不破さんがやっぱ主人公で、ようやっと序盤のカッコいい唯阿さんが帰ってきて、1000%社長は自業自得というか……こっからどんどん狂っていってしまうんでしょうか?あと辞表「これが わたしの」の演出は普通に笑っちゃいました笑
今回は初の10000字超え回です!
それでは、どうぞ!
マンモスマギアから逃走し始めて数十分。
「……はぁ、ここでなら少しの間隠れられそうだな」
廃工場の二階にあるそこそこ広い倉庫の中、変身を解除した俺は壁に背中をつけ思わずため息を吐く。一先ずの安地を確保できた。ここでなら幾らか時間を稼げるだろう。……問題はその後なんだが……。
「……先程から疑問に思っていたのですが…お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「…どうぞ」
そんな問題山積みの状況に落ち込んでいる俺にワズは遠慮なく質問し、俺はそれに力無く返事を返す。
「ーー何故この廃工場から出ないのですか? 最初に私がお伝えした安全なコース通り進んでいただければ、今頃間違いなくこの廃工場からは出られていました。またこの廃工場から外に出た場合、あなたの生存確率は飛躍的に高まっていた筈です」
「……決まってんだろそんなの? 俺が外出たらマギアも追って来て廃工場から出ちまうからだよ…」
(本当はそんなこと御構い無しに逃げ出したかったんだが……しゃあねぇわな)
ワズの質問に俺は渋々答える。
廃工場は結構狭い。外に出た方が無事逃げられる確率が遥かに高いのはその通りだろう。でもマギアに追われている今の状態で廃工場を出るとまぁ間違いなくマギアも付いてくる。そうなるとマギアが外に出る=被害が出る可能性が増す……マズイ事態に繋がってしまうかもしれないわけだ。
天津さんとの約束でマギアの存在は出来るだけ世間にバラしたくない…だから人目の全くない
ーーというかそろそろ聞いていいか?
「ーーそろそろ時間の問題、か。…なぁお前、俺に何か用があって来たんだろ? ならその用さっさと済ませて早くここから出ろよ」
「ーー…………」
(何だよそのリアクション…!?)
ワズは俺の言葉に何故か沈黙する。
いや待て。
今の俺の台詞のどこにそんな反応する部分が?
…………ん? あ、もしかして、
「あーマギアなら俺に任せろ。本音を言うと痛いし嫌だけど、お前が逃げるくらいの時間稼ぎはしてやれる」
マギアの存在を気にしてんのか?
そう思い口を開くとワズは僅かに目を閉じ、暫し思考した後に懐に手を入れ何かを取り出した。
「私は是之助社長の命令で、これを天本様に渡しに参りました」
「! それ、プログライズキーかっ!?」
ワズが懐から取り出したカセットテープのような代物。それは紛うことなきプログライズキーだった。
俺はワズの手にあるその黄色のプログライズキーに驚きつつ、どうして飛電さんがこれを俺に?と疑問に思い首を傾げた。その動きを見たワズは俺の疑問を察知して言う。
「是之助社長はこれは今は天本様が持っていた方が有効活用してくれるだろう、と」
「…そりゃ飛電さんに感謝しなきゃな」
飛電さん…! あ、ありがてぇ!
ワンチャンこれで勝つる!
つうかナイスタイミング過ぎんだろワズ。
来てくれて本当にありがとう。
さっきは「何で居んのお前ッ!?」とか半ギレで言って悪かった。
我ながら手の平くるっくるだなぁ、と思いつつ俺はワズの手にあるプログライズキーに手を伸ばし掴んだ。これがあればもしかしたらあのマギアにも………………? えっ??
「あの、ワズさん…?」
ーーマジで何で?(真顔)
プログライズキーを持つワズの手に込められた半端ない力によって、俺がどれだけ引っ張ってもプログライズキーは全然取れない、ビクともしない……いや何で? ワズお前それ渡しにきたって今言ったろ? え、言ったよな?
