デイブレイク被害者が仮面ライダーになる話   作:平々凡々侍

38 / 49
アークワンは止まらない……なんか、どっかで聞いた覚えのあるタイトルですねぇ(すっとぼけ)
・今回は変身音が一つ短縮版になってます。

それでは、どうぞ!


アークワンは止まらない

「──変身

 

ソレ(・・)は──あまりにも突然生まれた。

 

シンギュライズ

破壊 破滅 絶望 滅亡せよ

コンクルージョン ワン

 

 謎のプログライズキーを装填した直後、アークが装着していたドライバーは変形。黒から一転ーー白いドライバーへと様変わりし、アークの足元から半壊した衛星らしきフォルムの赤いライダモデル?が出現。同時に赤黒い【】【】【】【】などの文字と悪意のエネルギーが泥の如く湧き出し、衛星のライダモデル?が回転を始め、その身に全て収束し呑まれてゆく。

 

 そして、泥のような悪意のエネルギーを血の様に周囲へと飛散させアークの胸アーマーから赤黒いガスが放出。最後にその隻眼と胸に刻まれたXのラインが真っ赤に発光した。

 

ーーアークワン、それがこの姿の名だ

 

 ゼロワンのデータをラーニングしーーアークが進化した姿。その外観は所々がゼロワンによく似ていた。しかし、その纏う雰囲気が、放つ存在感が、ゼロワンとは別物なのだと見るもの全てに嫌というほど認識させる。

 

 黒い右眼に、赤い左眼。歪んだような触角に、血の如く胸に走る赤いライン、色を失ったかのような白いアーマー……亡霊の様な、骸骨の様なその姿は誰の目にも「不気味」に映った。

 

 

──これが絶望が生まれ落ちた瞬間だった。

 

 

 ───────────────────────

 

 そこにいた誰もが予期していなかった事態に愕き、暫し動きを止め、

 

「ゼロワンの力を失った今、貴様には何の脅威も感じない。だが、かといって飛電或人、貴様を過小評価する気はない。僅かでも私の結論を狂わせる可能性を秘めているなら、ここで逝け」

 

 ーーアークワンに変身したアークはそんな中、近くで呆然としたまま倒れている或人へと視線を下ろし歩み寄る。

 

「ッ、させるかっ!」

ストロング!

アメイジング ブラストフィーバー!

 

 アークワンの誕生に全員が固まる中、最も早くにショックから脱して動き出したのは「やはり」というべきか……天本太陽(バルデル)だった。

 

 バルデルはバックルに取り付けられたショットライザーに装填したプログライズキーのボタンを右の親指で颯と押し、トリガーに指を掛け引く。

 

「ーーらあああぁああッ!!」

 

 そして、力強く跳び上がり此方に背を向けるアークへと飛び蹴りの構えを取ったバルデルは叫ぶ。自分の中に湧いたアークワンへの恐怖を紛らわす様に。

 

悪意

無駄だ

 

 背後に迫るバルデルの蹴りにアークは振り向く事さえせず、ただドライバー上部のボタンを左手で一度押し込み、

 

「! あああああああッ!?!?」

 

 ーーボタンを押したことで悪意のオーラを纏った左手をスッと上げ、空中へとその悪意を拡散させる。飛び蹴りの構えを取っていたバルデルにそれを防ぐ術はなくもろに食らい地面へと落とされた。

 

「ぁ、うぐッ………」

 

 更には拡散された悪意のオーラはバルデルの体を蝕うように蠢き、持続的にダメージを与え続け最終的にはバルデルを強制変身解除にまで追い込む。

 

「太陽君っ!?」

恐怖

纏めて消えるがいい

憤怒

 

 倒れたバルデル、太陽の姿を見てショックから脱したサウザーは直ぐに駆け寄ろうと動き出すがそれよりも速くアークはボタンを二度押し込み、片腕を軽く振るいーー先程よりも広範囲且つ強力な悪意を拡散させた。

 

