流星の軌跡   作:Fiery

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リザルトと何の変哲もない日常回。


そのじゅういち:家族の一面

 

超巨大メカサソリの消滅を見届けた四人は、全員がその場へとへたり込む。

 

「つっかれたぁ……」

 

コットンが呟いた言葉は、四人の総意だ。

掠るだけでアバターの腕を紙屑の様に消し飛ばす、全部が当たれば即死の攻撃。

一撃も被弾できない状況と言うのは、彼らの精神力をかなりすり減らしていた。

リョウゲツに至っては判断を誤ったが、腕一本で済んだのは幸運だとも言えた。

 

「……こりゃ入口あっても、中の探索は出来んな」

 

応急救急キットでHPを回復させながら、一息つく。

休憩してから探索をしようにも、メカサソリを倒すために手持ちのリソースの7割を使ってしまっている。 特にヘカートⅡ用の特殊弾やオサフネはすぐに取り戻せるものではない。

それにアバターの欠損については、拠点か総督府で治療しなければならない。

死に戻りと言う手段もあるが、せっかく勝ったのにデスペナを受けるというのも嫌な話だ。

 

「でも、ここまで来たんですから調査はしますね」

「じゃあ私と調べましょう。コットンは行けそうなら手伝って。

 リョウゲツは腕が一本無いからまぁ、見張りをお願いするわ」

「了解した。今の俺はそれくらいの使い道しかないしな」

「休憩してからでいいー?」

「簡単に入口があるかどうかだけだから、コットンも休んでていいよ」

「わかったー」

 

駆け足で広間の奥へと走っていく二人の背を見て、リョウゲツは息を吐いた。

感覚と反射は広間の入口を警戒しつつ、思考はこの戦闘の事を考える。

 

彼としては、今回の戦闘についてほぼ最善を尽くしたと思っている。

ただ、自分の集中力の消耗管理や、片腕の欠損は明確なミスだ。

HPが1でも残るならダメージも必要経費ではあるが、アバターの欠損については即座の回復手段がない状況ではミスでしかない。

それを齎した原因は、集中力が最後の最後で切れたため。

そうして何故を突き詰めて出した結論は、あの相手はまだ自分に荷が重かったという事に他ならない。

 

「おにーちゃん」

 

考え込む彼の所に、コットンが歩いてくる。

彼女は兄の元まで歩いてくると、当然のように彼の膝の上に座った。

 

「何考えてたの?」

「ん? あー、さっきのメカサソリについてだな」

 

一旦思考を打ち切って、リョウゲツは妹の問いに答える。

警戒については一切緩めないまま、視線はあくまでも広間の入口に向けているが。

 

「あー、大きいモンスターは確かにGGOでもいたけど、あの大きさは正直異常だよね」

「あぁ、今回は一体だったし、尻尾が使えなかった様子だからまだマシだった。

 二体だった場合や尻尾も使える状態なら、多分俺ら今頃拠点に死に戻りだな」

「あはは……ほんとだね」

 

そう考えれば確かに、今回はまだマシだとコットンも思う。

機能を十全に使えない状態ですら、出し惜しみをすれば自分達が敗北したと確信できるほどにあのメカサソリは強かった。

あの重装甲の前では、携行できるサイズの火器がほとんど効果を発揮しない。

対物ライフルであるヘカートⅡですら関節を欠けさせる事が精いっぱいで、ほとんど見向きもされなかった光剣の攻撃力でようやく刃が通る程度。

一応のレア武器であるオサフネT3を使い潰して捻りだした出力で、ようやく斬れる。

 

「でもさー、あれに有効な武器って何があるの?」

「そりゃお前、ロボじゃないか? もしくはパワードスーツとか。

 ってそれで思い出したけど、コットンのストレージの中に何か入ったりして無いか?」

「ん? あー、LAとかの報酬って事?」

「そうそう。ドロップアイテムは大体がジャンクパーツでなぁ……

 ただこれ、テキストに『搭載兵器』とか物騒な単語がな」

「おぉう……ちょっと見てみる」

 

コンソールを呼び出して、アイテムストレージを確認する。

リョウゲツの言う通り、ジャンクパーツが大量に入っており、中には装甲に使われていたであろう金属のインゴットとかもある。

 

「……『デススティンガーType-Gの装甲片』とかあるけど、あれの名前かな?」

「待って、わざわざタイプとか書いてるって事は別系統もあるの確定じゃねーか……」

「他はねー……あ、あっ、た……」

 