一分一秒が惜しい状況の中で起こった理解不能な出来事を前に、俺は戸惑いを隠せなかった。
「…お前、これ俺に渡しに来たんじゃないのか……?」
「…………」
プログライズキーを掴んだ手を一旦引っ込め俺は思わず問うた。
何故か頑なにプログライズキーを離そうとせず、しかも何かを思考し始めたらしく「ピーーピーー」と思考音を出して黙ったワズ……あの聞こえてますー? おーーい?
「……私にはわかりません」
「?」
わかりません、とは?
ヒューマギアらしからぬ脈絡のない発言。
俺は続くワズの言葉を待った。
「このプログライズキーは…是之助社長と飛電インテリジェンスの皆様が衛星ゼアを用い始めて作成することに成功したーー皆様の努力の結晶です。おいそれと渡していい物では決して……勿論、是之助社長の意思に反するつもりは私には一切ありません」
「……」
「貴方なら有効活用してくれる、是之助社長はそう言いました。ですが私にはわかりません。本当にこれを貴方に渡していいのか。貴方がこれに値する人物なのか……」
(こいつ…もしかしてもうシンギュラリティに……?)
合理的じゃないワズの思いに俺は既視感を覚える。
シンギュラリティに達したヒューマギア。一般的なヒューマギアなら受けた命令には忠実に従う…そこにヒューマギア自身の意思など普通は関与しない筈だ。
ワズの思いを簡単に要約すると…つまりはお前の事がまだよくわからんから是之助社長の命令でもみんなが頑張って作った最初のプログライズキーを渡したくない、ってところか?
…どう考えても自我あるじゃねーか……。
(ワズはもうシンギュラリティに達してる…? 今日俺が初めて会った時のワズは良くも悪くも機械っぽかった……きっかけは何だ?)
思い悩むワズの姿は、耳に装着してあるヒューマギア特有の青いデバイスを取ればどこから見ても人間のように見える。俺は俯くワズから視線を外し一旦立つ。俺の事が分からないからプログライズキーを渡したくない……じゃあどうする? 今からワズに自己紹介でもするか?
「ーー!」
(まだちゃんと居るなぁ……マギア化してもやっぱ元はヒューマギア。俺たちがまだ廃工場の中に居るって分かってる…)
倉庫の出入口の扉から顔を少し出し、外の様子を伺えばマギアが俺とワズを捜索するために階段を上がってきていた。どうやら余裕はなさそうだ扉から素早く離れ、俺はワズに振り返り指示した。
残念だが自己紹介なんてしてる暇はなさそうだ。
「ワズ、悪いが思い悩んでる時間はなさそうだ」
「……畏まりました。ではーー」
俺の言葉を聞いたワズは顔を上げると手に持っていたプログライズキーをこちらに差し出してくる。
(……?)
それを見た俺はシンプルにこう思った。
何してんのお前?と。
「ーー何してんだ? とっととこっから逃げろ」
「……えっ?」
「『えっ?』じゃねーよ。さっき言ったろ、マギアは任せろって」
「……このプログライズキーを使うのではないのですか?」
「はっ? そもそも俺はお前が何で急にそれを差し出して来たのかがわからねぇんだけど……」
何これコミュニケーションエラー?
待ってマジで意味不明過ぎる。
一体何が起ことる?!
……あ、そゆことか(高速理解)
どうやらワズは俺の「思い悩んでいる時間はなさそうだ」という言葉を「時間ねぇからはよプログライズキー寄越せ」と解釈したらしい。プログライズキーを差し出してきたが…別にそんなつもりないからな?
