「諦めたら、そこで試合終了ですよ……?」
あ、安西先生ぇ!!
雲一つ無い青空、風になびく綺麗な緑色をした木々、暦の上ではもう夏だから少しばかり暑い
だが今日はいい天気だ。そろそろ梅雨に入るだろうか?それにしても気持ちがいい
ポケットからiPodを取り出してイヤホンを耳に差し込む
「♪〜♪♪〜〜〜♪〜」
好きな音楽をかけながら俺、要 弥生《かなめ やよい》は学校から帰宅するために門をくぐる
「おーい要!今帰りかぁ?」
クラスメイトであり友人に話しかけられた
「ん?おー!俺は今日も一人寂しくお帰りだぜー」
「そうかー!部活に入る気はねえのかぁ?」
「二年の今の時期から部活なんて始められっかよ」
俺は今高校二年生だ。こんな時期に部活なんか入ってみろ、何しに入ってきたんだ?みたいな視線でハリネズミにされちまう
「そっかぁ〜、残念だな。お前は運動できるし、勉強もそこそこできるし、いい人材なんだけどなぁ……。お前ならヒーローになれるのによ」
ヒーロー、か……非常に魅力的なお誘いなんだよなぁ
俺はまあ、なんていうか、高校二年にもなってとか笑われるかもしれないが、
「ん〜…………ま、俺のことは諦めてくれや。じゃあな、また明日」
「おう、また明日!」
俺は友人に手を振って別れる。……………あれ?あいつ部活入ってたっけ?…………まあいいか、取り敢えず帰ろう
「ただいま〜」
家の扉を開けて俺は帰ったことを告げる。しかし声は帰ってこない、別に一人暮らししてるってわけじゃないんだぜ?ただ俺の両親はどっちも仕事に出てんだ
自分の部屋に荷物を置いて制服から普段着へと着替える。黒のパーカーに半ズボン。パーカーは長袖だから暑くないか?と聞かれるがお気に入りなんだからしょうがない
「今日はどれを読もうかな♪」
本棚に並ぶラノベを眺め、どれを読もうか迷う。本棚にあるラノベは全部一度は読んでいるのだが、面白いので何回も読みたくなるのは必然というものじゃないかね?ふむ………これがいいか、いや、これにしようかな?……………決めた!
「君に決めた!」
何処ぞの少年のように声を上げながらラノベを引き抜く。そしてリビングへと向かい、ソファに腰掛け読み始めた
「…………………ん、もうこんな時間か」
読み終えたラノベを机に起き、時計を見る。……19時前か、親からの連絡は無いから多分今日も帰りは遅いんだろう
「飯、作るか」
俺は台所へ移動し、冷蔵庫から材料を取り出す。親の帰りが遅いのなんてもう何時もの事だから料理はできるんだよね。今日は和風に焼き魚にしよう、大根おろしも必要だよね、やっぱ
少年料理中………
「いただきます」
よし、なかなか良い味付けになってる。煮物もいい感じだな
『prrrrrr!prrrrrr!』
「ん……はいはい、ちょっとお待ちよぉ〜」
電話が鳴った。俺は箸を置いて受話器を取る
「はいもしもし、要です」
父さんか?それとも母さんかな?
「どうも私、八雲 紫《やくも ゆかり》という者ですわ」
突然後ろから声が聞こえる。いや、受話器からも聞こえている
俺は慌てて後ろを振り返る。そこには見た目は十代前半、服装はフリルの付いたドレス………であってんのか?と、ナイトキャップのような物を被っている。金髪ロングの少女だった。右手には受話器、左手には折り畳まれた傘を持ち胡散臭い笑みを浮かべている
…………!?てか受話器から伸びてる線を辿って行くと空間に裂け目があるんですけど!?これは夢かなにかですか!?
