太陽が真上へと上がっている昼時、私は博麗神社の鳥居を潜る
「ふぅ………随分と久しぶりね」
どこかの誰かさんがろくに何もしなかったせいでここに来ること………て言うか、そもそも話すこと自体が一年ぶりになるような。まるで今まで時が止まっていたかのようなそんな気がするわ。咲夜が何かしたのかしらと思うくらい
…………少し、変な電波を拾ったようね。最近は新作の人形作りや魔法の研究で忙しかったから、色々と疲れてるのかも
縁側でゆっくりしながらお茶でも啜らせてもらおうかな
「霊夢〜?弥生。いるかしら?」
私は賽銭箱の前でまずこの神社の巫女と、その居候の名前を呼んだ
返答は無し。聞こえてないのかしら?もしかしたら外出してるのかもしれないわね。魔理沙もいないし
「ま、どうせ人里で買い物してるだけでしょう。ここで待ってればすぐ帰ってくるわ」
そう思い賽銭箱の前へ腰掛け、私は二人と、ついでにいるかもしれない魔理沙を待つことにした
「はっ、はっ、はっ、はっ…………!」
真上から太陽が照らす中、俺はろくに整備もされていない山道を走っていた
何故か?それはだな………
「待ちなさい!侵入者!!」
「剣を持った奴に追いかけられてんのに、待てと言われて待つ馬鹿はいねぇよ!」
俺が絶賛追いかけられ中だからだよ!!
何故こうなった?何がいけなかった?もう一度振り返ってみよう
あれは俺達、妖怪の山観光ツアーの一行が妖怪の山前まで来た時だった
俺、霊夢、魔理沙、幽香は妖怪の山入り口で華扇と待ち合わせをしていた
「お、あれ華扇じゃね?おーい!」
見覚えのあるお団子を頭につけたシルエットを見つけ俺は手を振った。あちらも気付いたようで、手を振り返してくれる
「来たわね、皆……………って、あなたは」
華扇が幽香を見て目を丸くする。そう言えば華扇にメンバーが追加されたことを言ってなかったな。てか、伝える手段がねぇのな
「何かしら?お山の仙人さん?」
お互い知ってるようだ。そうなら話は早い
「俺の友達なんだ。今日は一緒にこの山を観光した後、皆で幽香の家に行く予定なんだぜ。華扇も来るか?」
「い、いえ……遠慮しとくわ。なんて言うか、凄い妖怪と友達なのね」
凄い妖怪?あぁ、確かに幽香は大妖怪だっけか
「最初は……て言ってもつい最近殺されかけたけど、今じゃ仲直りしたしな」
「そうよ。もう弥生に敵意なんて向けないわ。ね?」
「なー」
イエスイエス。シェイクハンズ
「そ、そう………」
信じられない、みたいな目してるけど………ま、きっとそのうち仲良くなるだろう
幽香と握手をした後後ろで空気になりかけている霊夢と魔理沙に目を向ける。何やらジト目で見て来てるが、どうかしたのか?………まあいい
「霊夢、魔理沙。二人は妖怪の山によく来たりすんの?」
俺が質問すると魔理沙が空に目線をやった後、少し考え込むようにして答える
「前回来た時はいつだったかな〜………多分にとりに時計の修理してもらってからは来てないかもしれないぜ」
「にとり?」
なんか知らない名前が出てきたぞ。にとりって言えば……思いつくのはとあるなんか、鳩サブレみたいな形したマークの店しか出てこないんだが
「河童のことだぜ。確か宴会に来てたと思うんだが」
「あ〜………俺さ、ゆかりん達と幽々子と妖夢とか……ぐらいしか挨拶してないんだよ。後は縁側でチビチビ酒慣らしてたからな。遠目から見てたけど」
今思えばあれって俺の歓迎宴会だよな?中に入っていかなかった俺が言うのもアレだけどさ
「あんたが宴会の音頭とる時には殆どできあがってたし、正確に覚えてる奴も少ないかもね」
「マジか……」
霊夢の一言に若干傷付く………折角大声で言ったのに、しかも俺の歓迎宴会なのに覚えられてないってどうなのよ。二回目だけど、中に入っていかなかった俺も悪いけどさ
しかし、河童か………河童と言えば頭に皿を乗せた緑色の生物だな。緑色の生物………記憶にねぇなぁ。緑髪なら幽香なんだけど……
「なに?」
「いんや、別に………霊夢はどうだ?俺が来る前は、ここよく来てた?」
「いや、別に。大きな用事や異変でもなければ来たりしないわよ」
確かに霊夢は面倒くさがりだもんな。ここ数週間でそれはよくわかってるぜ
しかし大きな用事か…あぁ、そう言えばこの山にある神社の奴らが異変を起こしたとか言ってたな
「よっし!早速入るか!!」
意気揚々と山の中へダッシュ!後ろでなんか言ってるが聞こえねぇぜハッハッハッ!!知ってるか?爺ちゃん婆ちゃんが若い頃は野山を駆け巡ってたんだってよ!!俺も野山を駆け巡って爺ちゃんになった時にそう言えるようになるんだ!(キラキラした目)
「そしてなんやかんやあって今に至ると…………」
一体何が悪かったんだ……?
