ワクチン二回目打った次の日に38度台の熱が出て死んでました。
打つ人はスポーツドリンクと熱さまシートの貯蔵を確認しておこう。ジッサイダイジ
東京・六本木、《ラース》内。
藍子ら四人が《STL》を使用してダイブしているのを見守りながら、涼の母・美沙は五面のモニタとそれぞれに対応したキーボード、そして《オーグマー》すら駆使して解析や情報収集に努めていた。
ここの施設は警察官である崖に協力させ、悠那の父親である重村教授も巻き込み、半ば社員を脅しつけるようにして利用している。息子が攫われた上に治療と言う名の実験に掛けられているのだから、母親として彼女は相手に対して一切容赦する気はない。この会社の社員は無関係であろうと、上がやらかしているのだからそのしわ寄せ程度は我慢してもらう。
さらに悪い事に、息子達が居る施設が何者かに襲撃されているという情報はキリトとアスナの娘経由で彼女の元にも入っていた。
事ここに至って、彼女は完全に自身の中で定めていたラインを踏み越える。夫に連絡を取り、
基礎理論や今までの研究成果。それらを全てを複製し、分割して彼女が所有する記憶媒体へと保存していくだけだが、普通ならば当然足が付く。その隠蔽や証拠を残さない工作も並行して行いつつ、四人の各種生体パラメータをモニタリングし、更には衛星回線の情報ストリーム内の不審な動きすら監視している。
(何をしているかさっぱりわからない……)
そんな見た目二十歳の女性のやっている事を見ているのは、悠那のマネージャーである
とはいえ、彼も悠那と同じSAO生還者の一人であり、オーリやキリト、アスナとも面識がある。その上聞かされた事情の中で、彼らが巻き込まれた《SAO事件》と今回のこれは繋がっているという。それを聞かされれば彼としても無関係と言えないので、こうして悠那の為にとここに残っている。
このオフィスを占拠するために手を借りた重村教授は現在、関係機関と電話でやり合っている為に席を外している。そして崖は後の事に備えての証拠固めと兄である巌との調整中だ。
「んー……?」
「どうかしましたか?」
美沙が一つの画面を注視し、唸った所で鋭二が疑問の声を上げる。何の迷いもなく行動していた彼女が初めて違う動きを見せたのだから、彼にとってはそれに興味を引かれた。
「いま彼女達がフルダイブしてる世界、時間が加速されてるんだけどその倍率が下がってる」
「倍率が下がってるって……現実の時間の流れに近づいてると?」
「そうそう。下げてどうするつもりなんかねー……聞くか」
そう言うと同時、美沙の目がせわしなく動き始めた。何事かと思ったが、鋭二はすぐに心当たりを思いつく。
(オーグマーの視線による操作機能……使える人初めて見たぞ)
難病の人でも使えるようにと搭載された機能ではあったが、鋭二はこの機能が誰かに使用されている所を見た事が無い。開発者の一人が重村教授である為に、彼もテスターとして色々と機能を弄ったが、この機能はとにかく使い辛かった印象しかない。
「もしもーし。聞こえてますー?」
そんな事を考えていれば、美沙が通話を始めた様子だ。
「そこに居るであろう
静かな一言に込められた感情を、隣に居た鋭二は理解せざる得なかった。それは通話の向こうに居る相手も同じであろう。
それは
「ぎゃあぎゃあ言ってる内に十秒経ったぞ。それ《ザ・シード》とか言うパッケージ使ってんだろ? 加速倍率を現実に合わせりゃ衛星経由で一般プレイヤーもログインできるよな? お前らの質問は聞いてない黙れ糞眼鏡二等陸佐。何の説明もなく息子拉致った奴に遠慮と容赦があると思ってんのか? あぁ十秒無駄にした。それで今バカみてーなティザーサイトも見つけたよ。『新規VRMMOタイトルの時限ベータテスト開催。史上初、殺戮特化型PvPゲーム誕生。完全人型アバター使用でレーティングも倫理コードも無し』と来た。私に聞くな自分で見に行けURLアップされたのアメリカの大手ゲームコミュニティだから」
乱暴な口調で話し、通話の先に殺意をぶつけながらも彼女の手と口は一切止まらない。
