《
「大丈夫?」
「……戦争での泣き言は、さっきが最後」
努めて表情を変えないまま、ストレアは後ろ腰に差した自分用の霊薬三本の内の一本を取り出して、中身の半分を口に含む。それだけで、全身に重く圧し掛かっていた倦怠感は遥かにマシになる。そんな感覚にふと、現実で見た栄養ドリンクのコマーシャルを思い出してしまって少しだけ
アンダーワールドに来てから、現実世界では一週間程度しか経っていない。しかしストレアは、この世界で二十年近く生きてきた。現実世界で生きてきた時間が遠いように感じるのも仕方なくて、それでもふとした拍子に楽しい思い出ばかりが蘇る。
そんな感傷を軽く頭を振る事で振り払い、ストレアは降下する先へと視線を向けた。
「……ストレア」
「これは……本当にとんでもないね」
アリスと二人、同じ方向を見て言葉を交わす。とんでもない力を持った存在が、その力を全力で振るおうとしている。感じられる心意はまさに完成された戦士や兵士のように、任務の遂行を是とするような容赦のない、微塵の隙も無いものだ。
しかも、その近くに居る気配は彼女達二人にとって大切な人のもの。
「雨縁、急いで降下して!」
「先に行くよ」
「えぇ、わかった――…え?」
あまりにも自然に言われた言葉に思わず返事をしたアリスだったが、ここはまだ空中である。自身の後ろにいるはずのストレアの方に顔を向ければ、既に彼女は雨縁の背から跳躍して、空中にその身を躍らせていた。
「《ジェネレート・エアリアル・エレメント》《バースト・エレメント》」
くるり、と空中で天地を逆さにしたように頭を下に向け、ストレアは両足の裏に一つずつ風素を生成してすぐさま解放した。途端に爆発的に解放された風がストレアの足裏を押し出して、その身体を大地に向かって加速させる。
確かにそうすれば早くたどり着けるが、着地はどうするのとアリスは叫びそうになった。しかし自身が好敵手とも、友達だとも思っている彼女は考え無しの手合いでは決してない。事実、もう既に視線の先では体勢を入れ替えて、地面の方に足を向けているストレアの姿。
踏み出した足の裏に風素を生成して、解放しながら空を螺旋状に駆けて大地に向かうという高等技術を惜しみなく使った降下方法。空間内にある神聖力は二人が根こそぎ消費したが、それは撃滅した敵軍の死によってある程度は補充されているからできる方法だ。
しかもストレアが行っているのは更に芸が細かく、炸裂する風に指向性を持たせて駆ける方向と速度を制御し、解放する時の音も限りなく小さくしている。そういう細かく精密な制御についてはアンダーワールド全土……人界だけでなくダークテリトリーを含めても、ストレアに並ぶ者はいないだろう。
「雨縁、私達も遅れるわけにはいきません。出来る限り速く降下を」
長年の相棒に指示を出して、アリスはストレアの後を追う。
背後に飛竜の翼が風を切る音を感じながら、ストレアは自分達が感じた存在の姿を視認する。漆黒の鎧を纏い大槌と大盾を構えた姿はなるほど、彼女の知る暗黒騎士の姿と似通った部分が多い。しかし、感じられる力はあの暗黒将軍を比較に出しても、今この場に居る存在の方が強いと断言できる。
風素の生成を詠唱から意志力による発動に変更し、ストレアは《武装完全支配術》の詠唱を始めた。ただ、彼女の群狼剣を使った支配術の詠唱を知る者が聞いたら首を傾げただろう。そして、彼女の兄の支配術の詠唱を知っている者が聞けば、目を見開いて驚いたに違いない。
「エンハンス・アーマメント」
それは、彼女の兄が使った物と同じ、己が魂の出力を上げるモノ。イメージによって……確固たる心意によって己が限界を超克する。兄の魂に没入した際に、彼女はその神髄を見た。そして同時に、この技が術者の魂を傷つける類の物