しかし、この山に入って走り回ってただけで追い掛けられるとか………そう言えばこの妖怪の山には天狗がいるとか聞いてるんだけど、もしかしてあれが天狗?いやいや、そんなわけ無いよな。だって鼻長く無いもん。顔赤くないもん。どちらかと言うと犬じゃね?耳と尻尾あるし。美少女だし
てかしつけぇよあいつ。隠れても見つかるし、なんか能力持ちか?
取り敢えず話聞いてみっか
「はぁいストォォォォップ!!ワンころ!ステイステイ!」
「だ、誰がワンころですか!!」
あ、止まった。空中で止まって、剣構えてるよ怖え
「取り敢えず話聞けって。確かに俺はこの山に入ったよ?でもだからって剣振り回して襲い掛かってくることないじゃねぇか。あれだよ?そんなんだったらアレだよ?…………どれだよ!」
「知りませんよ!」
「なんで知らねぇんだよ!!」
「逆になんで知ってると思ったんですか!?」
「それこそ知るかっ!!」
「ええぇえぇぇぇ!?」
全くなんて奴だ。何も知らないじゃないか
「取り敢えずもういいからこの山案内してくんない?あ、あと俺の連れも捜してほしいんだ。あいつら迷子になっちゃって」
「よく今の流れでそんな話に持って行けましたね…………」
それが俺クオリティー
しっかし、霊夢も魔理沙も幽香も華扇も、皆揃って迷子だなんてしょうがないなぁ。全く、俺がいないと駄目なんだな。しょうがない奴らだよ
「しかし、他にも侵入者が………ちょっとそこ動かないでくださいね。今確かめますから」
そう言って目の前の空飛ぶわんわんは何やら集中しだしたようだ。やっぱこいつ能力持ちか。恐らく………遠いとこまで見通せる程度の能力とか?成る程、千里眼ってやつですかぱねぇな
「…………はぁ!?なんですかこの異色混合混ざり合いすぎて最早真っ黒な団体は!?」
「いや、団体って程大人数では来てねぇよ」
「いい、いや、確かに大人数ではないですけど!なんですかこれ!貴方が連れて来たんですか!?」
「連れて来たんじゃねえよ、一緒に来たんだよ」
「同じことです!」
いやいや、違うだろ
「何を驚いてんのか知らんが、取り敢えず連れてってくんね?ほら、見たんなら一緒にいたろ。華扇………この山の仙人がさ。なんか聞いてないのか?」
「確かにいましたが………成る程、貴方方でしたか。確かに聞いています」
お、良かった良かった。ちゃんと話しは通ってるのね。通ってなかったらどうなってたんだろう、俺捕まってたのかな?嫌だぜこの歳でムショに入んのわよぉ。そもそもこいつ警察なのかな………やっべ、俺タメ口きいちゃったよ。まあいっか!
「散々追い掛けましてしまい失礼しました」
逆に謝られちゃったよ
「いいよ別に。いやぁ俺もなんかごめんね?その上案内までしてくれるなんてホント頭が上がんねぇよ」
「案外図々しいですね………」
「いやぁ……」
「褒めてません。………はぁ、わかりました案内します。飛べますね?」
「勿論さ!」
さぁって、合流しますか