流星の軌跡   作:Fiery

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暑さのせいで書く速度落ちてる可能性。


動き出す人達へ

 

 

 

『オレに何かあったらストレア。お前が総指揮官な』

『軽い口調でクッソ重い話をするの止めろぉっ!? あ、そのまま出撃すんな言い逃げするな待てや騎士団長ォーッ!?』

 

 出撃前にした会話を思い出して、ベルクーリの口元には自然と笑みがこぼれた。

 最初はそこそこきっちりしてたのが、今じゃ遥かに年上の彼に対してあそこまでに言ってのけるほどに成長した。慣れたとも言うが、はっきりと敬意を持ちながらも気安く話すというのは、何とも難しい。

 ベルクーリから見たストレアの第一印象は、実を言えばあまりよくはない。人でないモノが無理に人のように振る舞っている――…ベルクーリでなければわからないような、そんな違和感を感じ取ってしまったからだ。しかしストレア自身から感じる《心意》は真っ直ぐなものであり、それが余計にベルクーリを混乱させた。

 認めた男の妹であっても、無条件で信用する事は出来ない。しかし確かに認めた男の妹なのだと感じる所があり……悩んだ結果、ベルクーリはストレアに問うた。

 

『お前さんは一体なんだ?』

 

 今考えれば自分でも抽象的すぎると思う質問の意図を、ストレアは正確に察した。

 

『端的に言えば、アタシは人間じゃない。兄貴やキリトは《外》の『人間』でアタシも《外》から来たけど、兄貴達とは種族からして異なってる』

『この世界に来て、あいつの妹に収まったのか?』

『いや、来る前に色々話し合いがあってさ、その時に妹って認めてくれたから』

 

 嬉しくて茶化しちゃった、と笑う少女の顔に、ベルクーリは違和感を感じなかった。目の前の存在が人間でなく、しかし人と同じように泣き、笑い、喜び、悲しむ存在であると理解したから。

 

『にしても、よくわかったね』

『お前さんと逆の存在を、オレはずっと見てきたからな』

『あぁ……なるほど。やっぱ流石の経験値だ』

 

 人から神になってしまった存在……アドミニストレータを最もよく見てきたのは誰か。それは最強最古の整合騎士であるベルクーリ・シンセシス・ワンだ。自分の人生を無茶苦茶にした相手だが、記憶が全て戻った彼の中には不思議と憎しみなどの感情は浮かんでこなかった。

 憐れだとも思わない。彼女は自分がそうなりたいと思ってそう成り果て、生きて、死んだ。たった一人で、手段は決して褒められたものではないが、生き足掻いた存在に対して、彼は憎む事も憐れむ事も無かった。そんな事をするには、ベルクーリはアドミニストレータと言う女の魂に触れ過ぎていた。

 

『ストレア。お前さんは神から人になりたかったのか?』

『アタシが神とかやめてよホント。人間じゃないのは認めるけどさ、そんな大それたものだった記憶なんかアタシには一切ない。人になりたかったかと聞かれれば……なりたくないとは言わないけど、なれないでしょ』

 

 そう言って彼女が浮かべた笑いの中にある感情を、ベルクーリは読む事が出来なかった。

 

『それに人じゃなくても、アタシは兄貴の妹だ。兄貴が目指したものを引き継ぐ義務も義理もあるし、今の状態の兄貴を放っておくなんて出来ない。全部やらなきゃいけないのが辛い所だったけど、兄貴の世話については丸投げできる人が来たのは僥倖かな』

 

 そう語る彼女からは、家族に対しての無条件の信頼が感じ取れた。それを見たからこそ、ベルクーリはストレアを()()する事にした。

 

 そうと決めて付き合えば、ストレアは中々に難物だったとベルクーリは振り返る。精力的に働き、全体的な能力も高く、他と関りが薄かった教会と四帝国を繋ぐ交渉事をまとめ上げた彼女の仕事ぶりは、はっきり言って自己犠牲の域に入っていた。『ちゃんと寝た?』とアリスが聞くのも無理がないほど、働いている姿を見た記憶しかない。後は兄を見舞うか外から来たシノン達と交流するか、学院の友人と話す程度の息抜きをしている程度。

 それを知ってしまえば体を壊してしまわないか心配になるのも道理であって、事実カーディナルもベルクーリもそう告げたのだが、ストレアは『大丈夫大丈夫』と言うだけだ。実際にそれで戦争開始の十四日前……央都で行える全ての準備が完了するまで持たせてしまった。

 