ストレージ内のある一点を見て、コットンが固まる。

そのリアクションにリョウゲツはとてつもなく嫌な予感を感じたが、彼女の視線の先を見た。

 

『荷電粒子砲』

『荷電粒子コンバーター』

『AZ35mmバルカン砲』

『AZ120mmハイパーレーザーガン』

『AZ120mmハイパービームガン』

『AZ105mmリニアキャノン』

『AZ105mmリニアキャノン』

『核融合動力炉』

 

「はぁっ!?」

「うせやん」

 

リョウゲツが叫び、コットンが思わず変な関西弁になるほど、衝撃的な単語。

完全にアウトだと分かるそれらだが、核融合動力炉についてはまだ単体なら理解できる。

それゃ宇宙船とか作るんだもの、動力源についての技術が現代とは比較にならないことくらい予想できた。 しかし、他の物については『搭載兵器』というカテゴリに属している為に人の身で扱う事はほぼ不可能ではあるが、逆に言えば扱う手段がどこかに存在するという事。

 

「……あれがこれを落としたという事は、だ」

「あれは下手したら、プレイヤーが作れるって事かなー……」

 

二人は顔を見合わせる。

あり得ない話ではない。 だってアメリカもそういう物は大好きだろう。

わざわざSFチックな世界観にしているのだから、最低でもパワードスーツはあり得る。

ロボットも無いとは言えない。 ただ、ロボットに乗るとなればゲームの根幹が変わるが。

 

「……ペット枠?」

「うちにあんな物騒なペットはいらんな……」

 

想像してしまった事にげんなりしていると、調査に出ていた二人が戻ってくる。引きつった顔をして、全速力で走って。

 

「……なぁ妹よ。兄ちゃん嫌な予感がするんだ」

「奇遇だねおにーちゃん。ボクも嫌な予感しかしないよ」

「入口見つけましたけど、中がヤバすぎます!」

「あのメカサソリや()()()()()()()()()()()()()!!」

 

その言葉を聞いて、リョウゲツとコットンの顔も引きつった。

 

「全速力で拠点に撤収して、ログアウトして今回の事は忘れよう!」

「「「異議なし!!」」」

 

特大の厄ネタを前に、彼らは未来へと問題を丸投げした。

 

 

 

 

 

 

厄ネタを見つけて、蓋をして帰って一夜明け。

夏休みの宿題のノルマをこなして、四人は一息ついていた。

 

「そういえばさー」

「ん?」

 

ソファに横になって、詩乃に膝枕をされている木綿季が声を上げた。

 

「詩乃おねーちゃんってさ、結構な美人さんだよね」

「あら、有難う」

 

義妹の素直な賛辞に、詩乃は柔らかく笑う。

確かに、彼女は世間一般では美少女に分類される。

それは藍子や木綿季も同様だが、詩乃は自身を美しく見せる術を心得ている点が大きい。

これもまた涼の母の教育の一つと言うのだから、涼としては戦慄せざる得ない。

 

(改めて考えても、うちの両親のスペックがおかしい……)

 

「告白とかされなかったの?」

「そうね……そこそこ、かしら?」

 

悪戯っぽく笑う彼女は、同性の藍子と木綿季から見てもドキリとするほどの魅力を持つ。

ただ涼だけは、彼女が言った事に対して目を見開いていた。

 

「え、マジで?」

「涼以外の告白は一切受け付けてないわよ」

「あぁ、いや、うん。聞いてなかったから思わず……」

「貴方も似たようなものだと思うけど?」

「そうっすね……」

 

気まずそうに視線を逸らす彼を見て、詩乃が笑う。

隠していたのは涼も同じで、彼に責める権利は一切ない。

それに詩乃ほどの器量好しならば、告白を受けること自体は当然の結果なのだ。

 

「兄さんとの事を知っていて告白してきた相手も凄いですね……」

「その時は恋人じゃなかったから、仕方ないと言えば仕方ないのよ」

「ん? どういうこと?」

「私も涼も、告白したのは今年の一月。それまでは友達以上恋人未満だったから。

 それに、クラスメイトとの会話で『付き合ってない』って言ったのも原因ね」

「……あぁ、告白してないからですね」

 

藍子の言葉に詩乃は頷いた。

彼女達の視線は涼に突き刺さり、彼は居心地の悪さを感じながらも動けない。

 

