流星の軌跡   作:Fiery

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アリシゼーション編については始まりを書き出したところ。


そのさんじゅうはち:トーナメントだよ! 大体全員集合!

 

 

 

 ALO、央都の近くにある中立域の草原。オーリが誰かとデュエルや訓練をする際によく使うそこでは今日、彼は一人の両手剣使いの火妖精族(サラマンダー)の少年を相手にしていた。オーリが持つのは先日手に入れた《九鍵(くけん)レーヴァテイン》。今は相手に合わせて両手剣の形態……真紅の諸刃でオーリ自身の身長に近い刀身を持つそれを握り、少し腰を落とした状態で構えている。

 

「どうしたジュン。来ないのか?」

 

 ジュン、と呼ばれた少年がその一言で意を決したように踏み込んでくる。気合と共に行われたそれは淀みなくスムーズであり、振るわれる剣閃も彼が高いVR適性を持ち、そして努力を怠らず高めた技量を証明している。

 以前に手合わせした時よりも確かに上がっている彼の実力に、オーリは感心する。ジュンはランがリーダーを務め、ユウキも所属しているギルド《スリーピング・ナイツ》のメンバーで、ラン達がそうであったようにメンバー全員が元々難しい病気に侵されていたという共通点がある。彼の場合は難しいガンだったようだが、それも突如齎された新しい治療法によって日常生活を送るのに問題ないレベルにまでなっていた。

 

 《スリーピング・ナイツ》は元々九人のメンバーが居たが、今VRゲームを続けているのはランとユウキを除けば三人。死別ではなく、皆病気の完治や大幅な改善によって問題なく日常へと帰っていけたのは喜ばしいが、それは同時に日常の中で新たにやらなければいけない事、やりたい事が出てくるという事。故に、離れる者が出てくるのは当然の帰結となる。ジュンは残った三人の内の一人であり、ランやユウキ達と同学年らしい。そんな彼がオーリと手合わせをしている理由としては。

 

「行くよお義兄さん!」

「その呼び方はまだ止めろって言ったぞォッ!?」

 

 ……その辺りの事はあまり関係なく、今度行われる《九種族統一デュエル・トーナメント》に向けた特訓だ。とは言っても隠すようなものではない為、今日はオーリが《スリーピング・ナイツ》の拠点に居たジュンを、他のメンバーの前でとっ捕まえて引き摺って行っている。ジュンも大人しく引き摺られていったのだが、何事かと思ったメンバーがギャラリーとして他の四人……ランにユウキ、後はメリダと言う影妖精族(スプリガン)の女性と、シウネーと言う、こちらはランと同じ水妖精族(ウンディーネ)の女性が居る。ハーレムギルドではない

 

「オーリさんも、よくジュンに付き合ってくれますね」

 

 微笑ましいものを見るように、自身の頬に手を当てながら呟いたのはシウネーだった。さっきの二人の叫びはバッチリ聞こえてはいたが、どうやらスルーする事にしたようである。

 

「あー……兄さんは面倒見が良いから」

「教えるのも上手だよ。ボクも色々教えてもらったし、ジュンも結構強くなってる」

「トーナメントに向けての特訓かぁ……ユウキも出るんでしょ?」

 

 メリダの問いかけに『もちろん』とユウキは答える。来たる二月十五日に行われる四回目のそれは、大会常連や各種族の実力者に加えて、今まで大会に出なかったプレイヤーも次々と出場を表明して、結構な規模の大会となっている。

 

「それにお兄ちゃんも出るし、その繋がりでキリトさんもアスナさんも出るんだって」

「それはまぁ……何とも」

 

 ランとユウキを除いた《スリーピング・ナイツ》のメンバーも、オーリや他の仲間達と会った事はある。去年のクリスマスイヴにはアインクラッド二十一層のボス戦も共同で当たり、その実力を垣間見ている。特にユウキが挙げた名前であるキリトは、少しお目に掛かれないほどの強さであった。そしてアスナを始めとした他のメンバーも実力者揃いであり、SAO帰還者であるという事を聞いた時、その強さが腑に落ちた。

 

「激戦になりそうだけど、勝てるの? ユウキ」

「正直何とも言えないなぁ。お兄ちゃんやキリトさんは勿論、アスナさんにリーファさん、クラインさんにだって、ボク負けた事あるからね」

「そうなんですね……そんな彼らも出るトーナメントにジュンは出る訳ですか」

 

