デイブレイク被害者が仮面ライダーになる話   作:平々凡々侍

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タイトルで多くの方が色々察してそうですが……多くは語りませぬ!
それではどうぞ!


Rising sun

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──以上でチュートリアルモードを終了します

 

 真っ白な空間──衛星ゼアの思考回路内にそんな音声が鳴り響く。

 

「これでいいのか?」

 

 目の前に浮かんだ『完了』の文字?を数秒眺めた後、隣に立つ□□に目を向けて太陽は訊ねた。すると□□は微笑み頷く。

 

「はい。天本太陽(あなた)の覚悟を再確認し、このプログライズキーのデータをラーニングさせる……ここまでが衛星ゼアの導き出した結論ですから」

「……じゃあ、こっから先は?」

「それは勿論『未知』ですよ」

 

 未知?思わず首を傾げる太陽に□□はこう告げる。

 

「ここから先は衛星ゼアでも予測できない、確実な結論が出せない未来……つまり、ここから先はあなた達【仮面ライダー】次第ということですよ」

「ーーーー」

「まぁ、今最も重要なのは天本様がそれ(・・)を使いこなせるかどうかでしょうね」

「…地味にプレッシャー掛けるのやめろぉ!」

 

 続く□□の言葉を聞いた太陽は顔を引きつらせ、そんな太陽を見て□□はまたも笑う。

 

「おまっ何笑ってんだ!? こちとら気が気じゃないンだが?」

「これは失敬。ですが慌てる必要は微塵もないでしょう」

「へ?」

 

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「──あなたは今まで通り、自身の心のままに……未来を進めばいいんですよ

 

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「──詳しい事はよくわかんねぇけど……あぁ、わかった

 

 そう口にして頷き、笑顔で言う□□に釣られて太陽も思わず笑った。

 

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「ーーウオオオオオッ!!」

 

 獣の如く咆哮した或人ーーゼロゼロワン(001)は真っ直ぐにアーク目掛けて駆け出す。

 

「せっ! はあッ!!」

 

 荒々しい前蹴りを噛まし、続けて全力で殴り掛かる。

 

「遅い」

「!? ぐふッ…! っ、おおおおお!!」

 

 001の攻撃を見切ったアークは片手でそれをいとも容易く捌き、カウンターに膝蹴りを胴に打ち込む。それに大きく怯んで数歩後ろに下がる001………だが、

 

「せやあああッ!!」

 

 ーー001はすぐに再度攻撃を仕掛ける。

 

「フン」

悪意

 

 001再度の攻撃、顔面へのパンチを首を僅かに動かし躱したアークは左手でドライバー上部のボタンを押し込み、更に悪意を右掌に溜め込む。

 

「グゥ…!? かはっ!!」

 

 そして、その右掌を001の腹部に当てて赤黒いエネルギー「スパイトネガ」をゼロ距離で爆発させる。

 

「うぅ、ッ……まだッ…まだァ……!」

「無駄だ。ゼロワンと異なる姿に変身した所で結果は変わらない。それが私の結論だ」

「っ、そんな結論……超えてみせる!!」

 

 爆発の威力で大きく後方に吹っ飛ばされ、壁にその背を強く打ち付け倒れた001は苦しそうに呻いた……だが、またすぐに闘志を持って立ち上がる。

 

「おりゃあああーーッ!!」

「……まるで天本太陽(バルデル)の如き気迫だな」

 

 001の姿……絶対に諦めないと決意した飛電或人の姿、その気迫にアークは天本太陽(バルデル)の姿を思わず重ねる。それほどまでに今の或人の気迫は凄まじく、不屈の精神で戦う天本太陽(バルデル)を彷彿とさせた。

 

「おらあああっ!」

「だが、例え気迫が凄まじかったとしても……お前が私にとってのイレギュラーに成り得る事はない。お前に私は止められない」

「がッ…!? く、そんなこと……お前が……!」

 

 アークは001の気迫に動揺することなく、冷静にその攻撃の軌道を予測して素早く左足で胴体を蹴りつけ告げる。蹴りを食らってまたも飛ばされた001だったが態勢を崩しながらも後ろ宙返りをして着地に成功し、

 

「ーーお前が決めるなあッ!!」

 

 ーーアークの言葉に叫び、瞬時に再び攻撃を仕掛ける為に拳を振り上げた。

 

 

 ──────────────────────

 

 

なぁ、お前は……こっちに帰ってこれないのか?