『有り得ねぇだろ……』

『理屈の上では確かに、最低限の睡眠、食事を取れているのなら天命は減らんし病気になる事もない。しかし心は疲弊するじゃろ……確か息抜きはしておったな……仕事時間に比べれば微々たるもんじゃったが……』

 

 ざっくりと言えば、大体百五十日ほど連勤して、最小限の睡眠と食事以外の殆どの時間を仕事に費やして体調に異常を発生させていない。ここが仮想世界であるからできる、荒業とも言えない程の暴挙。

 それをやりきったストレアの精神性には感服を通り越して恐れを抱くしかない。自分の肉体を《武装完全支配術》で強化してしまう兄との繋がりを示すのに、これ以上の証明はない。ただ、はいそうですかとストレアをそのまま戦場に送るわけにもいかない為、移動まで休むことをカーディナルは厳命した。そこから『調整しまーす』と、アスナやユウキと模擬戦をこなしだしたので雷を落とした。

 

「そんな奴がオレにあんな口を利くようになるってのも、面白れぇ話だ」

 

 自身の飛竜・星咬(ホシガミ)に乗り、ベルクーリはイーディスらの《心意》を感じる空域へと飛んでいた。ストレアからランの『イーディスが敵と交戦状態に入っている』と言う予測を聞かされ、その話に筋が通っていると納得した彼は早速動いた。

 彼女手製の霊薬で天命を回復させた時穿剣はいつもの輝きを取り戻し、自分にも不調はない。斬撃結界を使い、小休止を挟んだと言え逃げ続けたとは思えない良好な状態で戦えるという事は予想しておらず、そこまでの状況を考えていたストレアには頭が下がる思いだ。

 

「これが若い奴の発想なのか……?」

 

 誰かが聞けば全力で『違う』と言いそうな疑問だが、彼の呟きを聞いたのは星咬だけ。星咬は主の疑問に答える事無く、目指す先に向かって飛んでいる。やがてベルクーリの目が、闇夜を飛ぶ三つの影を見つけた。

 一つはイーディスの飛竜・闇飛。二つ目の影である漆黒の飛竜に向かって飛んでは離れると言った軌道を繰り返しており、離れる直前には火花が散っている。その漆黒の飛竜に向かって飛ぶ三つ目の影が、杖に乗った双子の姉妹であるランとユウキだ。二人と漆黒の飛竜の間にも時折火花が散り、こちらは飛竜を超えた速度で鋭角に……まるで稲妻のような軌道を描いている。

 

「敵は弓使い……」

 

 しかも、二方向から攻めているはずのこちら側が攻めあぐねるほどの使い手だ。遠距離の攻撃手段に乏しいベルクーリが加勢しても、戦局に影響を与える可能性は低いと言わざる得ない。

 

(秘策はあるが負担はでかい……なら、追い込めるかどうかか)

 

 天命が回復している為、武装完全支配術を使う事への不安は一切ない。空中戦をしながら意思疎通をするのは難しいが、片や付き合いの長い整合騎士でもう片方は察し良く頭の切れる術者だ。ベルクーリの出来る事を知っているが故に、その狙いを察する事くらいは簡単にしてくれる。

 新たに編み出した時間加速は他者にも使用できる事は判明しているが、身体への負担は改善されていない為に奥の手だ。

 そう考え、己の役割を決めれば彼の行動は早かった。

 

 ゴッ、と星咬が加速する。

 空気を斬り裂く轟音に、空中戦を展開していた四人の視線が一瞬だけベルクーリへと集中。その中で最も対応が早かったのは、敵暗黒騎士だ。弓の弦を引くと同時に鋼の矢が現れ、放たれる。

 《暗黒弓手タナトス(ハイアカウント04-3)》の権限は《矢の無限生成能力》であり、単純でありながら使い手によっては凶悪なものに変ずるそれを、ロッドは十全に使いこなす。何せ弦を引くだけで矢が番えられる為に、矢筒を携帯する必要も残弾を気にする必要もない。そして、弦を引く指の数で番える矢の本数は変わる。指二本で引けば矢は一つ。三本で二つ。四本で三つだ。

 流石に、親指を含めた五本指全部では引けたとしても命中に難がある為に彼はそこまでしていない。しかし、それで充分であった。矢を取り、番えるという動作を廃しただけで、連射の速度は飛躍的に上がる。シノンの弓が一撃必殺のライフルであるのなら、彼の弓は機関銃と言えた。

 

「こりゃイーディス達が手古摺るわけだ……!」

 

 そんな連射数で放たれる矢は、重い。そしてロクに狙いを付けていないはずなのに百発百中と言って良い精度で飛んでくる。斬り払っても斬り払っても尽きる事の無い矢は、一対一なら打ち崩す事は至難だろう。