 いつの間にか双剣を持っているオーリに武器ごと弾き飛ばされる彼を見ながら、シウネーとメリダは少し不安になった。手合わせとは言え、オーリは手に入れたばかりの武器の慣らしを兼ねており、まだまだ本気ではないように見える。そんな相手に遊ばれているように見える現状は、記念参加でなく勝ち抜くという事を考えればなんとも頼りない。

 

「まだまだぁ!」

「はい両手斧」

「変形はっやぁ!?」

 

「……あの武器、変形に一秒かかってないよね」

「あたしの目には一瞬で変わったようにしか見えないね」

「昨日は変形に手間取ってたのに……」

「オーリさんも流石と言うか、あの人達と友人なだけはありますねぇ」

 

 四人は、ジュンが初戦で強い相手と当たらないように祈るのであった。

 

 

 

 

 

 

 《九種族統一デュエル・トーナメント》

 それはALOに存在する風妖精族(シルフ)火妖精族(サラマンダー)影妖精族(スプリガン)猫妖精族(ケットシー)水妖精族(ウンディーネ)土妖精族(ノーム)工匠妖精族(レプラコーン)闇妖精族(インプ)音楽妖精族(プーカ)という九つの種族全てから参加者を募り、誰が一番強いかを決めるALOでも最大規模のイベントだ。試合形式としては東ブロックと西ブロックに分かれて一対一の勝ち抜き戦を行い、ブロックを勝ち抜いた二人が決勝で戦う事となる。

 

「ブロックの割り振りは……東か」

「ボクは西だった。お兄ちゃんと戦うなら決勝かぁ」

 

 大会当日。オーリとユウキは参加プレイヤー達が控える大部屋に居た。試合が始まるまで後三十分ほどだが、二人とも緊張した空気は一切纏っていない。大会の参加は初めてではないし、ユウキに至ってはその表情から『ワクワク』という文字が見えそうだ。

 

「対戦表が無いって事は、誰と当たるかわからんって事だよなぁ」

「それもそれでスリルがあるよね。同じブロックだったらいきなりお兄ちゃんと……って事もあったのに」

「初戦からユウキの相手はトップクラスに遠慮したかったから助かるわ」

「なんでさー!?」

 

 ポカポカと兄を叩く妹の図は、正しく仲良くじゃれている兄妹にしか見えない。

 

「ジュンは?」

「えっ、えっと、西ブロックだよ」

 

 近くに顔を寄せたユウキの問いに火妖精族(サラマンダー)故の赤い髪よりも頬を赤く染めながら答えるジュンを見て、オーリはニヤけそうな自身の表情を引き締める。彼がオーリ一人の時に特訓を頼み込んできた時は何事かと思ったが、理由を聞いてみれば『ユウキを守れるような男になりたいんです!』と言われてしまえば、兄としても男としても引き受けざるを得ない。その後で合流したシノンも特訓に加わって、最初の頃よりも彼は強くなった。

 

 それは確かなのであるが、ユウキだって二人と冒険したりデュエルもする。何ならVR教材でのブーストすらかかっているので、成長速度のイメージとしてジュンが自転車を全力で漕いでいるのであれば、ユウキは最新型の新幹線。これなら現実の方で鍛えた方がまだ目があると思われるが、剣道を始めた彼女はリアル強者の資質があるので、早く始めなければそっちでも難しい話になってしまう。

 

 難儀な目標を立てたもんだなぁ、とオーリは思っている。それでも自分にとっては珍しい弟分なのもあって、特訓にも指導にも手は抜かない。それに、ジュンがまったく勝てないかと聞かれれば可能性は一割程度あるし、ユウキが知らない切札も伝授している。

 

「お兄ちゃんと特訓してどれくらい強くなったか、ボクと当たったら試させてもらうよ?」

「あぁ、もちろん」

 

 ジュンの目標はユウキに勝つ事だ。守れる男になる為には、その対象より強くなければいけないという考え方。それ自体はオーリも納得できるし、目指す道として間違っていると思わない。それが独り善がりな物にならなければいい……つまり、妹泣かしたら殺すの精神である。

 

 そんな彼の思考を知らぬまま、ジュンは二人から離れて行く。その動きが固いのは緊張し始めているからだろうとオーリは当たりを付けるが、それを解くような事はしない。彼の目標も目的も大いに結構であるし、それを手助けする事も吝かではない。でも最終的にそれを掴むのは彼自身の力であるべきだから、大会程度の緊張は自力で何とかしてもらわなければ。

 

「ユウキは緊張しないのか?」

「緊張よりもワクワクしてるよ。色んな人と全力で競えるのってやっぱり楽しいから」

「なるほどな」

 