 

 太陽は半ば諦め気味に□□に問いかける。

 

「……現状、不可能でしょう。ゼロワン計画に関わる私にはバックアップがありませんから」

「まぁ、そうだよな……」

 

 分かってはいた。だけど、改めて本人の口からそう言われてしまうと……中々にショックを受けるもんだな、と太陽は思った。

 

「ですが私の外見・役割のデータが保存されたヒューマギアプログライズキーを使用すれば私と同型のヒューマギアを作る事は可能でしょう」

「…………」

 

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 □□のその発言に太陽は暫し沈黙してから一言、

 

「……そっか、それじゃ仕方ねぇな」

 

 ーーそう呟いて寂しげに微笑む。

 太陽は或人とイズとの交流の中で、当然ヒューマギアプログライズキーの存在を知り得ていた。しかし、決して□□の復元を或人に提案する事はなかった。

 

「復元させようとは思わないのですね? ……理由を聞かせてもらってもよろしいですか?」

「はぁー? それ……お前が俺に言わせんのか?」

「あはは、申し訳ありません。直接あなたの口から聞いてみたかったので」

「お前なぁ……はぁ、ヒューマギアらしかった頃のお前はどこいったんだよ?」

「ふふ、綺麗さっぱりいなくなりましたよ。あなたの言葉のおかげで」

 

 □□の意地悪な質問に太陽は頭を掻き答える。

 

「……ヒューマギアプログライズキーでお前と同型のヒューマギアを復元したとしてそいつは本当にお前なのか?」

 

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「……さて、どうでしょう?」

 

 態とらしく首を傾げる□□に太陽は自分なりの考えを伝える。

 

きっと違う。声や姿が同じでも、そこに生まれるだろう心は別物なんだ。……死んじまったお前と声や姿は同じで、中身が別物のヒューマギア……俺にはそいつと仲良くやっていける自信はない

 

 

あと、仮にお前と同型のヒューマギアを復元させたとしてさ……。俺は声や姿がお前と同じそのヒューマギアに……俺の知るお前を重ねてしまうかもしれない。お前と同じように接してしまうかもしれない

 

 

それはお前にも、復元されたお前と同型のそのヒューマギアにも失礼だろ。つうかそりゃ、お前の心を侮辱してるのと同じだろ? ……それだけはやっちゃいけない気がすんだよ

 

 何か色々言ったけど…まぁつまりはだな?と太陽は自分の中の結論を最終的に、簡潔にこう伝えた。

 

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「──まぁなんだ……つまりは、少なくとも俺にとっての【ワズ・ナゾートク】は一人だけって話だ

 

 それを聞いた□□は……ワズ(・・)は、

 

やはり、あなたは……──」

 

 ──誰よりも強く優しい人ですね

 ワズ・ナゾートクはヒューマギアらしくない、人らしい、泣きそうな顔で心底嬉しそうな笑顔を浮かべる。

 

「……ぷっ。何つう顔してんだお前」

 

 その笑顔にやっぱり太陽はまた釣られた。

 

 それから暫くして、ワズの体にノイズが走り、その足元からは水色の数字……衛星ゼア内のデータが溢れ出し始める。また同時に太陽の視界は徐々に朧げなものへと変化していく。

 

「! どうやら…そろそろ時間のようです」

「……そうみたいだな。ったく、ゼアも酷いよなぁ? 俺への説明役にお前を選んで、数十年振りに再会させたくせに…のんびり話す時間もくれねぇんだから」

「ふふ、同感ですね。私も、もう少し天本様とこうしてのんびりと話をしたかったのですが……今は時間も惜しい状況のようでして」

「わかってるわかってる。今頃向こうじゃ、アークと天津さん達が戦ってんだろ? 早く起きないとな」

 

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「またな、とは言わねぇーぞ?」

「えぇ」

 

 衛星ゼアとの無線接続が切れる直前、太陽はワズへと右手を差し出しニヤリと笑う。それにワズは自分の右手を出して応えーー握手する。

 

「じゃあな、会えてよかったぜ──ワズ」

「はい、私もです。どうかご武運を──天本様」

 

 太陽の視界が白い光に包まれていき、その光は段々と強くなる。太陽は穏やか心持ちで目を閉じた。

 

 

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(死ねないよなァ……?)

