流星の軌跡   作:Fiery

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97話です。
……後3話で100? え……えぇ……?


見えぬ運命の潮流

 微睡みから浮き上がりつつあるアリスが最初に感じたのは、人の温かさだった。抱き止められているかのように全身を優しく包んでくれるその温もりを、彼女は良く知っている。

 

 ……ゆーじお?

 

 呟きの答えは、頭に添えられた手の平。ルーリッドにいた数カ月で日課になっていた、他愛もない返答。それだけでアリスは、安心したように温もりに身を委ねようとした。

 うっすらとだが、目を開く。朧気な輪郭の中に見えたのは、自分も良く知っている硬質な金属の輝き。

 

 ……小父様?

 

 その輝きを間違える事はない。ベルクーリの時穿剣の輝きだと理解して、アリスの意識は浮上する速度を速めた。

 急速に朧気な輪郭は像を結び、はっきりと周りの光景を映し出す。彼女の頭を膝にのせているユージオの姿があり、二人を見ているキリトの姿があり。

 

「スト、レア……?」

 

 時穿剣を背負い、ベルクーリの飛竜である星咬や知らぬ黒い二体の飛竜に何か指示しているストレアの姿があった。

 何故、という疑問と共に、アリスは自分がどうなったかを思い出していた。謎の軍勢に囲まれ、それを突破するために無理やり志願し、皇帝ベクタの駆る飛竜に攫われた。背後の警戒をしないで、呼び止める声を振り切って、何て迂闊だったのだろうと。

 

「アリス……目が覚めた?」

「ユージオ……」

 

 アリスが見上げた彼の顔は、いつものように優しく微笑もうとして失敗した、酷い表情だった。泣き腫らしたかのように眼元が赤く、涙の跡が生々しく残っている。どういうことだと、起き上がって確認すれば、辺りは乾き始めた生々しい血の跡だらけ。

 

「これは、一体……?」

「ストレア、アリスが起きたぞ」

「あー、分かった。んじゃ雨縁、アンタの御主人様とユージオ乗っけて飛べる?」

 

 キリトの言葉に相槌を打って、しかしストレアはアリスの方を見ないまま飛竜達に指示を出す。雨縁が了承の返事として鳴いた後、黒い飛竜の片方には鞘に収まった武器を持たせ、目印のつもりか自身の上着を首に括り付けていた。

 

「キリトはこっちの黒飛竜。アタシは星咬に乗って南下して、このまま果ての祭壇を目指す」

「ま、まってストレア!? 小父……ベルクーリ閣下は!?」

「……」

 

 その声に、初めてストレアはアリスを見た。虹色の輝く瞳に()()()()()()。彼女の視線を真正面から受け止める事になったアリスは一瞬だけ呼吸を忘れ、身を竦める。

 

「死んだよ。暗黒将軍と協力して、皇帝ベクタを撃破して……迂闊にも攫われたアンタを守る為にね」

「そん、な……」

 

 呆然と呟くアリスを、心配そうに見つめるユージオとキリト。それとは対照的にストレアは怒りを視線から消した後、冷めた目でアリスを一瞥し、淡々とした様子で口を開く。

 

「他に何か質問は? 無いなら早く乗って、出発するから」

「わ、私の、せいなの……? 小父様が、死ぬ事になったのは……私の……」

「アリス……」

 

 呼吸の仕方を忘れてしまったかのように何度も口を開閉しながら、後悔のような、懺悔のような言葉でアリスは呟いた。嘆きも、悲しみも溢れすぎてどうしようもなくなったその状態を見て、思わずユージオはその肩に触れようとする。

 

ふざけた事抜かしてんじゃねぇぞ、てめぇ

 

 ゴッ、と鈍い音が響いて、アリスの身体が岩山の頂上を滑った。突然の出来事に唖然とするキリトとユージオが見たのは、握り込んだ拳の甲をアリスに向かって振り抜いたストレアの姿。そして、再び怒りに染まった彼女の眼だった。

 

「アリス、峡谷戦の時アタシはお前に言ったよな。()()()()()()()()()()って」

「スト、レア……?」

「ベルクーリ・シンセシス・ワンは自分の判断で、自分の責任を果たし、自分の命を使い切った。全部ベルクーリが納得して選択した結果だ。切欠はお前だとしても、全てベルクーリがやった事だ」

 

 倒れているアリスの胸倉を掴んで、無理やり立たせる。怒りに燃えたストレアの眼が、彼女が呟いてしまった甘えを許さない。

 

