今回がオリ主初変身回です。
それでは、どうぞ。
「バカ
「…ま、まぁな」
玄関前で靴を履いていた時、後ろから妹である美月に声を掛けられ俺は一瞬固まったが何とか返事をした。だ、大丈夫か? 声震えてないか?
やばいどうしよ。
予定では家族誰にもバレずに外出する…つもりだったんですけど……早速バレた。つうかなんでお前はこのタイミングでリビングから出てくんだ!? テレビ見てなさいテレビ!
「
「ど、どこってそりゃあ…………」
確かに美月の言う通りではある。
俺が夜に、それも19時頃に外出するなんてことは珍しい。あまり夜遊びとかはしないタイプというか、そういう悪い友達との付き合いは全くない……俺が夜に外出するなんてあれだ。今すぐに欲しいものがあったりとかしない限り基本起こらない出来事だ。
どうする…どう誤魔化す?
で、出来るだけ普通な感じで……もしかしてもう手遅れだったりする? …ええい、ままよ!
「コンビニだよ、コンビニ。ちょっと飲み物切らしちまってな」
「飲み物? お茶なら冷蔵庫にあるよ?」
「い、いや、久しぶりにコーラとか飲みたくなってさ!」
嘘である。
そもそも俺は炭酸飲料飲めん!
「そうなの? あ、コンビニ行くならついでにアイス買ってきてよアイス!」
「あ、あぁいいぞ! 買ってきてやるよ。何がいい?」
いつもなら絶対「イヤだね」と即答する俺だが、焦っているのもあって思わず承諾してしまう。ま、まぁアイス買ってやるぐらいでこのバカ妹の機嫌をとれて? 怪しまれず外出できるなら安い出費だぜ!
「う〜ん、
「りょーかい。……じゃあ行ってきまーす」
そうして俺は逃げるように外出したのだった。
ふぅ、なんとか乗り切った…死闘だったな(達成感)……いや何達成感抱いてんだ俺!? まだ目的達成してねーよ? とりあえず人目のつかない場所に移動しようそうしよう。
「いってらっしゃーい! ……あっ!バカ
兄を見送った美月はアイスを買ってきてくれるという事に喜び、つい聞き忘れていた事をもう既に家を出た兄に対して言った。
「なんでコンビニに行くのにリュック背負ってったんだろ?」
太陽はリュックを背負っていた。
もしこれについて先ほど指摘されていたら…多分太陽は無理矢理はぐらかして外出していたに違いない。
▲△▲
ゼツメライザーを取り付けられたヒューマギア。
元は青かったその目を不気味に赤く光る。
「滅亡迅雷.netに、接続……」
そんなヒューマギアに黒いヘアバンドをした男は表情一つ動かさず確認する。
「為すべき事は理解しているな?」
「ーー滅亡迅雷.netの意志のままに。人類を絶滅させること」
「ならいい。やれ」
男はヒューマギアの返答を聞いて、ゼツメライズキーをヒューマギアに手渡した。
『オニコ!』
ゼツメライズキーを鳴らしたヒューマギアは、ゼツメライザーにそのままゼツメライズキーをセットしボタンを押した。
【ゼツメライズ!】
「アアアアアアアアアアアア!!!」
その瞬間、ヒューマギアは絶叫を上げる。
セットしたゼツメライズキーには触手状の赤いワームが複数伸び、ゼツメライザーの外装を破壊。
「ーー人間を殺す」
こうしてヒューマギアはマギアに変貌した。
「…マギア化に成功」
無事に成功したマギア化。
その結果を冷静に分析した男は動き出したマギアの姿を見ながら淡々と述べた。
「我々の手で必ず人類を絶滅させる」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ここなら大丈夫か?」
夜、人目のつかない場所。
考えてみてふっと俺の頭に浮かんだのは公園。
うん、考えてた通り誰もいないな!
よし早速まずはベルトを巻いてみるか。
とりあえずベンチに座り、背負っていたリュックを下ろし中からベルトとショットライザーを取り出す。
家で昼寝した後、マニュアルを読み直して色々分かった事がある。
まずこのベルトに付いていた黒い部分。これはショットライザーを取り付ける用のバックルらしいこと。
(えーっと? マニュアル通りならここに合わせて…)
「おっ、付いた」
取り付け完了!
後はこれを腰に巻きまして…。
俺がショットライザーを付けたベルトを巻こうとしたその直前ーー。
「き、きゃああぁぁぁあ!?」
突如として誰かの大きな悲鳴が聞こえた。
「!! な、なんだ!?」
夜の公園。
何の前触れもなく轟く悲鳴。
ビビらないわけないじゃん!?