「ぐわあああっ!?」

「ッ、ぐ、はっ……!」

「が、はっ…うぐッ……!」

「ちく…しょ、う……!」

「がああっ!? ッ…は、半端、ねぇッ……!!」

 

 それは敵味方関係無く橋の上に居た皆を襲い、一瞬の内にして或人と太陽以外の未だに変身状態だった全員を変身解除させてしまう。既に変身解除されていた或人と太陽は悪意の波動を生身で食らい体に激痛が走る。

 

「ァ……が……あ、くッ……!」

憎悪

これで正真正銘、詰みだ

 

 無数の傷が付き、血だらけになった或人に改めて視線を向けたアークは再び或人へと歩み寄る。もうこの場にはアークを妨害できる者はおらず……一度ボタンを押し込んだ後に右手を握り締め、

 

ーー或人社長ッ……!!

 

 ーーその時、この場で誰もが聞くとは思っていなかった……彼女の声が響く。

 

?! イ…、ズ……何でッ!!

 

 或人は彼女の姿を目視し、苦しそうに顔を歪めた。倒れる或人の振り返った視線の先にはーー社長秘書のイズが立っていた。

 

 

 

 

 

「現れたか、イズ」

 

 イズの登場に驚かない者が一人いた。

 そう、アークだ。

 

「やはりシンギュラリティに達したヒューマギアの思考・行動の予測ほど容易い事はない。飛電或人の命が危機に瀕すれば、お前は命令を無視してでもこの場に来る……全て私の予測通りだ」

 

 アークは自分の予測通りに姿を現したイズに右手を向け、続ける。

 

「お前がゼアのバックアップだということは既に把握済みだ」

「! ぐがッ…!」

「当然、お前にもここで消えてもらう」

 

 前に倒れている或人の体を横に蹴り飛ばし、真っ直ぐとイズに近付いていくアーク。

 

「うっぐ……! 早く、早くッ逃げろ!!」

 

 太陽は倒れながらもイズへと叫ぶ。それに反応し後退ろうとするイズだったが、

 

逃がさん

 

 ーーアークは逃亡を許さない。

 声を発すると同時にアークの足元に赤黒い影?跡?が浮かび、誰かの甲高い悲鳴と嘲笑うような声が周囲に鳴った。

 

「! っ、これは!」

 

 浮かんだソレはまるで生物の如き動作でアークの足元からイズの足元にまで移動し、イズの行動を完全に阻害する。イズが必死に抵抗してもそれから逃れることはできない。

 

終わりだ

 

 とうとうイズの前に到達したアークは悪意のエネルギーを右手に込め、拳を振り上げーー。

 

 

 ───────────────────────

 

 アークが更に進化したアークワン。

 その姿を目の当たりした瞬間、生存本能がけたたましく警鐘を鳴らしたのが分かった。俺は直感した。

 

今の俺達にこいつを倒す術は無い、と。

 

 自分の中でアークへ抱いていた憤怒が薄れ、心の内に秘めていた恐怖が膨張するのが分かる。力が入らない。体が震えた。立ち上がれない。小心者らしい好い様だ。

 

ーー終わりだ

 

 アークの声が鼓膜を震わす。イズがもうすぐ、文字通り終わりを迎えようとしている。立ち上がれず、歯を噛み締める或人の顔が見えた。

 

(あぁ、なんて酷い結末だ……)

 

 最悪だ。俺は結局、何も守れず終わるらしい。

 右手を握り締め、アークが拳を高く振り上げるのが見える。

 

(ハッ、ざまぁないなーー)

 

 俺は目を閉ざし、全てを諦めようと意識をーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の名前はワズ・ナゾートク。探偵型ヒューマギアです

 

(ーーあ……)

 

 ーーふと瞼の裏にアイツの姿が浮かんだ。

 

 助けられたかもしれなかった。

 だけど、俺が間に合わず、助けられなかった友……そんなワズとの記憶が脳裏に想起していく。

 

 

『ーー私は…私の「思い」を信じます。そして、私の思いを信じて……貴方がこれを渡すに相応しい人間であると判断します!

