デイブレイク被害者が仮面ライダーになる話   作:平々凡々侍

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お待たせしました!
今回はようやくバルデル復活の回。
多分この回の戦闘シーンが今までで一番(作者の中での)バルデルらしさ全開の荒っぽいものになったと思われます。皆さんの中のバルデルのイメージと解釈一致だと幸いです!

それでは、どうぞ!


荒いアイツは仮面ライダー!

 医電総合病院三階。

 

「くたばれェ!」

「! がはッ!」

 

 後ろから人間マギアが短機関銃を乱暴に振るう。

 人間マギアの攻撃を間一髪躱すことに成功した俺だが、次に来た蹴りは避け切れず思いきり蹴り飛ばされる。当然その威力に俺は吐血した。

 

()てえなオイ…!)

 

 (いた)ッ!! 死ねるぞこれ!?

 何となく分かっちゃいたがこの人間マギア。マギアと同じかそれ以上に()えぇ……ホントなんでこんな化け物相手に生身で逃走中(捕まったら死)なんてしなきゃなんねぇんだちくしょー! 誰か代わってくれえ!(弱音)

 

「あと、少しでッ……!」

「ハッ! どこに逃げるつもりだァ!」

 

 左手で蹴られた腹を押さえながら、俺は何とか立ち上がり蹴り飛ばされたことで運良く距離が縮まった病室へと入る。その姿は人間マギアから見れば逃げ込んでいるように映っただろうな。

 

(──絶対にぶっ倒す……!)

 

 

──でもそうじゃない。

 

 

──これはお前から逃げる為の行動じゃない。

 

 

──これはお前をぶっ倒す為の行動だ。

 

 病室に飛び込むように入った俺はベッドの横にそっと置かれたアタッシュケースを手に取り、ロックをカチリと外し中を開く。人間マギアが近付いてくるのが足音で分かるが「落ち着いて冷静に…慌てんな」と自分の心に言い聞かせて中身のソレらを取り出し、

 

「ーーアハハ! どうやらここまでのようだなァ? さぁ鬼ごっこは終わりだッ…!」

「………あーそうだな」

 

 病室の出入口に立つ人間マギアに振り返る。

 鬼ごっこは終わり、か……あーそれには同感だ。

 

 ーーさぁてと、久々にやってやるとするか……十二年以上経った今…俺がどれだけ戦えるかはわかんねぇが、

 

──鬼ごっこは終わりにするか

 

 ーーさっきもこの人間マギアに言った通りだ。

俺は今、最ッ高に頭に来てンだよ…!

 

「遂に観念したか? まぁそうだろうなぁ…俺は強い──」

 

 俺の言葉を「諦め」だと思い人間マギアは口を開き、

 

「──はっ、何勘違いしてんだクソガキ」

「……アァ?」

 

 それを遮る形で俺は人間マギアを笑う。

 本当に俺が諦めたと思ってんだなお前? つうかどんだけ自分の実力に自信あんだよ自信過剰か?

 

「お前の言う通り鬼ごっこは終わりだなぁ……それと、お前がやりたい放題できる時間もな」

「? ……貴様、何を言っている…?」

 

 首を傾げ困惑する人間マギアに、俺は左手にバックルが取り付けられたベルトを掲げるように持って告げる。

 

 

 

悪いが今度はこっちの番だ

 

 

───────────────────────

 

「A班はレイダーを引きつけ、B班は病院内に居る人々の避難を最優先に行動してくれ……各員行くぞっ!」

「「「了解!」」」

 

 通報からちょうど十分。医電総合病院前に二台の車両が止まり、現場に到着したA.I.M.S.の隊員達が次々に下りる。そして、対人工知能の為の武装に身を包んだ彼等は警戒しながら病院に突入していく。

 

 

 ーーその時だった。

 

「! 銃声!?」

「上の階からか…!」

 

 突入してすぐに彼等は激しい銃声を耳にした。

 

「! 予定通りA班は上の階にいるであろうレイダーの元に。B班はこの場に残った人々の避難、怪我人の救助にあたれ!」

 

 現場の状況を冷静に確認した隊長の指示に、全員が無駄のない素早い動きで各自行動を開始し始める。

 

 ーー奇跡的に死亡者は0人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 遠心力を利用し勢いよくベルトを腰に装着し、右手に持った赤いラインの入り、銃口近くがメタリックブルーの黒い実銃……『ショットライザー』を素早くバックルに取り付ける。そうすれば、

 

ショットライザー!

