流星の軌跡   作:Fiery

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これが投稿されている頃、作者は一回目のワクチン接種を終えているので初投稿です。


決意せよ。それは未来への礎なり

 

 

 大規模術式によって敵の第一陣を壊滅させた事により発生した、一時的な停戦状態。

 戦争の開始から時間で言えば一時間程度で発生した状況を利用して、人界軍の兵士たちには補給部隊から大急ぎで糧食が配布され、一時の間とは言え体を休めている。

 戦闘による負傷者はユナのおかげで皆無であったが、件の暗黒騎士によって即死させられた兵士は十数名に上り、加えて整合騎士も三名がその命を絶たれていた。この戦闘において間違いなくその功績を認められるであろうユナは、やってきた補給部隊の馬車の中で眠っている。第一陣二千名の命を一手に引き受けていたのだから、その疲労度はベルクーリにすら理解し得ないものだろう。

 

「相手の暗黒騎士がそう言ったのか?」

「はい。『アリスという少女を求めている』と、はっきり」

 

 そんな中、折りたたみ式の木製テーブルを挟んで向かい合うのは、ベルクーリとユージオだ。暗黒騎士を撃破した後、三人は雨縁に乗って本隊へと帰還した。その間にストレアは自力で、取っておいた空き瓶を触媒にして折れた足を治していたが、その努力もむなしく補給部隊と共にやって来たキリト達に事情を説明され、アリス・アスナ・シノンの三人に色々と問い質されている最中だ。

 

「キリトはその辺、何か心当たりは?」

 

 ベルクーリがユージオの隣に座っていたキリトへ視線を向けると、数秒思案していた彼が口を開く。

 

「……心当たりはある。奴らにとってアリスは特別だからな」

「どういう事?」

「ユージオ、俺とお前とアリスが昔に北の洞窟に行った時の事を覚えてるか?」

「……北の洞窟に氷を取りに行った時?」

「あぁ……あの時に俺達は整合騎士と暗黒騎士の戦いを見て、負けた暗黒騎士が死ぬ瞬間を見た。アリスはそんな暗黒騎士を()()()()()()()、ダークテリトリーに踏み出そうとした」

「……それが、特別な事なのかい?」

「奴ら……アリスを狙ってる存在達にとっては、それが特別に見えた」

 

 キリトが周囲を少し気にして、他に誰も聞いていない事を確認してから更に言葉を続ける。

 

「人界は禁忌目録。ダークテリトリーは不文律の『力が全て』という決まり……純粋なアンダーワールド人にとっては、それは破る事が出来ない絶対的な決まり事だよな?」

「あぁ。色々とこじつける事は出来るが、明確に破るとなると右目の封印やら何やらで破ろうとする発想すら出て来なくなる」

「その時のアリスは、その絶対的な規則である禁忌目録よりも、見ず知らずの暗黒騎士の命を優先した」

「……それ、だけで?」

 

 ユージオの口から出た言葉には、ベルクーリも同意する所だった。たったそれだけの事で何故、こんな戦争まで起こして彼女を求めるというのだと、二人は考える。キリトの話であるから真剣に考え、こうして疑問も覚えているが彼以外の人間が話していたら、そもそも信じるかどうかの次元だ。

 

「キリト、それぁ《右目の封印》と関係があるのか?」

「俺も詳しい事はわからないけど、封印は直接的には関係ないと思う。でも、封印を破るほどに禁忌目録や不文律を超えて自分の大切なものを持っている……そんな存在を求めているんじゃないかな」

「という事は、僕やストレアも?」

「外に知られているのはアリスだけだ。それに封印を破ったかどうかなんて、余程時間を掛けて深く調べないと分からないだろうし」

「……それがわかってりゃわざわざ聞く必要もねぇ、か」

 

 ベルクーリが腕を組んで唸り声を上げた。その事が分かったとして、どう戦争に影響させるか。考える問題はそこになる。

 

「アリスの嬢ちゃんを相手に渡して戦争が止まる……何てことは有り得ねぇだろ?」

「ベルクーリさん!」

「落ち着けユージオ。ベルクーリもアリスを引き渡そうなんて考えてない……それに引き渡してしまえば、最悪の状況になる可能性だってある」

「……最悪の状況って?」

「アンダーワールドそのものの消滅」

 

 その言葉と、話したキリトの真剣な表情。そして身に纏う覚悟の心意に、二人は息を呑んだ。

 