兄が今眠っているのは、身も蓋も無い言い方をすれば自爆だ。完調ではない魂で無理やりこの技を……その先を使ったからだ。そしてそれは、その選択肢を選ばせてしまうほどに自分達が弱かった事の証左。
瞳が虹色の輝きを湛え、赤みを帯びた薄紫の揺らめく光が全身を覆う。
色こそ違えど、それは兄と同じ自身へと施す《武装完全支配術》。その特性は群狼剣の支配術と同じように自分の能力を引き上げる物であり、引き上げられる能力は文字通り
ストレアは今、自身以外の世界の流れが緩やかに見えていた。全ての能力が上がるというのは反応速度も例外ではなく、認識能力なども平時の数倍に引き上げられる。その代わり、発動の際に消費するのは自分の天命である為に、そう言う意味では多分にリスキーな術と言える。
ただ、それならば群狼剣の支配術の方が遥かにリスクが高いし、それに対して準備をしているストレアであれば無視できるものでしかない。先程半分だけ残した霊薬を飲み干し、瓶は腰の革ベルト横のホルスターへと入れた。この瓶一本を砕けば、変換効率の悪い光素でも二十個分程度の神聖力に還元できるために投げ捨てたりはしない。
す、と目を細める。暗黒騎士との距離はもう既に十メル程度だ。ならばと体勢を再び入れ替えて、大地に向かって飛び込むように頭を下に向けた。生成した風素を炸裂させ、落下速度とも掛け合わせて加速。
(会心じゃない、か)
足裏から伝わる手応えに、ストレアは奇襲の失敗を悟った。
勢いからすれば相手を十数メル吹き飛ばしてもお釣りが来そうな一撃を、暗黒騎士レオは前に一歩踏み出しただけで堪えている。上手く衝撃を逃がす技術もそうだが、敵と相対しながらも常に奇襲の可能性に対して備えていたのだろう。一対一が基本だった整合騎士では持ち得ないそれは、彼がそう言う状況に慣れている事を雄弁に物語っていた。
返礼のように振るわれる大槌を背負った群狼剣を抜いて受け、衝撃を流しながら地面を滑る。
「ユージオ、大丈夫?」
「何とか、ね」
そこまで狙い通りだったのか、青薔薇の剣を構えながらも蹲るように膝をついていたユージオの隣で止まったストレアは一瞬だけ周囲を見渡して状況を確認。
ユージオ自身は鎧に損傷が目立つが、五体は無事だ。戦闘続行については微妙な所だが、まだ剣は握れている事から支配術については使えるように思う。
「ファナティオ! こいつはアタシ達で相手をするから、アンタごと第一陣を退かせて!」
「しかし!」
「しかしもかかしも無い! 一番飛び出しそうなアンタに退けって言ってるんだ!!」
ストレアの虹色の瞳が、ファナティオの内心を見透かしていた。鋭敏になった感覚は配置されていたはずの騎士達……四旋剣の内の三人の消失すら感じ取っており、ファナティオの心に憎悪の色がある事から、彼女が突撃してくる事だけは避けたい。
それが頭で理解できているからこそ、ファナティオは歯を砕かんばかりに食いしばった。手塩に掛けて育てた部下を、一瞬にして奪い去った悪魔を自分の手で打倒したいという気持ちが……憎悪が燃えさかっている。
ストレアはそれを見逃さなかった。だからこそ下がれと言った。騎士であるならば死ぬのも仕事の内に入るかもしれないが、ファナティオの中には今、新たな命が宿っている。指揮経験のある上位整合騎士である為に戦場に出てはいるが、本来ならカセドラルの警護でもさせる状態である。
だからこそこの理不尽の相手をさせる事は出来ないし、叶うならキリト達の内の誰かを呼んできてほしいという思惑もある。
「……第一部隊! 動ける者は負傷者が居るなら連れて第二部隊の前まで後退! 暗黒騎士の戦闘に巻き込まれるな!」