「『オレが死んだのはお前のせいだ』って、ベルクーリが言うと思ってんのか? お前が! ベルクーリの弟子だったお前が!! 言っちゃいけないだろ!?」

「でも! でも私が! 私があの時飛び出さなかったら小父様は死ななかったかもしれない!!」

 

 殴られて腫れ始めた右目に構う事なく、アリスの慟哭が響いた。たらればの話ではあるが、ストレアの忠告を受け入れていれば、可能性はあった。

 

「あぁそうだ。それは認めるよ。お前が大人しくしてれば、ベクタに攫われる可能性は低かった。ベルクーリだって死ななかったかもしれない」

「だったら……」

「でもね、全部ひっくるめてベルクーリの選択で、()()()()()()。嘆くのも悲しむのも後悔するのも、別に構わない。でもお前が、ベルクーリの選択を貶めるのは止めろ。お前も、ベルクーリも、最善だと信じて選択した結果を、ちゃんと受け止めろ」

 

 出来るね? と問いかけたストレアの目からは、いつの間にか怒りは消えていた。形相は怒りに歪んでいるが、そこにあるのは優しい心意だけだった。

 その目を真正面から見て、アリスは自分を恥じる。こんな事になっても、ストレアは自分を気遣ってくれている事に気が付いたから。ストレアだって、ベルクーリが死んで悲しくないわけでは無い。でも、彼女は嘆く事は無かった。泣く事も、悲しむ事も無く、ベルクーリ・シンセシス・ワンは自分の選択に納得し、使命を全うしたのだと『納得』した。

 

 その心中では、ダース単位の罵詈雑言を言い放ってはいたが。

 

 そんなストレアはアリスの返事を待つ事無く、言うだけ言って掴んでいた手を放す。放されて、へたり込まなかった彼女を一瞥した後で、固まっている男二人へと視線を向ける。

 

「ユージオ」

「あ、うん」

「今度はもう、こいつが何て言おうが引き摺ってでも果ての祭壇に連れて行って。キリトとアタシも一緒に行くけど、万が一追手が来た場合そっちの迎撃に移るから、出来るのはユージオだけ」

「万が一って……誰が追いかけてくるって言うの? ベクタは倒した。二人の話だと暗黒界軍とも……」

 

 ユージオの疑問に、ストレアは曖昧に笑った。キリトもキリトで少し渋い顔をしてユージオを見る。

 

「外での争いは、おそらく終わってない。ベクタや例の暗黒騎士としてこの世界に来た存在がもう一度現れる可能性は、ゼロじゃないんだ」

 

 そう、まだこの戦いは終わらない。しかし、最終局面へと向かって行っている事だけは、はっきりと感じられていた。

 

 

 

 

 

 

『私見を述べるなら、アリスを含めた《人工フラクトライト》達は既にUAVコントロール用AIなんて言うちゃちな代物じゃない。アンダーワールドという世界に根付いた新しい人類……この場合は異世界人、と言った方が適切ね』

 

 第二制御室のスピーカーから流れる声に、加藤達は耳を傾けている。繋がっている先は六本木のラースのSTL室……美沙が第二制御室にホットラインを繋げ、直接やり取りをしている。

 ユイより依頼を受け、美沙は目的のサーバーに接続。そこから千人のコンバート作業をこなしながらホットラインを繋げ、現地の比嘉と凛子にも作業を手伝わせた。それが一段落した後、こうしてダメ出しが始まっているのだが。

 

「異世界人……」

『そもそもの話として、ツッコミ所がたくさんあるのよこの計画。ボトムアップ型の人工知能とそれを育てる環境を用意するのは正しい。でも最終目標としてこちら側の兵器に載せるというなら、育てる環境の世界観が何でファンタジーなのよ。現代日本の再現が不可能だったとしても、寄せる努力はしなさいよ。この世界でおめーらが求める物が出来たとして、すぐに運用できると思ってんの?』

「アリスが発生すればその構造を解析して違いを検証して、それから複製する予定だった……」

『ファンタジー世界の人間解析したって、ファンタジー寄りでしかないと思わない? 少なくとも、文明の発展方向については手を加えるべきだったと思うわ。《フラクトライト》への影響を考えたんでしょうけど……って言うのはもう繰り言ね』

 

 言葉の端々に『ホント使えねぇなぁてめぇら』という副音声が聞こえるようで、菊岡と比嘉は黙り込むしかない。迂闊に内患を招き、最終目的からかけ離れた世界を構築し、ここに至っては一般人に全てを託すしかないというのは、失態という言葉も生温いからだ。