「!? そ、それは……!」

 

 ーーショットライザーが起動し聞き慣れた起動音が鳴る。

 

「な、なんでソレを…!?」

「これが何か知ってんのか?

 ……だったら『なんで』か何てわかるだろ」

 

 仮にもA.I.M.S.に所属していた青年はその実銃に見覚えがあった…

 

(隊長の不破と、技術顧問の刃が持っていたものと同じ?)

 

 ショットライザーを見て驚愕する人間マギアを見据えながら、俺は黄緑色のあの(・・)プログライズキーを出してボタンを押し、

 

ストロング!

「俺に、力を貸してくれ!」

オーソライズ!

 

 ーーショットライザーに装填して、そのまま右手でプログライズキーを素早く展開する。十二年も経っちゃいるが、何十回も使ってコイツに命を救われてきたんだ……俺はショットライザーにプログライズキーの使い方を全くと言っていいほど忘れていなかった。

 

【Kamen Rider. Kamen Rider.】

 

 ーーよく聞いていた待機音が流れ始める。

 久々に聞いたな【仮面ライダー】って言葉……。

 

 続けて右手でショットライザーのグリップを握り、バックルから引き抜き高く上げる。その際に手に感じたショットライザーの重みがどこか懐かしくて…自然と俺の口角は上がっていた。高く上げたショットライザーの銃口を徐に目の前の人間マギアに向け、俺は一呼吸置き、

 

──変身ッ…!

ショットライズ!

「!? ぐっ……!」

 

 ──トリガーを引く。

 次の瞬間、放たれた一発の弾丸が人間マギアの胸に直撃し火花を上げる。人間マギアは予期していなかった出来事に防御をとれずに後退りし、病室から外の廊下へと出た。

 

「おらあッ!!」

アメイジングヘラクレス!

With mighty horn like pincers that flip the opponent helpless.

 

 俺は右手に持ったショットライザーをバックルに再び取り付け、展開しながら俺の方に向かって方向転換し飛んできた弾丸にーー全力の右でのアッパーを打ち込む。そして、右手から順に黄緑と白のアーマーが俺の体に装着されていきーー変身が完了する。

 

 右半身には黄緑色のアーマーを纏い。

 左半身には白色のアーマーを纏い。

 ーー赤く光る複眼。

 

「!? お、お前は…一体何だッ!?」

 

 人間マギアは己の目の前で変身した俺に驚愕し声を上げ問う。その問いかけに俺は名乗る。今からお前はボコる名前だ!よく覚えとけ!

 

 

──俺はバルデル、仮面ライダーバルデルだ!

 

 

 それが十二年以上の時を経て、仮面ライダーバルデルが復活した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──素晴らしい……私はこの時を待ち望んでいたっ!

 

 序章の主役(バルデル)の復活を画面越しに目にした垓は、思わず座っていた席からガタリと勢いよく立ち上がり歓喜に震える。そして同時に、

 

 

「もう既に結果は出たも同然。彼の変身を阻止できなかった時点で──1000%君の負けですよ、新人隊員くん」

 

 ーーレイダーに実装した青年の負けを確信した。

 垓は再び席に座り画面に集中する。十二年以上振りである友人の戦い振りをその目に焼き付ける為に。

 

───────────────────────

 

「──らあッ!」

「! うぐッ…!」

 

 変身して早々、駆け出したバルデルは病室の外へ出て廊下に立つ人間マギアに横蹴りを噛ます。その蹴りを右腕で防ぐ人間マギアだが…威力を殺し切れず手すりのついた壁に背中を強く打ち、

 

「おりゃあァ!」

「ぐはぁ……!?」

 

 ーー俺は続けてその両肩をガシリと捕み、そのまま横にぶん投げる。

 

「さっきまでの威勢はどうした?」

「このッ……ーー貴様アアア!」

 

 そう挑発的に言い更に左手を倒れる人間マギアに向け、指を「かかってこいよ」と言う風にクイクイと動かせば激怒した人間マギアが立ち上がり走り出し殴りかかってくる。

 

「ほっ、そらッ!」

「!? ぐわッ…!」

 

 だが、それを最小限の動きで回避した俺は感覚で振り返らずにそのまま後ろ蹴りを噛ます。後ろ蹴りは人間マギアの背中に直撃。人間マギアはその背後からのカウンターにまたも床に倒される。

 

「こんなもんか?」

 

 相手が怒って単調な攻撃してくれたおかげで超綺麗にカウンター決まった(感動)別に狙ってやった訳じゃないが…上手くいったしヨシとしようそうしよう!

