四輪駆動のエンプレス   作:-ODN-

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第16話:駆け抜けろ、エンペラー

「で、キミのマシンわぁ……?」

「こいつよ!!」

 

みかどの超帝。

少しフロント周りが変わったように見えるが、部員達には見慣れたマシンである。

金田は馬鹿にしたようにふふんと嗤った。

 

「ふぅん……見た感じ普通のMS、プラボディでボクに勝つ……ん?しかもそれはセンチネルポールかぃ……ボクを舐めてるのかなぁ……?」

「別に舐めてなんかいないよ。この3日間、がんばってセッティングしたんだから。誰にだって負けないから。そっちこそ、舐めてんじゃないわよ」

「ふふ……まぁいいさ、そんなマシンでボクのトライダガーに勝てるわけが」

「つべこべ言ってないで早くグリッドについてよ」

「ふふ……勝ち気だねぇ……嫌いじゃないよぅ」

 

各車スタートグリッドにつく。

 

「じゃぁ……いぢにづいで……レディ……ゴォォォーーー!!」

 

木暮の泣き叫ぶようなスターターコール。

ほぼ同時のスタートだが、みかどのマシンが速い。

 

「マッハダッシュかなぁ……いや違うねぇ、これはハイパーかなぁ?いい音してるぅ……」

「みかどのハイパーは30000回転以上回ってるモーターだぜ」

「でもこんな速度でぇ……ドラゴンバックから着地1枚ストレートわぁ……入るのかなぁ……?」

「……!?」

 

ドラゴンバックの入り口に差し掛かるが、ほとんど減速をしない。

 

「ばか、ブレーキ弱すぎだ、ぶっ飛んで……」

 

がんっ……すたん!

 

しかしマシンは小さく飛び、しっかりコース内に収まっている。

 

「……なんだぁ、いま何が起こったぁ……?」

「しかもレーンに触れたように見えたのに着地がめちゃくちゃスムーズになってる……いままでの直線番長、暴れ馬な超帝じゃねぇみたいだ……みかど、おまえ、なにをどうしたんだっ!?」

 

「フレキシブルなんちゃら」

 

「……え?」

「フレキシブル化してみました」

「……この短期間で作ったのか?」

「うん。あ、ナツさんに教えてもらいながらだけどね」

「おまえってやつぁあ……ほんとにすごいやつだな!!」

「へへへ、なんだかんだで整備工の父の血を継いでるのかな」

 

金田は超帝の動きを見て首を傾げている。

 

「この速度で……コーナーも速いねぇ……いったいどうなってるんだぁ、これわぁ……?」

「このフレキ、ちょっとゆるく作り過ぎちゃってて、ぐにゃぐにゃなの。マシンそのものにある程度の角度をつけられるから、コーナーでステアリングが切れるような挙動をしてるみたい」

「そんなフレキ聞いたことないぞぅ……」

「お兄さんが残してくれたマシンなんだもん!あんたなんかに負けるわけないよ!」

「くぅっ……」

 

ドラゴンバックも小さくスムーズに飛んでいる。

 

「この動き、なんなんだ?この速度でこんなジャンプ出来るわけない!?」

「フロントアンダーガードとリアステーの長さを上手く合わせると、スロープの入り口でフロントが当たってフロント重心が上になる。そうすると、リアステーが強く地面に当たる。その反動で……ドラゴンバックの頂点に差し掛かる前に、この子はジャンプしているの」

 

ジャンプの始動が速く、登坂最高点手前ですでに浮いている、ということになる。

全員が唖然としていた。

 

「そんなことできるのか?俺たち何年もミニ四駆やってるけど、知らなかったぞ」

「これはこういちさんに聞いたの。ただセッティングが難しくって、速度とマシンのセッティングが完璧に合ってないとこの動きにはならないんだって」

「それを……お前……」

「なんか偶然できちゃった♪」

「「「ずこーーーっ!」」」

 

お約束の効果音で勢いよくコケるミニ四駆部員。

 

「できちゃったじゃねぇよ、妊娠を告げる奥さんかよ、めでてぇなぁ!!」

「くすくす♪でもあたしもびっくりしたんだよ!すごく速かったから」

 

超帝はそのままトライダガーを1mほど突き放したまま、あっさりとゴール。

 

「はい、あたしの勝ちぃー♪」

 

余裕の勝利宣言に唖然とする部員たち。

それが予想外だったのは部員たちだけではなかった。

 

「……ボクのトライダガーがぁ……負けるわけ……びえぇぇーーーん!!」

 

金田は敗北を知るや否や、ぺたんと座り込んで子供のように泣きじゃくってしまった。

大号泣の金田の側に駆け寄る副会長。

 

「さぁ、会長、帰りましょう」

「がおるぅぅ……ボクのトライダガーがぁ……びぇぇーん」

「よしよし、泣かないで、ほら、チーンして」

「ぶびぃーーー」

 

副会長が慈母のごとく少年の涙を拭いている。

学校で真剣を振りかざしている様子からはまるで想像できない姿だ。

彼女は少年の背中を優しくトントンと叩きながら部員達に向きなおる。

その表情からはいつもの険しさが消えていた。

 

「今日のところはこれにておいとまします。後日、生徒会室にいらしてください」

「刀で切られたりせんだろうな……」

「ご安心を。みなさまには感謝をしているくらいです」

「へ……?」

「それでは失礼します。ささ、会長、行きますよ」

「ぴぇぇ……すんすん……がおるぅぅ……」

「はいはい、ほら泣かないで……」

 

工場から出て行く2人を呆然と見送る。

 

「いったいなんだったんだ、あれ」

「うん、でもまぁとにかく……あたし、勝ったよ♪」

「……いやったぁぁぁーーーーありがとう、みかどーーー!!」

「女神や……いや、女神のエンペラー様でござる……」

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