俺は反射的にベンチから飛び上がって立つ。
よかった俺以外誰も居なくて…(安堵)
もし美月とかに今の醜態見られてたら、一日中いじられてるだろうな……あー怖い怖い。ってそれどころじゃないか!
「今の声……あっちからか?」
(あっちは……特に何もなかった気がするな)
悲鳴が聞こえた場所を適当に検討して俺はリュックを背負い直し、急いで悲鳴が聞こえた方向に向かって走り出した。
今思うと何で自ら危険かもしれない場所に急行したのか…これがわからない。興味本位で行動しない方がいいって学びました(真顔)
(ここら辺か? あ、あの人か? …えーっと…後ろに居るのは……何だ?)
そこに着いた時、俺が最初に見たのは倒れた状態で恐怖のためか? 緩慢な動きで後退りする女性と、
「や、やめてッ! 来ないでっ!」
懸命に逃げようとしている女性の目の前に立つ異形。
その大きな翼に手の爪、赤い複眼を見ればそれが人じゃないということは誰の目からも明らかで、
「人間発見。殺す」
物騒すぎる台詞を吐く。
女性は更に怯える。
異形の吐いた台詞によく似た台詞をつい一月とちょっと前に聞いた時のある俺からすると、異形の様子は恐怖でしかなかった。
きっと今の俺は血の気が引いてしまっていると思う。
『『ニンゲンニンゲンニンゲン! ゼゼゼ、ゼツメツゼツメツッ!! ココココォ! コロスコロスコロスコロスコロスコロス!!』』
壊れたスピーカーのように同じ単語を繰り返し吐きながら赤い目をしたヒューマギア達。目の前のどことなくコウモリのような姿をした異形に、デイブレイクの被害に遭ったあの日…俺をどこまでも追いかけてきたヒューマギアの姿が重なる。
「ひっ……!」
気付ければ俺は小さな悲鳴を上げていた。
「っ!? ぁぁ! た、助けて! お願いッ!!」
その声は女性の耳に届いたようで、俺の存在に気付いた女性はそう叫んで俺に助けを求めてくる。
(やめろ! やめてくれ…! そんな目で俺を見るなッ!)
ーー助けを求めるその目。
最悪な気分だった。
俺にとってあんたは赤の他人だ。
なのに何でそんな目で俺を見る?
俺が助けてくれるとか思ってんのか?
ふざけろ! 自分の命を危険に晒してまで「赤の他人」を助ける? そんなことしてる余裕俺には無い。分かるだろ? あんたと同じで俺も怖いんだよ!? 足もガクガクで立ってるだけでもやっとなんだよ…。だから……。
俺はヒーローでもなんでもない。
正義感だって人一倍強いわけじゃない。
恨んでくれてもいい。
人でなしって罵ってくれてもいい。
ーー俺は死にたくない。
ーーだからあんたを見捨てる。
「二人目発見。人間は、皆殺しだ」
俺に向けられた女性の叫びにより、突っ立っていた俺の存在に気付いらしく異形の化け物は淡々と口にする。
だが、化け物が最初にターゲットにしたのは最初に発見し尚且つ今一番近くにいる女性だということは変わらないらしい。
「お願いだから助けーーがッ!!」
化け物は倒れていた女性の細い首を爪で刺さずにがしっと容赦なく掴むと、片手で軽々と体を持ち上げる。女性は呼吸できず苦しそうにもがく。
「…………」
化け物はそのまま首を掴んでない方の手を上に振り上げる。
何をしようとしているのかは容易に想像できた。
化け物はその大きな爪で確実に女性を切り裂き殺すつもりなのだ。
「ッ……!」
出そうになる悲鳴を殺し、震える足を動かす。
あぁそのままただの一般人らしく逃げよう!
震えながら俺は後退りする。
それも我が身可愛さに、だ。
「う、あ、がッ…ぁ……ぁ、ぁ……」
声にならない声を上げる女性。
今にもその爪を振り下ろそうとする化け物。
俺はその残酷な光景から目を背け、ただひたすらに情けなく逃げ出す……
「あああああああああああッ!!」
なんでだろう。
いつの間にか俺は女性の首を掴み持ち上げていた化け物に向かって、全力でタックルを噛ましていた。
「かはッ…! ッ、はぁはぁ…! ど、どうしーー」
化け物は俺のタックルを予測していなかったらしく、タックルを受けた事で女性の首から手を離し僅かに後退する。
「ーーうるせぇ! 知るかボケ! いいから死にたくないんならさっさと逃げろッ!」
心底理解が追いつかない様子の女性の問いに俺はそう怒声に近い声で返す。俺だってわかんねーよアホ! あんたは「ラッキー」程度に思って早く逃げろバカ!