 楽しそうに笑うユウキを見て、オーリも微笑む。真っ直ぐに相手を見て、全力で向かう彼女にとってはこういうぶつかり合いは望む所なのだろう。《スクワッド・ジャム》でも実に楽しそうだったのは記憶に新しい。

 

「俺、大会では相打ちしてる記憶しかねぇわ」

「普段のデュエルならほぼ確実に勝敗つけるもんねぇ。キリトさんとの戦績ってどんな感じだっけ?」

「もう数えるのが面倒くさくなってきたけど……確か799戦398勝398敗3分だったな」

「ボクが言うのもなんだけどやり過ぎだよね。その上でリーファさんともやってるじゃん」

「俺で調整するの本当に止めてくんねぇかな……あいつ、自分の体力の限界までやるから一戦二戦じゃ終わらん上に、色々リクエストしてくるからなぁ」

「色んなプレイヤーと戦う経験がお兄ちゃん一人で賄えるのはエコだよねー」

「ユウキ、それはエコじゃない。俺を酷使してるんだよ」

 

 オーリの言葉には切実なものが含まれており、ユウキもこれには思わず苦笑い。しかし、それも兄が悪いのだと妹は考える。たった一人で、実装されている全ての武器の種類を使いこなすだけでも破格なのに、単一の武器種だけでも多彩な戦闘術を見せてのける。要は引き出しの数が半端じゃなく多くて、戦う相手の強さに応じてその引き出しを解放していくというびっくり箱の要素もある。戦えば戦うほどに様々な一面を見せる相手というのが、実力者にとっては楽しくて仕方ない。

 

(って言ったら、またすごい顔するんだろうなぁ……)

 

 ただそれはあくまで相手にとって、である。兄の体は一つだけなので、対戦希望が殺到されたら、それはもう大変なのはユウキにもわかる。だから絶対変わりたくないとも思っているけれど。

 

「ねー、お兄ちゃん」

「どうした?」

「もしボクが優勝できたらさ、一個お願い聞いてくれる?」

「出来る範囲なら構わんが……大きく出たなぁユウキ」

「ボクがそういう風になったのはお兄ちゃんのせいだからねぇ」

「やめて、またアスナの奴にどやされる」

 

 結局すごい顔になった兄を見て、妹は大らかに笑った。

 

 

 

 

 

 

 このトーナメントの初戦は、対戦相手が開示されない。転送されて初めて、初戦の対戦相手が分かるようになっている。それからトーナメント表が公表され、参加者にも他の参加者がわかるようになるのだが。

 

「よぅ」

「おぅ」

 

 その初戦で、『事実上の決勝戦』と言われるほどの格を持つプレイヤーが激突する事になるとは、誰も予想をしていなかった。

 

「初めてじゃないか? こんな風に大会で、なんていうのは」

 

 黒いコートを着た、影妖精族(スプリガン)の剣士キリト。愛用の黒い直剣《プラークヴェルト》を握り、ストレージから黄金の剣を取り出して背負い、まるで世間話をするように軽い調子で相対する己が最強の敵と認めた者へと語りかける。

 

あっち(GGO)はまぁ、仕事っていうかそんな奴の延長だったからなぁ」

 

 こちらも同じような調子で応答する、猫妖精族(ケットシー)の戦士であるオーリ。先日手に入れて慣熟をこなした《九鍵(くけん)レーヴァテイン》の両手剣形態を背負い、無手のままで立つ。

 彼我の距離は六メートルほどで、二人が本気で踏み込めばあってないような距離。既に試合開始も宣言されているのに、二人は雑談に興じている。

 

「出会ったゲームは、大会なんてする暇なかったしな」

「終わってからはホントバタバタしてたし、色々環境も変わっちまったし」

「俺はお前がバカップルキャラに変わった事に一番驚いた」

「お前にだけはぜってー言われたくないわ」

 

 笑いあう二人の姿は、親友と言って良い物だった。SAOで出会い、様々な世界を渡り歩いて尚、その友情は陰る事無く二人の間にある。そして、今この時もその友情に偽りは一切なく。

 

「「それじゃあ、やるか」」

 

 闘争と言う手段を持って、それが証明される。

 踏み込もうとしたキリトの機先を制するように、オーリの目の前にはその切っ先をキリトへと向けた複数の短剣が浮かんでいた。

 

「挨拶代わりだ」

 

 その短剣の柄尻を全て高速で殴り飛ばし、投擲では為し得ない連射を可能にする。全てに必殺の意思を込られ、向かう先も喉や心臓などの急所であるその短剣を、キリトは一閃で斬って落とし、今度こそ親友へと踏み込んだ。