数秒の葛藤の後、ファナティオが答えを出した。それに従って退いていく衛士達をストレアもユージオも見ない。全神経をレオへと向けていた。
「ふむ……お前が《アリス》か?」
「そっちに名乗る名前は無いよ。それと」
兜の奥からの自分を見る視線にストレアは毅然と返し、大剣を構えて踏み込んだ。
「咲け、花たち!」
空から黄金の花弁が、大地より灰色の大剣がレオへと襲い掛かる。どちらもまともに食らえば致命の一撃である事を彼は看破し、故にこその行動は迅速であった。
大盾が灰色の大剣を受け止め、大槌が花弁を薙ぎ払う。それだけでアリスは少なくともこの暗黒騎士が、あの時戦ったストレアと同等の膂力を持っていると判断。金木犀の剣の花弁を操作してストレアを援護しながら、雨縁から飛び降りて大地に降り立った。
「こっちが前!」
「こっちが後ろね」
それだけのやり取りで二人は立ち位置を決定し、ストレアはレオを押し込みつつ前進。アリスは花弁による遠距離攻撃を散発的に繰り返しながら、大きく円を描くようにユージオの元へと駆ける。
「ユージオ。治療を」
「神聖力は……?」
「……撃破した敵兵の分があるから、問題無いよ」
そう言ってアリスがユージオに手を翳し、生成できた片手五指分の光素が彼の身体に吸い込まれるように消えていく。
「どう?」
「……うん、だいぶマシになった」
ふらつきながらも立ち上がる彼にアリスは肩を貸した。
「後は私達が」
「いや、あの暗黒騎士を甘く見ちゃだめだ。あれは、僕の支配術に完全拘束されても力だけで打ち破ったから」
は? とアリスは戦場で呆けた。それだけの破壊力がユージオの言葉にあったからであり、自分の見立てがとんでもなく過小評価である事に気が付いたからだ。彼の武装完全支配術から抜け出すには、アリスと言えども力だけで抜け出す事は出来ない。完全拘束であるなら尚更だ。
それを為した力というのがどれほどのものか、想像はつかないがそれでもわかる事はある。アリスと戦った時のストレアであっても、そんな芸当は不可能であるという事。あの時の彼女も今の暗黒騎士もアリスの支配術を武器で薙ぎ払ったが、違いは確かにあった。
ストレアは片手持ちであっても、アリスの支配術に集中して全力で薙ぎ払っていた。
対して暗黒騎士はどうだった……ストレアの攻撃を受けつつ、アリスの攻撃もいなした。それだけならば、相手の技量などの問題もあるため一概には言えない。しかしストレアと
事実、視線をストレアへと向ければ彼女の押し込みは既に止まり、ストレアは両手で押し込んでいるのに暗黒騎士は片手で持つ盾で拮抗している。ストレアは今現在、オーリと同じ支配術を発動していて、それの詳細もアリスは聞き及んでいる。つまり今のストレアの単純な力は人界軍の誰よりも強いものになっていて、それが片手で止められているのだ。
「何という、力……」
「というかストレアのは、オーリと同じ?」
「それは後で問い詰める。それより今は」
アリスの言葉にユージオは頷いた。
今はあの暗黒騎士を倒す事に集中しなければいけない。ひょっとすれば単騎で人界軍に大打撃を与えるかもしれない相手をここで倒すと心に決めて、二人は左右に分かれて走り出した。
◇
そう言えば、自分達は標的の事を何も知らないな。とレオは考えた。《アリス》と言う名前とユニットIDは把握しているが、逆に言えばそれだけだ。この世界ではどんな姿をして、どのような地位に付いているか、自分達は何も知らない。
もしもこの戦争に《アリス》が参加しているのであれば、敵軍を殲滅する事は出来ない。誤って《アリス》を殺してしまえば、その時点で任務は失敗となる。