 

 意識が覚醒した俺の手にはブランクキー…だったもの。翅を広げた緑色のヘラクレスが描かれたプログライズキーが強く握り締められていた。

 

 

 体を起こそうとした俺は……激痛に襲われ、血を流し、

 

「ーーハッ……まだ、生きてんなぁ……」

 

 自分の耐久力(しぶとさ)に呆れ気味に苦笑し、まだ自分が生きている事を実感しながらふと空を見上げる。ちょうど風が吹き、俺の髪を揺らす。

 

「ハァ、ハァ……ッ、道理で涼しい訳だ」

 

 空は暗かった。どうやら今は夜中らしい。

 空の大部分を覆うように雲が広がっている。

 

(あれからどれぐらい時間が経った? 一日? 一週間? 一ヶ月?)

 

 暗い空を見上げながら思う。

 まだ間に合うか?と。

 無論、答える者はここには居ない。

 

「……あぁ、わかってる」

(間に合うかどうかじゃなくて、間に合わせねぇとダメだよな)

 

 それでも、誰かが答えてくれた気がした。

 

 手に持ったプログライズキーを見つめながら俺は立ち上がって…顔を上げる。俺の目に映ったのは真っ暗だった空……その奥から暖かい、優しい淡紅色の光が広がっていく瞬間ーー。

 

………さぁて──

 

 覚悟はできた。

 

 いや、疾っくの疾うにできていた。

 

 

「──リベンジさせて貰うぜ?

 

今──太陽は昇った。

 

 ───────────────────────

 

「甘い」

「ぐゥ!? ぁ、ガァ……ッ!」

悪意

 

 アークは001の首を左手で掴むとそのまま壁に叩きつけた。何とかその拘束を解こうと001は踠く。

 

恐怖

 

 だが、拘束を解けずアークは首を掴む左手に更に力を入れて締め上げ……空いた右手でドライバー上部のボタンを押し込み悪意を貯めていく。

 

憤怒

「ッ、グゥ、ぎっ……!!」

憎悪

 

 まずいッ!!

 首を締め上げられながら001はその一心で必死にアークに攻撃を仕掛け、この状況を切り抜ける為に思考を巡らせる。そして、

 

ライジングディストピア!

「っ!? ぐ、ァ、アアアアアッ…!!」

 

 001は首の痛みを堪え、自由の利く手でフォースライザーのレバーを押し戻しーー引いた。

 

「ウ、オオオオっ……!」

「!」

 

 途端に001の体から赤黒い煙が噴出し、001ーー或人は自分の体がふっと軽くなりパワー・スピードが飛躍的に上昇したことを実感する。

 

 001はその状態で首を掴むアークの左手を両手で掴むと、力づくでそれを引き剥がし、

 

「ハアアアアアーーッ!!」

 

 ーー壁に右足を付け、全力で蹴った。瞬間、001は加速して前へと飛び出す。

 

「!? この力は……!」

 

 そのパワーに。そのスピードに。

 アークは僅かではあるが動揺を露わにする。

 

「らああッ!」

「無駄だ」

 

 加速した001はスピードの乗った前蹴りを繰り出し、次にその右拳を突き出す。アークもまたその攻撃に合わせて右拳を突き出した。

 

ディストピア

 

 

 拳と拳が激突し、赤黒い衝撃波が巻き起こる。

 

「ぎっ、ウオオオオオーーッ!!」

 

 アークの攻撃に数歩後退した001は体からは再び赤黒い煙を噴出させ、地面を強く蹴り、スピードを更に上げる。体に走った激痛に苦しそうな呻き声を出しかけーー或人は咆哮した。

