●暇を見て駄弁るだけの部屋
※きりと さんが すぐは さんを招待しました
きりと:おーい、オーリよーい
すぐは:お邪魔しまーす
おーり:なんぞ? つか妹さん呼んでどうした
きりと:ちょっとスグが用事だって言うからついでに招待してみた
おーり:ならついでに登録しとく?
すぐは:あ、はい。お願いします
すぐは:それで用事なんですけど
おーり:なんでしょ?
すぐは:あたしとデュエルしてくれませんか?
おーり:はい?
きりと:オーリ、お前スグに何したんだよ?
おーり:身に覚えがこれっぽっちもねぇや
おーり:というか内容聞いとけよキリトさーん!
すぐは:あ、いや別に何かしたとかされたとかじゃなくってですね
すぐは:その、お兄ちゃんとのデュエルが凄かったんであたしもー、と
おーり:流石キリトの妹
きりと:お前、俺の事蛮族だとか思ったろ
おーり:キリトさん空気読めよ。その論法だと彼女も蛮族になるぞ
すぐは:お兄ちゃん夕飯抜くけど良いの?
きりと:ごめんなさい
おーり:まぁデュエル自体は受けてもいいけど
おーり:単なる腕試しだけ?
すぐは:何かあるんですか?
おーり:いや、単なる条件付けだけの話
おーり:例えばキリトと戦う場合だと、色々条件付けてやったりしてるから
きりと:その日の気分が大きいけどな。スグが見た奴だと手に持っていた武器だけ使う
すぐは:条件付けする理由って何かあるんですか?
おーり:ただ単に殴り合うだけなら一々細かく言わないけど
おーり:やるからにはお互い有意義な方が良いから、腕試しとかだと初撃決着無しとかかな
おーり:後は最初はどっちが防戦から始めるかどうかとか
すぐは:お兄ちゃんとやる場合が条件色々増えるのはなんでなんです?
おーり:単純に後の事を考えてかな……
きりと:条件付けないと最終的に俺とお前の全面戦争だからなぁ……
すぐは:せ、戦争?
おーり:一月の事件の時に俺がやってた事って覚えてる?
すぐは:あの動きは忘れようにも忘れられないですよね
きりと:変態機動の事じゃなくて、オーリは色んな武器使って色んな戦法が取れるんだよ
きりと:で、それを解禁すると、武器が雨あられの如く降ってきたり
きりと:それを掻い潜ろうにも弓矢で狙い撃ちしてきたり
きりと:変則的な二刀流なんかもしてくるからなこいつ
すぐは:……スキルレベルってどうなってるんです?
おーり:基本的な武器術系はカンストしてる
おーり:後は機動力関係もカンストしてて、防御系はそこそこ。最近は魔法も使いだした
すぐは:お兄ちゃんと違って、何でも使えるって事ですか?
おーり:そうなる。だから縛りを入れないとハメ殺しが可能になるのよ
おーり:キリトにはハメ殺し通用しないけどね! あとこいつ武器ぶっ壊してくるし
すぐは:武器って自発的に壊せましたっけ?耐久値はありますけど
おーり:貴女のお兄さんが考えた方法使えば余裕
きりと:俺が諸悪の根源みたいに言うなよ
おーり:俺が知る限り、あんな事考え付いて実行したのお前が初だから実質そうじゃねーか
おーり:でまぁ、どうする? 要望には応えられる限り応えるけど
すぐは:なら、武器は剣を使ってもらって、半減決着で良いですか?
おーり:はいよー、日時はどうする?
すぐは:出来るなら今夜が良いんですけど……
おーり:急やな! じゃあ21時くらいで良い?
すぐは:わかりました。ありがとうございます
きりと:オーリ君、わかってるよね?
おーり:さっぱりわからんぞキリトさん
きりと:うちの妹傷物にしたら許さんよ?