相手がやろうとしている作戦は、突貫で仕上げたであろうクライアント・プログラムをばら撒く事で、アンダーワールドへ一般プレイヤーをダイブさせる事だ。美沙が確認した仕様では《STL》を用いなければ、《メインビジュアライザー》が構築するアンダーワールドにはダイブできない。しかし、アンダーワールドの構築には汎用VRMMOパッケージである《ザ・シード》が用いられている為、加速倍率を現実と同じにすれば下位サーバーのポリゴンデータにはアミュスフィアを使用してダイブする事が出来る。
そんな事を説明しながら、この母親は言葉を緩めない。
「今そっちは色々やってるんでしょ? そこに数万人が敵としてログインすればどうなるか、思考の瞬発力が足りない頭でも理解できた? 理解できてもどうしようもない? 回線遮断はメインでしかできないから。はぁー、つ っ か え ね ぇ!! 防諜も出来ねぇ! 防衛も出来ねぇ! じゃあ何出来んの!? 糞眼鏡二等陸佐は国防担ってる自覚ある? 無いだろうなぁ! あれば
ふぅ、と一つだけ息を吐く。彼女の中の万分の一も怒りは収まっていないが、今発散しても意味はない。
「糞眼鏡二人覚悟しとけ。
視線でオーグマーの通話を切り、また一段とキーボードを操作する速度が上がった。
◇
敵
「何があった?」
「どうやら部隊の進軍先から、敵が来たみたい。アスナとリーファ、ランとユウキがそれぞれ迎撃に出た」
「その四人を出すって事は……」
「まぁ通常の暗黒騎士や拳闘士が先回りして少数でアタシ達を足止め……って作戦かもしれないけど、それならより確実な戦力を投入すると思うよ。だから来たのは、暗黒神直轄の暗黒騎士だろうね」
ストレアの推論を聞いて立ち上がろうとしているアリスを、ユージオが彼女の肩を持って抑えている。二人が来るまでストレアが懇切丁寧に『出るな』と言い聞かせていたが、彼女としては全軍を誘引できた以上、自分が部隊を離れて一直線に果ての祭壇まで向かうのが最も人界軍を生き残らせる事が出来るという考えなのだろう。
しかしそれは悪手であると、ストレアは反対している。敵ミニオンは撃破されたとはいえ、まだ暗黒騎士団の竜騎士が残っている。数は不明であるが総出で追いかけられればアリスとて苦戦は免れないし、彼女の神器《金木犀の剣》の天命は今、支配術の発動には心許ない数値しか残っていない。
アリスをベクタに奪取された場合、その時点で何もかも終わりだとストレアは考えている。戦争の勝敗よりももっと根本的な話……アンダーワールドの破壊が成されてしまう可能性も高いし、そうなればオーリが二度と目を覚まさない可能性だって出てくる。
「アリスの嬢ちゃんが動くとすれば?」
「それらしき物が見えてから、ランが言ってたようにアリス、ユージオ、アタシ、ユナの四人で果ての祭壇へ行くまで絶対動かしたくないんだけど……」
「戦力として見た場合、遊ばせる余裕はないか」
ベルクーリの言葉にアリスは激しく首を縦に振った。それをストレアが凄まじい形相で見るが、アリスは勝ち誇ったように笑った。
「ただ、これからは最後まで出さねぇってのには賛成だな」
アリスの顔が裏切られたような表情に変わり、ストレアがそれを『忙しいな』と言う表情で見た。
「余裕がある、とまでは言わねぇが予想される敵戦力に対してはアリス抜きでも何とかなる……そうだな?」
「まぁね。数で押してくる場合はシノン頼りになっちゃうけど、ある程度ならアタシでも何とかは出来るし」
「何とかって?」
「……なるほど。群れ成す狼か。何体だ?」
「実験できてないから何とも言えないけど、感じる意思は千を超えるから……まぁそれくらいかな」
自信無さそうにストレアは頬を掻く。その自信の無さは同時支配術を使用した時、その性能に対する
忙しすぎて遠出が出来ず、人界守備軍内で自身の重要度も上がってしまったために護衛を付ける羽目になったからであり、これについてはシェータを付ける事で解決したが、彼女の衝動の問題もあった為に彼女の前で同時支配術をやるわけにもいかない。
結果として、試せなかったのは殆どが彼女の自業自得であるわけだが、それでもどこかで無理をしてでも試しておけばよかったと後悔はしていた。それは
「まぁそれは今は置いといて、前を塞がれてるだろうこの状況を確実に抜けるためにはキリト、ベルクーリ」
「まぁ俺達が行くしかない、か。アスナ達を信頼していないわけじゃないけど、今求められているのは如何に速やかに障害を排除するか、だしな」