 

「なら…! これでどうだァ!」

 

「調子に乗れる時に乗る」精神で人間マギアを煽る俺。相手はまんまとキレてくれる……まぁ俺も結構キレてんだけどなぁ?過度に煽ってんのは多分それも原因だろう。人間マギアはキレた挙句に手に持っていた短機関銃を構え、

 

「ハアアアッ!!」

 

 ーー躊躇なくトリガーを引く。

 目の前で「人間マギア」になった時からわかっちゃいたがこいつ…正気じゃないな? それこそマギア化したヒューマギアみたいに暴走してやがる……

 

「ーーッ!」

 

 放たれる弾幕を前に俺は素早く両腕を前に出して防御をとる。次の瞬間、数え切れないほどの弾丸の雨が俺を襲った。

 

「アハハハハ!! どうだ、これが俺の力だッ!」

 

 数十発以上を連射した人間マギアは短機関銃を下ろすと、早くも自身の勝ちを確信したのか大きく叫ぶ。そんな中、

 

「っ………はぁ、これで終わりか?」

「!? な、何っ!?」

 

 ーー俺は攻撃が止まった後、ゆっくりと防御の構えを解き調子に乗っていた人間マギアに水を差す様に告げる。

 

「あ、あれだけの銃弾を受けて…!? なんでーー」

「ーー平気かってか? わかんねぇなら教えてやるよ」

 

 動揺する人間マギアに一歩ずつ接近する俺。大量の弾丸を受け、両腕からは僅かにだが黒い煙が上がり火花も散るが……

 

 

「ーーお前みたいなクソガキの攻撃なんざ、俺の体にはちっとも…響かねぇーんだよッ!」

 

 この程度で根を上げる訳あるかよバーカ。

 

「うっ…! な、ぐわッ!」

 

 人間マギアの真前に着いた俺は右の膝蹴りをその腹にぶち込み、続けて人間マギアが持つ唯一の武器である短機関銃を力づくで奪い、その顔面を殴り飛ばす。

 

(はぁー…ったく、()ってぇなあ!)

「おらッ!」

 

 あの銃の攻撃は正直ヤバかった。アメイジングヘラクレスの堅固なアーマーにこんだけダメージを与えんだから……今こうして耐え切って「平気」そうに見えてんのはただの気合いとタフネスだ。

 

 内心で受けたダメージにキレつつ、その怒りをぶつけるように人間マギアから奪い取った短機関銃をへし折る。

 

「お、俺の武器が……!?」

「武器の心配なんて随分と余裕だ、なあっ!」

「!? かはッ……!」

 

 

 そして、ガラクタと化した短機関銃を床に投げ捨てれば人間マギアは「信じられない……」とでも言いたげな様子で唖然としーー俺は容赦なく倒れるそいつをサッカーボールを蹴り上げるかの如く蹴った。まぁ容赦なく……というよりもブランクのせいで力加減が下手糞になってるだけなんだけどな。

 

「くっ、くそッ……!! こんな馬鹿なことがあってたまるか! これは何かの間違いだッ! 俺は誰よりも強い筈だ!」

「悪いが馬鹿なことでもなけりゃ間違いでもない。これはただの現実だ。お前は強くなんてない」

「! ふ、ふざ…! ふざけるなあああーー!!」

 

 俺の台詞を聞いた人間マギアは今まで以上に怒り激昂すると、勢いよく立ち上がり右拳でまた殴り掛かってくる。

 

「ふっ」

「くっ!?」

「どらァ! 落ちろ!」

「ぐわあッ…!?」

 

 その拳が届くよりも早くに俺は右のジャブを人間マギアの頭に打ち込み、怯ませた隙にその胸に前蹴りを放った。結果廊下の先にあった眺めのいい大きな窓を派手に打ち破って人間マギアは下に落ちていく。

 

 ここ三階だし生身じゃまず死ぬだろうけど、あいつ仮にも変身……じゃなくて「実装」してるからな。三階から落ちた程度では倒れてくれないだろ…上手く着地できなかったならそこそこのダメージにはなるか?