 

(あー、やだやだ。こんなに来るとは予想外なんですがねぇ)

 

 三方向から攻めてくる相手に互角を演じながらも、ロッドは内心で愚痴をこぼす。そもそも彼の役目は、アリスの居る人界軍の部隊を足止めするディオの援護である。本命がのこのこ出てくればOKだったし、出て来なくてもダークテリトリー軍本隊が食いつくまで足止めすればそれでいい。

 それだけだったはずが、いつの間にやら千客万来の様相だ。人界とダークテリトリーはどちらも航空戦力に関しては希少と言う話であったが、一対三になるとは思いもしなかった。そして誤算は飛竜以外の航空戦力が、あのスーパーアカウントらしき少女以外にも居た事である。

 最初は、後ろにもう一人乗せている為にそこまでの機動を取る事が難しいと思っていたが、蓋を開ければ高速機動をしながら攻撃を飛ばしてくるという厄介極まりない存在であった。それに操縦しているだろう少女は良いが、後ろに乗って更に立っている少女は最早理不尽に近い。足場が細いと言って良い杖の上だけで、そこに高速機動時も立ち、更に攻撃もしてくる。

 

(騎士のねーちゃんは剣の間合いに近づけさせたらヤバい空気出してるし、あっちも攻撃飛ばしてくるくせに同じ空気だし、より一層ヤバいのが出張ってくるし)

 

 なるべく相手全員を正面に取る様に立ち回っているが、敵が三機に増えた事で対応しきれない部分が出てくる事は明白だった。特に杖で飛んでいる少女は二機の時点でもロッドを出し抜きかけており、手駒が増えればもう手に負えない。

 ディオの方がどうなっているかを確認する余裕は彼になく、ならば逃げるかと撤退も視野に入れる。彼らの目的を考えれば必ずしも敵の殲滅は必要ではないし、それよりも自分の生存の方に重きを置くべきだからだ。ここで天命全損によるログアウトと言う事になれば、任務の遂行は困難極まる。

 

(普通に考えるなら、それを避けねぇと俺らクビじゃ済まねぇんだが……)

 

 しかし、自分達の隊長であるガブリエルが見せたあの表情が、ロッドの任務遂行へのやる気を削いでいる。アリスを手に入れたとして、あの男がそのまま素直に依頼主(クライアント)へ引き渡すとは到底思えない。自身の感情を全くと言っていいほど見せない……ともすれば感情と言う物が無いと思える男が、自分達にすらわかるほど発露したそれ。それだけの執着を垣間見せたのだから、あの男はともすれば部隊全員を殺して、作戦失敗などと嘯いてアリスを手中に収める程度はしかねない。

 ロッドがこんなヤクザな商売をしている理由は、自分にとって一番稼ぎやすかっただけである。元より任務達成への執着は薄く、全ては命あっての物種であると考えている。失敗イコール死であるのなら奮戦するが、()()()()()()()であるとするならば普通は引き受ける前に投げ出す。

 あくまでも稼ぐための手段であり……報酬が割に合わないのならば、命を繋ぐ方を選べるのがロッドと呼ばれている男だ。それでもこの商売で信用を担保されているのは、彼が命を取るのは誰の目から見ても依頼主(クライアント)か上に問題があるものばかりだからであり、なおもそんな所から生還している実績が存在するからに他ならない。

 

「――…ったく、アホらし」

 

 射撃を止め、ロッドの乗った飛竜が四人の居る位置よりも更に上へと飛翔して静止する。何事だ、と散って彼を警戒する四人を気にする事無く、ロッドは兜を脱いだ。

 

「何のつもりだ。暗黒騎士さんよ」

「いやね、こっちの事情って奴ですよ。俺も自分の命は惜しいから、こうして逃げる。奮戦しても()()()()()()()なんでね」

「どういう事……?」

 

 イーディスが怪訝な表情でロッドを見据えた。純アンダーワールド人である彼女の認識では目の前の暗黒騎士は暗黒神の眷属であり、そう言う俗な事柄とは無縁であるという印象だ。報酬として何を貰うというのかと考えれば悍ましい話が思い浮かんでしまうが、この暗黒騎士から感じられる心意は善でも悪でもない。

 あるのは自身の中にある規律や道徳を重んじ、しかし周りとの調和も捨てる事の無い中庸さ。身も蓋も無い言い方をすれば『俗だけどいい奴』である。

 

「それは、貴方の上に位置する人物が貴方達との契約を履行する可能性が無いと?」

 

