四輪駆動のエンプレス   作:-ODN-

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第17話:ミニ四駆、仲間たち

「しっかしびっくりしたなぁ……みかどの超帝があんなに速くなるなんて。初めて会ったときは、お宝のコース脇で涙目だったのによぉ……」

 

火野は昨日の勝負の興奮が冷めやらず、授業にも身が入らない。

 

「俺が負けたことなんかどうだっていい感じだ……もっとあいつが速くなっていくとこを見て行きたいぜ……それで……いつか兄ちゃんにも会わせてやるんだ」

 

放課後。

ミニ四駆部全員で生徒会室に向かう。

 

「たのもー!」

「……どうぞ。」

 

対応が以前と違う。

ドアを開けて入ると、穏やかな顔をした副会長と、相変わらずニコニコした会長が待っていた。

金田じゅんやという人間は負けを根に持つようなことはしないらしい。

 

「やぁ、昨日はすまなかったねぇ。醜態をさらしてしまったみたいでぇ」

「気にすんなよ。で、今日は部の登録の件だよな」

「うん、申請も通ったからこれからは部活動として認められた、ということになるぞぉ」

「やったぁ♪」

「ただしぃ……部費がどぉしても降りなかったぁ……上からはおもちゃで遊んでいる部活としか見られてないからなぁ」

「やっぱり難しいか……でも登録出来ただけでありがてぇ。これで大会に出場できるからな」

 

相変わらず部費が出ないことは痛いが、部として承認されるだけでも活動の幅は広がるのだ。

それだけでも良しとせねばなるまい。

 

「たださぁ、これだとボクの気がすまないんだよねぇ……1つ提案なんだけどさぁ、ボクが個人的にミニ四駆部のスポンサーになる、ってのはどうだろぅ?」

「……はぁ?そんなこと……いいのかよ!?」

「かまわないよぅ……遠征費やパーツ代、領収書持って来てくれれば落としておくよぉ」

「いくらまで?」

「ミニ四駆代くらいなら、いくらでも、だなぁ」

 

学生の身でスポンサーとは、やはり金田は桁を外してのお坊ちゃんらしい。

しかし過度の親切には必ず裏があるということは、小さな子供にもわかることだ。

 

「マジかよ、どうしてそんなこと?」

「……ただ1つだけ条件をつけさせてくれよぅ。そのぉ……なんだぁ……」

「会長、しっかり」

 

横から副会長が小さくエールを送る。心なしか楽しそうに見える。

金田の視線が泳いだ。

 

「あぁ、うん、その、工場の設備をぉ……ボクにも使わせてくれないかぁ?」

 

そんなこと?とみかどは訝しむ。

ミニ四駆仲間が増えることは喜ばしいことなのだが。

 

「いいですけど、もちろん。でも会長んちってもっといいものありそう?」

「いやぁ、家でミニ四駆触ってるとママがうるさいんだよぅ……いままでもこの部屋で作ってたんだぁ。だから、たまにでいいから、使わせてもらえるとありがたいなぁ」

「ぜんぜんウェルカムです。会長さんにもいろいろ教えてもらいたいです。あのマシン、ほんとにすごかったです」

「いやぁ、キミのマシンのほうがすごかったんだぞぉ。ボクも小学生のころからやってるけど、あんな速さのマシンは見たことないなぁ」

「でも会長さんがしっかりコース向けのセッティング出していたら、たぶん負けてます」

「たらればだけどねぇ。でも次は負けないぞぉ?」

「はい!よろしくお願いいたします!」

 

生徒会室を出た後、一緒に外に出た副会長が声をかけてきた。

いつものキリッとした雰囲気に戻っている。

 

「この度はいろいろ迷惑をかけたな」

「え、いえいえ迷惑だなんて」

「会長、ミニ四駆が大好きなんだが、家では遊べず、校内でもこのようなポジションで……キミ達が羨ましかったんだと思う」

「なるほどな。あいつはあいつで大変なんだな」

「なので、もし部活に会長が行ったときは……」

「わかってるよ。俺たちは仲間だぜ。同じ学校のレーサーだ」

「……ありがたい」

「こちらこそ、部費、ほんと助かる」

 

旧校舎音楽室にて、部員全員が安堵の表情を浮かべていた。

だが同時に疲れ切ってもいるようだ。

 

