました

 

※おーり さんが らん さんを招待しました

 

※おーり さんが ゆうき さんを招待しました

 

※おーり さんが くらいん さんを招待しました

 

※おーり さんが えぎる さんを招待しました

 

※おーり さんが りずべっと さんを招待しました

 

※おーり さんが しりか さんを招待しました

 

※おーり さんが すぐは さんを招待しました

 

 

おーり:明日キリト君をキリ子ちゃんにしてGGOに叩き込みまーす

 

きりと:明日は急用が生えてくる予定なんだ

 

おーり:お前の場合、急用じゃなくて事件が生えてきそうだから止めろや

 

あすな:あはは……笑えない人に対して笑えない人が言ってるのは気のせいかな?

 

らん:同類ですからね

 

すぐは:この二人はねぇ

 

おーり:心が死にそう

 

きりと:俺も

 

くらいん:評価としてはちゃんとしてるな

 

えぎる:だな。的確だぞ

 

ゆうき:死にかけてるのは置いといて、集合は?

 

しの:再コンバートって初期地点なのかしら? それならメモリアルホールだけど

しの:他の皆は来るの?

 

くらいん:オレは行くぜー

 

えぎる:俺もだな。ロボって言うのも興味はある

 

りずべっと:銃に興味も出てきたから行くわよー

 

しりか:こういうのは生で見ないといけませんしね!

 

きりと:俺は見世物なのか……

 

おーり:俺も見世物になったから多少はな

 

すぐは:この兄二人はホントにもう……あたしは光剣に興味あるんで見に行きます

すぐは:通信費はお願いね。お兄ちゃん

 

きりと:マジかぁー……いやまぁ良いけど

きりと:そういや、ユージオも行くみたいな話してたけど、どうなったんだ?

 

 

※おーり さんが すとれあ さんを招待しました

 

 

すとれあ:何かいっぱい居る

 

おーり:専門家を呼んだ。ログで把握せい

 

すとれあ:把握した。いやどす

 

くらいん:返答がクッソはえぇ

 

すとれあ:アタシにアリスとユージオ迎えに行けってんだろー。そんで案内とかもやらせんだろー

すとれあ:いやどす

 

おーり:お前だけにやらせんわ

おーり:全員で適度にGGOツアーして、そっから俺らのスコードロンとキリ子ちゃんで突撃の流れだから

おーり:ストレアも突入メンバーだぞ

 

すとれあ:それは良いんだけどさぁ

すとれあ:まぁ皆見に来るよね? この流れだと

 

りずべっと:まぁねー

 

すとれあ:アタシじゃなくてもいいじゃん。アスナが適任ではなかろうかと思ってしまう

 

おーり:街の案内とかはアスナでも問題はないけどな

おーり:でもあのボスは前にやった感じだと、火力がマジで足りん

おーり:レア光剣を使い潰してやっとだから、どうしてもお前の火力が要る

おーり:そう言う意味でもお前は抜けんぞ

 

すとれあ:やー、ダンジョンアタックについては良いんだよ。クレジット稼ぎたいし

すとれあ:皆のダンジョン同道とかもさ、何だかんだで自衛できる人ばかりだから問題ない

すとれあ:あの阿呆がアタシに突撃してくるのだけがねー

 

らん:あー……

 

ゆうき:あー……

 

しの:まぁ確かに、彼女はストレアに対しては凄いぐいぐい来るわよね

 

あすな:でもアリスさん、ストレアと仲良くなりたいのは本心だから……

 

すとれあ:ネットのALO掲示板で、明らかにアタシとアリスの事で『種族を超えたキマシタワー』って書かれていたアタシの心境を考えてほしい

 

おーり:何も言えねぇ……

 

きりと:何かすみません……

 

あすな:キマシタワー……? 何……?

 

きりと:アスナは知らなくていい単語かなー……

きりと:というかストレア、そこまでネットに触れなくてもいいんじゃないか……?