 

(あー、まだ動いてやがるよ…)

「絶対に逃がさねぇーぞ」

 

 ……何っ?さっきからやり方がエグい?いやこれが俺の基本スタイルだから。これが普通だから。

 うん(自己完結)俺は割れた窓の付近から下を見てまだ動いている……逃げようとしている人間マギアを視認し、すぐに人間マギアの後を追い三階から下の駐車場まで飛び降りる。

 

「おっと!」

「がァ…! 俺は…俺は…俺は…!」

「お前、硬そうな見た目からも分かっちゃいたが中々しぶといな……」

「俺は最強なんだッ……俺は最強なんだァ!」

(もう俺の声も聞こえちゃいない、か……今助けてやるよ。クソガキ)

 

 完全に正気を失ってしまった人間マギアは前に俺は思う。本音を言えばドクターを殺そうとした相手であるこのクソガキは、半殺しぐらいにはしたいが……流石にそれはやり過ぎな気がしないでもない。何よりきっと今のこいつはマギア化したヒューマギアと同じく、理由は不明だが暴走状態のようなものに陥っているに違いないだろうからな。

 

「最強? ハッ! 俺みたいな一般人にボコられてる時点で、お前が最強な訳あるかよバーカ!」

「証明するッ……! 全て、殺すっ!」

 

 俺が心からの台詞を放ってすぐ、人間マギアは声を荒げると左手をベルト横に伸ばし、

 

(!? 待てよそれはーー)

「ーーやらせるかよ!おらッ!」

「! うぐッ…!?」

 

 ーー人間マギアのその動きに既視感を覚えた俺は咄嗟にバックルからショットライザーを抜き、人間マギアの左手に向かって撃つ。

 

 今の動きはあれだ……マギアが必殺技を発動する時にベルト横にあるボタンを押す時のと全く一緒だった。多分、というか間違いなく必殺技使う気だったなこいつ!? 阻止できてよかったわマジで。

 

「おらおらおらァ!」

「くっ、ぐぅうッ……!」

 

 必殺技を阻止した俺は、撃たれた左手を右手で押さえる人間マギアの胴体に畳み掛けるべくショットライザーを連射する。火花が人間マギアの体から何度も散りーー最後には地面に片膝をつく。

 

「悪いが──そろそろ終わりにさせてもらうわ」

 

 俺は人間マギアに生まれたーートドメを刺すのにはーー絶好の隙を前にしてそう口にし………

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー私も今現場に到着した、そっちの状況は?」

『はい、こちらは予定通りA班とB班の二班に分かれ行動中です』

「そうか。なら、レイダーは発見できーー」

 

 部隊から数分遅れで現場に到着した唯阿はA.I.M.S.の車両から下り、部隊のメンバーに連絡をとって状況確認をする。そして、スマホを耳に当てながら病院へと入ろうとした唯阿は、

 

「がはあぁあッ……!」

(! ーーレイダー!?)

 

 突如横から聞こえた何かの大きな落下音を聞き、思わずそちらに目を向けて驚愕する。そこには先ほどまでは間違いなく居なかった筈の「黒いレイダー」が地面に倒れていたのだ。しかも、その装甲には既に複数の傷が見え…明らかに損傷していることが窺える。

 

 ーー更に次の瞬間、唯阿は更に驚くものを見た。

 

「おっと!」

「! あ、あれは…!?」

(まさか……)

 

 信じられない、と唯阿は目を見開く。

 彼女が何度も映像の中で見た……バルカンとバルキリーと同じ白のアーマーにアメイジングヘラクレスプログライズキーの黄緑色のアーマーを装着した仮面ライダー。

 

(仮面ライダー、バルデル……!?)