彼の部隊長に対する第一印象は『危険』の一言に尽きる。感情を完全にコントロールし、下手な欲望には一切動かされないガブリエルは、レオから見てまったく油断のならない相手だった。今までの経験や何かしらの修行によってそう言う精神を獲得したのならまだわかるが、彼は違うとレオは確信していた。
生まれながらにして、そう言う資質を持って生まれた存在。人間として生まれながら、人外の素養を持った者。五十手前の人生経験を持つレオをして片手の指で余る程度しか見た事のない存在は一様に何かに執着し……それの為ならどのような事も出来る。
ガブリエルがそうであるのならば、目的は《アリス》であろう。それを手に入れたとして、その後どうするかを考えた時にレオは嫌な予感を覚えた。ガブリエルがアリスを大人しく依頼人に渡すとは到底思えなかったからであり、その場合に取り得る行動を想像できてしまったためだ。
「考え事?」
「そんな所だ」
構えた盾ごと自身の身体を押し込んでくる少女に、レオは短く答えた。赤みが強い薄紫のオーラを纏った虹色の瞳の少女と彼の力比べは、現在膠着状態だ。レオの使っているハイアカウントの特徴はその膂力であり、それだけで言えばスーパーアカウントであるベクタよりも上だが、その分システムに関する権限は低い。
それを補うために持っている盾は相手の物理攻撃以外を吸収する特性を持っており、さらに吸収した術の威力に応じて彼の力を上げる。
そんな自分に互角とは言わないまでも、競い合えるだけのパワーを一見華奢な少女が発揮しているのはここが仮想世界であり、何か特殊なシステムが働いているからだと理解できた。
「時に少女よ。あの金色の少女がアリスか?」
「答える気はないって言った」
「まぁそうだが、私は余計な労力を割きたくない。聞いて殺してを繰り返す気はないぞ」
「そう……かい!」
ギャリンッ! と金属同士がこすれ合うような音を響かせ、大剣と盾が火花を散らした。押し込められた盾に対して大剣を滑らせながら、ストレアが横に飛ぶ。追撃で振るわれる大槌には突きを合わせて威力を最大限殺しても尚吹き飛ぶが、距離を取るという目的は成功した。
「エンハンス・アーマメント!」
着地の瞬間に唱えられた結句は、群狼剣の支配術。オーラを纏いながら、ストレアの頭部には狼の耳が、腰部と臀部の間の辺りから一本の狼の尾が生える。その変化はまさにファンタジーだなとレオが思った瞬間、ストレアが真っ直ぐに突っ込んできた。
ぞくり
何でもないはずの突撃に途轍もない悪寒を感じたレオは、渾身の力を込めて大槌を振るった。真横から迫りくる攻撃に対し、ストレアはその軌道上に立ち止まり大剣を構えて受ける体勢を取る。
何をする気だと考えるが、今は最大の力で殴りつけている為に途中で止める事は出来ない。ならばこのまま押し通ると更に力を籠め。
「な、に……!?」
高速で走っていた乗用車が壁にぶち当たるような激突音を響かせた後で、レオは流石に驚愕に目を見開いた。
そこには、踏みしめた地面を陥没させながらも、その場から一歩も動く事なく一撃を受け止めているストレアの姿。押し込もうとしても微塵も揺るがない少女へ、レオは驚愕すると共に大盾で殴り掛かる。
「ッラァッ!!」
その盾の内側をストレアが蹴り抜いた。身に着けた鋼の足甲が威力に耐え切れず弾け飛びながら、レオの手から盾を吹き飛ばす。どんなパワーだとレオが驚愕する暇もなく体勢が崩れ、引き戻されたストレアの足が大地を踏みしめ、逆の足で放ったヤクザキック気味の前蹴りをレオの腹部に突き刺す。
まさに人外の力で一撃を叩き込まれ、爆弾がそこで爆発したかのような衝撃と痛みが全身を駆け抜ける。現実の戦場で様々な苦しみや痛みを味わって来た彼であっても、数秒は次の行動がとれない程の痛み。