 振るわれる黒い剣を受け止めたのは、翠色を湛えた直剣。彼らの仲間であるリズベットが鍛えた一品である。

 

「抜かないのか?」

「お互い様だろ?」

 

 鍔ぜり合う二本の剣が火花を散らし、同時に払われて二人が距離を取る。二人とも、背負った武器に手を掛ける気配はない。親友相手に振るう物ではない……何て殊勝な事を二人が考えているはずもない。ただ、自分達の中でまだ振るうに足るモノが溜まりきっていないだけ……いや、ただ単に普段のデュエルで使う事など無いから、ここぞという時を狙っているだけなのかもしれないが。

 これが目の前の相手以外であれば、キリトが《エクスキャリバー》を背負う事も無かったし、抜くなんて選択肢は端から排除する。オーリは《レーヴァテイン》……いや《英雄武装(エインヘリヤル)》を知らしめるために、最初から抜いていただろう。

 

 二人がその手に握った剣を打ち合い、斬り合い、鎬を削る。剣の腕のみに絞って言うならば、オーリはキリトに劣るだろう。それを他の要素を用いて補い、総合的な物はまったくの互角と言う形で今は落ち着いている。正面から剣を合わせ、相手の横を抜け、振り向きざまにまた剣を打ち合う。その際に振るわれたのが単発のソードスキルであり、衝突した余波で周りのフィールドの大地を削る。

 

「そういえば、ソードスキル使う回数増えたんじゃないか?」

「使うのを嫌がる理由が無くなったから当然だろ」

「理由?」

「読まれて合わせられたら死ぬ」

「らしい理由だなァッ!」

 

 拮抗していた剣を、キリトが気合と共に弾き飛ばす。直後にその剣が光を纏い、オーリの顔面へと切っ先が迫る中、半歩体をずらして剣の腹を横から素手で殴り飛ばし、体勢をわずかに崩したキリトへと逆に剣を振るう。

 

「あぶなっ!?」

「チッ、前なら当たってたのに」

 

 舌打ちと共に追撃の蹴りを放つが、連続でバックステップを使い距離を取ったキリトが射程から外れたために構え直す。

 

「お前、常時二刀流みたいになってるぞ……」

 

 片手に何も持っていなくとも、握れば(武器)になる。人間の体なら当たり前の話だが、何の迷いも無く剣に向かってその拳を振るえる人間がどれだけいるだろうか。

 

「ならどうするよ? 《漆黒の英雄(ブラッキー)》」

 

 オーリが挑発するように笑う。呼ばれたのは今のキリトのALOでの通り名だが、彼が呼んだ時だけ少しニュアンスが違うのをキリトは知っている。《SAOの英雄》と呼ばれていた自分達を皮肉って、彼は二つ名に『英雄』の意味を込めて呼ぶのだ。

 

 キリトなら《黒ずくめ(ブラッキー)》が元なので《漆黒の英雄(ブラッキー)》。アスナは《バーサクヒーラー》なんてものを頂いているが、そう呼ばれると機嫌が悪くなる。オーリが呼んだらノータイムで細剣の一撃が飛んでくるため、そうは呼べないのでSAO時代の物を引っ張って、《閃光の英雄(エクレール)》とたまに呼んだりしている。

 

「こうするんだよ。《流星の英雄(メテオール)》」

 

 背負った《エクスキャリバー》を握りながら、キリトはオーリに挑発を返す。自分達が呼ばれているのだからと、彼とアスナがオーリを呼ぶために考えた二つ名。広めこそしていないが、最初に呼んだ時のオーリの反応は『是非映像として保存したかった』とキリトとアスナが語るほどの物だったという。

 それ以来三人の間ではしばらく、挑発合戦の際には互いをその二つ名で呼ぶというのが流行ったとか。

 

「よっしゃ、ならこっからは――」

 

 翠の直剣をストレージに仕舞い、オーリは《レーヴァテイン》を手に取り、振り下ろすように構える(サンライズ立ち)。視線を交差させて、二人は笑った。

 

「「第二ラウンドだオラァッ!」」

 

 振るわれる金色と真紅の一撃が、《アルヴヘイム》の大地を揺らしたような気がした。

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、大丈夫かな……」

 

 アスナと思いがけず激突した初戦を突破したユウキはその後、悠々と勝ち進み既に西ブロックの準決勝へと駒を進めている。トーナメント開始からそれなりに時間……三十分ほど経ったが、未だに一回戦が終わっていない組み合わせが一つだけある。