「連中がこの世界にやってきて、人界とダークテリトリーで戦争を起こしている理由がアリスなら、確保して外に帰ったらこの世界を存続させる理由が無くなるんだ」

「……その結果として、人界もダークテリトリーも綺麗さっぱり消してしまうって事、なのかい?」

「ふざけた話だ、と思うがな……外から来たキリトがそう言うって事は、可能性が高いって事だろう?」

 

 問いかけるベルクーリの声に、キリトを責めるようなものは一切ない。人界に協力してくれているキリト達と、こうして戦争を起こしたベクタ達を比べても、外の存在と一括りに言っても一枚岩でない事くらい察せられる。

 

「でもどうする? アリスにはどこかに逃げてもらうって事になるの?」

「逃げてもらうとしたら、外だ。俺達に協力している方の存在に匿ってもらえれば、そこから手が打てると思う」

「そこにはどうやって行くんだ?」

「《果ての祭壇(ワールドエンド・オールター)》」

 

 三人の話の中に声が割り込む。その方向に三人が視線を向ければ、立っていたのはシノンだ。その横にはアスナも立っていて、二人とも厳しい表情を浮かべていた。

 

「アリスは?」

「まだストレアを問い詰めてるわ。それで、その前にストレアが今後の方針案として言ってきた事がある」

「説教されながらも仕事してんのかあの嬢ちゃん……」

「絵面がシュール過ぎるけど……今後の方針案って言うのは?」

「アリスとわたし達……外から来た仲間達で《果ての祭壇(ワールドエンド・オールター)》を目指す。その際にストレアが、自身をアリスだと喧伝するって言ってるんだけど……」

「無茶過ぎる。アリスの嬢ちゃんが問い詰めてるのもその辺か」

 

 正解、とシノンがこめかみを指で押さえて答えた。正確にはアリスが()()()()()ストレアを問い詰めているのだが、その辺りを言わないだけの優しさが二人にはあった。色々と複雑な感情を持っている相手だが、それでも泣かれるのは精神的に効く。カセドラル防衛戦から無茶をし通しているストレアにとってはいい薬だと、彼女の助けを求める視線を無視して二人はこっちに顔を出したのだ。

 

「自分を囮にしろだとか、マジであいつそっくりじゃねーか……」

「キリト君も人の事言えないけどね……囮作戦自体はそう悪いものじゃないのがまた、難題かな」

「悪いものじゃない、ですか?」

「大規模術式で相手の数を減らしたけれど、それでも敵主力は健在で後、わたし達がやった事をし返す事が出来る術師もまだ数が居る。その中で無視できない要素……この場合はアリスさんだけど、それをわざとわかるようにこの戦場から離す。逃げていく相手を追うには戦力を分けないといけないから、引き付けられる数によっては防衛戦が楽になる」

 

 アスナの話に耳を傾けていた四人が真剣な表情で考え込む。

 

「問題はどれだけ引き付けられるのか……要は相手さんがどれだけ重要視してくれるかだな。囮に出して引き付けたのが少数だけなんてのも笑えねぇし……だから喧伝するって話なのか……相手の反応をそれで見て、どうするかを決める腹か」

「いや、決めたとしても集団を動かすなら相応に時間がかかるわよ? 少なくとも即応は出来ないはずよね」

「ストレアの事だ。そのネタを説教前から考えてたんなら、オレの所に来て話したろうさ。何かしらで自身を相手に印象付けて、そのまま手勢……相手を考えるならキリト達と一緒に、そのワールドエンド・オールターとやらに向かう」

「本命のアリスはそのまま送り届けさせて、自分は囮か……確かに、考えそうだな」

 

 一見冷静なキリトの声だが、その奥に強い怒りがある事にアスナは気付いていた。血の繋がりも無く、何なら種族すら違う……寄る辺はその魂の繋がりだけの二人の兄妹が、とても良く似ていた。自分の命を軽く見ているわけでは無いだろう。しかし、それ以上に大切な人の、仲間の、友の命を重く見て、その為に自分の命を懸けるのを躊躇わない。そこにちゃんとした理屈をつける辺りも抜かりはない。

 今回の場合、相手がアリスの外見を知らない。ならばストレアがアリスを騙ればそれに食いついてくる可能性が高く、力を見せつければまず敵軍で彼女がそうであると疑う者はいないだろう。そんな彼女が手勢を率いて戦線を離脱した場合、彼女を確保しようとする者は確実に追ってくるだろう。

 