「消耗無しのキリトは良いが、オレが出張って良いもんか? 《斬撃結界》で時穿剣の天命が心許ないが」
ベルクーリの言葉に、ストレアは脇に置いていた袋の中から一つ小瓶を取り出して投げ渡す。
「これは?」
「剣用の天命回復薬。非常用だけど、今は四の五の言ってらんないでしょ?」
「そんなものがあるとは……」
「自作で数は少ないし、普通は多少使っても鞘に納めてれば回復するんだ。
使い方は、とベルクーリに軽く説明をするストレアへ、今度はアリスが凄い形相を向けた。『そんなのあるならください!』という感情が駄々漏れであるが、ストレアが彼女にこれを渡す時は人界軍全滅の可能性が非常に高まった時だけ……要するにアリスを万全にして逃げろと言う時しかない。
「ストレア、私にもください」
「やらんわ」
「すーとーれーあー」
「あー、睡眠術式の借り」
「そこまでする!?」
距離を詰めようと懲りないアリスと、詰められる距離の分を全力で突き離すストレアの微笑ましいやり取りに、この場に居た男三人は顔を見合わせて苦笑するのであった。
◇
進路を妨害していた巨人を撃破した後、部隊は迅速に低木地帯の小道を南下する。敵の飛竜によって少々焼き払われ、低木の密度は下がっているがそれでも大軍を通すには向かない地形だ。それを盾にしつつ南下するという方針に変わりはない。
ならばその出口に未だ居る暗黒騎士の排除……少なくとも移動させるのは迅速に行わなければならない。その騎士の排除に動くのはアスナとリーファであるが、出口まで弾き飛ばした後の戦況は膠着状態であった。
「巧い……!」
「こっちは二人なのに……」
「君らの様な美少女にそう言ってもらえると、冥利に尽きるね」
ディオは二人の言葉に喜びを素直に示しながらも、その手を一切緩める事はない。二刀がそれぞれ別の生き物のようにアスナとリーファを相手にし、卓越した技量を持つ二人を相手に状況を膠着させる事に成功している。
彼にとって二人は別に排除する必要はない。この場所に居れば部隊の進軍を遅らせる事は可能であるし、何より見目麗しく強い大和撫子二人を相手にしている時間を可能な限り多く取りたいという彼の俗な欲望で、この膠着は完成していた。
「これが現役の兵隊の実力……ッ」
「――…ほう、それを知っているのか」
ディオの声の質が切り替わる。陽性の、明るい性質を帯びていたものから真逆の、冷淡で冷酷な兵士としての声に変質する。
「やはりスタッフを送り込んでいたな」
跳ね上がる様に闇の二刀が軌道を変えた。膠着を望む守勢の動きではなく、目の前の存在を排除するための攻勢の動きへ。狙いは、直撃すれば一撃死の首だ。刎ねる事が出来なくとも、重要な血管を斬れば出血多量で、並のユニットなら天命はすぐに枯渇する。
それを二人は受け流し、左右へと散って距離を取った。構えを取りながら、アスナ達の動きを観察するようにディオはそれぞれに視線をやる。
(栗色の髪の少女は明らかに、命懸けの戦場に慣れている。しかし忌避感と言ったものが相応に存在しているから殺した事はない。金髪の少女はそもそも慣れていない……この取り合わせも、その技量に心構えが伴っていないのも、チグハグだ。
ただのVRプレイヤーと言う可能性はないと、ディオは判断している。何故ならただのVRプレイヤーが使える施設ではなく、なればこそ自分達が襲撃を掛けた
(一般人に近い人間がダイブしているという可能性。ならばその理由は? テスターがいの一番に思いつくが、それならは前線に出てきている理由も不明であるし、何より俺達を
防衛のためにスタッフが出張っているのだとしても、それはそれで自分達がダイブした時に強襲を掛けてきてもおかしくない。しかしそんな事はなく、何なら戦争を開始するまで何のリアクションも無かった事から、襲撃に関してはある時点まで知らなかったと考えられる。
「いや、今それを思考する暇はないな」
彼の前には、再び光を宿した細剣を携えたアスナが駆けて来ていた。心構えの話をしていたが、彼女達の性能も技量も一級品だ。油断などすれば瞬く間に自身の命が刈り取られる。特にこの、武器に光を宿して繰り出される物は危険だ。ゲーム的に言えばスキルのようなものなのだろうが、それの習熟度が飛びぬけている。スキルを己の一部のように使いこなすのではなく、己の一部に昇華したものだ。