「……弁明は何もないです……」

「弁明があったら逆に聞きたかったレベルだよねー」

「先に告白するのは確かに、涼の性格的に難しいのは知ってるからいいんだけど」

「そうなんですか?」

「恋愛観が結構古風なのよ。付き合ったらそのまま一生添い遂げるって感じで。今だと、お試しで付き合ってなんて普通なんでしょうけど、涼はそうじゃなかった。

 そういう所を自覚してるから、例え好きになっても黙ってる可能性は高いわね」

「「へぇー」」

 

詩乃の言葉に、藍子と木綿季の視線が幾らか柔らかくなった。

涼は、すっかり家族内での信用が減ってきているお義父さんみたいな心境を味わっているが。

 

「そうなんですか? 兄さん」

「……まぁ、そういうのは一生もんだと思ってるよ。

 うちの両親は互いに初婚だし、息子の俺が胸焼けするくらいに互いがべったりだしな。

 それぐらいにってのは流石に思ってないけど、それくらい好きな相手と一生……っていうのは、やっぱり考えるよなぁ」

 

少しだけ窓の外に見える遠い空を眺めて、彼は視線を最愛の人に移す。

彼女はその視線を真っ直ぐに返して、彼に微笑みかけた。

 

「おねーちゃん、ボク胸焼けしそう」

「わたしも胸焼けしそうだよ……」

 

バカップルに迂闊に話を振れば自分達がダメージを負う事を、二人は学習した。

 

「……告白してからは学校でもこんな感じだったんですか?」

「中学三年の三学期だけなんだけど、もう快適だったわ」

「快適……?」

「旦那を隣に置いとけば、余計なの一切寄ってこないの」

「俺は魔除けか何かかな?」

「噂好きのクラスメイトは便利よね」

 

楽しそうに笑う詩乃を見て、これ追及したらあかん奴やと三人は心を一つにする。

 

「――…あぁ、そろそろ三時か。 おやつでも食べるか?」

「ボク、アイスが良いー」

「アイスなら買い置きがあるわね」

「んじゃアイスにするか。何があるかなっと」

「ストロベリーがあるならわたしはそれが良いです!」

 

 

 

 

 

 

桜川家(といっても現状桜川姓が一人しかいない)には、別に娯楽がフルダイブなどのゲームしかないという事は無い。 夏の暑さで若干インドア気味ではあるが、それでも広場などで体を動かす事もする。

 

「チェストーッ!」

「木綿季は示現流が気に入ったのか?」

 

木綿季が振り抜いたラケットのガットがシャトルを叩き、勢いよく涼へと飛んでいく。

それを掬い上げるように打ち上げて、今度は藍子の方へと飛んでいく。

 

「前に勧めた本のせいですかね、はいっ!」

「どんな本なのかしら」

 

藍子が打てば詩乃が拾い、今度は涼へと打つ。

約5m四方の四角の頂点に四人が立った、変則的なバドミントン。

 

「剣術系の漫画ですね」

「示現流が活躍してたらそれもうR-18Gなのではないだろうか」

「そんなことないよー。少女漫画の方が意外とそういう表現がね」

「唐突に妹からカミングアウトされてしまった……!?」

 

ラリーを繰り返しながら、他愛もない会話をする。

 

「それを言うならVRMMOも大概じゃない?」

「言えてますね。兄さんは腕飛んでましたし」

「歩くR-18Gだよね」

「やめろ、誤解を招く表現をするんじゃない!」

 

木綿季に打ち返せば、スマッシュで涼に返ってくる。

藍子に打ち返せば、ボレーで涼に返ってくる。

詩乃に打ち返せば、一旦木綿季か藍子に飛んで涼に返ってくる。

 

「あるぇー? 結局俺に返ってきてね?」

「行くよ、おねーちゃん!」

「えぇ、木綿季っ!」

「待って、何か連携して鋭さが上がってんだけど!?」

「飲み物用意しとくから適当に切り上げるのよー」

「「はーい!」」

「うおぉぉぉぉやったらぁぁぁっ!!!」

 

壮絶なラリーを開始した三人を尻目に、詩乃はタオルで汗を拭きながら、近くの自販機でスポーツドリンクを人数分購入する。

 

「あれー? 詩乃じゃない」

「ん? あぁ、里香……珍しいわね」

 