 

『それと、機密を隠して一般人をテスターにするくらいなら、端から堂々と引き込めばよかったのに。当然守秘義務契約やらなんやらは前提として……まぁそこの糞眼鏡二佐のマイナス信用度だと桐ケ谷君、全力で逃げたでしょうけど』

「……菊岡二佐、このプロジェクトを貴官が主導した時点で破綻は決定的だったのでは?」

「一佐はこちら側ではないのかな……?」

「所属が同じだからと言って、立ち位置まで貴官と同じと思われるのは甚だ心外なのですが」

「大の大人の男が泣きそうになる事言わないでくれるかい?」

 

 一切傷を負っていないのに死にそうな菊岡が近くの椅子に力なく腰かけた。流石に憐れだと加藤ですら思うものの、やってきた事が事だけに擁護は一切できない。

 

「それで、あの……桜川さん?」

『何かしら神代博士』

「貴女の息子さんや桐ケ谷君達は、アンダーワールドに住む命が()()だと考えてると思いますか?」

 

 問いかけに対して数秒、スピーカーから声が途絶えた。

 

『桐ケ谷君達……あえて言えばSAO帰還者は、その傾向があるように思うわ。彼らは自然に、AIですらそこにある命だと認識している節がある。うちの息子も特にそう扱う事に違和感を感じているわけじゃないし、桐ケ谷君の妹さんもうちの娘達もそれぞれの兄に倣ってる』

「だからこそ、彼らは……」

『ただ、詩乃ちゃんだけは違うわ』

「朝田さんが?」

『そこの糞眼鏡どもが主犯なのは当然だけど、ある意味その世界で生きてきた《人工フラクトライト》達のせいで息子が昏睡状態に陥ったわけでしょう? 桐ケ谷君や結城さんが一緒じゃなかったら詩乃ちゃん、フラクトライトを皆殺しにしてた可能性もあるわね』

 

 冗談ですよね、と凛子は言おうとしたが、口から出る事はなかった。スピーカー越しとはいえ、語られた言葉があまりにも本気であったから。

 思い返せば、朝田詩乃という少女はその深い愛情によって、愛する人を害した存在に対して牙を剥いている。菊岡にも、比嘉にも、誤解があったとはいえ凛子に対しても殺意を向けた。ならば()()()()()()()()()()()()()()()()が居た場合、スーパーアカウントの力を使って殺しにかかる可能性は存在する。

 

『そうでなくても、詩乃ちゃんがアンダーワールドに良い感情を持つ事は殆どない。あの子の仮想世界に対する最初の印象は()()()()()()()()()()()()()()()で、また奪われようとしている』

「それ、は……」

『神代博士に対して特に含む物は無いでしょうけど、まぁ()()()が目の前に現れたらどうなる事やら』

 

 話が逸れたわね、と咳払いを一つして、美沙は口を開いた。

 

『貴方達の所に賊が侵入して十五時間を過ぎたけど、未だに突入されていない理由が『人質の安全を優先する』って命令だっけ?』

「はい。誰も人質を取られてはいませんが、どうやらワタシ達が人質と見做されているようで」

『その命令をした上官、出てきた埃をばら撒いてやったからそろそろ首が挿げ替わるんじゃないかしら』

「「は?」」

 

 菊岡の眼鏡がずり落ち、加藤の口がポカーンと間抜けに開く。自衛隊で二人の上官と言えば将官クラスの人間である。そんな人物のスキャンダル……上層部がすぐに動かざるを得ないレベルの物を一日経たず見つけた相手に戦慄を覚える。

 ただ、迂闊にそれを問う事は出来ない。空気をあまり読まない比嘉ですら固く口を噤んでいれば、スピーカーからまだまだ言葉が聞こえてくる。

 

『それは良いとして、事ここに至って、フラクトライト研究について機密の半分以上は公になったと言って良いでしょう。糞眼鏡どもが魂と謳うそれが衆目を集めれば、うるさい所からの問い合わせなんかが殺到するでしょうね。自称人権団体やら、宗教団体もうるさいんじゃない?』

「そこまでの事になると?」

『だから、そこの糞眼鏡二人は逃がさない事をお勧めするわ。防波堤には最適だもの』

 

 え? という顔を菊岡と比嘉がした。

 