 

すとれあ:アイツが情報テクノロジーに習熟する前に、対抗策を山ほど用意しとく必要があるからね

すとれあ:今でさえ連絡手段のメールとかがバカスカ来るんだから

すとれあ:短文返信で『送りすぎるのやめーや』って空気出しても気付かないか無視するし

 

くらいん:何というか……

 

えぎる:その、なんだ……

 

りずべっと:言わないでおきなさい。二人とも

 

しりか:あはは……

 

すぐは:というかあの二人、もうメールとかできるの?

 

すとれあ:アタシ達のはネットワークを介した、ライトキューブ同士の相互通信だよ

すとれあ:皆の方に送るメールも出来るはずなんだけど、教えて教えてって何でアタシに聞くんだアイツは

 

しの:ストレアがあの三人の中で一番詳しいのは事実でしょうに

 

すとれあ:神代博士とかが身近に居る時点で、アタシに聞くという選択はないと思うんだ

 

あすな:博士は逆に近いから普通に話すだけで事足りるからなんじゃないかな

あすな:だからメールの使い方を聞けないとか

 

すとれあ:それはあるのかなぁ……面倒だなぁ……

 

おーり:教えといたらお前へのメール攻勢も弱まるかもしれんが

おーり:キリトとかにも送るだろうしな

 

すとれあ:頑張るかぁ……

すとれあ:あ、アリスからまた通信来た。『私達も明日は行きますからね』って

すとれあ:アカと通信費どうしたの……

 

おーり:アカは俺。費用は眼鏡に出させた

 

すとれあ:兄貴、罰ゲームに全力出し過ぎじゃない?

 

おーり:ギャラリーに広くキリ子ちゃんを周知していきたいと思います

 

きりと:キサムァッ!?

 

しりか:BoBで周知されてるんじゃ

 

すぐは:大会後に即消えたから伝説になってそう

 

すとれあ:第三回直後のネット掲示板は祭りだったみたいだね

すとれあ:兄貴と共闘してる所のスクショとか上がってたよ

 

おーり:あれ? これ弄る度に俺にもダメージ入る奴?

 

しの:え、今更?

 

ゆうき:お兄ちゃん、あれだけやってなんで巻き込まれないと思ったの?

 

らん:共闘して最後には大決戦でしたよね……

 

きりと:一緒に地獄に落ちようぜ親友!

 

おーり:お前だけで落ちてろよその地獄

 

 

 

 

 

 

 《SBCグロッケン》にある、GGOを始めたプレイヤーが最初に降り立つ場所である《メモリアル・ホール》入口。そこで仲間達を待っている、リョウゲツを除く《ライトニング分隊》の面々。

 

「すーとーれーあー!」

「知ってた」

 

 一番初めに現れたアリスが、やはりいつものように飛びつこうとするのに合わせ、ストレアはストレージから超合金のバリケードでガード。しかしアリスは、それを読んでいたように上に跳び上がって壁を超える。

 

「インディバリアー」

 

 横に居たインディがストレアに引き寄せられ、メンバートップのSTRによって抱き上げられる。丁度、ストレアとアリスの間に来るように。

 

「へっ?」

「ちょ!?」

 

 後の流れはお察しであり、インディとアリスが抱きあう形になり、ストレアは二人が抱きついたと同時にその場を離脱。バリケードを回収して残ったのは、抱き合うインディとアリスの姿。

 

「……セルカと抱き合っている感じで、これはこれで」

「わたしは良くないんですけどぉっ!?」

 

 うがーっ、とインディが吼えれば、『すみません』とすぐにアリスも彼女から離れた。

 

「身代わりはちょっと酷いんじゃないかい? ストレア」

「会う度に抱きついてくるなと何度も言ってるのに来る方が悪い」

「君だけだよ。アリスが会う度に抱きつくのは」

「それを止めろってアタシ、毎回言ってんですけどぉ」

 

 アリスの後に現れたユージオが笑い、ストレアは渋い顔をする。このやり取りはおそらく、アリスのこの癖みたいなものが直るまで続くのだろうと半ば悟っているが、有効な対策が見えていないのが現状だ。

 抱きつかせれば抱きつかせたで、いつぞやのアンダーワールドでの別れの時のような事になるだろう。ストレアは地味にあの時の事を許していない為、塩対応を継続することは間違いなかったが。