そんな俺の気持ちが伝わったのか、普通に今さっきの俺と同じく逃げようと動き出す女性。浅い呼吸でよろよろと体を起こす女性だが、化け物のターゲットは未だ女性のままらしい。
「邪魔だ」
「っーーぐはッ!!」
化け物は逃げる女性の前にいた俺を蹴り飛ばす。
その後に化け物はーー飛んだ。
翼があるのだから飛べるだろうな、とは思っていたが本当に飛んだ。そして、逃げる女性に狙いを定めそのまま真っ直ぐ低空飛行する。
見れば分かる。
あの速度で向かって来られたら絶対に死ぬ。
逃げる女性だがどう考えたって化け物の方が速い。
女性が死ぬまでもう10秒もないだろう。
(
蹴られた腹部を抑えながら、俺は今更思い出す。
目に入る、蹴り飛ばされた衝撃で肩からずり落ちたリュック。
空いたチャックから見えるベルトーーそのバックルに付いたショットライザーの存在に。
(これを忘れてるとかどんだけ焦ってんだ俺ッ!)
痛みに歯を食いしばりながらリュックの中身に手を伸ばし、ショットライザーのグリップを掴む。俺はそのままバックルからショットライザーをすぐに取り外した。
その間にも女性の背に化け物の爪が切り裂く寸前。
【ショットライザー!】
(反動が強いとか書いてあったけどそれどころじゃねー!)
「当たれえッ!!」
右手でグリップを持ち、左手を添える。
なんて構えは出来ず、俺は素人らしく両手でグリップを握り締め、低空飛行する化け物に銃口を向けトリガーを引く。
「ッ?! ーーガァッ!?」
「! 当たった!?」
(ッ! 反動やばっ!? 一発撃っただけなのに腕がガクンってしたし、手が超痺れてる!)
その一発は奇跡的に化け物の左翼に直撃し、化け物はアスファルトの上に倒れる。女性は思わず振り返り「ひっ!?」と悲鳴を上げたがすぐに逃走を再開した。
よし、あれなら無事逃げれそうだな。
…いや何やってんだ俺っ!?
人助け? 自己犠牲?
偽善者かよバカ野郎!
これ次狙われるのは……
「……ッ、人間…!」
どう考えても俺ですよねえ!?
や、やべぇどうしようッ!?
立ち上がった化け物は女性を諦め、ターゲットを俺に変える。
理由は俺が距離的に近いから?
それとも攻撃してきたから?
あーわかんない、わかんないけどこの状況がマズイことは分かるぜ!? いやだー死にたくない!(切実)
(どうするどうするどうする!?!? ハッ! そうだ変身だっ!)
まるで一般常識かのようにマニュアルに書かれていた「変身」。確か説明ではアーマーを装着だとか書いてあったよな!?
俺は慌ててリュックからベルト、黄緑のカセットテープことプログライズキーを見つけて取り出す。
「ま、待て待て! 一旦タンマッ! ベルト巻くから!」
当然待ってくれる筈もなく。
化け物は俺に接近してその爪を振り下ろす。
「殺す!」
「あぶッ!?」
咄嗟に前にローリングした俺。
またも奇跡的に回避に成功する。
すげぇな俺!? あ、ちなみに今のは体が勝手に動いた(謎のドヤ顔)
化け物から素早く距離をとった俺はショットライザーをバックルに取り付け、勢いよく腰に巻く。
「それで次はこう!?」
『ストロング!』
【オーソライズ!】
「これで展開かっ!?」
目の前にいる化け物の存在のせいで超動揺しながら、俺は右手に持ったプログライズキーをショットライザーにセットし、右手人差し指でプログライズキーを慎重に展開する。
そうして俺は変身シークエンスを何とか済ませていく。
【Kamen Rider. Kamen Rider.】
「ふぁッ!? な、何だこの音?」
「人間は殺す!」
「うわぁ来んな!? え、ぁーー」
流れた待機音に驚きながら俺はバックルからショットライザーを取り外し、迫ってくる化け物に慌てながらショットライザーを向け、
「へ、変身…?」
【ショットライズ!】
マニュアルに書いていた文。
変身時には変身と言う、という謎の説明文を思い出しながら俺は半疑問形で「変身」と口にしてトリガーを引いた。
「ッ!?」
その一発を化け物はギリギリで後ろに飛び退くことで避けた。そして、
(え、あれ変身は? プログライズキー入れて撃ったら変身完了じゃないの? …は?)