『この計画を主導した男と、メインの開発者。今後予想される様々な問い合わせに答えさせるには、最適でしょう?』

「い、いや、僕は……加藤一佐に現在全権はありますし……」

「あぁ、なるほど。そちらは了解しました」

「一佐!?」

 

 菊岡の叫びは無視され、スピーカーから声が流れる。

 

『さて、ここからはダメ出しじゃなくて取引と行きましょうか』

 

 ぞっとするほどに、修羅場を潜り抜けたであろう《魔女》の冷徹な声が響く。

 

「取引……」

『今からその施設に送り込む人員、無視なさい。受けるなら外……この場合は自衛隊の上層部と()()()()を片付けてあげる』

 

 どうする? と問われた内容は、まさに魔女との取引とも言えるものだった。

 

 

 

 

 

 

 現実世界へ帰還……いや、予想外の放逐というべき出来事を経て、ガブリエルはSTLの中で目を醒ました。ジェルベッドに横たわったままに、彼は自身が敗北した状況を整理する。

 

 あの三人が相手であれば、おそらく勝てていただろう。亜麻色の髪の少年を斬り捨て、暗黒将軍を斬り捨て、最後に戦闘力を失った青髪の男を斬り捨てて終わりだった。新たな乱入者による妨害さえなければ。

 それだけでなく、二人の内の少女の方には自分の力を弾かれたのだ。そこには興味が浮かぶが、あくまでアリスのついででしかない。

 

(しかし、私に敗れる事を強制するかのようなタイミングだったな……)

 

 大いなる運命の流れ、とも言うべき自分に対して干渉する見えざる力。ガブリエルが視えざる力で唯一存在すると考えている、自分を導く運命という力。それが敗北を招いたというのであれば、彼が導き出せる答えは一つしかない。

 

『ベクタなどと言う借り物ではなく、私自身でもう一度赴け……という事か』

 

 運命がそうせよというのならば、それに従おう。口の端に微かな冷笑を浮かべて、ジェルベッドから降りる。横を見れば既にダイブしていた三人の姿は無く、敗れた事が察せられた。その事に対して何かを思う事なく、ガブリエルは隣接するメインコントロール・ルームへのドアを開く。コンソールに向かっていた坊主頭の隊員であるクリッターが顔を上げ、緊張感の無い声で出迎えた。

 

『おつかれです、隊長。やられちまいましたねぇ』

『状況は?』

『アメリカ中からかき集めたプレイヤーは約四万、それは何とか投入しました』

『当初の予定では五万だったはずだが?』

『どうも、勘付いた相手に妨害されてましてね……』

『そうか。作戦に支障は?』

『ない、とは思いますよ。ただ不確定要素として、ラース側も同じ手段に出まして……』

 

 クリッターの言葉に片眉を吊り上げ、続きを促す。

 

『戦場に、日本からの大規模な接続が確認されました。数は千程度で、こっちはまだ一万以上残ってるんで殲滅は簡単でしょう』

『フム……』

 

 メインスクリーンを見れば、そこにはアンダーワールド南部の地形図が表示されている。《東の大門》から一直線に南へ伸び、×印で途切れている黒いラインが目に入り、これが暗黒神ベクタであったガブリエルの移動ログだろう。

 最南端に存在するシステム・コンソールまでは半分も来ていないが、アリスは乱入者や生き残った者と移動を開始しているだろうか。

 

『私が撃破されてどれ位経った?』

『十分程度ですね。しかし、後三十分程度で八時間前ですが』

『そうか。ならば千倍に戻すのは七時間前に変更して、撤収の準備は進めておけ。私はもう一度ダイブする』

『ダイブするって言っても、スーパーアカウントとハイアカウントはもう無いですよ?』

 

 尋ねるクリッターの横にあった紙片に、ガブリエルはボールペンでIDとパスワードを書き、それを渡した。

 

『日本の《ザ・シード連結体(ネクサス)》のポータルサイトにそのIDとパスを使ってログインして、セーブされてるキャラをアンダーワールドにコンバートしろ』

『どの程度のもんなんです?』

『一年以上は使っているものだ。不足はない』

『了解です。てかそれが出来るなら、ディオの奴とかにもやらせますか?』

 

 クリッターの提案に数秒思考して、ガブリエルは首を横に振った。

 

『やめておけ。人によっては『もう一人の自分』らしいからな』

『まぁ時間かけて作ったキャラがロストしたら発狂もんですからねぇ……』

 

 そう言う事だ。とガブリエルは踵を返してSTL室へと向かう。その表情には、歪んだ笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 千人のSAO生還者(サバイバー)