 

 レイダーを追って現れたその姿は紛れもなく、戦闘映像に映っていた仮面ライダーバルデルのものだった。

 

 

 

 

 

 

 

ストロング!

 

 右手に持ったショットライザーに装填したプログライズキーのボタンを左手で押しーー素早くショットライザーをバックルに取り付ける。ショットライザーから鳴り始める待機音にまた懐かしさを覚えつつ……

 

──お前を止められるのはただ一人、俺だッ!

アメイジング ブラスト フィーバー!

 

 ーー俺はバックルに取り付けたショットライザーのトリガーを引き、地面に片膝をつく人間マギアへとダッシュする。

 

「うッ…ぐ、がァ……!」

 

 立ち上がろうとする人間マギアだがもう遅い。

 人間マギアへと駆ける間に俺の右足には黄緑色のエネルギーが収束していき、

 

ーーおっらああああああーー!!

 

ス ト ロ ン グ

ブ ラ ス ト フィーバー

 

 ーー俺は人間マギアに向かいジャンプし、そのまま右足での跳び蹴りをぶつける。

 

「がはっ!? くァ……っまだ、だ…ーーうッ!?

 ぐうぅーーがああああああーーッ!!」

 

 ライダーキックをまともに食らい蹴り飛ばされた人間マギアは声を上げ、地面を勢いよく転がり……立ち上がろうと試みるも次の瞬間にその体から激しい火花が散りーー人間マギアは爆発する。

 

 

 ──戦いはバルデルの勝利で幕を閉じた──。

 

 

「……終わったか」

「ぐはっ………」

「おっと危ねっ」

 

 そして、人間マギアの身に纏われていた堅そうなアーマーは仮面ライダーの変身解除のように掻き消え生身の人間に戻ったクソガキ。どうやらやっと体力の限界を迎えたらしい。装着していたドライバーも外れ、プログライズキーも地面に転がる。俺は後ろにそのまま倒れそうになるクソガキにすぐ駆け寄り、頭をぶつける前に支えた。

 

 こんな風に支えてやる義理は微塵もないが、思い切り後ろに倒れて駐車場の地面……アスファルトに頭ぶつけるとか絶対痛いからな。もし仮に俺がこのクソガキで変身解除…というより実装解除?後に頭強打したらワンチャン死ねるから。

 

「……ここ、は? ッ!」

(ほんとに正気失ってたんだなコイツ)

 

 クソガキは目を見開いて辺りを見渡すとそんなことを口走り、苦しげに頭を押さえた。やっぱり……最初からヤベェヤツだとは思ってたが途中から会話のキャッチボールが成立しなくなってたしなぁ。

 

「!そうだ、俺はレイダーになって……」

「ーー」

「あなたが、俺を止めてくれたんですね…?」

「……別に止めたわけじゃない。ただ頭にキタから殴って蹴った。それだけだ」

「それでも、ありがとうッ…ございます……!」

 

 今目の前に居る痛みを堪えながらも感謝を告げる青年。

 変身する前の暗い雰囲気を纏った青年とも、人間マギアになって好き勝手暴れまくっていたクソガキとも全く違う。ーーまるで別人のようだった。

 

(あのドライバーを使った副作用…みたいなもんって訳か)

 

 なんつう危ねぇ代物だよ……。

 そもそもなんでコイツはあんな危険な物を使ったんだ? 経緯が気になった俺はすぐに聞きそうになったが止めた。今の状態で無理に喋らせんのは命に関わりそうだったから。

 

「感謝何ていらねぇ……自分が何やったか思い出したんなら、テメェが傷付けた人達にちゃんと謝れ。そんで罪を償え」

 

 幸いこいつは誰も殺してない。

 まぁ怪我人は数人出たし、病院だって短機関銃のせいでボッコボコだから実刑は免れないだろうが……流石に死刑にはならない筈だ。いや、そこんところ詳しくないからはっきりとはわかんねーけども。

 

「ッ…はい……はいっ!」

 

 クソガキはその言葉に頻りに頷く。それを見た俺はクソガキをそっと寝かせ身を起こし、転がったプラグライズキーを拾い上げる。グレーのプラグライズキー……インベイディングホースシュークラブ…いや長すぎだろっ!? と思いつつ地面に落ちているドライバーに目を向け、