「はぁー……別に時間ないからプログライズキー寄越せなんて言ってねぇよ。早くこっから逃げろって言ってんだ」
「ですが、今の貴方はあのマギアに対する打開策を持ち合わせていません。もしかすればこのプログライズキーを使えばーー」
「ーー打開策に成り得るって? まぁそうかもな。『もしかしたら』打開策に成り得るかもしんねぇな……でもお前は俺にそれを渡したくないんだろ? だったら、俺はお前から無理矢理プログライズキーを奪うなんてことしないっての」
「! ……」
また俯くワズを見て「ちょっと口調荒かったか…?」と反省しつつ俺は短く謝罪した後に俺なりの意見をワズに告げた。
「その、また思い悩ませちまったなら……すまん。
あー…えっとな……これは俺の個人的な意見なんだけどさ」
「……?」
「嫌なら別にやんなくてもいいんじゃねーか? お前が俺にプログライズキーを渡せって言う飛電さんの『命令』と、俺にプログライズキーを渡したくっていう自分の『思い』の狭間で思い悩んでんなら……俺がお前の立場だったら自分の『思い』をとるな。そっちの方が気楽だし。それに根拠は皆無だけど飛電さんならお前が自分の『思い』を優先したって知っても、気を悪くしたりなんてしないだろうさ」
「で、ですが……」
それを聞いたワズはまた「ピーー」という音を立て思考を始める。やべぇ……もしかしなくても余計に悩ませちまったか? …っとそろそろ来るか。
「まぁどうするかは…ワズ、お前次第だ」
【ショットライザー!】
「ーー先に言っとくわ。お前がどんな選択しても、俺は別にお前を恨んだりはしねぇからな」
片手に持ったショットライザーの取り付けられたバックル、ベルトを腰に巻いた俺は後ろにいるワズに一方的にそう言い倉庫から出るために出入口の扉に向かう。その時、
「天本様! ーー貴方はどうして戦うのですか?」
「……」
ーー思わず足が止まった。
「バイタルサインをチェックして初めて分かりました。貴方は戦うことに対して明確に恐怖を感じている。今こうしてマギアから隠れている間の声音にも不安や焦りが多く含まれています……。だから尚更わかりません。貴方はどうしてそんな思いをしてまで戦うのですか?」
ワズは俺にそう問いかける。
その声は今日初めて会った時の機械らしいものとは違い、俺にはどこか感情が込もっているようなものに聞こえた。
「どうして戦う、か……」
戦うのはそりゃ怖い。
怖くて怖くて仕方がない。
一歩間違えれば死ぬ、そんな状況に直面した経験なんぞ今までの人生で一度たりともなかったから。でも、仮面ライダーの力を渡されて…マギアの存在を知っちまって……何時もなら保身に走って見て見ぬ振りするくせに何故かあの時、俺は馬鹿みたいに「やるしかない!」なんて思ってしまって。…滅のようなヤツがいることも知って。
気付けば俺は本音を口にしていた。
「さぁな、俺も今探してる途中だ」
家族なら兎も角、命を懸けてまで「赤の他人」を助ける義理はないと「仮面ライダー」になった今でも未だに思う。ただーー自分が誰かの役に立っている……その事実を最近になって、どこか嬉しく感じている俺がいる。
ま、天津さんが言ってた正義感云々はまだ認めてないけどな?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『さぁな、俺も今探してる途中だ』
彼から返ってきた、予想だにしていなかった「答え」にワズは更に『天本太陽』という人間が理解できなくなった。
太陽が倉庫を出た後、一人ワズは目を閉じて考える。
「ーー天本様、貴方は……」
「理由」を明確に持たず戦う人間など存在しない、そう合理的なヒューマギアらしい結論にワズは今まで至っていた。そして、それは正しいと判断していた。
「どうしてそこまで強いのでしょう…?」
「理由」を明確に持たず戦える『天本太陽』という人間の精神的な強さに疑問を抱かずにはいられないワズ。だがもうその場にワズの疑問に答えてくれる人物は居ない。
『遂に、遂に完成した…! 皆の力で成し遂げたんだ!』
『おめでとうございます。是之助社長』
『あぁ、ワズもありがとう。みんな! 本当によくやってくれた!』
ワズはメモリーに記録されたあの日「飛電インテリジェンス」最初のプログライズキーが完成した時の映像を見直す。
嬉しそうに笑う是之助社長。
感動する社員、歓喜する社員、号泣する社員、安堵する社員、大笑いする社員……反応は人それぞれだったがあの時あの場にいた計画に尽力した全員が喜びを分かち合い、達成感に満ちた「笑顔」を浮かべていたのだ。
「…………」
是之助社長と社員達の努力を、あの瞬間を知っているワズは皆の努力の結晶であるプログライズキーを『天本太陽』という些か情報不足な人間にあっさりと渡そうとした是之助の命令に僅かに困惑した。そして、初めてヒューマギアらしからぬ思い……明確に言語化することのできない「引っかかり」を覚えた。
『俺がお前の立場だったら自分の『思い』をとるな。そっちの方が気楽だし』
『お前がどんな選択しても、俺は別にお前を恨んだりはしねぇからな』
「…………やはり私には、理解できません」
ぽつりと呟いたワズは立ち上がると、閉ざしていた目をゆっくりと開き走り出す。ーーその手にはプログライズキーが固く握られていた。
▲△▲
「おら、こっちだ!」
「! 対象を発見、殺すッ!」
「あっーーぶねぇ!?」
ショットライザーのトリガーを引きマギアの背中に一発当て、間一髪でマギアの攻撃を回避することに成功した俺は急ぎ倉庫から離れマギアを引きつける。
やっぱ生身でのショットライザー反動やばいな…何度撃っても手が痺れちまう。最初みたいに反動で吹っ飛びはしなくなったけどな?