 杖に乗っているランが声を上げた。その後ろでは油断なくユウキがロッドを見て、その剣に手を掛けている。

 

「あぁ――…まぁこれは俺の人生経験から来る勘だが、うちの大将は途方もなくやべぇ。お宅らのアリスに完全に執着してやがる。それこそ、()()()()()()()()()()だろう程度にはな」

「……お前さんがそんな事を言う理由は何だ?」

「なーに。散々ちょっかい掛けて何だが見逃せって事だよ」

 

 報酬はこれだ、とロッドは自身の弓をベルクーリに向かって投げた。ロッドから見て彼が一番人界軍の中で地位が高そうに見えたからであり、それ以上の理由はない。ベルクーリもその自然さに思わず、と言った体で弓を掴む。黒一色のそれは禍々しい形をしてはいるが、色合いは黒曜石のように深い黒。ダークテリトリー側の神の騎士が持つ神器に相違ない物を感じながら、あっさりと渡してきた事に驚愕を隠せない。

 

「見逃したとして、何をするつもりですか?」

「ちょいと探りを入れてもらおうと思ってな。ま、こっちの話だよ」

 

 

 

 

 

 

 モニターを見据えながら、クリッターは焦っていた。秘密裏に隊長であるガブリエルから指示されていた行動について、妨害者が現れたのだ。

 新規VRMMOのベータテストを謳い、何万と言うアメリカのVRプレイヤーをアンダーワールドへとログインさせ、戦況を混沌に叩き込む。その隙にアリスを奪取するという賭けにも近い指示ではあるが、ガブリエル達が指揮するダークテリトリー軍が既に六割ほど損耗している現状では打てる手は打たねばならない。

 だからこそ過激なサイトを作成し、テストを謳って集めているのだが、急ピッチで作成したクライアントのダウンロード数が三万に達した頃にそれが次々と削除されたのだ。複数に分散していたアップローダーの全てが一斉に削除されるなど、妨害以外の何物でもない。

 やったのはラースのスタッフかと追跡したが、悉くが痕跡すら残さずにクライアントデータの消去を完了している。新しくアップロードしてもそれを知らせる前に削除される始末であり、事ここに至ってクリッターはこの手が見破られて監視されている事に気付いた。

 

『しかしダウンロードされたクライアントについてはどうしようもないはずだ……』

『どうした、クリッター』

 

 焦燥を募らせる彼の背後から、倒されてログアウトした副長のレオが声を掛けた。

 

『あ、いや、副長。ちょいと隊長からの指示で動いてた事に妨害が……』

『妨害?』

 

 隊長の次に権限のある副長にそう問われれば、クリッターとしても答えるしかない。ガブリエルより指示された内容と、自身が取った行動。そして今現在の状況を話し終えれば、レオは唸りながら腕を組んだ。

 

『それを知っていれば、ダークテリトリー側のユニットを使い潰すのにも納得したのだがな』

『向こうの戦況は?』

『私が撃破された時点でダークテリトリー軍の半数近くが壊滅した。それでも数の差で言えば圧倒的ではあったが、高性能のユニットの数は向こうが上のようだな』

『スーパーアカウントクラスが何人も居ると?』

『少なくとも、ハイアカウントクラスが十体以上は居る様子だったな。もしかしたら、人界側のスーパーアカウントも参戦しているかもしれん』

『マジかよ……』

 

 ならばこの策は成功させねばと、クリッターは再度作業に入るがそれでも成果は芳しくない。先程と状況は変わらないどころか、URLをアップしたSNSや大手サイトの掲示板では懐疑的な声が上がる始末である。

 『くそっ!』と両拳を叩き付ける彼の肩にレオは手を置きながら、このメインルームに詰める隊員たちを見渡す。

 

『何人か動けるか?』

『どうしたんです? 副長』

『少し、調べてほしい』

 

 集まった数名の部下に指示を出す。その指示は不可解であったが、部下達は了解の声と共にメインルームを出て行った。

 

 

 

 

 

 

 VRMMO-RPG《アルヴヘイム・オンライン》内、新生アインクラッド第二十二層に存在する、アスナとキリトのプレイヤーホームである《森の家》のリビングルーム。今そこには、ナビゲーション・ピクシーの姿のユイの他に四人の妖精が居る。猫妖精族(ケットシー)のシリカに、工匠妖精族(レプラコーン)のリズベット。火妖精族(サラマンダー)のクラインに土妖精族(ノーム)のエギル。

 深夜にもかかわらずユイの要請を受けて集まった四人は、彼女から語られた話を聞いて息を呑んだ。

 