「驚いてるわね。………あ、この焼き魚美味しいわ、レモン汁がよく効いてる。この煮物も、藍といい勝負ね」
驚く俺をよそに勝手に椅子に座り勝手に飯を食べ始める、八雲 紫と名乗った少女。てかそれ俺の魚なんですけど、煮物も俺のなんすけど
そもそもどうやって現れた。鍵を閉め忘れていたのか?いや、そんなはずはない。そしてあの裂け目はなんだ?あんな現象見たこともない。そして何よりこいつは
「ふふ、必死に考えているようね」
また胡散臭い笑みを浮かべる八雲 紫
「てめぇ……なにもんだ。どうやって入ってきた」
俺は受話器を置いて問いかける
「あら、女性に向かっててめぇだなんて。お姉さん悲しいわ、およよよ」
泣き真似を始める八雲 紫…………こいつ、うぜえ
「まあいいわ、質問に答えて差し上げましょう。まず私がどうやって入ってきたか、それは私が能力を使ったからよ。私の能力は"境界を操る程度の能力"」
「それで境界を弄くってうちに繋いだわけか」
「正解♪それでね、その能力でスキm「目的はなんだ」人の話はちゃんと聞くものよ?」
んなこたぁどうでもいい
「何が目的だ………って聞いてんだぜ」
俺はiPodを取り出しイヤホンを片耳だけ着け、音楽を流す。すると俺の体は淡い光に包まれた
「あら恐い。別に貴方に危害を加えるつもりはないのよ?ゆっくり座ってお話ししましょう」
呑気な奴だな、座ってまだ飯食ってやがる。………少し胡散臭いが、相手から敵意みたいなものは感じないから大丈夫かな
俺は八雲 紫の向かいの椅子を引き座る。だが一応警戒ということで能力は解かない
「ではまず最初に、貴方は自分の能力を理解しているかしら、要 弥生君?」
八雲 紫は胡散臭い笑みを消し、真剣味を帯びた顔でそう聞いてきた
「まあだいたい理解はしてるつもりだよ」
「そう、良かったら聞かせてもらえません?いつ貴方の能力が目覚めたのか」
「………………OK、わかった」
そして俺は話し始める
俺には昔から不思議な能力がある
それに気付いたのは小学……5年生の頃ぐらいだったか。ある事件で落ち込んでいた俺は、学校にも行かずずっと部屋の隅に蹲り、iPodで音楽を聴き続けていた
そんな日が続いたある日、俺は寝ていると急な寒気を感じた。寝る前は暑くて、涼しくなれと願わざるを得ない気温だったのに
最初は風邪でも引いたか?と思っていた。だけどそのわりには体は怠くないし熱っぽさもない。ではエアコンを付けっ放しだったか?いや違う、エアコンなんて付けてない
じゃあなんだ?そう思い俺は目を覚ました
そこには氷の世界が広がっていた
机、椅子、玩具さえ、何もかもが凍りついていた
俺は目を見開いた。眠気なんてすっ飛んだ。凍りついたその空間に、イヤホンから漏れる音楽だけが響く
頭が混乱する。なんで凍っている?どうやってこんなことを?誰が?
俺は必死に考えようとした。だがそれよりも寒い、ということだけが頭に浮かぶ
そしてそのまま時間は過ぎて行った
時間が過ぎると共に俺の体も凍り始め、今では動くことままならない
親は寝ているのだろう、叫んでも氷が邪魔してるのか助けにくる気配がない。凍りついてるのはこの部屋だけのようだ
…………ああ、俺はここで死ぬのか。いや、それでもいいかもしれない、元々俺はある事件で死ぬはずだったのだから
でも最後に、俺のお気に入りの曲を聴きたい
そう思い、残りの力を使ってイヤホンを握り、そして耳へ着けた。iPodをゆっくりと操作し、曲を選び、かける
この曲は、気持ちを暖かくしてくれる
そして俺はゆっくりと目を閉じた
「その後は何事も無く目を覚ました。でも夢だなんて思えなかった、感覚がはっきりしすぎていたからな。だから自分で色々と考えてみたんだよ、原因を」
「その原因とは?」
「………………音楽だった。俺はどうやら音楽………いや、音をあらゆるものに変換することができるらしい。さっきあんたが言ったように言うなら、差し詰め"音をあらゆるものに変換する程度の能力"、かな」
「やっぱりね、そうだと思ってたわ」
なんだ、知ってたのかよ。てかなんで知ってんだよ
「それで、話の中に出てきたある事件とはなに?」
「………………教えるつもりはねえ」
………話したくねえんだ
俺の表情から読み取ったのか八雲 紫はもう聞いてこなかった
「それで?もう終わりか。そんなことの為に不法侵入なんてしてきたわけじゃねえよなぁ?」
もしそうだったら即刻警察に突き出してやる
「もちろん違うわ。次の質問なのだけれど」
また質問か、ホントに警察呼んでやろうかな
「貴方を幻想郷に連れて行きたいのだけれど。いいかしら?勿論拒否権はないわ」
………………は?
「いやいやいや、ちょっと待て!幻想郷?どこだそれ!てか拒否権無いって、もはや質問でもねえよ!」
「幻想郷とは忘れられた存在が集まる場所よ」
「なんで俺がそんなとこに行かなきゃならねえんだ!!学校だってあるんだぞ!?」
「大丈夫、そこら辺はなんとかしておくから♪」
「どこが大丈夫なんだよ!」
「あぁ〜もう、うるさいわね。ほら、さっさと逝きなさい」
八雲 紫が扇子をバッと広げる。その瞬間に浮遊感に襲われた
「漢字違う!?って、おわぁぁぁぁぁぁ!!?」
落ちる!?落ちてる!!なんか裂け目に落ちてる!…………目玉ある!?
「覚えてろよこの野郎ぉぉぉぉ!!」
あいつは絶対泣かす!!
そして俺は裂け目の中を落ちて行くのだった
「紫様!こんなところにいたんですか!?早く戻ってくださいよ」
「ああ藍、ごめんなさいね。………そうだ、この煮物食べてみて?藍のといい勝負じゃないかしら」
「え?それでは一口…………む、この煮物は誰が?」
「さっき私が幻想郷に送った子が作ったのよ」
「そうですか。一度会ってみたいですね」
「すぐ会えると思うわ。彼の歓迎も兼ねて宴会するつもりだもの♪」
「それは楽しみです」
「ええ、きっと貴女も彼を気に入ると思うわ」
さて、あの子は幻想郷で何を見て、何を思うのかしらね?
……………楽しみだわ
「うおぉぉぉぉぉぐべっ!!……………っつつ、痛ぇ……。ここ、何処だ?」
感想、批評、ドンとこいです!
……………あ、やっぱ批評は優しめに……