彼女に声をかけてきたのは、スポーツウェアに身を包んだ里香だった。

ここで会うとは思っていなかったので、互いの表情には驚きの色がある。

 

「こっちの台詞よ。一人…じゃなさそうね」

「まぁね。三人であっちでバドミントンしてるわ」

「へぇー、バドミントンねー……めっちゃ跳んだりしてるけど」

 

里香の視線の先には、横っ飛びでシャトルを拾う涼の姿だったり、交互にジャンプしてスマッシュを決める紺野姉妹の姿。

 

「何あれ、特訓でもしてるの?」

「兄妹のコミュニケーション」

「激しすぎない?」

 

うへぇ、と言うような顔で里香が眺めていれば、反撃で大人げなくスマッシュを決めた涼が吠えた。姉妹はブーブーと文句を言っているが、涼しい顔で受け流している。

詩乃が飲み物を持って三人に近づくのに付いて行って、里香も歩いていく。

 

「あれ、篠崎じゃん」

「ホントだ、里香さんも運動?」

「近くのジムでねー。帰りにちょっと走ろうと思ったら詩乃とばったり」

 

三人は詩乃から受け取った飲み物を飲みながら、タオルで汗を拭く。

 

「何でまたバドミントンなの?」

「うちで人数分あったから。特に理由らしい理由はねーぞ」

「里香さんもやりますか?」

「じゃあやってみようかしら。涼、あんた相手しなさいよ」

「えー、俺じゃなくてもよくね?」

「本気出してやって、万が一があっても怪我しそうにないのはあんただけでしょ」

「普通に緩くやれよそこは……」

 

助けを求めて家族に視線を向ければ、三人ともがんばれーと返してきた。

藍子に至っては自分が持ってたラケットを里香に渡している。

 

「っしゃー、行くわよ!」

「元気すぎない? まぁいいや来いよオラァッ」

 

大体5mほど距離を取ってラリーを開始する。

コートもネットも無いので相手に向かって打ち返して、取れなければ負けというシンプルなルールだ。

数回ラリーをして、涼がスマッシュを撃てば里香があっさりと対応して打ち返す。

何度か連続で打っても彼女はあっさりと対応して見せた。

 

「あれ、里香さんって凄い?」

「何と言うか、兄さんが何処に打つかわかってるように対応してますね」

「そういう読みと待つ戦法が何か異常に上手いわね……」

「くっそ、そういやカウンター戦法だったな篠崎ぃっ!」

「えーえー、どっかのバカと戦ってたらしっくりきたのがこれよ!」

 

やり合ってる二人の会話…と言うか里香の一言で三人は大体察した。

ゲームの中での戦い方を現実の動きに応用する、というのは出来ない話ではない。

要はゲームのイメージに現実の身体が付いて行ければいいのだ。

特に里香がやっている、あまり動かずに相手に合わせる動きは再現しやすい部類に入る。

 

「ゲーム内のあんたの動きに比べたら欠伸が出るわ」

「このルールだとマジでこいつ打ち崩すの難しいぞ……!?」

 

実際はゲーム内の速さよりもシャトルの方が初速は速い。

しかし、極短距離でも加速を続ける相手と、減速するシャトルでは対応への余裕が違う。

 

「里香さん卓球とかさせたら超強そう」

「鍛冶師とは一体……?」

「ハンマーでカウンターは痛そうね……」

「っしゃあくたばれっ!」

「あぶっ!?」

 

一瞬の隙を突いた里香のスマッシュが放たれ、シャトルが涼の顔の横を抜ける。

 

「狙った!? 今ぜってー狙った!?」

「何よ、そんな事出来る訳ないじゃない。あんたじゃあるまいし」

「お前本当に俺を何だと思ってるの?」

「びっくり人間」

「篠崎さん、あんまり否定できない言い方は止めよう?」

 

この後、無茶苦茶総当たりでバドミントンをやった。

 

 

 




ゾ〇ドいいよね(唐突
相手については完全に趣味です。
原作のGGOとは著しく乖離してる可能性が高いです(何
何処目指してんだって言われると、メタル〇ックスとかその辺じゃないかな……戦車掘ってドラム缶を押すあれ。

うちのリズベットさんは、中の人繋がりでちょせえの人がインストールされてる気がしてます。
戦法については、自分は早く動けないけど早く動く相手をどうやって殴り飛ばすか考えた結果。
そうだよ、仮想敵はオリ主だよ。
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