 東ブロックにある、ユウキもよく知っているプレイヤー二人の組み合わせだ。あの二人なら時間がかかっても仕方ない……逆に短期決着になってしまったら、どちらかのやる気が無いという事になる。二人の間にはそれだけの物がある。縁とも、絆とも言える物が繋がっていて、だからこそこの戦いはすぐに終わる物なんかではない。

 

「兄さんなら大丈夫だよ」

 

 普段と変わらない、優しい声がユウキに掛けられる。自分の、準決勝の相手の声だ。

 

「……お姉ちゃん、出てたんだ」

「ん。まぁね」

 

 ユウキが振り返れば、いつものように微笑んでいる姉のランの姿があった。彼女が居る事に多少の驚きはあるが、その実力を良く知っているユウキからすれば勝ち抜いてくる事自体にそれほど疑問はない。何故出場したのか、と言う疑問は当然あるが、それについては確信していると言って良い。

 

「ボクと戦う気なの?」

「戦うというかまぁ……兄さんっぽく言うと『喧嘩しよう』かな?」

「け、喧嘩?」

 

 ユウキの中にある姉のイメージからはかけ離れた言葉に、思わず聞き返す。この姉妹は幼い頃からの境遇や、双子である事もあって喧嘩をした事が無い。言わなくても伝わる事も多く、姉が一歩引いたり、逆に妹が譲ったりと良好な仲であるのは、兄であるオーリも義姉であるシノンも認める所だ。それが何故唐突に喧嘩しよう、という話になるのか……

 

「何でまた唐突に。しかも大会だよ?」

「それはまぁ、大会だからだよね。ユウが()()()()()()()()から」

 

 にこり、と笑う姉の顔が、ユウキには何故か恐ろしいものに見えた。ただ、姉である事に間違いはない――…彼女の持つ一面を、自分が知らなかっただけ。いや、あのまま治らなくて、死んでしまえば一生知る事の無かった、姉の姿だ。

 そう考えた時に、何がしたいかすとんと理解する事が出来た。何だ、いつもと変わらないじゃん、と。ただそれの相手が姉になって、()()()()()()()()()()()()なのだ。

 

「お姉ちゃんさぁ……お兄ちゃんに毒されすぎてない?」

「それ義姉さんにも言われたけど、ユウには言われたくないかなぁ」

「ひっどーい! ボクは元からだよ多分!」

「いや、それだと尚の事悪いからね? 妹が戦闘中毒者(バトルジャンキー)だって告白される姉の身にもなって?」

「違うよ!? これは高度なコミュニケーションだから! お兄ちゃんも言ってたし!」

「うん、元々の資質があった上に兄さんに毒されてるのはわかった」

 

 『締まらないなぁ』とランが笑い、手に持っていた杖を構える。《装杖ゲンドゥル》の事については、ユウキも詳細を聞き及んでいる。鎧を展開した状態ではただの強い杖であるが、鎧を展開しない……攻撃特化の状態ならば魔法の威力が桁違いに上がるのともう一つ、あの武器には特殊な点がある。それは斬撃・刺突・打撃の三つの属性がつく事だ。故に、杖でありながらも槍のようにも、斧のようにも使えるし――…覚えていれば、そのソードスキルも使える。

 

「全力で行くよ。お姉ちゃん」

 

 黒曜石の刃を持つ、愛用の直剣である《マクアフィテル》を手に持ち、ユウキはそれを顔の横に持って行って構えた。先日見た、あの達人の構えに酷似した物を見て、ランの表情も引き締まっていく。

 

「当然だよ、わたしも全力」

 

 ランの構えが杖を持つというより、槍を持つような形に変わった。その構えを、ユウキは知っている。兄が槍を持つ時の基本だと言って教えてくれた構えと同じ物だったからだ。

 

「じゃ、やろう」

「うん、初めての姉妹喧嘩」

 

 二人は駆け出し、同時に()()()()()()()()

 

「「真っ直ぐ行って――…ぶっ飛ばす!」」

 

 

 

 




仲の良い双子の姉妹が、ゲームのトーナメントでガチの殴り合いの喧嘩を始めました。

Q:それを見た仲間達の反応を応えよ

ラン「えぇ……驚く?」
ユウキ「何があったか聞きに来る?」
キリト「アスナがキレる」
オリ主「俺が殺される未来しか見えんのだが」

アスナ「後半の二人、せーいーかーいー」
オリ主「そんなんだからバーサクバーサク言われるんだろォッ!?」
アスナ「ギルティ。ジャッジメント開始します」

ALO全土で繰り広げられる、命がけの鬼ごっこが始まった瞬間であった。
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