 

「掛かって来い」

 

 それを見たアークもまたスピードを上げて応戦する。二人の殴り合い、蹴り合い、()つかり合いは目にも留まらぬ速さで展開していく。

 

「ーーふんッ!」

「ーーらあッ!」

 

 同時に繰り出したパンチは互いの胸を叩く。

 それを受けたアークは一切怯まず、逆に001は大きく怯む。だが、或人の闘志は削げない。

 

「ーーはッ!」

「ーーはあッ!」

 

 同時に繰り出したキックが衝突する。

 アークのキックの威力に001は歯を食いしばるが、再びキックしてアークにすぐ立ち向かう。

 

「ーー遅いッ!」

「ーーうグッ!?」

 

 一瞬で001の背後を取ったアークは手から「スパイトネガ」を発生させ、空中に浮くと001へとかかと落としを仕掛ける。それを防ぐ為、咄嗟に両腕をクロスさせ防御態勢をとった001だがーー守りは容易く破られ、地面が砕け粉塵が発生。

 

「ハァ、ハァ……」

「飛電或人、滅びの時だ」

 

 地面を転がり、息を切らし、何とか起き上がる001に歩み寄ってそう口にしたアークは徐に自身の右手を持ち上げて拳を握って振るう。

 

「! まだだァ……!!」

「!?」

 

 その拳は001のスペックでは防ぎ切れない一撃だった。しかし、001は、或人は両手でそんな一撃をがしりと掴んで見せ、

 

お前を止められるのはただ一人……俺だ!!

 

 ーー反撃にアークの胴体を蹴り付け、距離を取った001はアークに指を差し、最後にその指を自分へと向けてレバーを押し戻す。

 

ライジングユートピア!

ーーウオオオオオッ!!!

 

 押し戻した黄色のレバーを勢いよく引いた001は高くジャンプする。血のような煙が大量に噴出し、複眼は赤く発光。痛みに襲われながらも001は叫んだ。吠えた。

 

絶対に逃げない! 絶対に諦めない!

 

 その思いを胸に001は蹴りの態勢に移行し構え、

 

「ーー俺は、仮面ライダーだ……!!

 

 ーー全身全霊のライダーキックを繰り出す。

 

絶望

「ーーこれで終わらせてやる

パーフェクトコンクルージョン

ラーニング5

 

 アークは左手でドライバー上部のボタンを押し、間髪入れず右手でプログライズキーを押し込みーー001と同じく高くジャンプ。

 

 ーー此方もまたライダーキックを繰り出した。

 

「ウオオオオオーーッ!!」

「ハアアアアアーーッ!!」

 

 黄のエネルギーと赤黒いエネルギーが激突し、強烈な赤い火花が拡散する。

 

ライジング

ユ ー ト ピ ア

 

パーフェクト

コンクルージョン

 

 

そしてーー

 

「ーーーー」

「ーーーー」

 

ーー決着が付く。

 

 

 

 

 

「あぐッ、カハ……!!」

 

 アークの必殺技にダメージは許容範囲を遥かに超え、001の変身は強制解除されーー或人は吐血して倒れ、

 

「ッ……馬鹿な」

(一体どこにこれだけの力が……?)

 

 001の必殺技を「ドライバー」に受け、少なくないダメージにアークは暫し呆然と死に体の或人を見下ろす。

 

 或人は確かにアークの予測を超えた力を見せたのだ。

 

「認めよう。貴様は確かに、私の予測を超えた……だが、結論は変わらない」

「うぐッ……がァ……」

 

 しかし、もう或人に戦う力はなかった。

 そんな或人へアークはトドメを刺すべく歩み寄り、スパイトネガで赤黒い球体を作り上げる。

 

「社長!」

「くっ、このままでは……!」

「やめろアーク…!」

 

 そうはさせまいとする諌、唯阿、垓も飛び出そうとするが彼等もまた或人と比べればまだ良い状態だがアークの攻撃に瀕死手前の状態に陥っている。到底アークから或人を救う力は残されていない。

 

(ごめんなさいッ…天本さん…ワズ……俺は、俺はっ……!)