おーり:お前何時からシスコンになったの? そういや前からだったわ
すぐは:お兄ちゃん何言ってるのよ……
◇
そんなノリで予定を立てた事を思い出しながら、オーリは届いていたメッセージに記された場所に居た。キリトともデュエルした場所なので迷う事は無かったのだが。
「あ、今日はありがとうございます!」
「あぁ、うん、大丈夫大丈夫。あとタメだし敬語は良いよ」
「あー……じゃあ、それで」
先に待っていたリーファに声をかけて、辺りを見回す。
キリトとアスナ、シノンやリズベット、シリカがギャラリーで来ている。
ちなみにランとユウキは『スリーピング・ナイツ』の用事で居ない。
「じゃあ、依頼通りに」
「その前にオーリ!」
「何じゃ? リズ」
「依頼の品、よ!!」
リズベットがストレージから剣を取り出して、それをオーリに向かって投げる。
高速で投げ出されたそれは当たれば並のモンスターを倒せる程度の威力がある。
「投げんじゃねぇよ!?」
抗議の声を上げながら、その剣の柄を掴み取る。
彼が見れば確かに、彼女に注文を出していた性能の剣だ。
両刃のオーソドックスな片手用の西洋剣は、SAOでもよく見た形のもの。
二度三度と感触を確かめるように振って、オーリはリズベットを見た。
「相変わらず腕だけはいいな!」
「腕だけは、は余計だっつってんでしょ!?」
「んじゃリーファ氏、やろうか……ってどうしたん?」
「え、いや、今飛んできた剣の柄を掴んだよね……?」
それがどうしたのだろうか? と疑問符を浮かべるオーリに、リーファは苦笑した。
戸惑いなく投げたリズベットを見るからに、これはいつものやり取りなのだろう。
明らかに常人の業ではないのだが……それだけの技術を持っている相手だと証明されたと思えばいい。
「ううん、何でもない。行くよ!」
「よし来い」
リーファがデュエルを申請し、オーリが受諾する。
リーファの構えは、剣道でよくみられる中段の構え。
それを見てオーリも同じ構えを取る。
「オーリ君は、剣道経験者なの?」
「基本的に教材でしか触った事無いぞ」
「あー……VR教材か。どうなの?」
「あらゆる教材を攻略したキメラが俺なんだよなぁ」
「ちなみに何をしたの?」
「剣道を始めとして、空手に槍に、弓に銃に軍隊格闘術とかもあったし合気道やら…」
「あ、もういいです」
とりあえずものすごく一杯やったんだなという事だけ理解した。
そしてそれを全部駆使できる程度には習熟しているのだろうとリーファは考える。
「はぁっ!」
開始と同時にリーファが踏み込み、上段からの一閃。
対してオーリはそれを正面から受け止める。
「……もしかして剣道で大層お強くあらせられます?」
「何か日本語バグってるみたいだけど、これでも強豪校のレギュラーだよ」
「マジかよ……」
嘆きながらもリーファの剣をいなして、返す刃で斬りかかる。
それをスウェーで避けて、リーファが距離を取った。
「あたしはどうかな?」
「とびきりの正統派で、上手い。後は実戦を繰り返しゃ強くなるのは保証するよ」
「お兄ちゃんに勝てるかな?」
「リアルファイトなら今すぐにでも勝てるんじゃね?」
「そっちはもう勝ったから……」
リーファの言葉に、オーリはちらりとキリトを見た。
「お前ちょっと哀れんだ目で見たろ今」
「そんな事実はございません」
「後で覚えてろよお前ェーッ!?」