「人間は絶滅させる!」
「うおッ!? っっ……」
走る俺にマギアはその巨大な拳を地面に叩きつける。瞬間、地面には大きなヒビが走り一時的な震動起こる。それは生身の人間が耐えられるものではなく俺はバランスを崩し倒れる。生身の人間にも容赦ねーな…まぁ人間絶滅させたいんだから当たり前か。
やっぱ変身、するしかないか…!
「! ……」
『私からの基本的なアドバイスになりますが、短時間の間での再変身は最大限避けてください。君の持つショットライザーが試作品だからという理由もありますが、何より再変身は負担が大きい』
俺はプログライズキーを懐から取り出し一瞬考える。頭の中ではある日の天津さんのアドバイスを思い出していた。負担、負担か……あー今でも十分キツイけど、再変身したら今より痛くて苦しくてキツイんだろうな。ちょっと前に「筋肉痛になる未来」が分かって憂鬱になったけど……もっとヤバイかもしんねー。でも、
『ストロング!』
「やるしかねぇよなあッ…!」
【オーソライズ!】
【Kamen Rider. Kamen Rider.】
迷ってる暇なんてない。
こんな時は即断即決、勢いでやってやんよ!
こんなとこで死にたくねぇからなぁ!
左手に持ったショットライザーに右手に持ったプログライズキーを勢いよく装填、展開。
「変身…!」
「ふんッ!」
素早く左手に持ったショットライザーを右手に持ち替えトリガーを引く。発射された弾丸をマギアは腕で真っ向から弾き返す。
「ッ…! ーーらあぁあッ!」
『アメイジングヘラクレス!』
【With mighty horn like pincers that flip the opponent helpless.】
くッッそ
返ってきた弾丸が俺の体に直撃しアーマーが装着される。途端にいつもは感じない痛みが体に走るが俺は気合で堪える。
「絶対ぶっ倒す! はあぁ!」
「人間はーー」
「うるせぇ、もう聞き飽きてんだよバカ!」
どうせ「殺す」とか何か物騒な台詞吐きやがるんだろ? 一々怖いんだよ黙ってろおらっ! マギアの言葉をガン無視して殴り掛かる俺。やっぱり硬いし大してダメージは無さそうだ。
「おらぁ!」
「くっ……! オオオオオオ!」
「! 当たるかよっ!」
(見ろ、見ろ、見ろ! そんで避けろっ!)
それと再変身してわかった。
今、再変身して負担のある状態じゃあ持久戦は無理だ。更に言えば今の状態でマギアの攻撃をまともに受けるのはマズイ。
タックルの構えをとったマギアを見て次の動きを読み避ける。
(はは…ここまでギリギリの戦闘はもしかしたら初か? ったく、くっそツライなぁ! さっさと終わらせてぇなあッ!!)
「悪いが、いい加減ぶっ倒れろ!」
「ーー人間は、皆殺しッ!!」
「ぐがッ!?」
(やばッーー!!)