 

 絶対に逃げないと戦った。

 絶対に諦めないと戦った。

 

(俺じゃアークは止められないのかっ……!?)

 

 でも、届かなかった。

 

「くっ…そォ……」

 

 或人は拳を地面に叩きつける。

 

滅べ、飛電或人

 

 そんな或人にアークは無慈悲に告げる。次の瞬間、アークの右掌から悪意の球体が撃ち出され、

 

 

「結局……俺にはっ……!」

 

 

 自然と弱々しい言葉が漏れる。

 

 撃ち出された球体を狙い違わず、倒れる或人へと飛ぶ。

 

 

ーー何も、守れないのかッ……?

 

 

 目から涙が零れる。

 

 

 

その時だった。

 

 

 

ーーンなこたねぇよ。ちゃんと守れてたぜ?

 

 

 

ーーそれにめちゃくちゃ頑張ってたじゃねーか

 

 

 突然、辺りに聞き覚えのある声と足音が響いた。

 

 

 ──────────────────────

 

ーーハーキュリービートルズアビリティ!

 

「! 何っ……?」

 

 アークにはその事態が一瞬理解できなかった。

 それは当然だった。何故ならアークの予測にはなかったことだから。

 

 唐突に出現した緑色のヘラクレスオオカブト?と思われるライダモデルが、或人に撃ち出した悪意の球体をその巨大な角で弾き飛ばしたのだ。

 

(……いや、あり得ない。そんな筈はない!)

 

 そのライダモデルにアークは見覚えがあり、ある予測が立てられた……がアークはその予測を自ら否定する。いや、正しく言うならばその予測を認めたくなかったのだろう。

 

 だが次の瞬間、姿を現した存在に…アークは自身の予測が正しかったと認めざる終えなくなった。

 

「! あ、天本…さんッ……!!」

 

 聞こえた声、足音にボロボロで無茶して立ち上がった或人はその姿に声を上げる。

 

「よお或人。見ない間にまた随分とイケメンになってるな? 『男子三日会わざれば刮目して見よ』ってやつか」

 

 ってイケメンになってるのは天津さん達もか?傷だらけな或人の姿を見て、男は片手を軽く上げ揶揄う。その男は紛れもなく、

 

天本太陽(バルデル)……!!」

 

 ーー天本太陽、仮面ライダーバルデルだった。

 その左手には緑色のプログライズキーが握られている。

 

「天本さんっ、無事だったんですね……!!」

「太陽君……よかった……本当によかった……!!」

「……えっ?! 何で二人して泣いてんの!? え、そ、そんなに心配してくれてたんだ……」

 

 そんな太陽は或人と垓の反応を前に照れて頬をかき「ちょっと感動したわ……」と小声で呟く。

 

「……何故だ? 何故だ!? 何故貴様が生きている!? 貴様は確かにあの時、確実に殺した筈だ!」

「アーク、お前は見ない間に随分と感情豊かになったな? ……何で生きてるかだって?」

 

 太陽の姿は或人らと比べれば幾分かマシだが、それでもかなりボロボロであちこちに生傷や裂傷があり、打撲している箇所もあるようだった。

 

 そんな状態だが確かに生きて喋っている男……そんな受け入れ難い事実にアークはらしくなく声を荒げて問い、太陽はそんなアークにこう言ってのけた。

 

「そんなこと俺が知るか! バーカ!」

 

 それは滅茶苦茶かつ、子供のような罵倒……かつての太陽らしい物言いだった。

 

「……ふざけるな!」

「ふざけてねぇよ。これが俺の本音だ!」

 

 苛立つアークだが、太陽はそんなことお構いなしに言う。

 

「或人、天津さん、不破さん、刃さん。ちょっと離れててくれ」

「ーーーー」

「今から、一旦(・・)こいつをぶっ倒す」

 

 驚く程あっさりとしたその台詞に或人達は思わず「えっ」と零す。

 

「! ……倒す、だと?」

「あぁ」

 

 その言葉に最も驚いたのはアークに太陽は平然とした態度で応える。

 

「……馬鹿なことを。バルデル、貴様では私には勝てない。まさか…もう忘れたというのか?」

「お前こそ、忘れたか? さっき言ったばっかだろ『男子三日会わざれば刮目して見よ』ってやつだ」

「ふっ、下らん戯言を……ベルトもない貴様に何ができる?」

 

 アークの指摘通り、今の太陽の腰にはショットライザーが無く…黒いバックルとベルトだけが装着されているのみ。しかし、

 

「まぁ見てろって」

ゼアズアビリティ!