 

「すーとーれーあーさーん!」

「ごめん。ごめんて」

「では改めてストレア!」

「お前はいい加減にしろ」

 

 インディに謝りながら、アリスにアイアンクローを極めるという器用な事をするストレアを見て、残りの三人は苦笑した。

 

「あの二人、目印には最適ねー」

 

 その光景を見ながらやってきたのは、初期衣装である迷彩服でやって来た三人。リズベット、シリカ、リーファ。

 

「リアルでもこっちでもノリが変わらないのは、ある意味凄いよね」

「やはりあの二人は親友なのでは……?」

「それ、ストレアには言わないでね。拗ねるから」

 

 出迎えたウタの言葉に三人が苦笑した。

 

「頑なに認めないわよねぇ……」

「アリスの事、あれだけ必死に守ったりその後のフォローもしてるのに」

「色々面倒は見るけど、あまり近づきたくない……? 事情でもあるのかな?」

「さぁ……? でも、本人たちがあれでうまく回ってるなら、私達はこじれた時のフォローをすればいいんじゃないかしら」

 

 人間関係など、なるようにしかならない。お互いがお互いをどう思っていようと、結局そう言う形に行きつくだろう。ウタはそう思っているし、リョウゲツもそうだろう。

 ストレアが本気で……心の底からアリスを嫌っているのなら、リョウゲツがここにストレアを呼ぶ事はなかった。この兄妹は現実世界では唯一と言っていい、お互いの思考を曲解することなくそのまま伝えあう事が出来る存在だ。そこに嘘や誤魔化しは通用せず、言いたくないなら能力で閉じるしかない。

 そもそもアンダーワールドで二十年近く一緒に居たのだから、互いの手の内も思考もほぼ筒抜けだ。そこに能力というダメ押しが加わって、兄妹間で隠し事をするのが非常に困難になってしまった。

 そんな兄が、妹の天敵が居ると分かって本人をここに呼んでいるのだから、そう拗れる事が無いと信頼しているのが分かる。もっと言えば嫌いなだけではない……AIでは決してあり得ない複雑怪奇な感情が存在するのだと、読み切っているのかもしれない。

 

「よぉー、来てるな」

「元からいる奴ら以外は迷彩服か……基本、皆装備はバラバラだから統一されてると違和感あるな」

 

 初期装備の為バンダナの無いクラインと、その容姿のおかげで歴戦の兵士にしか見えないエギルが現れた。

 

「エギルは何というか、ザ・ソルジャーよね。迷彩服だと特に」

「クラインさんの方は、言っては何ですけど……」

「映画の、序盤で死にそうなムードメーカー的兵士」

「酷くねぇか?」

「正直分かるなそれは」

「エギルゥッ!?」

 

 そこかしこでコントが繰り広げられ、賑やかになる一団だが、当の主役と仕掛け人はまだ姿を現さない。ついでに言えば主役のパートナーもだ。

 

「そう言えばメインは?」

「集合時間早めに伝えて、今アスナが色々キリト本人を改造してる所。旦那はその為の道具とかを揃える使い走り」

「お兄ちゃん達以外は揃ったし、拠点に行くついでにざっくり案内でもする? メッセージでも送っておけば入れ違いにはならないだろうし」

 

 コットンが、物珍しそうに辺りを見ているユージオを見てそう提案した。正直、施設の入口で十人以上の集団が屯しているのも悪いと思ったのだろう。賛成の声が多数上がり、『こっちだよー』とコットンの先導で移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 道中騒ぎながらグロッケン観光をこなして、リョウゲツ達の拠点へと辿り着く。そしてそこには、ドアの前に座り込んで考え事をしているスコードロン《ライトニング分隊》のマスター(お飾り)であるリョウゲツの姿があった。

 

「……何か察したけど、どうしたの?」

「あまりの完成度に、アスナがキリ子ちゃんを愛でる為に籠城してます」

「予想と違う方向だったんだけど、とりあえずぶっ飛んでるのね」

 

