転生ボンボン珍道中 作:りんりつ
ガンナー合同演習…と言っても、確立され始めたスナイパーのそれとは違い、実質実験のようなものである。つまり実戦に生きるかと聞かれれば、そうでもない。とはいえ一応義務は義務なので、出来る限り出たい所存だ。トリガー技術の進歩は戦力増強に直結するし。
ボーダーのトリガーは元々近界民の技術を流用して汎用型に落とし込んだ物なので、銃のような複雑な構造のトリガーはその調整が難しい。スナイパーの場合は運用方だの人員だの技術だのがまだ追いついていないのでともかくとして、自由度を増したポジションであるシューターと切り離されたガンナーは、その影響を諸に受けるのだ。
例えば僕が愛用している散弾銃は、未だ調整が行われている。僕はテンパった時にぶっ放せば大体の敵は死ぬこのトリガーが大好きなのだが、如何せん漏れなく使用者が死ぬという唯一にして最大の問題点がある為、結構開発室には通い詰めだったりもする。
アタッカー用トリガー・孤月なんかは理想的な構造を極めたシンプルなトリガーなので、弄っちゃうのは逆によろしくないようだが。故にアタッカーの戦闘力は使い手の技量に比例し、結果として隊長殿みたいな53万の怪物が生まれるのである。最近はオプショントリガーとかいう、孤月の機能を拡張するようなトリガーが開発されているらしい。正に鬼に金棒。
閑話休題。
「あれ、唯我くんじゃん。お久〜」
「ひぇっ」
メーデーメーデー。最高警戒対象確認。撤退を推奨。
開けたばかりのシミュレーションルームの扉を閉めようとした瞬間、ガッと反対側の取っ手が掴まれる。だよね、知ってた。
「ちょちょちょ!?いきなり閉めることなくない!?おれなんかしたっけ??」
「ごめんなさいごめんなさい見逃して下さいお願いします」
「やめて!!外聞が!!悪い!!!」
半開きの扉がグイッと開かれ、そのまま中に引き釣り込まれる。バタン!と扉が閉まる音を聞きながら、僕は暗澹たる気分で真っ白な天井を見上げた。爺、ここまで育ててくれたのにごめんなさい。コンクリ詰になって僕が見つかっても、どうか悲しまないで……。
「お前の中でおれの評価どうなってんの!?ヤクザか何か!?」
「つ、ついに心の声まで読めるようになったんですか……?」
「普通に口から出てたけど!?」
ゼェゼェ荒く息を吐く青年と、ぺったり床に尻をついてカタカタ震える僕。うーん惨事。
「一つ言わせてもらえるなら、ヤクザと迅さんだったら迅さんの方が恐いです」
「お前神経太いのか細いのか良くわかんないよね」
「怯えもしますし逃げもしますが、僕は自分があるがままに生きたいので」
「その格好じゃなかったらきっとかっこよかった」
ほら、と差し伸ばされた手をたっぷり5秒見つめたあと、僕は怖々とその手を握って立ち上がる。とりあえず直ぐには殺されなさそうだ。
「そ、それで、なんの御用でしょうか」
「警戒されてるなぁ……たまたま会ったんだよ、たまたま」
「そうですね、『たまたま』僕にあったんですよね」
「あー……」
青年……自称実力派エリート・迅悠一はパチクリと目を瞬かせて、それから考えるように息を吐く。僕はその、軽い言動の隙間に垣間見える何かが苦手だ。だって怖いもん。
「お前、馬鹿っぽいけど結構賢いよね」
「なんで僕ディスられてるんですか???」
「褒めてる褒めてる」
そんな賢い唯我くんにアドバイス、と前置きが置かれて。
「新入隊員の演習場見に行ってみるといいよ。お眼鏡に叶う子が居るかもね」
「お眼鏡…?僕の戦闘能力クソ雑魚なこと知ってて言ってます?」
「でも太刀川さんに紹介するのに、テキトーな子は連れて行けないでしょ?」
「もう話回ってるんですか」
「いや、これから忍田さんに聞く予定……」
主語と繋ぎの言葉がなさ過ぎてなに言ってんのか分からない感じの会話だが、何を言っているのかが分かるのが不思議。まあ、それもこれも全て。
「って、おれのサイドエフェクトが言ってる」
この一言で片付いてしまうのが彼だ。
サイドエフェクトとは、高いトリオン能力を持つ人間に稀に発現する特殊能力である……らしい。というのも、ここら辺の面に関してはあまりにサンプルが少な過ぎ、また発現する能力も多方面に渡るため、まだまだ研究が進んでいないのだ。
取り敢えず言えるのは、あくまでサイドエフェクトは人間の能力の延長線上のものだということ。 その、筈なのだが。
「……迅さん本当に人間ですか?」
「人間だけど!?」
いや、人間の能力のどこをどう強化したら『未来視』なんてトンデモ能力が生まれるのか。なんとなく状況を見て先読みする位なら誰でも出来るが、この人のサイドエフェクトは『知らないこと』を『知る』ことが出来るのである。どうしてそぉなるの?訳が分からないよ。それにこの人何千じゃ足りない未来を見てる筈だし、いくら人間の脳の寿命は肉体の数倍だといっても、使いすぎると海馬とか不味いんじゃ……アー知らない知らない。
そういうのを考えすぎると世界の心理に触れちゃう感じがするので、賢い唯我くんはそこで思考を停止します。こういう系統に関しては『前』に軽く齧ったくらいだし、ソースも覚えてないし、まあ、ともかくそこは重要じゃないのだ。
新入隊員の、演習場。ふむ、青田買いという奴だろうか。
「…助言、ありがとうございます。お陰で回避できそうです」
「いや、それは無理だけど」
「はい?」
「何がどうあってもランク戦には出るっぽいけど」
「はい???」
「それじゃ、演習頑張れ少年よ。太刀川さんによろしく言っといて」
?????………??!?!??
「はー!?!?!!?」
ヒラリ、と手を振って去っていくその背中に、僕は思い切り叫び声を投げつけた。
実力派エリート
ライバルの隊が結成される未来が見えたのでちょっかいをかけに来た。主人公は妙に聡いから扱い難いけど、直接指示すると素直に(ビビって)従ってくれるので割と会いにくる。その度に主人公が泣く。主人公の『ヒーロー好き好き病』もなんとなく把握してるが、理解はイマイチできない模様。
主人公
アイデアロールとか読解力が異常に高い。迅さん(未来視)とか唐沢さん(同じくアイデアロールが高い)とか父上(やべー)とかと話してる時の会話は、側からだと完全に意味不明に聞こえる。察しの良さも商売には大切。
迅さんはヒーローじゃない。多分、もっと別な、、、まあいっか