 

 ーー不敵に笑った太陽は左手に持ったプログライズキーのボタンを押し、アビリティを発動させる。

 

ショットライザー!

 

 瞬間、プログライズキーから水色のレーザー?が放たれ太陽の真前ーー宙空に銃を僅か数秒で製作。太陽はそれを掴み、流れるようにバックルにセットした。

 

「!? あれはっ……!」

「間違いない……あれはショットライザーだ!」

 

 製作された銃。それは間違いなくショットライザー。太陽が持つプログライズキーが発揮したその力はアークドライバーによる武器製作と酷似している。

 

「何だと……!?」

 

 太陽は左手に持ったプログライズキーを右手に持ち替えると、再度ボタンを押し、

 

グレイトストロング!

エースライズ!

 

 ーー手慣れた手つきで続けてショットライザーに装填し、右手でプログライズキーを展開。

 

Kamen Rider. Kamen Rider.

 

 バックルからショットライザーを引き抜き、銃口を天高く真上に上げ、太陽はただ前を見据える。

 

「! させるかーー」

『ーー!!』

「くっ、ライダモデルか…!」

 

 太陽の変身を妨害しようとしたアークだが、それは先程アビリティにより出現していた飛び回る緑色のヘラクレスオオカブト?のライダモデルの威嚇攻撃により阻止されてしまい。

 

ーー変身ッ!!

ショットライズ!

 

 ーー太陽は銃口を天高く上げたままトリガーを引く。次の瞬間、放たれた緑色の弾丸は真っ直ぐ天に飛ぶ。また、それを追うようにヘラクレスオオカブト?のライダモデルが飛び立ち旋回を始め、

 

ハッーーオラアッ!!

 

 ーー真上を見上げた太陽は方向転換し、真っ直ぐ落ちてくる弾丸に向かって勢いよく広げた左手を伸ばし握り潰した後…その伸ばした左腕を勢いよく振り下ろす。

 

 アーマーは最初に伸ばした左手・左腕から装着されていき、続けてガチャンッ! ガキン!とアーマーが全身に装着されーー。

 

 最後にヘラクレスオオカブト?のライダモデルがゼロワン変身時のバッタのライダモデルのように分解。緑色の追加アーマーとしてその上半身に装着。そして、

 

Grab the victory!Grab the future!

ウイニングヘラクレス!

The strongest power Crush the sky.

It's Keep winning.

 

複眼が赤く発光しーー変身が完了する。

 

 

俺は仮面ライダーバルデル!

 

太陽はーーバルデルは宣言する。

 

真打登場、なんてな

 

 仮面の下で太陽は笑った。

 

 

今、リベンジが始まる。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。感想や批評、アドバイスなどありましたら遠慮なくお願いします!

バルデルの強化フォーム案を募集してから幾星霜(大袈裟)
強化フォーム登場を楽しみに待っていて下さった皆様(い、いるのか?)お待たせしました。


仮面ライダーバルデル
ウイニングヘラクレス


【挿絵表示】


SPEC
◾️身長:199.5cm
◾️体重:100.0kg
◾️パンチ力:120.0t
◾️キック力:98.8t
◾️ジャンプ力:95.9m(ひと跳び)
◾️走力:0.5秒(100m)
★必殺技:ウイニングブラスト、ウイニングブラストフィーバー

<Point>
天本太陽が(ゼアの力で再構築した)ショットライザーとウイニングヘラクレスプログライズキー(※オリ設定)を使って変身した姿。




仮面ライダーゼロワン!


第23話 ある男の完全復活!!


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