「………………」
目を覚ますと、知らない天井が目に入る
「?」
ここ、どこだ?なんで俺はこんな所にいるんだ
「……霊夢、魔理沙?」
横に霊夢と魔理沙が椅子に座って寝ている。俺は周りを見渡すと、そこは病院の様に感じられた
「…………っつ!」
体を起こした俺に急に走った痛み。俺は自分の体を見てみる
そこには包帯が巻かれていた
「そうか、思い出した」
俺はあの緑髪と戦って………倒れたんだ。その後霊夢と魔理沙が来て俺をここまで連れて来てくれたんだな
「……………行かないと」
あの緑髪のとこへ行かないと……
ベッドから降りた俺は霊夢と魔理沙を起こさない様に部屋を出る
「どこへ行くの?」
「!………ってぇ〜」
いきなり現れた人に驚いた。少し体が痛む
「貴方、丸2日も寝ていたのよ?とても重症だった。今でもまだ痛むはずだけど?」
「それでも行かないと駄目なんだよ。あんた見た所ここのナースか?治療代は帰ったら払うからよ」
そう言って横を通り過ぎる
「…………駄目よ」
「あ?」
「駄目だと、そう言っているのよ。要 弥生君」
女の人は俺の前まで踵を返し、そして俺と目を合わせる
………なんで俺の名前を知ってんだ
「……………私は八意 永琳《やごころ えいりん》。ここで薬剤師をしているわ」
女の人は名前を名乗った
「……それで?俺を止める理由がどこにあるんだ?」
「私は薬剤師で在ると共に医者なの。そしてあの二人に貴方のことを依頼された」
ああ、成る程。だから俺の名前を知ってたわけだな
「医者が患者を、それも入院レベルの患者が無理をしに行くのをみすみす見逃がすわけないでしょ?」
「なんで無理だとわかる?」
「あんな重症でここに運び込まれる人ですもの。ろくに戦ったことさえ無いのは明白だわ」
確かにろくに戦ったことは無いな。だけどそれと無理をしに行く、というのは直接関係は無い
「まあ、止まる気はねえけどな」
そしてそのまま永琳を素通りする
「……………はぁ、しょうがないわ」
「あん?」
なんだ、諦めてくれたか?
「どうしても、と言うならしょうがないわ。力付くでも貴方を止める」
「おいおい、仮にも俺は患者なんだろ?良いのかよ」
「患者を逃がす方がうちの沽券に関わるわ。それは私としても良くないから………だからせめて抵抗はしてくれないと助かるんだけど?なに、心配しないで。痛くても後でちゃんと治してあげるから」
永琳が一気に力を解放する。それに気付いた俺はiPodを取り出した
「へぇ、抵抗する気満々ね。戦意喪失させようと思ったのだけれど」
「お生憎、霊夢が怒った時の方が断然恐いんでね」
俺も、自分の霊力を全開にする。霊夢や魔理沙が起きて来そうだが…………いや、そうでもないみたいだな。熟睡してるんだろ
「………あら、それで全力なの?」
「悪りいかよ」
「よくそれであの風見 幽香の所へ行こうと思ったわね」
…………風見 幽香?ああ、緑髪のことか
「あいつのとこへ行って、聞かなきゃならねえことがあんだよ」
「殺されるかもしれないのに?」
「そん時ゃ全力で逃げらぁ」
だけどきっと大丈夫だ。殺される、ってんならあの時殺されてるだろ
「貴方、何故そこまでするの?」
「そこまで?あんたの言うそこまで、ってのがどこまでのことかは知らねえが……」
理由は一つに決まってんだろ
「俺にだって意地がある」
「意地?」
「そう、意地だ。とてもちっちゃくて、くだらねぇ意地だ」
俺の目の前で誰かが困ってるなら助けたい
俺の目の前で誰かが悲しんでいるのなら喜ばせたい
「俺の周りは、常に笑顔で満たされていたい。それは風見 幽香も同んなじだ。…………いや、風見 幽香だけじゃなくて、霊夢も魔理沙も、他の皆も、俺に関わった全員が笑顔でいて欲しいんだ」
「なんだ、ただの偽善じゃない」
「偽善だろうが善だろうが、そんなの関係ねえんだよ。俺がそう願うから、俺がそうなる様にするんだ」
「……………貴方のその行動で悲しむ人もいるのよ?霊夢や魔理沙だって、ずっと貴方の心配していたわ」
「でも、俺が行動しなきゃ幽香は何時迄も瞳に悲しさを宿したままだ。無茶苦茶かもしれないが、多少は目を瞑らなきゃならない場所もある」
「ホント、滅茶苦茶ね」
「悪りいな、滅茶苦茶で」
俺は永琳に言いたいことは言った。後は永琳がどうするか、だ。このまま行かせてくれないと本当に力付くで永琳を押し退けなければいけない。そうなると今の俺じゃとても難しいどころか不可能だ
………どうする?
「………………いいわ、行きなさい」
「え?」
「行きなさい、と言ったの」
どうやら行かせてくれるみたいだ
「ホントか?…………ありがとな、永琳」
「礼を言われる程じゃないわ。あとこれ持って行きなさい」
永琳が小瓶を投げて渡す
「これは?」
「痛み止めよ。痛み、ずっと我慢してるんでしょ?」
「…………ありがと」
痛み止めを口に放り込む
「ここは"迷いの竹林"と呼ばれる場所にあるわ。そろそろ案内してくれる人が来る時間だから……貴方は外にいなさい」
案内してくれる人が来る時間?なんだ、毎日来てんのか?