「はぁーーーよかったぜーーー」

「一時はどうなるかと思ったでござる……部長が負けたときなんか、目の前が真っ暗になっちゃったし」

「みかどさんが居てくれなかったら……いまの僕たちはないのである」

「いやいや、でも最初から嫌な予感してたし、準備しといてよかったです」

「つぅかいつのまに、だよ。ナツと連絡取り合ってたのか?」

「うん、こないだお会いしたとき連絡先を交換してたので、相談してみたの。そうしたら商美の部室に呼ばれて。フレキを勧められたんだ」

「なるほどな……」

「でも最初、作り方教えてもらった時はビビったです……シャーシを切断するんだもん」

「フレキはそういうとこ含めて、初心者向けじゃないっつぅの。ナツのやつ、無茶させやがって……兄ちゃんのマシンが壊れたらどうするんだ……」

「ナツさんは悪くないです。ほんと丁寧に教えてもらって……悪く言っちゃダメです」

 

少しだけキリッとした表情で答えるみかど。

 

「そうか、ならいいんだ。そうだ、お礼も兼ねて工場でお祝い会でもやろうぜ!」

「それいいですね!じゃお祝いのセッティングしちゃいます♪」

 

次の日曜。

皇工場にはミニ四駆部の部員達と、京商のナツとこういち、生徒会長と副会長が集まっていた。

 

「えー、ごほん。この度は町田宮高校でのミニ四駆部発足、祝賀会に参加い……」

「みんなぁー!かんぷぅわぁぁーーーい!」」

「「「「「かんぱーい!!」」」」」

「おぃこら俺の挨拶がま……」

「まぁまぁ堅いこと言わずに♪」

 

オレンジジュース片手にみかどに話しかけるナツ。

側から見ればガールズトークでもしているような雰囲気だが、会話の中心はミニ四駆である。

 

「みかど!どうだった?マシンの調子?」

「うん、ほんとありがとうナツさん!めちゃくちゃ速くってびっくりだったよ!」

「ふふふ、よかったわ。でもまだあのマシンは速くなるわよ。いろいろ研究してみてね」

「はい!」

 

火野とこういちは部屋の角にお菓子を置きながら。

 

「とりあえず……おめでとう」

「なんだ、お前も祝ってくれるのか?」

「まぁライバル校がなくなるのも困りますし、成果があったようでなにより」

「ふん、おまえのこった、ナツに協力、なんだろうけどな」

「ふ……あなたこそどうなんですか?」

「どうもこうもねぇよ……勝手にしろい……」

「ふっ……」

 

生徒会長のところには水戸木暮コンビが集っていた。

 

「会長さんのトレサス見せてください!」

「ください!」

「なんだぁ、2人そろってぇ」

「トレサスを触ったことないので……勉強させていただきたいのでござる」

「僕もです、どんな作りなのか、興味あるのであります!」

「いいぞぅ……これがボクのトライダガぁだぁ」

「間近で見ると……ほんとすごいでござる……」

「こんな隙間に……サスが埋め込めるのですか……」

「ボクのオリジナルのトレーリングユニットだからねぇ。ネット探してもレシピは出てこないぞぉ」

「「すごい……」」

 

1人微笑ましく会長を眺めている副会長をみかどが覗き込むように話しかける。

 

「副会長さん♪今日は刀持ってないんですね」

「あ、あたりまえだろ、屋外で帯刀したら通報されるじゃないか」

「え……あれって……本物なんですか……?」

「当然だ。心身を鍛えるために。学校からも許可をもらっている」

「(校内での帯刀は許されるのか)まぁとにかく……副会長は会長のこと、好きなんですか?」

「ごぶっ!……ななななななにを言ってらっしゃるのです!そんな好きとか嫌いとか……そんな……」

「くすくす♪耳まで真っ赤ですよー♪もぅ、女の子だなぁー」

 

2時間ほど経過したころ、火野が再度、マイクを握る。

 

「やぁい、野郎ども!!ここに集まったのはレーサー達だよな!」

「「「「「そうでーす」」」」」

「ここには、新コースもある!!」

「「「「「ありまーす」」」」」

「当然、ミニ四駆は持ってきただろうな?」

「「「「「もってまーす」」」」」

「ではーーー!第一回町田宮高校ミニ四駆部杯、チキチキ!マシーン猛レースを始めまーーーす!!」

「「「「「いえぇーーーい!!!」」」」」

 

ミニ四駆がこんなに楽しいのは。

もちろん作る楽しみ、走らせる楽しみ。

競う楽しみもある。

だけど、ほんとうに楽しいのは、みんなと。

仲間と一緒だから、なのだろう。

 

(お兄さんの残してくれたミニ四駆で、こんなにいっぱいの友達ができたよ。早く……お兄さんにも会って、いろいろ報告したいなぁ。)

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