 彼、彼女達が集ったのは、エギルが送ったメールを見たからである。内容としてはユイがエギル達に説明したものと同じではあるが、そこに一文が付け加えられていた。

 

『そこで馬鹿が馬鹿して昏睡状態らしい。叩き起こしたい奴は可能な限り集合する事』

 

 そう書くエギルもエギルだが、集まった人数も人数であった。そうして放り込まれたのが戦場の只中であり、突然の事であっても生還者(サバイバー)達の対応は早かった。

 

「アスナァッ! あの鎧どもが敵か!? とりあえず斬っちまったけど」

「大丈夫! あの赤い鎧の騎士は敵よ!」

 

 よっしゃあ! とクラインが吼え、それに続くように数人の武者姿の男性が続いていく。SAOでも、ALOでも何度も顔を合わせた、クラインが結成したギルド《風林火山》のメンバー。

 

「みんな、装備ボロボロじゃない」

「リズ……」

「怪我は大丈夫ですか?」

「シリカ……その、この人達は皆」

「全員、コンバートして来たんだよ」

 

 シノンが言い辛そうに問いかけた事を答えたのはエギルだった。使わず、しかし消さないままだったSAOアカウントもあれば、ALOやGGO、他のゲームにコンバートした物もある。しかし全員に共通しているのは、人界側の高位アカウントではなく自分の分身にも等しいそのアカウントを使って、この世界にコンバートしてきた事。

 

「ありがとう……皆、ありがとう……!」

「水臭い事は言いっこなしよ!」

 

 頭を下げるアスナに、リズベットは快活に笑った。

 

「あたしたちだけじゃない。ここに来た皆、分かってる事がある」

「分かってる事……?」

「――…三年前、あのSAOから始まった何かが、今一つの答えを出そうとしているって事」

 

 真剣な声で、表情で、リズベットはユイに説明された事を自分なりに考えて出した結論を、言葉に乗せる。

 

「あたしたちや、アスナ、キリト……今眠りこけてるって聞いてるオーリも、多分ずっと、心の中で求めてた答え」

「涼も?」

 

 その言葉にシノンは疑問を、アスナは『あぁ』と声を漏らした。

 

「あたしたちがSAOに囚われた結果として」

「……その先に何が生まれてくるのか」

「その生まれてくるものが、答え?」

 

 続いて出たシノンの疑問にアスナは曖昧に頷いた。

 

「多分《フラクトライト》は切欠に過ぎないんだと思う。彼らが《A.L.I.C.E.》になって、更に進んだ時……」

「答えが現れるって言うの?」

「わかんないけどね。でも、あたしたちが生き抜いた世界(ソードアート・オンライン)から繋がってるって言うなら」

「無視はできない……か」

 

 眠っている彼もそうなのだろうか。シノンは数秒だけ考える。

 SAOに囚われた二年間を無意味だとは考えていないだろう。その二年間で仲間や親友と出会い、自分の中にある愛しい人への想いを自覚した。彼自身にとってはそれだけで良いだろう。

 しかし、SAOと言う物が現実世界へと齎した何かが時を超えて結実し、現れたとしたらどうするのかはシノンですら想像がつかない。そこまで考えてふと、ここにいないストレアの顔が思い浮かぶ。

 

 その瞬間に感じた感覚を表現できる言葉を、シノンは持たなかった。

 

 SAO(はじまり)より生まれ、フラクトライト(きっかけ)と出会い、《A.L.I.C.E.(げんかい)》を超えた存在。下手をすれば、アリスよりも答えに近い存在。

 

 その答えを導き出すために必要な最初の一歩を刻んだのは、一体誰だった?

 

「……ねぇ、アスナ」

「どうしたの? シノノン」

 

 

 

 ――…運命って、信じる?

 

 

 

 




Q:何でストレアが時穿剣を?


ストレア「一時預かりのつもりだけどねぇ。ぶっちゃけ筋目で言うならユージオかアリスに持たせるか、ファナティオの所まで持ってくべきなんだけど」
ユージオ「僕にはもう青薔薇の剣があるし、キリトみたいに二刀流は使えない」
アリス「私も同じ理由ですし、ファナティオ殿の所に持っていくにしても、申し訳ないけど余裕がありません」
キリト「だったら武器が無くなったストレアが持っとけ、という話。分類も群狼剣と同じ両手剣で、大きさも近いからそこまで感覚が食い違う事は無いだろうからな」
ストレア「今度は折らないようにしないとねぇ……」
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