キリトの咆哮を無視して、改めてリーファを見る。
剣を片手に持ち、屈むように腰を低くした体勢になり。
「つーわけで、我流に戻します」
「むしろそれとやりたかったんだよね!」
リーファの踏み込みと同時に、彼女の視界からオーリが消える。
「へっ!?」
「上だぞ」
声と同時に斬撃が降り、リーファの右肩を切り裂く。
たたらを踏む彼女の背後にオーリが降り立って振り向きざまに一閃し、ピタリと首に触れる直前で止めた。
「い、いきなり難易度跳ねあがってない!?」
「跳ぶだけにか。まぁこれがキリトに勝てるかどうかの答えになるな」
「……ちなみにお兄ちゃんならどう対応するのかな?」
「ん? あれくらいなら見てから避けるの余裕だろ。
むしろ声かけただけ、オーリの奴ちゃんと加減はしてるな」
キリトの言葉に何それ怖い、とリーファは思った。
確かにキリトとオーリのデュエルは凄まじいものだったが、実際相対すると大違いだ。
しかし、これが自分の兄が居る領域なのだと痛感する。
動画でしか見ていないが、プレイヤーとはあそこまで行けるのだと教えてくれた。
「……行くよっ!」
正眼を少し崩して構える。
オーリの強みは、膨大な基礎に裏打ちされた応用の幅だと兄が言っていた。
ならば正統派と評された自分の先を歩いているのが彼だとリーファは考える。
自分の基礎とは何か。それは打ち込んだ剣道だ。それなら、目の前の相手には絶対負けない自信がある。
でもそれだけじゃ足りない。
基礎は基礎だ。それを使うだけじゃあの領域には行けない。
それを使って、使い熟して、
リーファにとって新しいものと言えば、ALOでの戦闘経験。
自分の基礎を打ち壊す相手は、目の前にいる。
「しっ!」
鋭い呼吸音と共に剣を繰り出す。オーリはそれを一歩下がる事で回避。
胸元を通過した剣が跳ね上がり、それと同時に踏み込み、下から上へと顔に向かって振り抜く。それを見てオーリの顔つきが変わり、見ていた中でキリトの表情も変わった。
そして彼女の繰り出す剣に合わせて避けていたオーリが、剣を振い始める。
「流石って言えばいいのか、マジかよって言えばいいのか……」
リーファの突然の変化。
正統派の剣道ではなく、より実践的な剣術への変化。
今までの自分を崩して、新しい自分を作り始めた兆し。
それ自体は誰にでも起こりえるスクラップ・アンド・ビルド。
「こんなにすぐ切欠を掴まれると、立つ瀬がねぇな……!」
仮想世界でその剣の才を開花させたユウキとは違って、現実での剣道経験を生かして剣を振るっていたリーファ。彼女はそれだけでも、シルフ族で5指に入る実力者だった。
その剣道の経験に、ALOで蓄積した仮想世界での戦闘経験を新しく組み込み始めた。
自分では滅多にやらない戦闘中での組み換えをする彼女を、オーリは素直に称賛する。
最初はソードスキルを伴わない、純粋な剣技の応酬。
リーファが突き、斬り、薙ぎ、切り上げて切り下ろす。
オーリがそれらをいなし、受け、払い、流す。
(楽しい……!)
無心で打ち込んでいた彼女の胸に去来した感情は歓喜。
剣を振るう度に自分の動きが洗練されていくのがはっきりとわかる。
目の前の相手の動きを見れば、自分の動きはまだまだ荒い。
(もっと、もっと見せてよオーリ君!)
だからこそ、彼にはもっと見せてもらわねばならない。
その意気込みで踏み込めば、彼の姿が掻き消える。
(どこ――…右ッ!)