「そこまでするなら……多分、わたし達の誰かが《外》の人間だって匂わせて、向こうのベクタも追わないといけない状況にするね」

「それで、騙されてくれるんですか?」

「こういうのは騙されなくてもいいのよ。向こうに確かめる術はなくて、『そうかもしれない』と思った時点で動く必要が出てくる。なんせ、目的の相手に手が届かなくなる事を最も避けないといけないから」

「ダークテリトリーでストレアの顔と名前を一致させてんのは、暗黒将軍シャスターとその側近の暗黒騎士一人だけ……あの二人ならベクタに言う、って事もないか……そこまで読んで言い出したなら、大したもんだな」

 

 しかし、ストレアの案をそのまま承服する事は出来ない。理由ははっきり言ってしまえば彼女自身である。ベルクーリら三人の内の事とは言え、カーディナルが()()()()の名代としてストレアをダークテリトリーとの交渉に出したのは、彼女が自身……いや、次の公理教会を導く者だと言ったようなものだ。それだけ今の人界におけるストレアの重要度は高い。

 

「私が行きます」

 

 五人の所に更に加わったのはアリスだ。その眼の周りは赤くなっていたが、誰もそこは指摘しなかった。

 

「ストレアは?」

「話を聞かないから眠らせたわ。今はヴァルゼライド卿と同じ天幕」

「眠らせたって……どうやって?」

「……傷は残らないから」

「「「「「あっ……」」」」」

 

 アリスが睡眠術式(物理)の行使を匂わせれば、五人はそれを追求するのを止めた。

 

「こほん……それで囮の件ですが、私がやります」

「……それは、やけっぱちじゃなくてお前さんが生き残るための選択なんだな? アリス」

 

 ベルクーリは真剣な目でアリスを見た。本音を言えば、ベルクーリは娘のように思っているアリスをみすみす死なせるようなところに向かわせたくはない。しかし人界軍の総指揮官としては、敵がアリスを求めているという話を利用しての囮作戦は、この状況を変え得るものであると理解している。

 

「はい。私は、私が望む最善のために」

「なら、良い」

 

 アリスがどう答えようとベルクーリにとっては苦い決断になる。ならばせめてと、その決断にもう一つ加える事を、彼は自身に強いるのだった。

 

 

 

 

 

 

 暗黒将軍シャスターが皇帝ベクタの居る竜戦車に現れた時、そこでは既にディー・アイ・エルが床に額を擦りつけて平伏している所だった。彼女が皇帝に献策した事はシャスターも知っている。人界軍の大規模術式に先手を打たれて自身の策が失敗したのだから、それによる叱責や処分を彼女は恐れているのは、シャスターにも容易に想像できた。

 

「皇帝陛下」

 

 ひょっとしたら自分の話はディーに利するかもしれないと、脳裏に一瞬だけ過ぎったがそれを振り払う。貸しと受け取られればいいが自尊心の強いこの暗黒術師はそう言うものを極端に嫌う。ならば単純に確認の体で聞くのが良いだろうと、シャスターはベクタの前に跪きながら考えた。

 

「何用だ?」

「は、少し確認したい事がございまして」

「確認?」

「は、陛下がお求めになられている《神の巫女》についてなのですが……この戦争に参戦しているという可能性についてでございます」

 

 将軍の問いにふむ、とベクタ……ガブリエルが唸った。その問いを受けて初めて、ガブリエルは自分が無意識の内に《アリス》を、自分が最初に殺した《アリシア・クリンガーマン》という、酷似した名前を持つ少女と同一視していた事に気が付いたからだ。

 無垢で、幼く、華奢な容姿の少女であるならば、こんな戦場に出ているはずがないと思っていた為に、参戦しているという可能性を除外していた。かと言って、今更戦争を止めるという事は不可能であり、人界を征服してから探すのが一番の近道であろうと考えていた自身のミスである。

 

「……この戦場で、特定の相手を見つけ出すのは可能か?」

「ふ、不可能とは申しません、が……時間がかかるものかと」

 

 視線を向けられ、平伏していたディーが恐る恐る言葉を紡ぐ。特定の人物を見つけ出す術式は《暗黒術》の中にも存在するが、それに必要なものを調べるのに時間がかかる。それはその人物の《固有ID》であり、闇素を使用してそのIDを持つ人物を探す……のだが、アンダーワールドでその固有IDを知る術は件の人物の《ステイシアの窓》を開いて確認するしかない。そんな本末転倒の方法の他は管理者権限があり、システム・コマンドを熟知しているのならば、固有IDリストを呼び出して名前と照合……なども可能だが、少なくともガブリエルは知らない。