「……魂だの、自衛隊が作った仮想世界だのにはピンと来ねぇが、とんでもねぇ事に巻き込まれてるのは理解した。もう既にゲームの領域なんぞ超えてんじゃねぇか……」

「人工知能の話もそうだけど、あの馬鹿が治療って……拉致じゃない」

「シノンさん達が学校に来てない事は知ってましたけど、そんな事になっていたなんて……」

 

 項垂れる三人を横目に、腕を組んでいたエギルがユイを見て口を開く。

 

「その人工知能……アリスだったか? それは俺達人間と変わらない存在だって事だよな?」

「はい。私のような既存のAIとは構造原理から完全に異なる……人の魂を解析して造られた、本物の魂。ラース内部では《人工フラクトライト》と呼ばれています」

「そいつを使った戦争……まぁ日本の自衛隊ならいきなり実戦じゃなくて、国内向けのデモンストレーションだろうが」

「現在、パパ達が居るオーシャン・タートルを占拠している襲撃者達は、そうは考えてはいないでしょう」

「その襲撃者って言うのは、何者なんだ?」

「NSAです」

 

 端的なユイの言葉に、エギルは大声を上げて驚いた。続いてクラインとリズベットがやっと理解して声を上げて、シリカは疑問符を浮かべる。

 

「えぬえすえー……?」

「アメリカ国家安全保障局。国家の情報機関の中枢だ……話がでかすぎるだろう」

「ですが、事実です。そして、もしアリスがアメリカの手に落ちれば、そう遠くない未来に無人機搭載用AIとして実戦配備される日が必ず来るでしょう」

「……今、オーリさんはそこで治療中で、でも襲撃されて、キリトさんやアスナさん達はどっちも守りながら戦ってるって事ですか!?」

 

 ソファに座っていたシリカが立ち上がれば、ユイは頷きを返した。

 

「内部に居るストレアからの話では、オーリさんは今非常に危険な状態です。自発的な行動は一切取れない昏睡状態だそうで……」

「どうすれば、俺達はあいつらを助けに行けるんだ?」

「敵が取ろうとしている策に便乗する形になりますが……今パパ達が居る仮想世界(アンダーワールド)は、《ザ・シード》規格のものになります。だから」

「アミュスフィアでダイブする事が出来るし、コンバートも出来るか」

 

 紡がれた言葉に対して、重々しく首肯する。VRプレイヤーにとっては半身とも言えるもの。それを差し出せと言っている自覚が、ユイにはある。それでも、相手の策に対抗するにはそれしかないのだと、彼女は己に言い聞かせた。

 

「なるほど……とりあえず問題はないわね」

 

 あまりにも軽い調子のリズベットに、「えっ?」とユイは声を上げた。

 

「そうだな。俺はSAO時代の知り合いに連絡を入れてみるか……連絡取れる二千人全員当たれば、半分は集まるだろ」

「えっ?」

「なんだぁ? 同窓会でもしようってのか? エギルゥ」

「ちげーよ。オーリの奴の縁で色々と声を掛けられるんでな、あの馬鹿を叩き起こすのに利用しない手はないだろ?」

 

 そう言ってエギルは悪い笑みを浮かべ、クラインは『それもそうだ』とこっちも悪い笑いを浮かべた。人工知能や世界のためにと言うお題目ではない、『昔のゲーム仲間のケツを蹴り上げに行く』という、何の変哲もない理由。それだけで集まる奴は集まるだろうと、エギルもクラインも疑ってはいない。

 

「ま、あの馬鹿が世話をしてたプレイヤーって多いみたいだし、そう言う理由なら来るのも多いんじゃないかしら」

「えっ?」

「下手に色々言うより、その方が効果的でしょうしねぇ……ついでにユナさんの生歌披露とか入れときます?」

「そうするか」

 

 どこか楽しそうに相談する四人を見て、ユイは目を白黒させた。

 

 

 

 




きりと「SAO時代の因果が今襲い掛かるのかぁ」
あすな「嫌なら早く起きないとねぇ」

しのん「一体何をしたのか凄く気になるんだけど」
ゆな「お礼参りされるくらい……ですかね……」
らん「それ物理の方ですか? ちゃんとしたお礼の方ですか?」
ゆうき「一体何をしたのお兄ちゃん……」

すとれあ「やらかした前提で言われる兄貴に笑いを禁じ得ない」
ありす「何か知ってるなら言ってあげなさいよ……」
すとれあ「いいや断るね!」
ゆーじお「凄く力強く断言した!?」
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