 簡潔な説明で全員が『あっ(察し』状態だ。曲がりなりにも拠点の家主はリョウゲツであり、通常なら彼が締め出される事はあり得ない。なのにこうしていると言う事は、そうせざるを得ない理由があるからであり、中に居るはずの二人の関係は恋人(夫婦)である。

 

「とりあえず店売りで男女共用もしくは男性装備の可愛いの、と買わされた衣装防具百近く」

「うちのクレジット大丈夫なの?」

「まぁ俺の分の被害だけで済んでるからそれは良いんだが……」

「ドツボったアスナが暴走してると」

「閃光の面目躍如で叩き出されて、どうしたもんかと途方に暮れていました」

 

 ここまで仲間達はキリトの心配を一切していない。リョウゲツによれば着せ替え人形化して目が死んでいたとの事だが、元からGGOにキリトを呼んだのは罰ゲームの為なのだ。その罰ゲームが着せ替えになるか、狩場に叩き込むかの違いだけ。

 キリトに関して心配するとしたら、今現状どんな格好になっているかだけである。

 

「どうすんのさ兄貴。当初の予定が進まないけど」

「そりゃ突撃かけるよ? キリ子ちゃんお披露目は絶対やるし」

「アスナに着せ替えられてどうなってるのかしらね……」

 

 溜息と共に《ライトニング分隊》全員が銃を抜いた。リョウゲツとウタはカスタムイーグル(自分専用改造機)を、インディはグロック18C(フルオート可)、コットンはファイブセブン(命中率重視)。ストレアはオートマグ(力こそパワー)だ。

 グロッケンの外れではあるが、ここはまだ圏内である。しかし、銃器を使用できないわけでは無い。SAOでも、圏内であればダメージは発生しないが攻撃を受ければ衝撃によって行動制限などは発生する。

 アスナが暴走していたら取り押さえる(簀巻きにする)必要がある為、銃で行動制限を行うのだ。光剣を抜いてくればリョウゲツが当て身(男女平等拳)を振るうだけである。

 

「アスナが魔獣か何かのような扱いをされているのですが……」

「たまに暴走すると似たようなのになるからなぁ……アスナさん」

「ストレス溜まってたんでしょうかね……」

姉なるもの(ダークサイド)出ちゃったかー……」

 

 妹同盟(リーファ、インディ、コットン)のしみじみとした呟きに、アリスとユージオは戦慄した。人間色んな面があるのだと理解はできるが、二人が知るアスナという人物像からはかけ離れていた。

 ただ、仲間内では何度も見られている姿だ。アスナは特にインディとコットン(藍子と木綿季)がお気に入りであり、事ある毎に姉妹的な意味で仲良くなろうと色々してくる。リーファについても手を抜いているという事はなく、何なら将来の義妹という事で良く二人で出かけたりもしている。

 

 その中で、アスナ曰く姉力(あねぢから)が溢れ出す。そして、色々と危ない事になる。『存在しないはずの記憶を呟き始めたら危険』というのは、三人の共通認識だ。今回はそれが暴走するくらいに、コンバートしたキリトのアバターがストライクだったのだろう。もしくは着せ替えている内に楽しくなったかである。

 よくよく考えたら仲間内で一番危険人物なのでは? とリーファは気づいてはいけない事実に気付いた(SAN値チェックだ)が、超速で忘れる事にした。どうせ姉になるので逃げられないと諦めたとも言う。

 

「アンダーワールドじゃ暴走しなかったのにね」

「あの時は状況が状況でしょ。むしろ暴走してたら私が殴ってたわ」

「ウタちゃん、普段も暴走した時止めてほしいなーってあたし思うんだけど……」

「リーファの方は管轄外よ。あくまで私は、インディとコットンの姉なの」

 

 ですよねー、とリーファががっくり肩を落とす。心なしかアバターのポニーテールも萎える姿に、仲間達は少し同情した。

 

 言ってる間に、リョウゲツはマスター権限で入り口のドアを開く。アスナが着せ替えをしているのは二階の、メンバー五人の寝室だ。足音を殺して五人が素早く一階を通り、二階への階段を昇る。程なくして寝室のドア前に集結し、聞き耳を立てて中の様子を伺う。