 

「……ふん」

 

 俺はドライバーを思い切り踏み砕いた。

 作った人には悪いがこんな危ないもん無い方がいいだろうからな……しょうがないね! …まぁ火花がバチバチ散ってたし、俺が壊さなくても勝手にぶっ壊れてたろうけど。

 

(さて……じゃあこれもーー)

「ーーバルデルっ! あなたは、一体何なんだ?」

「……あぁ?」

 

 そして、ドライバーに続きプログライズキーも破壊しようとした俺は左横から聞こえた声にばっとそちらを向き、

 

「! あんたは……」

(刃さん? それに両脇にいんのは……)

 

 思わぬ人物を目にして仮面の下で思わず驚く。

 何で刃さんがここに? しかも両脇には「A.I.M.S. SQUAD」の文字が書かれた戦闘服を着た奴等が居るし……

 

(……あー、なるほど……この人達がA.I.M.S.か)

 

 対人工知能特務機関【AIMS】。

 ヒューマギアの人工知能特別法違反を取り締まる組織……らしい。これまた詳しくは知らない。理由はマギアと戦っていた十二年前も一度も接触したことはなかったし、そもそもAIMSという組織が存在していたかどうかさえ俺の記憶にはないからだ。

 

 ………というか刃さん、あんた何で「バルデル」の名前知ってんの? 何俺もしかして有名人? …なんて訳ないよな。それに何でここに居んだ?

 

(確か病院で話してた時はどっかの技術顧問やってるとか言ってたが…………まぁ今、そこんところはどうでもいいか)

「……ほらよ」

 

 刃さんに関する疑問が増えたがとりあえず今はいい。手に持っていたプログライズキーを俺はふわっと放り投げ、刃さんは驚きつつもそれをキャッチした。

 

「ナイスキャッチ。なら悪いが後始末は頼んだわ」

「! 待てっ!」

 

 制止の声が聞こえたがそれを無視し、俺は先程必殺技をぶっ放した時の爆発によりまだ辺りに立ち込めている爆煙に向かって歩き出す。なんか今の俺……ゼツメライズキーを回収した後に撤退する滅みたいだな。

 

 爆煙に向かって歩いて行き、最後には姿を消す滅の真似って訳じゃないが…似たような形で俺はその場を後にした。こりゃ病院に今すぐ戻んのはちょっと無理そうだな。

 

「──とりあえず一件落着だな」

 

 ショットライザーからプログライズキーを取り出し、変身解除した俺は安堵のため息をつきそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ん?」

(今、誰かそこにいたような……?)

 

 変身解除後に道を歩いていた俺は誰かの視線を感じて振り返る。

 

しかし、そこには誰もいなかった。

 

 ───────────────────────

 

「どうした? 迅」

『ーーバルデルを見つけたよ』

「……そうか」

 

 俺は迅の報告を聞いて一瞬だが沈黙した。

 

『意外。もっと驚くかと思ってたよ』

「お前にも言った筈だぞ、迅。バルデルが生きている可能性があると」

 

 デイブレイクの拠点に置いてある端末画面には『意識不明になってから十二年以上! 奇跡の生還!?』というニュースが映っており、それを閲覧しながら俺は言う。

 

「迅、俺が以前にバルデルに関しお前に言ったことを覚えているか?」

『……バルデルが人類滅亡の最大の障害、脅威でしょ?』

「あぁそうだ。その考えは俺の中で未だに変わっていない」

 

 その言葉に迅は僅かに驚きを覚えた。

 彼がバルデルを警戒しているのは知っていたがまさかゼロワン、バルカン、バルキリー、サウザー……他にも多くのライダーが居る今でも「バルデル」をここまで強く警戒しているとは思っていなかったから。

 

 迅にとってバルデルは映像でしか見たことのないある種、架空の存在染みた存在で、更に言えばまだバルデルと直接戦ったことのない迅はバルデルを「過去の仮面ライダー」と甘く見てさえいた。

 

『前にも言った筈だよ滅。今の僕は人類滅亡なんかに興味はない。それにバルデルがどれだけ強くても僕のやることは変わらない』

 

 その言葉を最後に迅は俺との通信を切った。

 

 ───────────────────────

 

 通信を切り、辺りに目を向けた僕はため息をついてベルトを装着した。バックルには既にスラッシュライザーが取り付けられている。

 

「はぁ、あんた達って本当に学習しないよね」

 

 周囲には僕を取り囲むようにしてA.I.M.S.の隊員達が数人立っていた。そんな人間を見て心底「馬鹿らしい」と感じながら僕はバングルに付けたチェーンに繋がれた赤いプログライズキーを取る。

 

インフェルノウィング!