「ぐ、が……!?」
その衝撃で、レオの身体は後ろへと跳んだ。大槌が手から離れ、呻き声が口から零れるが彼は倒れない。そして、ストレアはそんな相手を見て追撃が出来なかった。
(身体の方の支配術で頑健さとかも上がってるはずなのに、蹴った足が折れたねこれ)
ぶっつけ本番で使用した《武装完全支配術》の同時使用だったが、その相乗効果はストレアの想定を超えた代物であった。簡単に言えば二つの支配術を使う事で足し算のように運用するつもりが、術同士の相性かどうかは不明だが掛け算となってしまっているらしい。
実際の使用こそぶっつけ本番だったが、彼女とてシミュレーションせずに使ったわけでは無い。同時使用が可能であると知った時からシミュレートは行っていたにも関わらず、いざ本番でこうなったのだ。
「最後の最後で、締まらないね……」
自嘲を込めた呟きは次の瞬間に鳴り響いた音によって掻き消された。
ストレアの視線の先では、白銀と黄金に彩られた大輪の花が咲いている。その花の中心には真っ白に凍り付いた暗黒騎士が身動き一つせずに存在し、花の両側にはやはりというかアリスとユージオが居た。
「ホント……妬けるなぁ」
同時に支配術を使った彼女だからこそ、その光景が理解できた。あの花は二人の支配術が共鳴し、混ざり合って生まれたものだ。自分一人だけで使うのとは訳が違う。二人の想いが限りなく一つになっていなければ為し得ない、奇跡のような現象。
自身の支配術を解きながら、ストレアは背中から地面に倒れた。暗黒騎士からはもう天命を感じないし、辺りにそれ以外の敵の気配はない。それに安心して気が少しだけ緩んだからだ。
「「ストレア!?」」
同時に声がして、駆け寄る音が聞こえてくる。数秒後には二人同時に、倒れた彼女の顔を覗き込んできた。
「いきてるよー」
そんな二人に向かってひらひらと手を振れば、あからさまに安堵した表情になった。
「まったく貴女は……無茶苦茶ばっかりしますね!」
「ホントそうだよ……って、足が折れてるじゃないか!?」
「ちゃんと治るから問題無ーい」
「あぁもう……! 色々言いたい事がありすぎるから、一旦後方に連れて行きますよ!」
「シノン達にも言って、少し叱ってもらった方がいいかい?」
「やめろください。ほんとうにやめてっ」
◇
「なに、が起こったというのだ……」
突如上空に現れた光の円環により齎された破壊の跡に、ディー・アイ・エルは茫然とした呟きを零すしかなかった。自身の作戦で使用するはずだった《広域焼夷術式》ではありえない現象と、それが齎した結果……第一陣の亜人混成部隊と、術式発動の為にその後方に向かわせたオーガ軍及び暗黒術師部隊の壊滅という、伝令術師から語られた結果が彼女を愕然とさせた。
「我が方の、術式が発動しなかったのは……原因不明の空間暗黒力の枯渇現象によるものと思われますが」
「原因は明らかだ! あの光の円環……馬鹿げた規模の光素術式が峡谷内の暗黒力を根こそぎ吸い取った!! しかし……あれほどの規模の術式を誰が……私にも行使できないような術式を、それこそ死んだはずの最高司祭しか行使できないはずの術式を……人界の誰かが使えるとでもいうのか!?」
術式を行使された以上、それを行使した術者が居るのは明白だ。怒鳴ってみても当然、誰からも答えが返ってくる事はない。自身の力量に絶対の自信を持っていたディーにとって、自身以上の術者が存在するという事実は受け入れがたいものである。しかし、それ以上に皇帝ベクタへと進言した自身の策が潰えた事が恐ろしかった。