ジリジリと削れていく体力に集中力に俺は焦りを感じながら、何度も何度もパンチを繰り出す。このまま押し続ければ…! だがマギアはそんな俺のパンチのタイミングを掴み、俺が拳を振るう瞬間に俺の腹に重い一撃を噛ます。見る暇もなく避けられる筈がなく、俺は吹き飛び地面を転がる。
……マジでヤバい、かもしんない…。
(……やっぱ、マギアって…化物だわ)
最初からわかってはいたが、ここまでやられると改めて実感する。ただの人間が戦うなんて無謀な相手だわ……何で一般人の俺が命張ってこんな化物と戦ってんのか…いや選択したのは俺だけどさ…。
倒れた近くにあった壁に手を置き、自分の体に鞭打って立ち上がる。
自分の体のことは自分自身が一番よく分かる、なんてよく言うけど納得したわ……俺の体はまだ限界を迎えちゃいない。まだやれる。ここで「もう限界だ」「もう無理だ」とか分かればよかったな…そしたら俺は迷う事なく逃げれたっていうのに。
「まだ、やれるなら……仕方ないよなぁ……ッ」
(もう少し保ってくれよ……!)
ジリジリと距離を詰めてくるマギアを見据え俺は再び構え、
「ーー天本様!」
「! ワズ!? お前なんでーー」
ーーその時、横方から俺の名前を呼ぶ声がして。横に目を向ければそこには廃工場から無事に既に逃走したと思っていたワズの姿があった。
いやなんでまだ居んだよお前!?
俺が時間稼ぐ間に逃げろって言ったろ!
つうかこのタイミングでの登場はいかんでしょ!?
「邪魔をするなら、仲間でも容赦はしないッ!」
「! バカ野郎! 早く逃げろッ!」
ワズの声に反応したマギアは敵意を一時的に俺からワズに移し、ワズへにゆっくりと接近していく。しかし、ワズは動揺する事なく語る。
「私にはやはり、貴方がわかりません」
「ーー」
「ですが、私は『思い』ました。『天本太陽』はきっと誰かの為に戦うことのできる……誰よりも強く優しい人間なのだと」
「ワズ、お前……」
俺の目を真っ直ぐに見て話すワズ。
その言葉には普通のヒューマギアなら持ち得ない、シンギュラリティに達したヒューマギアだけが持ち得るテクノロジーを超えた「思い」があった。
「ーー私は…私の『思い』を信じます。そして、私の思いを信じて……貴方がこれを渡すに相応しい人間であると判断します!」
そう言いワズは手に持ったプログライズキーを真っ直ぐ俺に投げる。マギアは投げられたプログライズキーに「何ッ!?」と声を上げ、
「! おっと…!」
ーープログライズキーは俺の手に確かに届く。
強くて優しい人間、か。
天津さんの「正義感」云々同様に人違いだろって思わなくもないが…
「……はっ、そうかよ。ならーー」
自分の命を懸けた
あぁそりゃお前、
「ーーワズ! お前の信じるその思いに、応えてやるよッ!」
『ジャンプ!』
【オーソライズ!】
ーー応えない訳にはいかねぇな!
ショットライザーに装填されたアメイジングヘラクレスプログライズキーを取り出し、黄色のプログライズキーのボタンを押し装填し展開。
【Kamen Rider. Kamen Rider.】
【ショットライズ!】
力強くトリガーを引き、発射された弾丸はマギアの肩に直撃し俺へと返ってくる。
「はあぁッ!」
返ってきた弾丸に俺は勢いよく横蹴りする。
その瞬間に右脚、左脚、右腕、左腕と順にアーマーが装着されていく。いつもの白色のアーマーといつもとは違う黄色のアーマーが纏い、
『ライジングホッパー!』
【A jump to the sky turns to a rider kick.】
ーー俺はフォームチェンジに成功する。
なるほど、ホッパー…バッタのプログライズキーか……というか俺始めてフォームチェンジしたな! まぁ今まで使えるプログライズキーがアメイジングヘラクレスしか無かったから当然だけども。
……なんだか不思議だな。
体力的にも結構ピンチな筈なんだが…。
初めて変身した時のように……
(……なんか、負ける気がしねぇ)
「人間…! いい加減に死ねッ!」
「ほっと…!」
マギアはフォームチェンジした俺に敵意を向け殴りかかってくる。
だけど俺は高くジャンプしマギアの頭を踏み台にし避け、空中でくるりと一回転した後に着地した。驚くほどに体が軽い…!