ショットライザーをバックルに戻した俺は顔を上げ仰天した。
「だ、弾丸返ってきたぁ!?」
どういう原理ぃ!?
放った弾丸は俺の方に真っ直ぐ返ってくる。
あれ、こんなのマニュアルに書いてなかったですよね?
はっ?(半ギレ)
え、俺どうなんのこれ?
あっ、もしかして死ぬ?(直感)
「うわぁ!?」
俺は思わず目を閉じ両腕を前に突き出して身構えた。次の瞬間、返ってきた弾丸は俺の腕に当たり、
『アメイジングヘラクレス!』
【With mighty horn like pincers that flip the opponent helpless.】
そんな音声が流れると同時にガシンッ!ガチャン!という金属音が辺りに響き渡った。
「ぇ、あっ! 変身できた!?」
ビビって閉じていた目を恐る恐る開くと、俺の左半身には白いアーマー、マニュアル通りならライズベースアクタと右半身には綺麗な黄緑色のアーマーが装着されていた。それに頭部には角までついている。
(これが変身……すげぇ…)
「ーーお前は何だ?」
初めての変身。
感動してまじまじと自分の手を見て、ペタペタと顔を触ったりする俺に化け物は問いかけてくる。
俺は…なんだ?
えっ、何自己紹介すればいいのか?
「俺は天本……いや」
自分の名前を口にしようとしたその時、頭に突然「名前」が湧いた。しかも、その名前に俺は違和感を一つも抱くことなく寧ろ「これだ…!」という確信めいたものを抱く。
だから名乗る。
「ーーバルデル。それが俺の名だ!」
これがデイブレイク被害者の俺の初変身であり、この物語の始まりである。
▲△▲
「どらぁあッ!」
「ぐはァ!?」
俺は黄緑色の装甲が纏われた右手で思い切り化け物の胸を殴りつける。その瞬間、殴った拳に反動を感じたが化け物の体はその一撃だけで大きく吹き飛ぶ。
「パンチ力ハンパねぇ!? え、なんか…負ける気がしねぇ!」
びっくりする威力を発揮した自分の右手を見て俺は驚愕を示す。
変身しパワーアップしたことで体は軽いし、化け物に蹴られた所の痛みもあまり感じない。視界も驚くほど鮮明……なんか今ならなんでもできる気がする。これあれ? 全能感ってやつ?
「ガッ、ハァァァァァアッ!!」
胸を押さえながら身を起こした化け物は高く飛ぶ。
するとつい先程、逃げる女性にやったように急降下し低空飛行で攻撃を仕掛けてくる。
「おっと!? 悪いけど空に飛んでも、こっちには
バックルからショットライザーを取り外し構え、連射する。数撃ちゃ当たるの精神だ!
一発目は外れ、二発目も外れ、三発目も外れ、四発目でやっと命中。
その一発は化け物の頭部に当たり、化け物を地上に落とすことに成功する。
「ッ! 人間は、絶滅させるッ……!」
「落ちながら何物騒なこと言ってんだ!」
地上に落ちた化け物は怒涛の連続攻撃を繰り出す。
「ガァァァァァア!!」
「ッ! ふ、はっ!」
「アァァァア!」
「喧しいわっ! おりゃあああ!!」
だが当たらなければどうということはない!(シャア)
俺はなんとか全ての攻撃を捌き、カウンターの右アッパーを化け物の頭部に打ち込んだ。今、ショットライザーで撃たれた部分と近い部分を殴られたからか。化け物はそれを受けると大きく後ろに倒れ、立ち上がろうにもすぐには立ち上がれなくなる。
「おらっ!」
「ガッ!? ッ…!」
倒れる化け物の腹部を、サッカーボールを蹴るように蹴り上げ吹き飛ばす。戦い方が荒っぽい? チンピラ? 知るかよ! こちとら必死でやってんだ。
遊びでやってんじゃないんだよ!(カミーユ)
「悪いが油断なんてしてやらねぇ。全力で行く!」
『ストロング!』
ショットライザーに入れたプログライズキーのボタンを押すと、マニュアルの説明にも書いてあった必殺待機音らしきものが流れる。
必殺技がどんなものかはわからんが、滅茶苦茶強いに違いない!
エネルギー?のようなものがショットライザーの銃口に集束していくのを目の当たりにしながら、真っ直ぐ銃口を化け物に向け、
「これでトドメだ! 多分なあ!」
【アメイジング ブラスト!】
ーー俺はトリガーを引いた。
瞬間、必殺音声が鳴り必殺の一撃が放たれる。
発射されるはライトグリーンの巨大で鋭いヘラクレスの角のような形をした一発。
ス
ト
ロ
ン
グ
ア メ イ ジ ン グ ブラスト
「?!?! グワアァァァア!!!」
その一撃は化け物ーーマギアの胴体を容易く貫き、最後にはその破壊力の前にマギアは破壊され爆発した。
決まった……ってドヤ顔したい気分だが、
「っっっ…
必殺技の反動に耐えきれず俺の体は後ろに吹き飛んでいて、俺は尻餅をついていた。くっそーめちゃくちゃダサい…!