 

 かつて、ワズをこんな俺を誰かの為に戦うことのできる……誰よりも強く優しい人間だと判断した。

 

 なぁワズ、そりゃ過大評価が過ぎるんじゃねぇか? 俺はきっとこの先も……そこまで立派な人間にはなれないって。

 

 

……私に使命は、見つかるでしょうか?

 

 かつて、ワズは命を懸けて戦う理由を「使命」かもしれないと口にした俺にそう問いかけてきた。

 

 大丈夫、俺でも見つけられたんだ。人間よりも人間らしいお前ならすぐに見つけられるさ。実際……お前はきっと見つけられたんだよな? ワズ。

 

 

はい、またお会いましょう天本様。ご武運を

 

 かつて、ワズは自身の終わりを覚悟した俺へと告げた。

 

 あぁ、ありがとな……ごめんな。ワズ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何だ──俺にはまだやるべきことがあるじゃないか

 

 

 滅との決戦、あの時と似た感覚だった。いくら頑張っても願っても、動かないぐらいに死に体だったのに……やるべきことがあると分かった今は確かに動く。

 

「ッ……! ァ、ァア……!」

 

 アークワンに勝つ手段はない。この絶望をひっくり返す算段など、これっぽっちもイメージできない。

 

 無理だ、無茶だ、無謀だ、無意味だと弱い俺が。本心が告げてくる。

 

 それをすればお前は死ぬぞ、と。

 

「ゥ、アァ……っ、ぎっ……!」

 

 それでも、手に、足に、頭に、全身に力を込める。痛む傷も、流れる血も放っておけ……そう心中で自分に告げる。

 

 立て。立て。立て。立って、

 

 

 ーー今のお前にできることをしろ!

 

 

 ーー今のお前がやるべきことをしろ!!

 

 

そうだッ! 死ぬのはその後だ!!

 

 右手に持ったプログライズキーを強く、強く握り締める。

 

 死ぬのは怖い。怖くて怖くて仕方ない。

 

だけど、だけどッーー!

 

ストロング!

オーソライズ!

あああああああああ!!!

 

できることもせず、やるべきこともやれず死ぬ方が……よっぽど怖いッ!!

 

ショットライズ!

アメイジングヘラクレス!

ぐ、ッ…おおおおおーー!

 

 トリガーを引くと同時に駆け出す。次々と体に装着されるアーマーの衝撃に瀕死の体が度々蹌踉めく。それでも駆ける。

 

 これが俺の最後の変身かもしれない。

 それでも構わない。

 

 ワズ、俺はお前を助けられなかった。お前に恩返しできなかった。だからせめて、

 

ーーらあああああッ!!

 

ーーお前が守りたかったものを死んでも守るッ!

 再変身を果たした俺は右手を握り、反動で自分が倒れることなどお構いなしに全力で拳を振るう。

 

 その拳はイズに視線を向けてこちらに背を向けていたアークの顔面へと吸い込まれるように伸びーー

 

ーー愚かな

「!? ァ、うッ!! ゴハッ」

 

 ーーカウンターの重く鋭い一撃が俺の鳩尾に深く、深く、深く……突き刺さるように打ち込まれる。瞬間、仮面の下で吐血した俺はバランスを崩し、体は後ろに傾く。

 

ーーバルデル、以前言ったな? 次に会った時、それが貴様の最後だと……それを今、現実のものとしてやろう

「ガッ……ぁ、ア………」

「イズより先にお前の息の根を止めてやる」

 

 だが、俺の体が倒れるより早くにアークが伸ばした左手が俺の首をがしりと掴み、体は無理矢理立たされた状態で固定され、

 

絶望

「──私を止められる者はいない、誰一人

パーフェクトコンクルージョン

ラーニング5

 

 首を掴まれたまま体を橋に取り付けられた柵の前に立たされ、アークは右手でまたボタンを押してーー更にプログライズキーを押し込んだ。次の瞬間、辺りに悪意に満ちた悲鳴と嘲笑の如き音が鳴り響き、アークの右脚に凄まじいエネルギーが収束。

 

 その間、俺は自分の首を掴むアークの左腕に右手を叩きつけ抵抗を試みた。しかし、俺の体にはもう力はなく…叩きつけたつもりの手は弱々しくアークの左腕にぽんっと軽く当たるだけに終わり、

 

はあああああーーッ!!!