片方の剣で突きを受け流しながら、ディオは続けて繰り出された一刀をもう片方で受け止める。ざざざ、とその威力に押された体が数メートルほど後退する。
「いやはや、何ともおっかないお嬢様達だ」
「軽い口調と行動に一切繋がりが無い貴方よりはマシでしょう!」
「分けてますので」
「この人絶対軟派だ……女性は愛でるものとか言って口説く人だ」
「なるほど、それはこんな場だが口説いても良いと?」
「「お断りします!!」」
ゴッ、と飛んできた拳に吹き飛ばされる。『フラれたかな』とそれは甘んじて受け、彼は冷徹な兵士の仮面を被り直した。
宙で一回転した後に大地を蹴れば、吹き飛ばされた勢いを打ち消して余りある暴虐的な速度を持って、二人へと肉薄する。左右の腕がまるで限界まで引き絞られた弓の弦のように後ろへと引かれ、神速の斬撃となって飛来する。
(はやっ)
(まにあわ)
その一閃に、二人は死を覚悟した。せめて後一メートルほどの距離があれば対応できたが、この距離では剣による防御も、回避も間に合わない。
二人へと迫る死の一撃に、黒と蒼の光が割り込む。
それは闇の二刀と一瞬だけ拮抗し、それを弾き飛ばした。ディオはその瞬間には後ろへ跳んで距離を取っており、死の一撃を防いだ
「危なかったな、二人とも」
「キリト君!」
「お兄ちゃん!」
二人を守るように前に立つのは、黒と蒼の剣を携えて立つキリト。彼は油断なくディオを見ながら、二刀を構える。
「あれがダークテリトリーのハイアカウントか……」
「うん、アバターの性能もそうだけど、中身も相当強いよ」
彼の左右にアスナとリーファが立ち、敵暗黒騎士を警戒する。対するディオは、自身の一撃を防いだキリトを注視している。その視線の受けたキリトも、相手から目を離さない。
(この少年……なるほど、強い)
(この男……確かにヤバい)
互いが互いに相手の力量を推し量る。ディオは二人の少女よりもその心は不安定であるが、一つ階段を上っているキリトに対して警戒度を上げ、キリトはディオの纏う気配やその挙動から読み取れる実力を推測して、暫定的にその危険度を設定する。
結論は、動き出した二人が雄弁に語っていた。
ディオがその左腕を、アスナ達の首を刈らんとした時以上に引き絞り、キリトが右手に持った黒剣に鮮烈なほどの光を宿す。次の瞬間には互いの間合いを潰し、同時に繰り出された突きが激突する。
「「きゃっ!?」」
激突による衝撃が大地を、空間を薙ぎ、アスナとリーファは思わず悲鳴を上げた。ディオの突きは、純粋な力と速さによって繰り出されているのに対し、キリトの突きは彼がSAOでも、ALOでも愛用し、ソードスキルが存在しないはずのGGOでも振るった《ヴォーパル・ストライク》。
アバターの性能では、二年以上鍛えたとはいえノーマルアカウントのキリトがハイアカウントに勝てる道理はない。しかしシステムのアシストを受けられるソードスキルを用いれば、その時だけは差を埋められる。
後は何で上回るのか――…アンダーワールドに存在する《心意》によってかと言われれば、それは違う。この《心意システム》は言うなれば、自身が積み重ねた経験や強い感情によって裏打ちされた《確信のイメージ》をこの世界に反映させるものだ。VRゲームのヘビープレイヤーであるキリトがそのシステムに対する親和性が高いのは、過去の経験によるものが大きい。しかし、ディオ達現実の兵士達が持つ経験やイメージはキリト達の持つソレより劣るかと言えば、そんな事は有り得ない。
心意が互角だと見るならば、何が勝負を決めるのか。
激突の最中に、キリトは口の端を吊り上げて笑った。呆れているような、喜んでいるような、そんな笑いを見て流石にディオは疑問符を浮かべる。戦いの最中でする笑いでは決してないそれは、キリトにしか必然たり得ない笑いだ。
左手に握った親友の剣に光が灯り、キリトにこの現状を……敵を打破する一手を語り掛けてくる。
「あぁ……お前にやれて、俺に出来ないはずはないもんなぁ!」
親友の
「エンハンスッ! アーマメントォッ!!」
だからさっさと起きろと、そんな意味も込めて叫んだ。
