転生ボンボン珍道中 作:りんりつ
って、いっしゅんみかじめにみえるよね
「すまんな唯我くん、手間をかけさせた」
「アッ、イエ、お気になさらず」
僭越ながらお伺いしたいのですが、そちらの黒いボロ切れ(オブラートに包んだ表現)は……?
「ん?いや、見ての通り慶だが。生身にはなにもしてないんだが、さっきからずっとこの調子でな」
「64分割された……もうお婿に行けない……」
「アステロイドか」
思わず突っ込んだ僕の声が聞こえているのかいないのか、もじゃもじゃしたボロ切れ……もとい学生服に身を包んだ隊長殿がグスグスと情けない声を上げた。
「物理は今回補講無いし、赤点とったっていいじゃん忍田さんの鬼……」
「せめて二桁は取れとも言ってあっただろう。数学にしたって寺島や風間に見てもらってのあの点数……まあいい、キリがないな」
「説教終わり!!?」
「そういう所だ慶」
ばっと輝かせた顔を上げた隊長殿が再び沈む(物理)。いや、今の拳骨ドゴッって音しましたけど……?
「大丈夫かなぁ、これ……」
坊ちゃんフィルターも外れ素で呟いた僕は、ハァと軽く溜息をついた。
無事徒歩で本部への帰還を果たした僕は、ボーダーから支給された携帯電話に届いたメールの指示に従い、本部長室へと訪れていた。なんかあんまり変な物が無いまともな職場だぁ……外務・営業室ってば時々妙な物が転がってるから、余計にそう感じる。そこそこ値が張りそうなウィスキーやワインが持ち込まれていることについてはもう言及を諦めたが、鍵付きの戸棚に仕舞われた黒光りする謎の物体達に関しての疑念はつきない。あっ、これはハンドガン型のトリガーのモデル?えーと、その……すごいですね……。うん、あの人の何が苦手って、態とブツを僕に発見させる所である。
その至極真っ当な本部長室でしたことは、精々が軽い自己紹介と防衛任務のシフト擦り合わせについてである。年末決済デスマーチではない。『まあ邪魔にはならない』との判定をありがたく頂いた僕は、どうやら隊長殿のお眼鏡に叶ったらしい。元より幽霊部員、ならぬ幽霊隊員として名義を貸すという約束だったので、まあその扱いで結構である。
なんて呑気にしていたのが悪かったのだろうか。
「後の問題は新設するランク戦についてだが……」
「ランク戦?」
模擬戦のことじゃねぇの?、と首を傾げる隊長殿に対し、僕は電撃でも受けたように飛び上がった。そういえばあったな、そんなの。決算書類で見た気がする。
現在行われているランク戦は、隊長殿が言った通り模擬戦のようなものだ。各員に与えられたポイントを奪い合い、得意とするトリガーに貯めていく形式。基本が個人同士、一対一の対戦であり、ときたま三つ巴になることもあるがあくまで個人単位で行われる。
ちなみに先日書類を見た時からの大きな変動が無ければ、少なくとも隊長殿は6000を超えたポイントを『孤月』にて所持していた筈。基本最初に配布されるポイントは1000ポイントと考えると、まさしく変態的な数の勝利を積み上げてきた訳である。
一方新設されるランク戦というのは、固定隊を組む者が増えてきたために生まれたニーズに応える『団体戦』である。繰り返す、『団体戦』である。しかも基地内にて生放送される。wow、それなんて公開処刑。僕には関係ないし、既存の技術だけで安価に行える催しだし、今までだと実戦で重要になってくる連携が疎かになってる面もあるし、やっぱり『お祭り』には学生中心の隊員の意欲は上がるだろうし、なにより僕には関係ないしと安易に判子を押したツケが回ってきた。
「おい、慶、前に説明しただろう」
「ぼ、ぼぼぼぼ、僕は当然辞退させてもらいますよ???素人に寄ってたかって晒し上げにするつもりですか???」
「うーん、一、二回の欠員ならともかく、ランク戦自体を、というのは難しいと思うが」
ましてや戦闘員が二人だからなぁ、と言いながらあり得ないくらいに隊長殿の頬を伸ばす本部長。痛みに喘ぐ抗議の声は聞き入れられそうにない。
「いふぁい!いふぁいっへひほははん!!」
「せめてもう一人隊員がいれば…まあ言っても仕方のないことなんだが」
「ほんふぉひ!ふひ、ほひはうはは!!」
物憂げに発されたその言葉に、僕はピン!と豆電気が光る様を思い浮かべた。
「なるほど、もう一人隊員がいればいいんですね?」
幸い記念すべき初ランク戦が行われるまで一ヵ月は猶予がある。人権団体の手配はもう少し待っていいかもしれない。
そろそろ提出日が近づいてきた学校の課題を始めとする今月中にこなすべき仕事のリストを脳内に書き出した僕は、その最後尾に新たな文字を加え入れた。
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「酷いじゃないか唯我君、本部長派に鞍替えするつもりかい?」
「なんのお話です???」
「いやなに、先日君が人気のない本部長室から出てきたと聞いてね」
「誘拐をそうと知っていながら見逃した場合って、幇助犯扱いになりましたっけ。少なくとも僕はそうしますね」
「あぁ、その件か」
「一切悪びれない!!!」
これだから大人は!!!!
唐沢さんは結構主人公を可愛がってます。打てば響くし、軽く虐めても罪悪感が沸かない丁度いいウザさだし、頭の回転はそこそこ速いし、なにより水を吸うスポンジ並みに交渉スキルが成長してくので半ば弟子扱い。子供らしくない難儀な子供とも思ってる。
主人公は唐沢さんをなんか虐めてくる人だと思ってます。