 

『あ、アスナさん? そのインナー……』

『大丈夫! 今のキリト君なら似合うよ!』

『それだけは許してー!? 俺の中の大事な何かが取り返しのつかない事になるゥ!?』

 

 リョウゲツは他の四人を見た。『放置したい』と。

 他の四人はリョウゲツを見た。『異議なし』と。

 

『早く来いよオーリィッ!? 今助けてくれたらヤベー奴相手でも何でも突撃するからぁぁぁぁぁ!?』

 

 気配は全員極力殺し、足音も立てていないがキリトの《超感覚》には引っかかったのだろう。居るの分かってんだぞ、と言外に言われてしまえば、行くしかない。ウィンドウの操作をしてドアロックを外し、リョウゲツがドアを開けて中を覗き込んだ。

 

「アスナー、もうみんな集まってんぞー」

 

 キリトの方を見ないようにしながら声を掛ければ、アスナが満面の笑みを向ける。

 

「これ着せて着替えさせたら行くね!」

 

 そんな彼女の手に握られているのは、何時買ったのかわからない女性用のインナーである。ぶっちゃけて言えば、リョウゲツも買った覚えがない。購入リストの中に存在しないそれは何処から来たのか……

 

「装備すると呪われそうだから止めてさし上げて」

 

 リョウゲツは考える事を止め、親友の最後の尊厳を守る事を選択した。

 

 

 

 

 

 

「……本当に女の子だ」

 

 ユージオの言葉に、キリトの目から光が消えた。

 結局あの後、暴走していたアスナを簀巻きにし、妹属性の三人(リーファ、インディ、コットン)で囲んで説教をさせながら、一行は大型の装甲車にてリョウゲツ達が以前アタックしたダンジョンへと向かっていた。

 

「ユージオに裏切られた……リョウ、慰めて」

「俺に擦り寄るんじゃねぇ」

 

 猫なで声でしな垂れかかろうとするキリトに、リョウゲツはハンドルから片手を離してアイアンクローを極めた。その動きに淀みは無く、本気と書いてマジで頭を握りつぶさんとするスゴみが宿っている。

 

「ここまで完璧に……なぁ」

「知らなかったら気付かないな……」

 

 『ノォーッ!?』と外そうとする光景を見ながら、クラインとエギルは何とも言えない表情だ。GGOにコンバートしたキリトの姿はBoBの映像で見ていたが、生で見るとそれ以上に女性にしか見えない。しかも今は、男女共用装備の中でも女性寄りの可愛いタイプの衣装(当然黒ずくめである)を着て、髪型も長く艶やかな黒髪を一つにまとめたものだ。ちらりと覗くうなじが眩しく、知っていてもドキッとさせられる。

 

「……自信無くすわー」

「たまにする女性的な仕草だけ見ると、それにしか見えないのが何とも……」

「仮想世界のアバターだから、骨格もアテにならないのよね……」

 

 リズとシリカは彼のあまりにも『らしい』姿に本家としての自信を喪失しかけ、ウタはそうと見破る困難さに舌を巻く。

 

「男性的要素と女性的要素が五分五分なんだねぇ……流石レアアバターというべきか」

「……ストレア、私頭がおかしくなりそうなんだけど……彼はキリトなのよね? 瓜二つの女性というわけじゃ……」

「本人だねー。後アタシの隣に座んな」

 

 ストレアはM9000番系アバター(男の娘アバター)を興味深そうに眺め、アリスは両手で頭を抱えている。こっちはこっちで、近づいてくるアリスを両足で牽制していた。中々のカオスである。

 

「にしても……」

 

 そんな中でキリトの事からようやく解放されたユージオが、車内を見渡している。当たり前だが、アンダーワールド生まれでアンダーワールド育ちの彼は、《自動車》というものにあまり馴染みが無い。現実世界に来てから乗った車両についても興味深かったが、今乗っているものは随分と趣が違うと感じていた。

 

「これ、どういうものなんだい?」

「最近、こういう車両を改造できるようになってな。元々遠方のダンジョン……まぁ今回行くのは兵器格納庫だが、そう言う所を調べる為の拠点兼移動の足として用意してたんだよ」

