四輪駆動のエンプレス   作:-ODN-

15 / 40
第15話:こんなことも、あろうかと

今回の勝負に使用するコースはいつもの部活動のコース。

火野からしてみればホームコースであり、有利にことを運べると算段している。

 

「今回の勝負、ルールをこちらで決めさせてもらってもいいかぃ?」

 

コースを一目みて金田が思案顔で提案をしかけてきた。

 

「ホームコースを使ってる分、こちらが有利だしな……いいぜ、条件飲んでやる」

「じゃぁ、6周勝負にしよう。大勝負だし、この小さなコースで3周じゃぁ盛り上がりに欠けるからねぇ」

「6……か、いいぜ、6周勝負!受けて立つ!」

「ふふ……」

 

2人のマシンがグリッドにつく。

火野は汗ばみ少し震えている。

対して金田は余裕の表情を見せている。

 

「今回ばっかりは、負けられないんだよ!!」

「ふふ……力んでるねぇ……」

 

「それでは行きます!レディ……ゴー!!」

 

少しフライング気味に火野の炎龍が前にでる。

 

「焦りすぎだよぅ……ふふ……」

「行けぇ!炎龍!!」

 

ホームコースでもあり、がっつりセッティングが出せている火野のファイヤードラゴンが飛ばしている。

しかし、その後ろをほとんど離れず食らいつく、金田のトライダガー。

 

「なんてスムーズな着地なんだよこいつ……走りに途切れ目を感じさせねぇ……」

「ふふ……でもボクのトライダガーわぁ……こんなもんじゃぁ、ないんだよぅ……」

 

3週目に入るとジリジリと追い上げるトライダガー。

 

「うそだろ、初めて走るコースなのに……」

「このトライダガーはどんなコースでもマルチにセッティングできるようにしてあるんだぁ……こんな初級のコースだったらノンブレ、ノーマスダンで行けるかもねぇ」

「くっそぅ、がんばれ、炎龍!!」

 

ストップ&ゴーが信条の炎龍が決して遅いわけじゃない。

このコースに合わせた、最高のセッティングの1つなはず。

ただそれ以上に、金田のマシンが……速い。

 

4週目後半、ついに並ばれる。

 

「ばか……な……」

「ふふ……さぁいけぇ!トライダガァ!」

 

炎龍をジリジリと引き離していく。

 

「なんでこんなに速い……んだよ……」

「キミのマシンが遅くなってるのさぁ……ライトとハイパーの差だよぅ……電池の消費量がライトの方が少ないのさぁ」

「!!?」

 

ライトダッシュモーターとハイパーダッシュモーターではたとえ同じ回転数でも、トルクと電池消費量が違う。

もちろんトルクはハイパーダッシュの方が上だが、このコースはバンクも少ない。

パワーを必要としないコースであればトルクより高速性がモノを言う。

しかも6周勝負にしたことによって、電池消費量が直接勝敗を分けることになったのだ。

 

「この手のコースでボクのライトダッシュに勝ちたいなら、ハイパーダッシュより上のモーターで勝負をかけないと……無理さぁ」

「……」

 

3馬身ほど差をつけて、金田の勝利。

 

「おつかれさぁん……残念だったねぇ……」

「ぐっ……う……すまない、みんな……」

「ながないでぐだざい部長……仕方ないでござるよ、ごんなマシン反則でずぅ……」

「泣いても喚いても無駄さぁ……部室はもらってい……」

 

「ちょっと待って!!!」

 

みかどが工場の入り口で仁王立ちしていた。

背後から差し込む西日のせいか、後光が差しているように見える。

 

「みか……ど……?」

「あなた、金田家のお坊ちゃんでしょ!?たしかこの工場跡地の権利を欲しがってたわよね?」

「……あぁぁ、皇さんちの娘さんだったかぁ。うん、ここはこの街の一等地、前から欲しかったよぅ。でもお父上が亡くなられた後の騒動で保険屋に入られて、手に入れられなかったなぁ」

「じゃ、うちの工場の権利書、売ってあげる」

「……へぇ、いいのかいぃ?」

「いいわよ、ただし、あたしのマシンに勝てたらね!!」

「なぁるほどねぇ、代わりに負けたら部室を返せ、ってことだろぅ……?」

「みかど!無理だやめろっ、こいつのトライダガー、バケモンだ……俺たちのためにお前の父ちゃんの工場まで取られちまったら……オレ……」

「大丈夫、心配しないで。こんなこともあろうかと、あたしもマシンをセッティングしてきたんだから」

「お前のマシンも速いけど……それでも……」

「さぁやるのかいぃ……それとも怖気ついたかなぁ?」

「やるわ」

「権利書だぞぅ?」

「二言はない」

「こいつぅ、いい根性だぁ……目がいいねぇ。負けてもそいつらみたいに喚いたりしないだろうなぁ」

「……あんたなんかに、負けない!!!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。