「次は俺の番だ! おらっ!」
「はぁ!」
「!」
(あー、なるほどな)
素早くパンチを仕掛けアメイジングヘラクレスの時とは違い、軽く受け止められたのを見て俺は何となく理解してキックを噛ました。結果、
「どらッ!」
「グゥッ!?」
マギアは確かに怯んだ。必殺技以外での初めての怯み…こりゃいけるかもしんない。
「ウオオオオ!」
「ほっ、やっ、そらぁ!」
「ガッ……!」
怒りを露わにするマギアの猛攻を躱しきり、背中をとった俺はマギアの背部を思い切り後ろ蹴りする。
どうやらこのプログライズキー、アメイジングヘラクレスとは違ってパンチ力じゃなくキック力が高いっぽい。ならキック主体で戦った方が賢い、か。
「とっ……!」
「?」
(思いっ切りやってやる…!)
俺は半端ない脚の力で大きく後ろに跳びマギアから距離を取る。困惑するマギアを見据え、俺は腰を少し落とし溜めを入れ強く一歩を踏み込んでーージャンプする。
「……グフッ!?」
「どッーーりゃあああ!!」
空中で両足を揃えた俺は派手な一撃。
強烈なドロップキックをマギアの胴体に入れた。
マギアは流石の衝撃に初めて地面に倒れる。
このまま一切相手に余裕は与えない。
こっからはずっと俺のターンだっ!
「ッ、人間は絶滅させる! オォオオッ!!
(随分とタックルに自信があるんだな?でも)
「何度も言わせんな! 当たんねぇよ、おらァ!」
「!? ッッッ………!」
猛スピードでタックルをしてくるマギアにそう吐き、俺は横にステップを踏み回避しながらショットライザーを連射する。放たれた全ての弾丸はバッタのように跳ねる跳弾と化し、予測不可能な軌道を描きタックルの態勢をとるマギアの両足を撃ち抜き転倒させる。
バッタの力って半端ねぇなオイ……!
「ッッ、私は人間を…!」
「悪いが、そろそろーー」
『ジャンプ!』
「ーー終わりにさせてもらおうか」
こっちも体がヤバイからなぁ。
まぁ今はマギアの方もヤバイだろうがな?
俺は手に持ったショットライザーをバックルに取り付け、プログライズキーのボタンを押す。キック力が高いなら使うのはこっちの必殺技の方が良さそうだ。
「お前を止められるのはただ一人…俺だッ!」
【ライジング ブラスト フィーバー!】
トリガーを引き、俺は強く踏み込みジャンプ。高速でマギアとの距離を詰め、
「おらよっ!」
「ッ!」
ーーマギアの体を全力で宙に蹴り上げた。
マギアは廃工場の屋根を貫通する程の勢いで上に飛び、俺もそれを追うようにして跳ぶ。そして、
「これでトドメだぁッ!!」
軽々と蹴り上げたマギアよりも上空に到達。
そのまま空中で蹴りの構えをとり、落下速度も乗せた一撃をマギアに見舞う。
ジ ャ ン プ
ラ
イ
ジ
ン
グ ブ ラ ス ト フ ィ ー バ ー
「ガッッーーグワァァァァァアーー!!」
そのキックはマギアの体を蹴り貫き、マギアは叫び声を上げて爆ぜた。
「おっとっと……やった、か」
結構な高さからの着地し、少しよろけた後に俺は安堵と共に呟く。何とか撃破できたな……あー、やっぱり怖いわこれ…!