 

「それらしき者に見当は?」

「――…先の大規模術式を行使した術者が怪しい、と思っております」

 

 皇帝に問われたシャスターは、目を閉じたまま重々しく口を開く。彼の視界に浮かぶのは、最高司祭の名代として現れた少女の姿。双方の和平の為に動く者が飛びぬけた力を持っているという事に皮肉めいたものを感じながら、シャスターは皇帝の言葉を待った。

 

「巫女の名はアリス。心当たりはあるか?」

 

 その名を聞いて安堵するとともに、シャスターはそれが自身の知る名である事に思い至る。六年ほど前に一度だけ、ベルクーリが果ての山脈に現れた時に連れていた騎士を思い出す。普段ベルクーリは一人だけで山脈警備の任に当たる為に、誰かを連れてくるという事が滅多にない。そんな男が連れていた騎士だからこそ、シャスターもよく覚えていた。部下であり愛人でもあるリビア・ザンケールと戦い、圧勝した少女騎士。

 

「……は。件の巫女は、人界を統べる公理教会の整合騎士。以前に我が部下が相対し、敗走しております」

「強いのか?」

「整合騎士最強の男……おそらく敵軍の総指揮をとっているであろうベルクーリが目をかけ、鍛え上げる程の才であれば、その剣が御身に届くやもしれませぬ」

「な……シャスター! 陛下を侮るか!?」

 

 顔を上げたディーが怒号を発するが、皇帝が冷え切った眼差しで見れば顔を青くして再び平伏した。忙しい奴だと再び視線をシャスターへと向ければ、その眼に浮かぶのは僅かばかりの興味の感情だ。

 

「それほどであれば早々死なぬ、とは思わんか?」

「……お言葉の通りであります」

「であろう? さて、デイー・アイ・エル」

「は、ははっ!」

「お前は先程、この地に満ちていた空間暗黒力……長年堆積したそれが枯渇した事によって術が使えなくなったと言ったな?」

 

 皇帝が座っていた玉座より立ち上がり、ゆっくりと靴音を鳴らしながら平伏するディーへと近づいていく。その事実に恐怖を抱きながらも、女術師は先の問いに肯定を返した。

 シャスターが来る前に、ディーは自身の策が成らなかった事と皇帝直属騎士のレオが戦死した事を説明していた。暗黒術師千人はおろか、自身の直属の一人が死んだとなっても、皇帝は叱責の一つもなく、ただひたすら無感情にディーの価値を計っていた。

 この後にどんな処分が下されるのか、己の保身のみを懸命に追い求める女術師は皇帝の慈悲に縋るしかなく、平伏し続けている。

 

「その堆積した暗黒力の源は、戦場であるが故に流れた血と散った命であるとも言ったな?」

「は、はいっ! そうであります!」

「三千も使えば足りるか?」

 

 皇帝の口から発せられた問いの意味を、平伏していたディーは察する事が出来なかった。察する事が出来たのは皇帝を見ていたシャスターであり、その視線の先に誰が居るのかを理解したから。だからこそ愕然とし、目を見開いて叫ぶしかなかった。

 

「へ、陛下! まさか……!」

「あそこに居るオークの予備兵力の内、三千も使えば足りるかと聞いている」

 

 言葉の意味を理解したディーも、愕然と両眼を見開いた。この場に居る二人の十候は互いに両脚から頭頂部へと這い登る冷気……いや、深く暗い、深淵の中へと捨てられたような恐怖を覚えた。しかし、次の反応はそれぞれ正反対と言える。

 

 ディーは、全身の恐怖が甘い陶酔へと変わり、その顔を甘く蕩かして再び……いや、先ほどの平伏よりも一層の感情を込め、皇帝のブーツへと額を当てた。

 シャスターは、全身を襲う恐怖の中で一つの確信を得て、一つの運命を定めた。

 

(この男は、命を何とも思っていない……いや、命が何たるかを知らぬのだな)

 

 闇の神。暗黒を統べる者。命無き世界に君臨する存在。その身から漂わせる吸い込まれるような……そして、吸い込まれてしまえば終わりだと感じるような心意。この神がいる限り、この世界に平和が訪れる事は有り得ない。

 

 殺さねばならぬ。たとえその結果として、自分の命が無くなろうとも。

 右眼の疼きを抑え込みながら、シャスターは一礼の後に皇帝の御前より辞した。その胸の裡に尋常ならざる決意を落とし込み、その為の機会を伺う為に。

 