皇帝の不興を買えば、自身の野望が一気に遠のいてしまう。最大の障害であるシャスターが生きている以上、この失策は致命的になりかねない。
この局面をどう打開する――…そう考えたディーの耳に入って来たのは、皇帝直属騎士レオが討たれたという報せだった。
***
「《神の巫女》……か」
光の円環が齎した成果を目の当たりにしたシャスターは、思わずその単語を呟いた。あの術式を繰り出したのが誰かという情報は入っていないが、彼の脳裏には一人の少女の姿がある。その少女、ストレア・ヴァルゼライドが神の巫女なのでは……シャスターはその可能性を除外する事が出来ていない。
そもそも、神の巫女とは何だ。
絶対的強者である皇帝ベクタが目的として語った存在である事は
もしも、あの術式を放ったのがストレアであるのならば、ダークテリトリー人の観点からすればその実力は《神の巫女》に相応しいと言えるだろう。事実、シャスター自身がその可能性を除外できていないのだから、他の生き残った十候ならば同じ事を考えてもおかしい話ではない。
「シャスター」
「……どうした。イスカーン」
「あれを放ったのは、神の巫女って奴かい?」
自信と同様に第二陣として待機していた拳闘士団のトップであるイスカーンが、わざわざシャスターの元まで訪れて問う。その顔には好戦的な表情が浮かび、これほどまでの術を行使した術者に対して興味を抱いているのは明白だった。
「おそらく、としか言いようがない。我らは神の巫女がどんな力を持っているのか、まったく知らんのだからな」
「皇帝に聞きゃ、名前くらいは教えてくれるんじゃねーか?」
あっけらかんとした若き闘士の言葉に暗黒将軍は思わず渋面を作ったが、皇帝への謁見を行うのはまともな意見である。十候である自分達が皇帝へ謁見を願うのは自然な事であるし、戦いに限らず疑問を抱いたままというのは良くない事であると、シャスターは理解していた。
例えば鍛錬を行う際には、『この鍛錬が何を鍛えるものか』を明確にしていなければ能力の向上も技術の上達も見込めない。何処を鍛えるのか、何を鍛えるのか不透明なままであれば、鍛錬にも身が入らずに無為な時間を過ごすだけだから。
「……歳を取ると、思考が固くなっていかんな」
「戦争中に何言ってんだよ」
「いや、ただの独り言だ――…皇帝に会う」
シャスターがマントを翻し、皇帝ベクタが居る本陣へと歩き出す。それに追従する暗黒騎士を見届けて、イスカーンは人界軍が居る方角を見た。
「人界にも骨のある奴がいるか……戦争前に行きゃよかったか?」
そう呟くイスカーンが浮かべたのは、あどけない少年が遊び相手を求めるような笑み。それほどまでに純粋に、彼は強者との戦いを求めていた。
理不尽は、超サイヤ人と界王拳の重ね掛けっぽいものでスペックゴリ押しでしばき倒した。
ありす「同時使用は使用禁止で」
すとれあ「お断りします」(AA略
ゆーじお「流石に僕も、使用禁止には賛成」
すとれあ「使える札を縛るのは普段の訓練くらいだよ。戦場でそんなこと言えば死ぬってわかるでしょ?」
ありす「死に向かって突き進むような手札なんて捨ててしまいなさい!」
ゆーじお「僕らがどれだけ不安になったか、ストレアならわかるよね?」
すとれあ「それはそれ。これはこれ」
あすな「すっごいデジャヴを感じる」
きりと「アリスとユージオに俺とアスナ。ストレアにオーリを当てはめるとあら不思議。SAOの時の俺達」
しのん「……何となく、想像がつくのが凄いわね」
おり主「俺とキリトの立場が変わってる場合もあったゾ」
匿名希望のふらくとらいとさん「後書きとはいえさらっと蘇るのは止めたまえ」
おり主「一番言われると困る奴が来るんじゃねぇよ」