「軍用車両的な奴が元なのか?」

「装甲兵員輸送車って括りの車両を、積載量と搭乗人員と居住性を高める改造を施した。掛かった総額聞く?」

「「結構です」」

 

 ぶんぶんと首を横に振る二人。聞けば、とんでもない額が彼の口から出てくると思ったのだろうがそれは正解であり、リョウゲツとウタが喧嘩をする程度の額とだけ言っておく。

 

「さて……インディ、コットン。そっちの様子はどうだー?」

 

 リョウゲツが最後方に居るはずの二人に声を投げかける。

 

「わたしはかいになりたい……」

「んー……大丈夫!」

 

 簀巻きから解放され、体育座りで己の世界に引きこもったアスナを見て、コットンは満面の笑みでサムズアップを返す。その笑顔は、姉なるもの(強敵)を退けた事による満足感に満ち溢れていた。

 

「何か大丈夫な要素あったか今!?」

「キリトさんの精神的女性化を防ぐためでもあるんですよ?」

「え、なにそれこわい」

「お兄ちゃん気付いて。今の仕草とか女の子になってるから」

「え」

 

 キリトがユージオを見る。彼は顔を伏せて、首を横に振った。

 続いてリョウゲツを見る。彼は運転中だが静かに目を閉じた。

 クラインとエギルを見る。彼らは気まずそうに目を逸らした。

 

「……リョウに責任を取ってもらう必要があるのでは?」

「そっち系と噂のスコードロンに叩き込んでほしいって?」

「ごめんちゃい☆」

「インディー、運転代わってくれ。今こいつここでボコる」

「はーい」

「あたしも手伝おうか? リョウ君」

「調子乗ってすみませんでしたァッ!?」

 

 妹が参戦してくるとマズいので、キリトは素直に土下座った。取り出したカスタムイーグルを仕舞いながら、リョウゲツは息を一つ吐く。

 

「装備は用意してるから、各自見繕って。意見はインディとコットンに聞くように。ウタとストレアは上の銃座で周辺警戒を頼む」

「何か来てるの?」

 

 ストレアの問いかけに、リョウゲツは首を縦に振った。

 

「実装されたせいかねぇ……ダンジョンの方角にうっすらと見覚えのあるフォルムがさぁ」

「えー……いや、まさか?」

 

 ウタ、インディ、コットンの顔が引き攣った。三人がそれぞれスコープを取り出して覗きこんでその方角を見れば、いつぞやの大型サソリロボが数体、進む先で徘徊している。

 

「えー、リョウ。周辺警戒って言うより、撃破した方がよくない?」

「……ストレアー。アレ用意してー」

「マジで? アレ撃って良いの?」

 

 停車してリョウゲツが肩を落とすのとは対照的に、ストレアの表情は喜色満面である。嬉しそうに車両上部……銃座とはまた違う場所に潜る彼女を仲間達が見送って、知っているであろう四人を見る。

 

「えー、簡単に言えばうちの最終兵器」

「さいしゅうへいき」

「試射すらしてないんですけどね。シミュレーションはしましたけど」

「ししゃすらしてない」

「物については、ストレアさんがテンション最高潮って所で察して欲しいかな……」

「もしかして:すごいのうつ」

「スゴイノウツヨ」

 

 リョウゲツの片言の後、上から『ガコンッ!!』だの『ジャキンッ!!』だの、車が出してはいけない音が響きまくる。それと同時に車両下部……機関部分からも何やら『ゴゴゴ』という不吉な音が響き始めた。

 

「えー、直視すると恐らく目が痛くなると思うので、直視しないように」

「り、リョウ? 一体何が起こるんだい!?」

「やるのは一発撃つだけだよ……搭載兵器カテゴリー、《荷電粒子砲》をな」

 

 なにそれ、と言おうとしたユージオの声は、直後響いてきた轟音によって掻き消された。

 

 

 

 




乱発したら何人の性癖ぶっ壊すんだろうな……キリ子ちゃん
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。