左の《流星の剣》より蒼い雷光が走る。その雷光がキリトの身体を駆け巡ったかと思えば、次の現れた変化に事の成り行きを見守っていたアスナが目を見開いた。
キリトの姿が変わる。それは別にオーラを纏ったり髪の毛の色が変わると言う物ではなく、ストレアの伝手で仕立ててもらった黒い戦闘服姿に、黒いコートが追加されただけ。その姿が、まるでSAOの英雄……《黒の剣士キリト》の姿そのままであったから、アスナは驚いたのだ。《エンハンス・アーマメント》と唱えたからには、その姿になった理由が《武装完全支配術》である事は理解できる。では何を支配したのか、アスナにはわからない。
そしてアスナ以上の驚愕を、相対していたディオは味わっている。いかなるシステムによる変化なのか理解しきれず、剣から伝わってくる相手の力が先程よりも遥かに増しているのが分かるからだ。何か短く唱えただけでこうまで変わる理由……ディオ達が把握していないシステムによるものなのは明白ではあるが、それに対抗する手段が彼の手札に存在しない。
「一体、何をした……黒い剣士の少年!」
「悪いな兵隊さん。
ギィンッ、と音を立ててディオの剣が弾き飛ばされる。それに反応して、反対の剣を繰り出した彼の判断とその反応の速さは称賛に値する。しかし今彼の目の前に居る剣士は、かつてデスゲームに囚われた一万人の中で『最も反応速度が速い』と
しかもその超反応が、今この時はアンダーワールドの心意システムと
無防備な姿を晒してしまったディオの目に映ったのは、左右の二刀に光を湛えて構える黒の剣士の姿。
「……俺の任務は失敗か」
「アンタだけじゃない。アンタ達は、俺達で止める」
ディオがアンダーワールドで最後に見たのは、自分の身を切り刻む十六の剣閃と、それを繰り出した黒の剣士の金色に輝く瞳だった。
きりと「何でストレア達のと俺のは違うんだ?」
すとれあ「違うって?」
きりと「ストレアのとあいつのはこー、オーラが出てるじゃん。でも俺のは変身だろ? 何か違いがあるのかなと」
すとれあ「効果的な話で言うなら『ほとんど違いはない』よ。アタシもキリトも反応速度上がってるし、試す機会はなかったけど生身の防御力も上がってるから。それで見た目の話で言えば」
きりと「言えば?」
すとれあ「アタシと兄貴は昭和ライダーで、キリトは平成ライダーって言えばいいのかな?」
きりと「……すまん、まるで解らん」
すとれあ「自分の肉体を武器として認識云々の話は前にしたと思うけど、あれのもっと奥深い話でさ」
きりと「奥深い?」
すとれあ「五体を武器にするって言う認識だけじゃ実は出来ないんだよね。で、作者がトランザムに例えてたけどさ、あれって割と答えなんだよ」
きりと「……俺がガンダムだ?」
すとれあ「身も蓋もなく言うとそれ、正解。自分の身体の隅々まで……それこそ内臓とかは武器である肉体を動かすための機関部と認識して、骨をフレーム、皮膚を装甲……みたいな?」
きりと「いやいやいや……それはおかしいだろ」
すとれあ「何で出来るかと言えばまぁ、アタシは元々AIだから良いとして、兄貴がとち狂ってるというのは同意だね。でまぁ、そういう感じだから、アタシ達の強化は純粋な出力上昇なの」
きりと「いやストレアのも良くないが……と言う事は、俺のは何かしらを装着してると考えた方が良い?」
すとれあ「そ。キリトのは『自分がイメージする最強の自分』を装着して、能力を上げたって事」
きりと「だから平成ライダー……ん? そもそも何でストレア達と俺のは違うんだ?」
すとれあ「ぶっちゃけて言うと、自分に支配術を使える対象が少なすぎて何とも言えない……推測で言うなら、キリトの方が方法としては正攻法なんだと思うんだけど」
きりと「どういう事だ?」
すとれあ「自分の身体の隅から隅まで機械化するのと、パワードスーツ着るのってどっちが楽? ほぼ十割がパワードスーツ着る方って答えると思うけど」
きりと「イメージの難易度としても桁が違うだろ……」
すとれあ「アタシと兄貴はその奇特な小数点以下の内に居るって話だよねー」
きりと「ちなみに俺の方をアスナ達は使えたりするのか?」
すとれあ「そもそも最強の自分ってイメージを一部の隙無く持てる人間も少数派だよ?」