バーンライズ!

 

 右手に持ったプログライズキーのボタンを押し、スラッシュライザーに装填。ゆっくりとプログライズキーを展開し、

 

【Kamen Rider. Kamen Rider.】

──変身

スラッシュライズ!

 

 ーートリガーを引いた瞬間、現れた赤い鳥のライダモデルが僕の背後に回り、その翼が分離し迅の体を包み込むように動く。

 

バーニングファルコン!

【The strongest wings bearing the fire of hell.】

 

 そして、その翼が開いた時ーー僕は赤い不死鳥の如き姿に変身を果たす。

 

「誰にも僕の邪魔はさせない。僕は僕のやり方でヒューマギアを解放する」

 

 バックルからスラッシュライザーを取り外し、構えた僕はそう言って向かってくるA.I.M.S.の隊員達との戦闘を開始した。

 

 

 ーー勝敗はすぐに決した。

 どちらが勝ったかなど、語るまでもないだろう。

 

 

 

 

バルデルが表舞台に姿を現したその日に。

──物語は大きく動き出す──

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
感想や批評、アドバイスなどありましたら遠慮なくお願いします!
(↓スペックと補足説明のせておきます!)



インベイディングホースシュークラブレイダー
(通称:バトルレイダー)

SPEC
■対象者/職業:?/AIMS隊員
■身長:対象となる人間により異なる
■体重:対象となる人間により異なる
■特色/力:強固な装甲/捕縛力
★必殺技:インベイディングボライド

人間が「レイドライザー」と「インベイディングホースシュークラブプログライズキー」を使って実装した姿。

〈戦闘スタイル〉
今回の使用者であるA.I.M.S.所属の新人隊員は完全に悪意に呑まれ、自分自身でも制御不能な暴走状態に陥っていたため力任せな戦い方をしていた。溜め込んでいた不満が最悪の形で爆発した結果。説得も通じず、加減も効かず、衝動のままに暴れるレイダーと化した。


仮面ライダーバルデル
アメイジングヘラクレス

SPEC
◾️身長:197.0cm
◾️体重:97.6kg
◾️パンチ力:40.8t→45.8t
◾️キック力:26.9t→28.5t
◾️ジャンプ力:15.2m→18.1m(ひと跳び)
◾️走力:4.1秒→3.5秒(100m)
★必殺技:アメイジングブラスト、アメイジングブラストフィーバー

【スペック変動あり】
・パンチ力+5t
・キック力+1.6t
・ジャンプ力+2.9m
・走力一0.6秒

デイブレイク被害者である天本太陽が完成した「ショットライザー」(エイムズショットライザー)とバックアップされた「アメイジングヘラクレスプログライズキー」を使って変身した姿。

〈戦闘スタイル〉
十二年以上前の当時と同じく良くも悪くも荒っぽく力強い。しかし、以前と比べて戦闘中も落ち着いた動きで敵に対処できており、荒削りなパワープレイに冷静なカウンターを加えた戦闘スタイルをとる。ちなみにゴリ押せる時はゴリ押す模様。


※補足説明?
天本太陽が目覚めたのはゼロワン本編でいう所の大体5話辺り。不破さんが病院に搬送されてきたのは8話の滅初変身でディストピアされたから……。また、オリ主が入院していた間は表ではゼロワン本編通りに物語が進行してます。オリ主が十二年以上振りにバルデルに変身した今回の騒動……ちょうどゼロワン本編の30話以降に起こってるという設定です。

新章でのバルデルの立ち位置について

  • 鎧武の初期の主任のような感じ
  • オーズの初期の伊達さんみたいな感じ
  • ビルドの仲間加入前のカシラっぽい感じ
  • どれも良さそう(作者にお任せの意)
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