「ワズ、ありがとな。助かった」
「いえ、私はただ私の思いに従っただけですから」
「…そうか…」
(とりあえずゼツメライズキーを回収して、さっさとここから出るとするか)
空中で爆ぜたマギア…位置的にゼツメライズキーは廃工場の外か? 待っても穴の空いた屋根の上から落ちてくる様子のないゼツメライズキー……。
「悪いワズ、先に廃工場の外に出といてくれ。
俺は簡単な仕事が残ってるから済ませてくる」
「畏まりました、天本様。気を付けて」
俺はワズに詳しく「ゼツメライズキー回収」の事を説明せず、簡単にそれだけ言ってワズが歩き出した方向とは真逆の廃工場内の外に出た。
さて体力的にも早く見つけたいんだが…簡単に見つかってくれるかぁ?
▲△▲
(ゼツメライズキーは……あ、あそこか!)
ヒビ割れたゼツメライズキーは予想通り外に落ちており、案外早くに見つかった。うん、予想してた数十倍楽に発見できちゃったな。まぁ早く見つかるに越したことはない……だが、
「!? お前はっ……!」
「まさか貴様対策のマンモスマギアまで撃破するとは……いよいよ恐ろしい存在になってきたな、バルデル」
「滅ッ…!」
ーーそこには
「よく現れてくれやがったなぁ…!」
「無駄だ。今の状態の貴様ではこれ以上の戦闘は不可能だろう。だが、俺の今の目的はゼツメライズキーの回収。命拾いしたなバルデル。また会おう」
俺は敵意を隠す事なく剥き出しに戦闘態勢をとる。それを見た滅は焦る様子なく、やはりどこか機械のように告げる。
「ぐッ……! 待てっ! 滅ッ!」
滅の言葉は図星だった。
俺は体力の消耗でバランスを崩し地に片膝と手をつく。同時に変身が強制的に解除されてしまう。
「ッッ……ちく、しょう……ッ!!」
追いたくても追えない。悔しさに歯を食いしばり俺は力強く地面に拳を落とした。
「
情け無くそんな台詞を零す。
今の俺には滅が歩き去る姿を悔しげに睨むことしかできなかった。
ーーこうして俺の厄日は幕を閉じた。
この日をきっかけにちょくちょく飛電さんに呼ばれたり、ワズに相談を受けたりするようになったんだが……まぁいいか。
ちなみにその日は体力の消耗が激しいのもあって超熟睡できた。マジで今日みたいにマギアにボコボコにされんのは懲り懲りだ…。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
感想や批評、アドバイスなどありましたら遠慮なくお願いします!
唐突ながら作者の中でのバルデルのイメージ絵を描いてみました。
手書きクオリティですがどうかお許しを…!
【挿絵表示】
だ、誰かもっと上手く描いてくれないかなぁ……(儚い期待)
(あとついでにバルデルの新フォームスペックも書いて置きますね↓)
仮面ライダーバルデル
ライジングホッパー
SPEC
◾️身長:196.8cm
◾️体重:90.5kg
◾️パンチ力:20.8t
◾️キック力:45.0t
◾️ジャンプ力:50.1m(ひと跳び)
◾️走力:3.9秒(100m)
★必殺技:ライジングブラスト、ライジングブラストフィーバー
デイブレイク被害者である天本太陽がショットライザー(後のエイムズショットライザー)とライジングホッパープログライズキーを使って変身した姿。
〈戦闘スタイル〉
スペックの関係上、パンチ主体のアメイジングヘラクレスとは真逆のキック主体の戦闘方法をとる。しかしアメイジングヘラクレスの時と変わらず戦い方はやっぱり荒っぽい模様。
※ゼロワン本編では、ライジングホッパープログライズキーは1話で社長室にあるプリンターからゼロワンドライバーと一緒に構築されています。なので今回出てきたライジングホッパープログライズキーは初期型的なものってことで、また本作の独自設定ということでよろしくお願いします!
あと今更ながらツイッター始めました!
http://twitter.com/@UI4VTPaTMMaKvQY
今後のストーリーについて
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次章はよ!
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ここで綺麗にお終い!
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作者のご自由に!