高まった集中力が、彼の動きの軌跡を認識した。
故にそれに従って剣を振れば、彼が苦笑いをしてそれを受けた。
「……捕まえた!」
最初は捉えられなかった動きを認識して、リーファは声を上げる。
そこからバックステップで距離を取った彼を追う為に、剣に光を宿す。
「あの構えは……」
「マジかよもうそれ覚えてんのか」
馴染みのあるファースト・モーションを見てキリトは感心し、オーリは顔を引き攣らせた。
放たれるのはソードスキル《ヴォーパル・ストライク》
彼女の兄がSAOで最も得意とした片手剣の突進技だ。
「やっぱあいつの妹だわ」
オーリはそう言って、真剣にリーファを見据えて迎撃を選択する。
放つのは同じソードスキル。SAOで散々彼女の兄と打ち合った《ヴォーパル・ストライク》
踏み込みは同時に、リーファがオーリより一瞬早く技を解放する。
「あ」
それはリーファの口から漏れた声。
放ったタイミングは悪くないし、技の選択も誤りではない。
それでも、リーファは自分が失敗したのだと直感的に思った。
それは、互いの剣の切っ先同士がぶつかり合うという状況で証明される。
(
自分の剣の切っ先に合わせ、彼の剣の切っ先が衝突して拮抗している。
拮抗しているという事は、力のベクトルがズレなくぶつかり合っているから。
タイミングを見切る勘と、先を読む目と、精緻な技術が合わさった絶技。
「オーリ君トンチキ過ぎない!?」
「そっちの兄貴より絶対マシだと思うんだよ、なぁ!」
《ヴォーパル・ストライク》同士の衝突は、最後の気合でオーリが押し勝った。
硬直から復帰するのは同時だが、リーファは押し負けて体勢を崩した分、動き出しが遅い。
「またやろうよ、オーリ君」
「予定が合えばな」
繰り出された一閃が、このデュエルの終わりを告げた。
◇
●暇を見て駄弁るだけの部屋
きりと:なぁオーリ
おーり:どうした?
きりと:今日、スグの剣道の大会だったんで見に行ったんだよ
おーり:あ、そうなんか。言えば詩乃と見に行ったのに
きりと:流石にお前ら夫婦がいちゃつくための出汁に使われるのは嫌だ
きりと:じゃなくてだな、お前スグになんかしたか?
おーり:だから、その曖昧な表現で察せって言うのは止めろ
おーり:した事って言えばあれからたまにデュエルするのと、剣道の教材教えただけだぞ
おーり:つか、大会見に行って何で俺に聞くんだ?
きりと:団体戦は決勝でストレートに五人抜き
おーり:おう?
きりと:個人戦でも一本も取られずストレートで優勝
おーり:すげーな。どっちも優勝じゃん
きりと:去年の優勝者相手にも、だぞ
おーり:……ん? その人との戦績は?
きりと:スグが言うには、中学時代は一度も勝てなかった人らしい
おーり:おー、成長したんやな
きりと:『オーリ君より遅いから何とかなった』って言ってたんだけど
おーり:ゲームで慣れたからか。凄いな
おーり:……え? 俺がなんかしたかってそう言う事?
おーり:あえて言うならお前の方の血筋の話じゃねぇか戦闘民族
きりと:お前のせいで、スグのリアル戦闘力が笑えなくなってきてるんだよ
きりと:という事で責任取って、ALOで俺にボコられてくれ
おーり:ただの逆恨みじゃねぇか!
おーり:仮想世界の経験は現実でも反映できるって聞いた事はあるし知ってるけどさ
おーり:彼女はそれで剣道強くなったって事だろ? 良い事じゃん
きりと:現実で剣道するときの仮想敵に俺が指名されている
おーり:もしかして:ボコボコ?
きりと:だからALOでお前をボコボコにしたい
きりと:もしくはちょっとうちまで来て、現実でスグにボコボコにされてくれ
おーり:どっちも地獄な二択はやめろ
きりと:後、またALOでデュエルやろうね! ってスグから伝言だぞ
おーり:地獄への三択でござったか
おーり:俺ちょっとGGOに引きこもるから上手い事言っといて
きりと:その時は嫁さん経由で俺らもGGOに乗り込む事になるけど良いのか?
きりと:お前の妹達にも協力を要請して徹底的にだぞ
おーり:俺だけを殺す包囲網とか、本当に止めてくれない?
オリ主は現実でゲームみたいな挙動は出来ないが、パルクールならできる。
父親は現実でゲームみたいな挙動ができる、ガチでニンジャみたいな人。
(オーディナル・スケールのフラグを叩き折った理由