「閣下」

 

 自身の隊に戻る道中、竜戦車に伴っていた暗黒騎士・リピアが声を掛けてきた。その声音には普段よりも心配そうな感情が出ていて、シャスターは苦笑する。

 

「リピア。俺に万が一の事があれば、お前が暗黒騎士団を率いよ」

「な――」

 

 突然の話にリピアの思考は一瞬停止し、『何を仰いますか!?』と激発しそうになったところを手を翳して制止される。

 

「……皇帝ベクタある限り、人界との和平は決して成る事はない。誰かが討たねばならぬ」

「それを、閣下がなさるというのですか……? 巫女を探し出し、我らで献上すれば閣下がダークテリトリーを統べる事も可能。そうすれば……」

「あぁ、確かにそれも道の一つであろう……皇帝に()()()()()()()()()な」

「……皇帝陛下に願いを叶える気はない、と?」

 

 騎士の問いに将軍は首を横に振る。シャスターが皇帝を見て感じたのは、そんな生易しいものではない。

 

「願いを叶えぬのならまだいい。しかしなリピア……俺はあの皇帝の一端を垣間見た気がする」

「一端、ですか?」

「我らを命と思っていない。盤上の駒……程度であろうな。少なくとも、我ら全てを使い潰しても件の巫女さえ手に入れば良いと思っている」

「そんな……」

「それにな、リピアよ。皇帝は願いを叶えると()()()()()()()()()。ただ、()()()()()()()()()()()とは言ったがな」

 

 そう言われてリピアはハッとした。玉座の間に皇帝ベクタが降臨した後、謁見の際にリピアもあの場に居たが確かに『望むのは《神の巫女》のみ』と言っていたが、願いを叶えるという趣旨の発言はなかったと気が付いたのだ。

 しかし、巫女を献上する時に交渉は出来るだろうが、それをして殺されてしまえば何の意味もない。

 

「……巫女以外の、この世界の全てがどうでもいいのであれば、消す事に躊躇いもないであろうし、な」

「そこまで、すると……閣下はお考え、なのですね?」

 

 震える声で呟いたリピアの言葉にシャスターは頷く。ダークテリトリー軍にとっては最悪の想定であるが、シャスターは皇帝の先程の決断を聞いてその可能性を感じざるを得なかった。命を何とも思っていないあの皇帝が、目的の者を手に入れた後に自分達をどうこうしないという保証はないのだから。

 

「……閣下、その時は」

「お前を連れて行く気はない。お前のような……種族の隔てなく子を愛せる者こそ、未来に生きるべきなのだから」

「なっ……!?」

 

 誰にも言っていない、女性暗黒騎士リピア・ザンケールの秘密。騎士となってから、月々の給金の殆どを投じて、未だ人買いの横行するダークテリトリーの僻地より親に捨てられた幼子を集め、学校に入れるようになる歳になるまで養育する保育所……言うなれば孤児院のような施設を運営しているという事実。

 目の前にいる、敬愛する暗黒将軍ビクスル・ウル・シャスターにも告げていない秘密を知られていた事に、リピアは目を丸くした。

 

「暗黒将軍として命じる。リピア・ザンケール、お前に生きろと。そして、リビア・ザンケールを愛する一人の男として願う。リピア、俺の代わりに未来を見届けてくれ」

 

 その言葉にリピアは何も言えなくなる。戦場へと向かう愛しい男の背中が、はるか遠い場所にあるような気がして――

 

 

 

 




すとれあ「睡眠術式(物理)を使う整合騎士が居るらしい」
ありす:視線を逸らす
すとれあ「お前だよ!? ほぼ全力で殴ったろ!? アタシのお腹をドゴォッ! って!?」
ありす「そんな音はさせてないでしょ!? 精々ゴッ! 程度よ!?」
すとれあ「充分エグいんだけどぉっ!? アンタはアタシを永眠させるつもりか!? その喧嘩買おうか? 今なら青天井で買い取るぞコラァッ!?」
ありす「そっちが全然自分の事顧みないからでしょバカァッ!? どれだけ心配掛けてるか拳でわからせるけどォッ!?」



きりと「冗談でも、試合開始の合図したら即殴り合いそうだな」
あすな「うーん、本当に喧嘩するほど仲が良い……で良いの?」
ゆーじお「良い、と思うけど……止めた方が」
しのん「そもそも、女子の会話じゃないんだけど……その点は誰もツッコミ入れないのね」
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