 

コ ン ク ル ー ジ ョ ン

 

 ーーアークは素早く蹴りの構えに入り、横蹴りを噛ます。

 

「ぁ」

 

 最後に俺の口からは掠れた声にもならない音だけが漏れた。

 

 

──────────────────────

 

 

絶望

「──私を止められる者はいない、誰一人

パーフェクトコンクルージョン

ラーニング5

 

 天本さんの首を掴み、動きを完全に掌握したアークは流れるように必殺技の態勢に移行する。天本さんの目には微かに光があった。だが、抵抗のために打ち下ろしたであろう彼の拳……その弱々しい力を見れば天本さんが限界なのは誰の目からも明らかでーー。

 

「アークッ…やめろ……もう…!!」

 

 俺は立ち上がろうと手に力を込めながら声を上げる。これ以上の攻撃を受ければ、確実に天本さんは死んでしまう…そう悟ったから。

 

 だが、アークは俺の声に反応することなく動きを止めず横蹴りの態勢に入る。

 

 その時、世界が一瞬──俺にはスローモーションに映った。

 

はあああああーーッ!!!

 

 赤黒い悪意のエネルギーを大量に溜め込んだアークの右足は高く上げられ、天本さんの胴体へとーー

 

やめろおおおおーーッ!!

 

ーー直撃。

 同時に大きな爆発が起き、吹き飛ばされた天本さんは橋に取り付けられた柵を容易く貫通し、仮面は割れて天本さんの体は宙へと投げ出される。

 

 天本さんが装着していたショットライザーは激しい火花を上げて壊れ、天本さんの変身は解除ーー彼は生身の状態で高所から自由落下していく。

 

あーー天本さあああああん!!

 

 変身が解除された時点で天本さんの目は閉ざされ、既に意識はなく……天本さんは真っ逆さまに落ちていきーー強烈な水飛沫が上がる。デイブレイクタウンの橋の下、そこに広がる川へと落ちたんだ。

 

「…………」

 

 突然の衝撃に俺の頭の中は一瞬で空っぽになった。

 

 余りにも現実味がわかなかった。

 

 天本さんが死んだ?

 

(天本さんが、死んだ)

 

 イズを守るために。

 いいや、イズだけじゃない。

 俺達を守るために、死んだ……

 

 

 その事実に俺は打ちひしがれるが…現実は残酷にも突き付けてくる。

 

「! こ、れはッ……!」

 

 ショットライザーが壊れた衝撃でここまで飛ばされたのだろう。倒れる俺の前には黄緑色のプログライズキーが転がっていた……その色は爆煙による煤で黒く汚れ、アークの必殺技の衝撃にバチバチと火花を上げていた。俺は痛みなど気にも止めず、火花を上げるプログライズキーを掴み握り締める。

 

 空っぽになっていた頭が痛みで冷静になる。

 

 そして現実を理解する。

 

 胸の中が、喪失感に包まれた。

 

あ、あああああああああ!!!

 

 気付けば、俺はただただ叫んでいた。

 

 

 

 

その日──天本さんは死んだ。

 




?「何?バルデルがアークワンの必殺技を受けたが大丈夫?水落ちは生存フラグ?そんな馬鹿な話があるか!仕事に戻れ!……みんな(バルデルの耐久力に感覚麻痺して)疲れているのか……(おまいう」


最後まで読んでいただきありがとうございます。
感想や批評、アドバイスなどありましたら遠慮なくお願いします!


仮面ライダーゼロワン

第21話 それでも俺は諦めない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。