ま、まぁ初めて使ったし多少のミスはしゃあないよね! ねっ!?
「た、倒せた。よっしゃあ! どうだ見たか! ……」
見てる人誰もいなかったわそういや(倒置法)
(プログライズキーを抜いて変身解除、だったよな?)
ショットライザーの天面にあるボタンを押しながら、セットしたプログライズキーを引き抜くと俺の体に装着されていたアーマーは黄緑の光に包まれ、一瞬で消え生身に戻った。
「……はぁー…怖かったぁ」
大きく息を吐き出して俺は本音を吐露する。
全能感?みたいなのは確かにあったけど、正直めっちゃ怖かった! はぁ倒せてよかったよマジで!
「……今何時だ? …やべっ」
転がっているリュックを拾った俺は中にショットライザーを取り付けたバックル&ベルトとプログライズキーを仕舞い、中からスマホを取り出し現在時刻を確認し声を上げた。
『21:48』
「美月のヤツ…絶対怒ってんじゃん」
あープンプン状態と化してるな間違いない。
あぁ違う違う。俺を心配してるとかじゃなくてただ単にアイス買ってくるのが遅いからプンプン怒ってるって話だ。
「コンビニでアイス買って帰るか…いててッ…」
リュックを背負い俺はその場を後にする。
あの化け物が何なのかとか、気になることは大量にあるが今はもう疲れた。すぐにでも寝たい…そんな気分だった。
「マギアがやられたか」
一切予測していなかった訳ではない。
ただここまで早くオニコマギアが破壊されたという事実に、予定を僅かながら狂わされた男は事実を確認するように呟く。
そして、ヒビ割れたオニコゼツメライズキーを回収する。
『ーーバルデル。それが俺の名だ!』
プログライズキーで変身し「バルデル」と名乗った謎の存在。
男はオニコマギアに取り付けていたカメラ越しに見たバルデルを、
「我々の目的の障害に成り得る存在か…」
ーーそうメモリーに記憶した。
「だが、勝利するのは我々だ」
そう言って最後、男は闇の中に姿を消した。
▲△▲
「…素晴らしい」
天津 垓はどこからか監視していたバルデルとマギアの戦闘映像を見て、感嘆したように零す。
天本 太陽。
彼は試作品であるショットライザーでの変身成功。
それだけではなく、マギアの破壊をも成功させた。
それは垓にとって期待以上の結果であった。
(初めての変身、初めての戦闘であれだけマギアを圧倒するとは……素直に感心させてもらった)
素人らしい必死で荒い戦い方。
それを見た垓は彼が大きなポテンシャルを秘めていると感じた。
素晴らしい! 彼ならば、マギアから人々を守る、
「ーー序章の主役としては十二分に相応しい」
そう口にし、垓は悪辣で残忍な笑みを浮かべた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おっそい! コンビニ行くのに何時間かかってるのさバカ
「いや、それは本当にすまんかった! あ、これアイス」
「なんなの?
「怒るか感謝するかどっちかにしろよ……ま、まぁ遅かったのはあれだよあれ。俺さ今日退院したばっかりだから。歩行スピードが…な?」
「…むぅ…後で根掘り葉堀り聞くからね! 覚悟してなよバカ
「頼むから勘弁してくれよ美月…ぐふっ」
小さくため息をつき、俺はリビングのソファーにどんと沈むように倒れた。超疲れましたよバカ野郎っ!
こうして俺の怒涛?の一日は幕を閉じた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
感想や批評などありましたら遠慮なくお願いします!
補足?説明
・バルデル(バルドル?)という名前は調べれば出ると思うんですが、北欧神話の夏の太陽の神様の名前らしいです。この名前にした理由はショットライザーに変身するライダーが「バルカン」「バルキリー」と二人とも「バル」という二文字から始まってるからというシンプルなものです。
「お前はなんだ?」
「バルデル。それが俺の名だ!」
のところ、脳内BGMでゼロワン一話の変身時のBGMと戦闘曲を流して書いていてとても楽しかったです笑
序章のストーリーについて
-
エンディングまでダイジェストで突っ走る
-
出来る限り丁寧にエンディングまで歩く
-
作者の好きなようにどうぞー