「ああ、何から何までありがとな」
「お礼ってのはそう何度も言うものじゃ無いわよ?」
「そっか、すまん………またな、永琳」
「ええ、また」
そして永琳と別れて外へと向かう。広いため少し迷いそうになったがなんとか外へと出れた
「…………ここで待ってればいいか」
俺は永琳の言う案内の人を待つことにした
「あら?貴方………」
後ろから声をかけられる
「ん?」
振り返ると黒い長髪の女の子がいた
「…………あんた、案内してくれる人か?」
「案内?なんのことよ。それより貴方、2日前くらいにここに運び込まれた人よね」
なんだ、案内の人じゃないのか
「ああ、そうだけど?」
「これからどこに行くの?」
「ちょっと向日葵畑まで」
「ふぅん、生きて帰れたらいいわね」
「全くだな」
「「あはははは!」」
何故か意気が合うな
「ところで、私の部屋でゲームでもしない?」
「さっき行くとこあるっつったろうが」
てかゲームなんてあんのかよ。幻想郷には無いと思ってたんだが……
「生きて帰れたら、の話よ」
「そうか、じゃあ楽しみに待っとけよ。俺は要 弥生、あんたは?」
「蓬莱山 輝夜《ほうらいさん かぐや》よ」
「なあ輝夜、案内の人はまだ来ないのか?」
早く行きたいんだが……
「多分そろそろ来ると思うわ「輝夜!今日も来たぞ!!」ほらね」
竹林の方から声が聞こえた。そして長い白髪の髪に幾つものリボンを着けている女の子が現れる
「あらあら、懲りずに今日も来たのね。毎回追い返されるだけなのに」
「何言ってんだ。私は負けた覚えなんて無いぞ?」
…………何やら険悪な雰囲気だ。取り敢えずこの人が案内人ってことでいいんだよな?
「えーと、ちょっといいか?案内してくれる人だよな?」
「え?あ、お前さっきの………案内?どういうことだ?」
ん?なんか急にたどたどしくなったな。人見知りなのか?
「この竹林から出たいんだ。永琳に聞いたらそろそろ案内してくれる人が来る時間だ、って聞いて」
「そうなのか」
「ああ、俺は要 弥生。あんたは?」
「藤原 妹紅《ふじわらのもこう》だ」
ふじわらの?苗字と名前の間にのが付いてるのか、長生きしてるのか?
「それじゃあ、案内頼めるか?」
「わかった。輝夜、今日は勘弁しといてやる」
ちょ、お前。それ悪役の台詞
「もう来なくていいわよ〜。あ、弥生は来てもいいのよ?」
「ふんっ」
「おう、またな輝夜」
「またねー」
輝夜とも別れ妹紅に連れられて竹林の中を歩く
「………………」
………会話が無い。これはひじょうに暇だ
「なあ、妹紅。妹紅はなんで竹林の地形を把握してるんだ?」
「筍をよく採りに来てるからだ」
「じゃあ、輝夜とはどんな関係なんだ?」
「殺し合う関係だ」
……………なに?
「殺し合うって………、なんでだよ」
「色々あるんだ。それに私達は不老不死だから殺しても死なない」
マジか。いや、それでも殺し合う関係ってのは………
「寂しいな」
「…………?」
「いや、なんでもねえよ。どれくらい時間が掛かるんだ?」
「人里まではそれ程かからない。あと5分ってところだ」
あと5分か………
「「…………」」
俺達は無言で歩き続ける。どうならあちらさんは会話を広げる気が無いらしい、全く会話が続かん
「あ、見えてきた」
人里が見えてきた。どうやら竹林は抜けたみたいだ
「こんなに早く着くなんてな、実際5分より早かったんじゃないか?なあ、妹紅」
俺は妹紅に聞いてみる
「……………ん?」
だが返事が無かった。なので妹紅の方へ目をやる
妹紅は既に竹林の中へと歩き出していた
…………おいおい、何も無しに行っちまうのかよ
「おーい!妹紅!」
大声で妹紅を呼ぶ。妹紅は立ち止まった
「またな!今度は案内じゃなくて、お茶でも飲みながら話そうぜ!」
「……………」
妹紅は何も言わなかったが片手を上げて竹林へと入って行った
………あれは、OKってことでいいんだよな?
「それじゃあ、行きますか」
そして俺は、幽香のいる向日葵畑へと飛んだ
「到着、と」
向日葵畑の近くへ降り立つ。ここの向日葵はやっぱ綺麗だ
「…………ん?」
向日葵畑の横に向日葵とは違う花畑があった。最初来た時は気付かなかったが………
「ま、何にせよ綺麗だな」
そう言って俺は歩き出す。幽香を捜すために
「だよなぁ、綺麗だよなここの花畑。わかってるじゃないか少年」
「…………あん?」
だがそんな時、誰かに声をかけられた
「ああ、いきなり驚かせてすまんな」
そこには、黒い浴衣を着た男が立っていた
「…………あんた、誰だ?」
「俺か?俺はな」
男は少し溜めて言った
「立花 栄春。幽霊だ」
「……………うぇい?」
突拍子な答えに、俺はそんな声を出してしまうのだった
長くなってしまった。本当なら一話で幽香とエンカウントだったのに……